実数 $t$ の値によって定まる点 $\mathrm{P}(t+1,t)$ と $\mathrm{Q}(t-1,-t)$ がある。
(1) $t$ がすべての実数を動くとき,直線 $\mathrm{PQ}$ が通過する範囲を図示せよ。
(2) $t$ が区間 $[0,1]=\lbrace t\mid 0\leqq t\leqq 1\rbrace$ を動くとき,線分 $\mathrm{PQ}$ が通過する範囲の面積を求めよ。
$\mathrm{P}_t$ と $\mathrm{Q}_t$ の中点と差は
$$
\mathrm{M}_t=(t,0),\qquad \overrightarrow{\mathrm{Q}_t\mathrm{P}_t}=2(1,t)
$$
である。$\mathrm{P}_t\neq\mathrm{Q}_t$ であるから $L_t$ はつねに定まる。$\mathrm{M}_t$ から $u(1,t)$ だけ進んだ点が $(t+u,\ tu)=\Phi(t,u)$ であるから
$$
L_t:\ y=tx-t^2,\qquad L_t=\Phi(\lbrace t\rbrace\times\mathbb{R}),\qquad \overline{\mathrm{P}_t\mathrm{Q}_t}=\Phi(\lbrace t\rbrace\times[-1,1]) \tag{1.1}
$$
を得る。$u=1,\ -1$ がそれぞれ $\mathrm{P}_t,\ \mathrm{Q}_t$ に対応する。直線の式を $t$ について平方完成すると
$$
tx-t^2=\frac{x^2}{4}-\left(t-\frac{x}{2}\right)^2 \tag{1.2}
$$
であるから,$L_t$ は $\mathcal{P}$ の下側にあって $\mathcal{P}$ と点 $\mathrm{T}_t$ のみを共有する。すなわち $L_t$ は $\mathcal{P}$ の傾き $t$ の接線である。
任意の点 $(x,y)$ と実数 $s$ について
$$
g_{x,y}(s)=y-(sx-s^2)
$$
であり,$(x,y)=\Phi(t,u)$ ならば $g_{x,y}(z)=(z-t)(z-u)$ である。したがって次が成り立つ。
(i) 点 $(x,y)$ が $L_s$ の上側にある,$L_s$ 上にある,$L_s$ の下側にあることは,それぞれ $g_{x,y}(s) > 0$,$g_{x,y}(s)=0$,$g_{x,y}(s) < 0$ と同値である。
(ii) $(x,y)\in\Phi(\mathbb{R}^2)$ であることは $g_{x,y}$ が実根をもつことと同値であり,このとき $\Phi(t,u)=(x,y)$ を満たす $(t,u)$ は $g_{x,y}$ の2根(重複度を込める)を並べたものに限る。特に $\Phi(t,u)=\Phi(t',u')$ と $\lbrace t,u\rbrace=\lbrace t',u'\rbrace$(多重集合として)は同値である。
(iii) $\Phi(t,u)\in L_t\cap L_u$ であり,$s\neq t$ ならば $L_s\cap L_t=\lbrace\Phi(s,t)\rbrace$ である。特に $\mathrm{P}_t=\Phi(t,1)$,$\mathrm{Q}_t=\Phi(t,-1)$ であり,$t\neq1$ のとき $L_t\cap L_1=\lbrace\mathrm{P}_t\rbrace$,$t\neq-1$ のとき $L_t\cap L_{-1}=\lbrace\mathrm{Q}_t\rbrace$ である。
第1式は $g_{x,y}$ の定義そのものである。$(x,y)=(t+u,tu)$ ならば $g_{x,y}(z)=z^2-(t+u)z+tu=(z-t)(z-u)$。(i) は第1式から従う。(ii) $g_{x,y}$ が実根 $\alpha,\beta$ をもてば,解と係数の関係より $\Phi(\alpha,\beta)=(x,y)$。逆に $\Phi(t,u)=(x,y)$ ならば $t,u$ は $g_{x,y}$ の2根である。モニックな二次式とその根の多重集合は互いに一意に定まるから,後半を得る。(iii) $g_{\Phi(t,u)}(t)=0$ と (i) より $\Phi(t,u)\in L_t$,同様に $\Phi(t,u)\in L_u$。$s\neq t$ のとき $L_s,L_t$ は傾きが異なるから交点は1点であり,それは $\Phi(s,t)$ である。最後の主張は (1.1) による。
