0

交代級数にさらに極限をつける(階乗の逆数交代和)

157
0

(an)tantと略記しています.
(この記事では, 指数が添え字部分にかかることはありません.)

・ほぼ高校レベルの数学で完結させています.

・より良い証明やより一般的な結果をご存知の方は教えていただけるとありがたいです.

この記事では, 非負整数nに対して, an=1n! と定義して, 次の命題1を証明します.

この記事の主題

limt+0{n=0(1)nant}=limt+0{n=0(1)n(n!)t}=12

任意の正の実数tに対して, 数列{ant}n0は0に収束する単調減少な数列なので, 上の命題1の無限和部分は収束します.(参考: 交項級数.Wikipedia )

R>0を定義域とする関数fnnは非負整数)を
fn(t):=a2nta2n+1ta2nta2n+2t   と定義する. (終域は[0,1)

このfnを使うと, 命題1の無限和部分は

n=0(1)nant=n=0{fn(t)(a2nta2n+2t)}

と変形できます.

これを用いて命題1を証明していきます.

n<mt>0 , fn(t)<fm(t) が成り立つ.

fn(t)=(2n+1)t(2n+2)t(2n+2)t(2n+1)t(2n+2)t1 と変形できる.

よって任意の正実数tについて,

g(x):=xt(x+1)t(x+1)txt(x+1)t1x1 で単調増加であることを示せば良い.

g(x)=t(x+1)t{((x+1)t+xt2)xt+1+((x+1)t1)xt}x(xt(x+1)t1)2

g(x)の分子に着目すると,
(x+1)t+xt2>0, (x+1)t1>0 なので,
g(x)>0

以上, 証明終わり.

任意の非負整数Nについて, tを十分小さくとれば,

n=0(1)nant>fN(t)

上で述べたように, 左辺は収束する.

n=0(1)nantfN(t)

=n=0{fn(t)(a2nta2n+2t)}fN(t)

=n=0{(fn(t)fN(t))(a2nta2n+2t)}

>n=N+1{(fN+1(t)fN(t))(a2nta2n+2t)}n=0N{fN(t)(a2nta2n+2t)}

=(fN+1(t)fN(t))a2N+2tfN(t)(1a2N+2t)

ただし, 最後の不等式には補題2をもちいた.
最後の式はt+0
limt+0(fN+1(t)fN(t))
=11+ln(2N+4)ln(2N+3)11+ln(2N+2)ln(2N+1)>0

に収束するので,
以上が証明となる.

p(t),q(t),r(t)を以下のように定義する.

p(t):=exp(1ln(t))1+exp(1ln(t))

q(t):=exp(1tln(t))

r(t):=[q(t)12] ※[]はガウス記号

このとき, 次の不等式が成り立つ.

n=0(1)nant<p(t)(1a2r(t)+2t)+a2r(t)+2t

fn(t)<11(2n+1)t11(2n+1)t1(2n+1)t=11+1(2n+1)t である.

11+1(2n+1)tp(t)nについて解くと

2n+1q(t) となる.

この不等式を満たす整数nのうち, 最大のものはr(t)である.

よって、nr(t)fn(t)<p(t) が成り立つ.

これにより,

n=0(1)nant

=n=0{fn(t)(a2nta2n+2t)}

=n=0r(t){fn(t)(a2nta2n+2t)}+n=r(t)+1{fn(t)(a2nta2n+2t)}

<n=0r(t){p(t)(a2nta2n+2t)}+n=r(t)+1(a2nta2n+2t)

=p(t)(1a2r(t)+2t)+a2r(t)+2t

以上, 証明終わり.

limt+0a2r(t)+2t=0

a2r(t)+2t

={1(2r(t)+2)!}t

1et(e2r(t)+2)(2r(t)+2)t   (  e(ne)nn! )

=1et(e2r(t)+2)(2r(t)+2)t

ここで, limt+0(2r(t)+2)t を先に求めておく.

(2r(t)+2)t=(2[q(t)12]+2)t>(q(t)1)t より,

limt+0(2r(t)+2)t

limt+0(q(t)1)t

=limt+0{exp(1tln(t))1}t

=limu+{1uexp(uln(u))1u}   (u=1tと変換した.)

=+

以上より,

limt+0a2r(t)+2t

limt+01et(e2r(t)+2)(2r(t)+2)t

=10=0

以上, 証明終わり.

この記事の主題(再掲)

limt+0{n=0(1)n(n!)t}=12

補題4と補題5より,任意の自然数Nについて

limt+0a2Nta2N+1ta2Nta2N+2tlimt+0{n=0(1)n(n!)t}limt+0{p(t)(1a2r(t)+2t)+a2r(t)+2t}

左辺,右辺の極限を調べる.
まずは左辺から

limt+0a2Nta2N+1ta2Nta2N+2t

=ln(a2N)ln(a2N+1)ln(a2N)ln(a2N+2)

=ln(2N+1)ln{(2N+1)(2N+2)}

これが任意のNで成り立つことと,

limNln(2N+1)ln{(2N+1)(2N+2)}=12 であることから,

12limt+0{n=0(1)n(n!)t}

次に右辺を調べる

limt+0p(t)=12

limt+0a2r(t)+2t=0

以上より, 右辺も12に収束する.

以上, 証明終わり.

読んでいただきありがとうございました.

ミス等があれば, 指摘していただけるとありがたいです.

投稿日:20241014
更新日:33
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中