こんにちは。
この記事では韓国の中等教育数学教師採用試験の問題を解いていこうと思います。韓国では教師になるために、数学教育科を卒業または数学科で教職単位を履修すれば教師採用試験の資格が得られます。試験の範囲は教育学+大学3回生まで習う数学(微積、線形、解析、整数、微分幾何、離散数学、統計学、複素解析、位相、代数、)になります。ちなみにこれは一次試験で二次では授業形式の面接を行います。今回は複素解析の過去問を解きます。韓国語に書いてあるので私が翻訳しました。
3問
日本語バージョン
複素関数
$
f(z) = \frac{(z - i + 1)^{5}(z + 1 + i)^{4}}{z^{6}(z - 1 + 4i)^{3}(z - 9 + 2i)^{5}} e^{z}
$ と複素平面上で原点を中心とする半径の長さが${r}$である円を半時計回りに一周する曲線を${C(r)}$とする。
線積分 $\displaystyle \int_{C(2)} \frac{f'(z)}{f(z)}\, dz$を求めよ。
また、$\displaystyle \int_{C(r)} \frac{f'(z)}{f(z)}\, dz = 0$を満たす正の整数${r}$の個数を求めよ。
この問題のポイントは「偏角原理」を使うことです。
$f(z)$ を半時計の単純閉曲線$\gamma$で囲まれた領域内で有理型な関数とする。$\gamma$上では
$f(z) \neq 0$であり極を持たないものとする。このとき、${\dfrac{1}{2\pi i}\int_{\gamma} \dfrac{f'(z)}{f(z)}\, dz = N - P}
$である。
ここで${N}$は${\gamma}$の内部にある零点(重複度を含む)の数、${P}$は${\gamma}$の内部にある極(重複度を含む)の数とする。
証明は複素解析の本を読んでください。アイデアは${f(z)}$が${z=a}$で重複度${3}$の零点ならば${f(z)}$が大体$(z-a)^{3}$の形であり、偏角原理の公式にある被積分関数を求めると、複素解析でよく見かける有名な積分の形になります。${3}$は定数倍になります。
問題を解いてみましょう。
まずは${f(z)}$の零点と極の絶対値を求めるのが良さそうですね。小さい順から並べると
極点 ${0}$ 重複度 ${6}$
$$
|z| = |0| = 0
$$
零点 ${-1+i}$ 重複度 ${5}$
零点 ${-1-i}$ 重複度 ${4}$
$$
|z| = |-1 + i| = |-1 - i| = \sqrt{2}
$$
極点 ${1-4i}$ 重複度 ${3}$
$$
|z| = |1 - 4i| = \sqrt{17}
$$
極点 ${9-2i}$ 重複度 ${5}$
$$
|z| = |9 - 2i| = \sqrt{85}
$$
$e^{z}$ は全解析
なので$\displaystyle \int_{C(2)} \frac{f'(z)}{f(z)}\, dz$の値は原点を中心とする半径2の円の内部にある零点と極点を選んで偏角原理によって計算すると、$2πi × (5+4-6)=6πi$になります!
ここまで来ると偏角原理を知っていればただの計算問題だったのが分かります。
いつ $\displaystyle \int_{C(r)} \frac{f'(z)}{f(z)}\, dz = 0 $になるのでしょうか?
零点と極点の重複度を考えて$-6+5+4-3=0$になれば良さそうです。この時は$\sqrt{17} < r < \sqrt{85}$のとき成り立ちます。(曲線上では極点が存在しない。)
つまり$\displaystyle \int_{C(r)} \frac{f'(z)}{f(z)}\, dz = 0 $を満たす${r}$は5個です!
12問中3番目で数学だけじゃない(教育学の問題もある)ので簡単だった問題です。
8問
日本語バージョン
複素数 $z = x + iy$ (${x}$,${y}$は実数)に対する関数 $f(z) = \frac{x + ay}{x^2 + y^2} + x^2 + by^2 + i\left( \frac{cy}{x^2 + y^2} + dxy \right) $が領域$\mathbb{C} - \{0\}$で解析的になるような実数$a, b, c, d$の値を求めよ。また、$e^{\frac{1}{z}} f(z)$の$z=0$を中心とするローラン展開$$\sum_{n=-\infty}^{\infty} a_n z^n $$において係数$a_{-1}$の値を求めよ。
この問題のポイントは実数部と虚数部が${x,y}$についての関数になっていて解析的である条件があるのでコーシー•リーマン方程式を用いましょう。
コーシーリーマン方程式は微分可能に関する命題です。解析的の意味は微分可能な点の十分小さい近傍が存在してその内部の点が微分可能ならば解析的だと呼びます。
$$ u(x,y) = \frac{x + a y}{x^2 + y^2} + x^2 + b y^2$$
$$v(x,y) = \frac{c y}{x^2 + y^2}+dxy
$$
において、コーシーリーマン方程式が成り立ちます。
$$
\frac{\partial u}{\partial x} = \frac{\partial v}{\partial y}, \quad
\frac{\partial u}{\partial y} = -\frac{\partial v}{\partial x}
$$
$$ \frac{\partial u}{\partial x} = 2x + \frac{x^2+y^2-2x(x+ay)}{(x^2 + y^2)^2} $$
$$ \frac{\partial v}{\partial y} = dx+ \frac{c(x^2+y^2)-2cy^2}{(x^2 + y^2)^2} $$
コーシーリーマン方程式が原点以外の全ての${x,y}$について成り立つので${y=0}$を代入して(1番目の式で左辺に移項)
$$
(2-d)x= \frac{-1-c}{x^2} (x \neq 0)
$$
$$
(2-d)x^3 = -1-c (x \neq 0)
$$
が成り立つので$d=2 , c=-1$になります。
2番目の式を用いるために
$$
\frac{\partial u}{\partial y} = 2by + \frac{ax^2 - ay^2 - 2xy}{(x^2 + y^2)^2}
$$
$$
- \frac{\partial v}{\partial x} = -dy - \frac{2cxy}{(x^2+y^2)^2}
$$
今回は${x=0}$を代入すればこんな結果が得られます。
$$
(2b+d)y = \frac{-a}{y^2} (y \neq 0)
$$
$$
(2b+d)y^3 = -a (y \neq 0)
$$
になって${d=2}$だったので${b=-1,a=0}$になります。${a,b,c,d}$の値を全部求めました。
求めた${a,b,c,d}$で関数の式を書いてみましょう。
$$
f(z) = \frac{x}{x^2+y^2} + x^2 - y^2 + i\left(\frac{-y}{x^2+y^2} + 2xy\right)
$$
ここで式変形をします。足し算の順序を変えるだけです。
$$
f(z)= \left(\frac{x-iy}{x^2+y^2}\right) + \left(x^2 - y^2 + 2ixy\right)
$$
問題の冒頭に${z=x+iy}$とおいたので、上の式は魔法的に$f(z)= \frac{1}{z} + z^2$に${z=x+iy}$を代入したものになります!!!