補題1
から
$$
x^2-4y=(t-u)^2,\qquad \det\frac{\partial(x,y)}{\partial(t,u)}=\det\begin{pmatrix}1&1\\u&t\end{pmatrix}=t-u \tag{1.3}
$$
を得る。これにより,境界の放物線 $\mathcal{P}$ は次の三通りに現れる。
(1.1) と
補題1
(ii) より $\mathcal{R}_1=\Phi(\mathbb{R}^2)$,$\mathcal{R}_2=\Phi(\Omega)$ である。後者は根の言葉で次のように書ける。
$$
(x,y)\in\mathcal{R}_2\iff g_{x,y}\ \text{は実根をもち,2根はともに}\ [-1,1]\ \text{に属し,少なくとも一方は}\ [0,1]\ \text{に属する.} \tag{1.4}
$$
実際,左辺は「2根を $t\in[0,1]$,$u\in[-1,1]$ と並べられる」ことであり,$[0,1]\subset[-1,1]$ より右辺と同値である。
根がどの区間に属するかは,
補題1
(i) により,点が接線のどちら側にあるかに翻訳される。
$g=g_{x,y}$ とおく。
補題1
(ii) より,$(x,y)\in\Phi([a,b]\times[b,c])$ は $g$ が実根 $\alpha\leqq\beta$ をもち $\alpha\in[a,b]$,$\beta\in[b,c]$ となることと同値であり,$(x,y)\in\mathcal{C}[a,b]$ は $\alpha,\beta\in[a,b]$ となることと同値である。
(1) $\alpha\in[a,b]$,$\beta\in[b,c]$ ならば,$g(z)=(z-\alpha)(z-\beta)$ より $g(a)\geqq0$,$g(b)\leqq0$,$g(c)\geqq0$。逆にこの3条件が成り立つとする。$g(b)\leqq0$ より $g$ は実根 $\alpha\leqq b\leqq\beta$ をもつ。$a-\beta < 0$ と $g(a)=(a-\alpha)(a-\beta)\geqq0$ から $\alpha\geqq a$,$c-\alpha > 0$ と $g(c)\geqq0$ から $\beta\leqq c$。3条件は
補題1
(i) により記載の3不等式と同値である。
$L_a,L_b,L_c$ は傾きが相異なり,2本ずつの交点は相異なる3点 $\Phi(a,b),\Phi(a,c),\Phi(b,c)$ である。さらに
$$
g_{\Phi(b,c)}(a)=(a-b)(a-c) > 0,\qquad g_{\Phi(a,c)}(b)=(b-a)(b-c) < 0,\qquad g_{\Phi(a,b)}(c)=(c-a)(c-b) > 0
$$
であるから,3つの閉半平面はいずれも,境界線上にない頂点を含む側である。よって共通部分はこの3点を頂点とする閉三角形である。$\Phi(a,c)-\Phi(a,b)=(c-b)(1,a)$,$\Phi(b,c)-\Phi(a,b)=(c-a)(1,b)$ より,面積は $\frac12(c-b)(c-a)\left\lvert\det\begin{pmatrix}1&1\\a&b\end{pmatrix}\right\rvert=\frac12(b-a)(c-b)(c-a)$。
(2) $\alpha,\beta\in[a,b]$ ならば $x^2-4y=(\alpha-\beta)^2\geqq0$,$g(a)\geqq0$,$g(b)\geqq0$,$x=\alpha+\beta\in[2a,2b]$。逆にこの4条件が成り立つとき,$g$ は実根 $\alpha\leqq\beta$ をもつ。$g(a)\geqq0$ より $a\leqq\alpha$ または $\beta\leqq a$ であり,後者なら $\alpha+\beta=x\geqq 2a$ と合わせて $\alpha=\beta=a$。同様に $g(b)\geqq0$ より $\beta\leqq b$ または $\alpha=\beta=b$。いずれの場合も $\alpha,\beta\in[a,b]$ である。4条件は,
補題1
(i) と $x^2-4y\geqq0\iff y\leqq\frac{x^2}{4}$ により記載の不等式と同値である。$L_a,L_b$ は $x=a+b\in[2a,2b]$ で交わり,(1.2) よりいずれも $\mathcal{P}$ の下側にあるから,この集合は線分 $\mathrm{T}_a\Phi(a,b)$,$\Phi(a,b)\mathrm{T}_b$ と弧 $\mathrm{T}_a\mathrm{T}_b$ で囲まれた閉領域である。
