本稿では集合論にZFC公理系を採用します.
「集合とはZFC公理系で定義されるモノ」というのは間違いです. 「モノ」とはなんですか?という話になります.
集合の定義はありません.集合は未定義用語(primitive notion)です.ミュンヒハウゼンのトリレンマを考えればこのような概念が現れる事は不可避です。
ZFC公理系における(数学的)対象すべてを集合と呼びます.
変数は対象です。論理式は対象ではありません(何故かと聞かれると苦しいのでこれは決まりだと思ってもらうほうが良いです)。
ただし議論の前提となる集合論にZFC公理系でなくNBG集合論やMK集合論など「集合」より広い対象(クラス)を扱う理論を採用した場合は話が異なります(NBGとMKにおける違いは内包性公理に関するもの一点だけだがNBGはMKより真に強い).このときクラス
stack exchangeの参考スレッド もご覧ください.
ZFC公理系の10個ほどの公理たちは集合が満たすべきルールというだけに過ぎません.それが集合という「モノ」を定義しているわけではありません.
例えばべき集合の公理を見てましょう:
ここで変数
「任意の集合
論理式には「
例えばMK集合論ではべき集合の公理は次のようになります:
今前提としている集合論はMKだからこれは次のように読みます:
「任意のクラス
集合は現代数学を支える重要な基礎概念である割には数学科でもふわっと済まされがちなのは残念なことです.
MK,NBG集合論に関しては ここ がとてもわかり易いです。