つまり$f(z) = \frac{1}{z} + z^2$であり、$\mathbb{C} - \{0\}$で解析関数になります
$e^{\frac{1}{z}} f(z) = e^{\frac{1}{z}} (\frac{1}{z} + z^2) $ のローラン級数
$$
\sum_{n=-\infty}^{\infty} a_n z^n
$$
で$a_{-1}$を求めましょう。
$e^z$のテイラー展開で$\frac{1}{z}$を代入すると
$$ e^{1/z} = 1 + \frac{1}{z} + \frac{1}{2z^{2}} + \frac{1}{6z^{3}} + \frac{1}{24z^{4}} + \frac{1}{120z^{5}} + \cdots
$$ (式 1)
です。この長い式に$\frac{1}{z} + z^2$ (式 2)をかけることになりますが${\frac{1}{z}}$の係数だけ求めればいいので
(式1の$\frac{1}{z^3}$の係数)(式2の${z^2}$の係数) + (式1の定数項の係数)(式2の$\frac{1}{z}$)を計算すれば$\frac{7}{6}$です。
7問
日本語バージョン
拡張複素平面 $\mathbb{C} \cup \{\infty\}$ で定義された一次分数変換(線形分数変換)$T$が$T(0) = -1, \quad T(i) = -i, \quad T(2) = 3 $を満たすとき、$T(z)$を求めよ。また、$W = \{T(z) \mid |z|=1, \, z \in \mathbb{C}\}$とするとき、$W$の元と複素数$1+i$との距離の最小値を求めよ。
この問題は一次分数変換が何か知っていれば高校生も解ける問題です。
$T$が一次分数変換ならば$T(z)= \frac{cz+d}{az+b} (ad-bc \neq 0)$と書けますね。(分母も0になっちゃうどだめです)ここで何故$ad-bc \neq 0$という条件が付いているのでしょうか?
何故ならば一次分数変換の特別な性質を保存するためです。
一次変換は
の3つの演算で作れるからです。実際に、
${a=0}$なら、$T(z)=\frac{cz+d}{b}$
になって、${a \neq 0}$ならば
$$
T(z)= \frac{c}{a} + \frac{d-\frac{bc}{a}}{az+b}
$$
になって三つの演算で作られます。
これは行列とも関係があります。$ad-bc$が行列式の形ですね。
この変換は特別な幾何学的性質を持っていますが後で紹介します。
高校生には拡張複素平面の意味がわからない。
簡単にいうと
$\infty \rightarrow \frac{1}{\infty} \rightarrow 0$
$0 \rightarrow \frac{1}{0} \rightarrow \infty
$
とすれば一次分数変換が拡張複素平面で全単射になります!
さて、一次変換の形を知っていれば高校生も解けます。
$$ T(0) = -1,\quad T(i) = -i,\quad T(2) = 3 $$
この条件を代入したら簡単に $T(z) = \frac{z+1}{z-1}$ が分かります。
$$ W=\lbrace T(z)\mid |z|=1,z\in\mathbb{C}\rbrace $$を求めらばいいので $w=T(z)=\frac{z+1}{z-1}$としましょう。
$$
z=\frac{w+1}{w-1}
$$
になって$z$と$w$は互いに逆関数です。ここで$\left| z \right| = 1$だったので$\left| w-1 \right| = \left| w+1 \right|$ になるので$T$の像は$-1$と$1$と同じ距離にある点、つまり虚数軸上の点が$T$の像に
なりません。何故ならば拡張複素平面で考えるので虚数軸に$\infty$まで足したら正しい答えになります。(高校生までは虚数軸になることだけ理解していればいいです。)
なので問題で要求する$W$の元と$1+i$との距離の最小値は$1$になります。
中等教育教員試験なので旧帝の院試よりは簡単です。
複素解析の問題はより簡単でした。
読んでくれてありがとうございます。