(1.4) の条件を「2根が $0$ の両側に分かれる」場合と「2根がともに $[0,1]$ にある」場合に分ければ,交換対称性 $\Phi(t,u)=\Phi(u,t)$ により
$$
\mathcal{R}_2=\Phi([-1,0]\times[0,1])\cup\Phi([0,1]^2) \tag{1.5}
$$
となる。第1項は
補題2
(1) で $(a,b,c)=(-1,0,1)$ とした三角形で,頂点は $\Phi(-1,0)=\mathrm{A}$,$\Phi(-1,1)=\mathrm{D}$,$\Phi(0,1)=\mathrm{E}$ である。第2項は
補題2
(2) で $[a,b]=[0,1]$ とした曲線三角形で,接線 $L_0:y=0$,$L_1:y=x-1$ と弧 $\mathrm{BC}$($\mathrm{T}_0=\mathrm{B}$,$\mathrm{T}_1=\mathrm{C}$)で囲まれる。
補題1
(iii) より,$\lvert t\rvert < 1$ のとき $\overline{\mathrm{P}_t\mathrm{Q}_t}$ は,動く接線 $L_t$ のうち二本の固定接線
$$
L_1:\ y=x-1,\qquad L_{-1}:\ y=-x-1
$$
に挟まれた部分である($L_t$ 上で $x=t+u$ は $u$ について増加するから,$-1\leqq u\leqq1$ は二交点の間を表す)。この見方から次の構造が現れる。
結果を先に述べる(証明は
2 節
と
3.7 節
)。
$$
\mathcal{R}_1=\left\lbrace (x,y)\ \middle|\ y\leqq\frac{x^2}{4}\right\rbrace,
$$
$$
\mathcal{R}_2=\triangle\mathrm{ADE}\cup\mathcal{C}[0,1]=\left\lbrace -1\leqq x\leqq0,\ -x-1\leqq y\leqq0\right\rbrace\cup\left\lbrace 0\leqq x\leqq2,\ x-1\leqq y\leqq\frac{x^2}{4}\right\rbrace.
$$
$\mathcal{R}_2$ の境界は,線分 $\mathrm{AB}$,弧 $\mathrm{BC}$,線分 $\mathrm{CD}$,線分 $\mathrm{DA}$ からなる閉曲線である。
境界の発生源は一般的に限定できる。$\Omega$ の内点 $(t,u)$ で $t\neq u$ ならば,$\Phi$ はその近傍で可逆であり(逆関数定理,
5.4 節
),その像は $\mathcal{R}_2$ の内点である。よって $\partial\mathcal{R}_2$ は $\Omega$ の4辺と対角線の像に含まれる。
| パラメータの集合 | 像 | 境界への寄与 |
|---|---|---|
| $t=0,\ -1\leqq u\leqq1$ | $y=0,\ -1\leqq x\leqq1$ | 線分 $\mathrm{AB}$(開線分 $\mathrm{BE}$ は内部) |
| $t=1,\ -1\leqq u\leqq1$ | $y=x-1,\ 0\leqq x\leqq2$ | 線分 $\mathrm{DC}$ |
| $u=-1,\ 0\leqq t\leqq1$ | $y=-x-1,\ -1\leqq x\leqq0$ | 線分 $\mathrm{AD}$ |
| $u=1,\ 0\leqq t\leqq1$ | $y=x-1,\ 1\leqq x\leqq2$ | 線分 $\mathrm{EC}$($\mathrm{DC}$ の一部) |
| $t=u,\ 0\leqq t\leqq1$ | $y=\frac{x^2}{4},\ 0\leqq x\leqq2$ | 弧 $\mathrm{BC}$ |
面積は三通りに分解される。
$$
S=\underbrace{\frac12}_{x\leqq0}+\underbrace{\frac23}_{x\geqq0}=\underbrace{1}_{y\leqq0}+\underbrace{\frac16}_{y\geqq0}=\lvert\mathcal{C}[-1,1]\rvert-\lvert\mathcal{C}[-1,0]\rvert=\frac43-\frac16=\frac76.
$$
最後の分解は,(1.4) により $\mathcal{C}[-1,1]\setminus\mathcal{R}_2$ が「2根がともに $[-1,0)$ にある点」の集合であることによる(
3.8 節
)。
以上の構造から,作問の設計は次のように読める(数値設定からの分析であり,出題意図についての推定を含む)。
| 着目する構造 | 数学的翻訳 | 対応する解法 |
|---|---|---|
| $y=tx-t^2$ は $t$ の二次式 | 固定断面での値域 | 本解,3.3 節 |
| 点が $L_t$ 上 $\Leftrightarrow$ $t$ が根 | 判別式,包絡線 | 3.1 節 |
| 中点・直交・等長 | 正方形,焦点と準線 | 3.2 節 |
| 点 $=(t+u,\ tu)$ | 積を固定したときの和の範囲 | 別解1 |
| 根の区間 $\Leftrightarrow$ 接線に関する位置 | 三角形と曲線三角形への分割 | 別解2 |
| 区間の縮小 $\Leftrightarrow$ アフィン相似 | 面積の三次則と加法性 | 別解3 |
| 端点のレールの直交 | 切片の和が一定の直線族 | 別解4 |
| 交換対称性 $\Phi(t,u)=\Phi(u,t)$ | 重複の除去と面積倍率 | 参考解1 |
| 接点の速度が線分の方向 | 掃過面積の速度 | 参考解2 |
| 外周の確定 | 補集合,剪断,線積分 | 3.4 節,3.5 節 |
$x$ を固定し,点 $(x,y)$ を通る直線(線分)が存在するための $y$ の条件を求める。直線では $t$ は自由であり,線分では「$0\leqq t\leqq1$ かつ $\lvert x-t\rvert\leqq1$」で定まる区間 $I_x$ を先に確定してから,その上で $f_x(t)=xt-t^2$ の値域を求める。値域が最小値から最大値までの区間全体になることは連続性で保証する。面積は縦断面の長さを積分して求める。
$\mathrm{P}_t\mathrm{Q}_t$ の中点は $(t,0)$,方向ベクトルは $(1,t)$ であるから,直線 $\mathrm{PQ}$ の方程式は $y=tx-t^2$ であり,線分 $\mathrm{PQ}$ 上の点は
$$
(x,y)=(t+u,\ tu)\qquad(-1\leqq u\leqq1)
$$
と表される($u=1$ が $\mathrm{P}$,$u=-1$ が $\mathrm{Q}$)。
$x$ を固定すると
$$
y=tx-t^2=\frac{x^2}{4}-\left(t-\frac x2\right)^2.
$$
右辺は $t$ の連続関数で,$t=\frac x2$ で最大値 $\frac{x^2}{4}$ をとり,$t\to\pm\infty$ で $-\infty$ に発散する。中間値の定理より,$t$ が実数全体を動くとき $y$ のとる値の全体は $\left(-\infty,\ \frac{x^2}{4}\right]$ である。よって
$$
\mathcal{R}_1=\left\lbrace (x,y)\ \middle|\ y\leqq\frac{x^2}{4}\right\rbrace.
$$
図示すると,下に凸の放物線 $y=\frac{x^2}{4}$(頂点 $(0,0)$,点 $(\pm2,1)$,$(\pm4,4)$ を通る)とその下側の部分全体であり,境界の放物線を含む。
直線 PQ が通過する範囲(放物線とその下側,境界を含む)
$x$ を固定する。$u=x-t$ であるから,点 $(x,y)$ がパラメータ $t$ の線分上にあるための条件は
$$
t\in I_x:=[0,1]\cap[x-1,\ x+1]=\bigl[\max\lbrace 0,\ x-1\rbrace,\ \min\lbrace 1,\ x+1\rbrace\bigr]\quad\text{かつ}\quad y=f_x(t):=xt-t^2
$$
である。したがって $(x,y)\in\mathcal{R}_2$ は,ある $t\in I_x$ で $y=f_x(t)$ となることと同値である。$I_x\neq\varnothing$ となるのは $-1\leqq x\leqq2$ のときに限る。このとき $f_x$ は閉区間 $I_x$ 上で連続であるから,$I_x$ 上の値域は $\left[\min_{I_x}f_x,\ \max_{I_x}f_x\right]$ である。
| $x$ の範囲 | $I_x$ | $\min f_x$ | $\max f_x$ |
|---|---|---|---|
| $-1\leqq x\leqq0$ | $[0,\ x+1]$ | $-x-1$ | $0$ |
| $0\leqq x\leqq1$ | $[0,\ 1]$ | $x-1$ | $\frac{x^2}{4}$ |
| $1\leqq x\leqq2$ | $[x-1,\ 1]$ | $x-1$ | $\frac{x^2}{4}$ |
線分 PQ が通過する範囲(境界は線分 AB,弧 BC,線分 CD,線分 DA)
| 設問 | 答 |
|---|---|
| (1) | 放物線 $y=\frac{x^2}{4}$ とその下側の部分(境界を含む) |
| (2) | $\frac76$ |
3.1〜3.5 節は特定の部分に対する別証・他の導出,3.6〜3.9 節は高校数学の範囲で完結する別解,3.10,3.11 節は大学初年級の道具(変数変換の公式)を用いる参考解である。
点 $(x,y)$ が $L_t$ 上にあることは,$t$ が二次方程式 $g_{x,y}(t)=0$ の根であることにほかならない( 補題1 )。通過範囲を「$t$ の方程式が実数解をもつ点の集合」として逆向きに求める。
$$
(x,y)\in\mathcal{R}_1\iff \exists\,t\in\mathbb{R}:\ t^2-xt+y=0\iff x^2-4y\geqq0.
$$
よって $\mathcal{R}_1=\left\lbrace y\leqq\frac{x^2}{4}\right\rbrace$。
境界の放物線は包絡線としても得られる。$F(x,y,t)=tx-t^2-y$ に対し $F=\partial_tF=0$ を解くと $x=2t$,$y=t^2$ である。ただし包絡線は境界の候補を与えるにとどまり,$\mathcal{P}$ の下側が実際に覆われることは判別式(または (1.2))による。
$y\leqq\frac{x^2}{4}$ の点を通る直線は $t=\frac x2\pm\sqrt{\frac{x^2}{4}-y}$ の2本(境界上では1本)であり, 1.2 節 の記述と一致する。
1.4 節 の正方形 $\mathrm{P}_t\mathrm{F}\mathrm{Q}_t\mathrm{H}_t$ により,$L_t$ は定点 $\mathrm{F}$ と直線 $y=-1$ 上の動点 $\mathrm{H}_t$ を結ぶ線分の垂直二等分線である。点が $L_t$ 上にあることは距離の等式に,そのような $t$ の存在は円と直線の交差に帰着する。$\mathrm{F}=\mathrm{M}_t+(-t,1)$ は $\overline{\mathrm{P}_t\mathrm{Q}_t}$ を斜辺とする直角二等辺三角形の頂点として,$t$ によらない定点として見いだされる。
$\mathrm{F}=(0,1)$,$\mathrm{H}_t=(2t,-1)$ とおく。$\mathrm{FH}_t$ の中点は $\mathrm{M}_t=(t,0)$ であり,$\overrightarrow{\mathrm{FH}_t}\cdot(1,t)=2t-2t=0$ であるから,$L_t$ は $\mathrm{FH}_t$ の垂直二等分線である。よって任意の点 $\mathrm{X}$ について
$$
\mathrm{X}\in L_t\iff \mathrm{XF}=\mathrm{XH}_t.
$$
$t$ が実数全体を動くとき,$\mathrm{H}_t$ は直線 $d:y=-1$ の全体を動く。$\mathrm{X}=(x,y)$ と $d$ 上の点 $(h,-1)$ の距離の2乗は $(h-x)^2+(y+1)^2$ であるから,$\mathrm{XH}=\mathrm{XF}$ となる点 $\mathrm{H}\in d$ が存在することは
$$
\mathrm{XF}^2-(y+1)^2\geqq0
$$
と同値である(このとき $h=x\pm\sqrt{\mathrm{XF}^2-(y+1)^2}$)。$\mathrm{XF}^2=x^2+(y-1)^2$ を代入すると $x^2-4y\geqq0$ となる。よって $\mathcal{R}_1=\left\lbrace y\leqq\frac{x^2}{4}\right\rbrace$。
等号 $\mathrm{XF}=\operatorname{dist}(\mathrm{X},d)$ は焦点 $\mathrm{F}$,準線 $d$ の放物線,すなわち $\mathcal{P}$ を定める。$\mathrm{H}_t$ は $\mathrm{F}$ の $L_t$ に関する鏡像であり,「放物線の接線は,焦点と準線上の点を結ぶ線分の垂直二等分線である」という古典的性質と一致する。この方法は (2) の線分の条件を含まないので,(2) には他の方法を併用する。
本解は $x$ を固定して $t$ を動かす順像法である。点 $(x,y)$ を固定し,方程式 $g_{x,y}(t)=0$ が区間 $I_x$ に解をもつ条件を調べても同じ領域が得られる。
$-1\leqq x\leqq2$ とし,$g=g_{x,y}$ とおく。$(x,y)\in\mathcal{R}_2$ は $g(t)=0$ が $I_x$ に解をもつことと同値であり,$g$ は $I_x$ 上連続だから,これは $\min_{I_x}g\leqq0\leqq\max_{I_x}g$ と同値である。
判別式 $x^2-4y\geqq0$ だけでは区間内の解の存在は保証されない。例えば $(x,y)=\left(-\frac12,\ -1\right)$ は判別式を満たすが,$g$ の2根は $\frac{-1\pm\sqrt{17}}{4}$ で一方が $[-1,1]$ の外にあり,実際 $y < -x-1$ である。また,区間内のある点で $g < 0$ となることから従うのは実根の存在までであり,それが $I_x$ に属することは従わない。頂点が区間内にある場合は,最小値と最大値の符号を比べる必要がある。
領域 (2.1) が確定した後は,外接長方形から余白を引くこと,あるいは面積を保つ剪断で斜めの境界を水平にすることにより,求積の計算を組み替えられる。
$\mathcal{R}_2\subset R:=[-1,2]\times[-1,1]$,$\lvert R\rvert=6$ である。$R\setminus\mathcal{R}_2$ の閉包は,内部が互いに交わらない次の4つの閉領域の和集合である。
| 部分 | 範囲 | 面積 |
|---|---|---|
| 左上 | $-1\leqq x\leqq0,\ 0\leqq y\leqq1$ | $1$ |
| 左下 | $-1\leqq x\leqq0,\ -1\leqq y\leqq-x-1$ | $\frac12$ |
| 右下 | $0\leqq x\leqq2,\ -1\leqq y\leqq x-1$ | $2$ |
| 右上 | $0\leqq x\leqq2,\ \frac{x^2}{4}\leqq y\leqq1$ | $2-\int_0^2\frac{x^2}{4}\,dx=\frac43$ |
よって $S=6-\left(1+\frac12+2+\frac43\right)=\frac76$。
剪断 $(X,Y)=(x,\ y-x+1)$(行列式 $1$,面積を保つ)を施すと,$0\leqq x\leqq2$ の部分は $\left\lbrace 0\leqq X\leqq2,\ 0\leqq Y\leqq\frac{(X-2)^2}{4}\right\rbrace$ に,$-1\leqq x\leqq0$ の部分は $\lbrace -1\leqq X\leqq0,\ -2X\leqq Y\leqq1-X\rbrace$ に移る。前者は放物線の下の面積 $\frac23$(外接長方形 $2\times1$ の $\frac13$),後者は面積 $\frac12$ である。
引いた面積の和は $\frac{29}{6}$ で,$6$ との差が $\frac76$。剪断により $\mathrm{B}\mapsto(0,1)$,$\mathrm{C}\mapsto(2,0)$,$\mathrm{D}\mapsto(0,0)$,$\mathrm{A}\mapsto(-1,2)$ となり,境界の端点が対応する。剪断は各縦断面を平行移動するだけであるから,Cavalieri の原理の意味で本解の積分の言い換えである。
外周が確定していれば,Green の定理 $S=\oint_{\partial\mathcal{R}_2}x\,dy$ により境界上の積分だけで面積が求まる(大学初年級)。$x\,dy$ を選ぶと水平な辺 $\mathrm{BA}$ の寄与が消える。
境界を反時計回りに $\mathrm{B}\to\mathrm{A}\to\mathrm{D}\to\mathrm{C}\to\mathrm{B}$ とたどる。
| 経路 | 表示 | $\int x\,dy$ |
|---|---|---|
| $\mathrm{B}\to\mathrm{A}$ | $y=0$ | $0$ |
| $\mathrm{A}\to\mathrm{D}$ | $y=-x-1,\ x:-1\to0$ | $\int_{-1}^{0}(-x)\,dx=\frac12$ |
| $\mathrm{D}\to\mathrm{C}$ | $y=x-1,\ x:0\to2$ | $\int_0^2x\,dx=2$ |
| $\mathrm{C}\to\mathrm{B}$ | $y=\frac{x^2}{4},\ x:2\to0$ | $\int_2^0\frac{x^2}{2}\,dx=-\frac43$ |
よって $S=0+\frac12+2-\frac43=\frac76$。
同じ向きで $\oint y\,dx=0-\frac12+0-\frac23=-\frac76=-S$ となり,$\oint x\,dy=-\oint y\,dx$ と整合する。複素表示 $S=\frac{1}{2i}\oint\overline{z}\,dz$ は $\overline{z}\,dz=(x\,dx+y\,dy)+i(x\,dy-y\,dx)$ による同じ線積分の言い換えである。
$y=tu$ を固定すると,$y$ の符号が $u$ の符号を決め,$x=t+u$ は $t$ の一変数関数になる。$y > 0$ では「積が一定の二数の和」の最小値として相加相乗平均が現れ,曲線の境界 $x=2\sqrt y$(すなわち $y=\frac{x^2}{4}$)が自然に得られる。
$y\to-1$ で断面は1点 $x=0$(点 $\mathrm{D}$),$y\to1$ で1点 $x=2$(点 $\mathrm{C}$)に縮む。$y\to-0$ で断面は $[-1,1]$,$y\to+0$ で $[0,1]$ に近づき,この非対称性は $t\geqq0$ による。$x\geqq0$ では $2\sqrt y\leqq x\iff y\leqq\frac{x^2}{4}$,また $\lvert x\rvert\leqq1+y\iff y\geqq\lvert x\rvert-1$ であり,(2.1) と一致する。$y > 0$ の断面の長さが完全平方 $\left(1-\sqrt y\right)^2$ になることも計算の見通しを与える。
$L_t$ が $\mathcal{P}$ の接線であることを用いて,(1.4) の根の条件を接線に関する点の位置に翻訳する( 補題2 )。$y\leqq0$ の部分は三接線三角形,$y\geqq0$ の部分は二接線と弧で囲まれた曲線三角形となり,面積は三角形の面積と放物線の弓形の面積から得られる。
$\lvert\mathcal{C}[0,1]\rvert=\frac13[\mathrm{BEC}]$,弓形 $=\frac23[\mathrm{BEC}]$ である。放物線の弧とその両端での接線で囲まれた曲線三角形は,両端と接線の交点を頂点とする三角形の $\frac13$ になる。これは Archimedes の放物線求積(弓形は,弦に平行な接線の接点を頂点とする内接三角形の $\frac43$ 倍)と同値であり,本問では接点 $\mathrm{T}_{1/2}=\left(1,\frac14\right)$ について $[\mathrm{B}\mathrm{T}_{1/2}\mathrm{C}]=\frac14$,$\frac43\cdot\frac14=\frac13$ と確かめられる。 1.4 節 の de Casteljau の構成により弧 $\mathrm{BC}$ は制御三角形 $\mathrm{BEC}$ の二次 Bézier 曲線であり,この比はアフィン変換で不変である( 5.3 節 )。積分を用いない証明は 3.8 節 で与える。
弧 $\mathrm{BC}$ が境界に現れるのは,$0\leqq t\leqq1$ で接点 $\mathrm{T}_t$ が線分上にあるからである( 1.4 節 )。$\frac16 < [\mathrm{BEC}]=\frac12$ であり,弓形を引く向きが正しい。$x=0$ で分ければ,$\triangle\mathrm{ADE}$ の左半分 $\frac12$ と残り $\frac12+\frac16=\frac23$ となり本解と一致する。
根の区間を分割すると, 補題2 により像は「同じ区間の2根」がつくる曲線三角形と「隣り合う区間の2根」がつくる三接線三角形に分かれる。前者はアフィン変換で互いに移り,面積は区間の長さの3乗に比例する。面積の加法性と三角形の面積公式だけから,積分を用いずに $\lvert\mathcal{C}[a,b]\rvert=\frac{(b-a)^3}{6}$ が決まる。
$a < b$,$h=b-a$ とし,$\Psi(X,Y)=\left(2a+hX,\ a^2+ahX+h^2Y\right)$ とおく。このとき $\mathcal{C}[a,b]=\Psi(\mathcal{C}[0,1])$ であり,$\lvert\mathcal{C}[a,b]\rvert=h^3\lvert\mathcal{C}[0,1]\rvert$ が成り立つ。
$t=a+hr$,$u=a+hs$ とおくと $(t,u)\in[a,b]^2\iff(r,s)\in[0,1]^2$ であり,
$$
\Phi(t,u)=\bigl(2a+h(r+s),\ a^2+ah(r+s)+h^2rs\bigr)=\Psi(\Phi(r,s)).
$$
よって $\mathcal{C}[a,b]=\Psi(\mathcal{C}[0,1])$。$\Psi$ は,$x$ 方向に $h$ 倍・$y$ 方向に $h^2$ 倍する拡大(面積を $h^3$ 倍する),縦方向の剪断 $(X,Y)\mapsto(X,\ Y+aX)$(各縦断面を平行移動するので面積を保つ),平行移動 $(X,Y)\mapsto(X+2a,\ Y+a^2)$ の合成である。
$V=\lvert\mathcal{C}[0,1]\rvert$ とおき($\mathcal{C}[0,1]$ は2本の線分と放物線の弧で囲まれた有界閉領域で,面積をもつ),$0 < r < 1$ を任意にとる。$[0,1]$ から重複を許して選んだ2数は,「ともに $[0,r]$ に属する」「ともに $[r,1]$ に属する」「一方が $[0,r]$,他方が $[r,1]$ に属する」のいずれかを満たす。
補題1
(ii) より
$$
\mathcal{C}[0,1]=\mathcal{C}[0,r]\cup\mathcal{C}[r,1]\cup\Phi([0,r]\times[r,1]).
$$
右辺の二つの部分に同時に属する点では,$g_{x,y}$ の根の多重集合が一意であることから一方の根が $r$ に等しく,その点は $L_r$ 上にある(
補題1
(i))。よって重なりは面積をもたない。
補題2
(1)($(a,b,c)=(0,r,1)$)と
補題3
より
$$
V=r^3V+(1-r)^3V+\frac12r(1-r).
$$
$1-r^3-(1-r)^3=3r(1-r)$ であるから $3r(1-r)V=\frac12r(1-r)$,すなわち
$$
V=\frac16,\qquad \lvert\mathcal{C}[a,b]\rvert=\frac{(b-a)^3}{6}.
$$
(1.4) より,$(x,y)\in\mathcal{R}_2$ は「2根がともに $[-1,1]$ にあり,少なくとも一方が $[0,1]$ にある」ことであった。これを二通りに数える。
(i) 2根が $[-1,0]$ と $[0,1]$ に分かれる部分と,ともに $[0,1]$ にある部分に分ける(重なりは $L_0$ 上)。
補題2
(1) と上の結果より
$$
S=\frac12\cdot1\cdot1\cdot2+\frac{1^3}{6}=\frac76.
$$
(ii) $\mathcal{C}[-1,1]$ の点のうち $\mathcal{R}_2$ に属さないものは,2根がともに $[-1,0)$ にある点,すなわち $\mathcal{C}[-1,0]\setminus L_0$ の点である。よって
$$
S=\lvert\mathcal{C}[-1,1]\rvert-\lvert\mathcal{C}[-1,0]\rvert=\frac{2^3-1^3}{6}=\frac76.
$$
$r=\frac12$ の場合,分割線は接線 $L_{1/2}:y=\frac x2-\frac14$ であり,三接線三角形は $\mathrm{E}$,$\Phi\left(0,\frac12\right)=\left(\frac12,0\right)$,$\Phi\left(\frac12,1\right)=\left(\frac32,\frac12\right)$ を頂点とする面積 $\frac18$ の三角形,残りの二つは $\mathcal{C}[0,1]$ を面積 $\frac18$ 倍に縮めたアフィン像である。関係式 $V=\frac18+\frac V8+\frac V8$ は,接線を中点で追加して曲線三角形を自己相似に分割する Archimedes 型の求積を表している。
$r$ によらず同じ値 $V=\frac16$ が得られることは,三次則と加法性が整合していることを示す。恒等式 $(p+q)^3-p^3-q^3=3pq(p+q)$ と三角形の面積 $\frac12pq(p+q)$ の比が,係数 $\frac16$ を強制している。$\lvert\mathcal{C}[-1,1]\rvert=\frac43$ は,曲線三角形が三角形 $(-2,1),\ \mathrm{D},\ (2,1)$(面積 $4$)の $\frac13$ であることとも一致し,$\lvert\mathcal{C}[-1,0]\rvert=\frac16$ は三角形 $(-2,1),\ \mathrm{A},\ \mathrm{B}$(面積 $\frac12$)の $\frac13$ に一致する。
端点 $\mathrm{P}_t,\mathrm{Q}_t$ は $\mathrm{D}$ で直交する二直線上を動き,$\mathrm{DP}_t+\mathrm{DQ}_t$ は一定である( 1.4 節 )。この二直線を座標軸にとると,線分は切片の和が一定の直線の一部となり,点が線分族に属する条件は,切片の関数の最小値の評価に帰着する。
$$
\xi=\frac{x+y+1}{2},\qquad \eta=\frac{-x+y+1}{2}\qquad\left(x=\xi-\eta,\ \ y=\xi+\eta-1\right)
$$
とおく。$(\xi,\eta)\mapsto(x,y)$ は $45^\circ$ の回転,$\sqrt2$ 倍の拡大,平行移動の合成であり,面積を $2$ 倍する。$\mathrm{D}\mapsto(0,0)$,$\mathrm{P}_t\mapsto(1+t,\ 0)$,$\mathrm{Q}_t\mapsto(0,\ 1-t)$ であるから,$0\leqq t < 1$ の線分は
$$
G_t(\xi,\eta):=\frac{\xi}{1+t}+\frac{\eta}{1-t}=1,\qquad \xi\geqq0,\ \ \eta\geqq0
$$
と表され,$t=1$ の線分は $\lbrace\eta=0,\ 0\leqq\xi\leqq2\rbrace$ である。$\mathcal{R}_2$ の像を $\mathcal{U}$ とすると,$\mathcal{U}\subset\lbrace\xi\geqq0,\ \eta\geqq0\rbrace$ であり,$\mathcal{U}\cap\lbrace\eta=0\rbrace=\lbrace 0\leqq\xi\leqq2,\ \eta=0\rbrace$ は面積をもたない。
$\xi\geqq0$,$\eta > 0$ とする。$t\mapsto G_t$ は $[0,1)$ で連続で,$t\to1-0$ のとき $+\infty$ に発散するから最小値 $m(\xi,\eta)$ をもつ。中間値の定理より
$$
(\xi,\eta)\in\mathcal{U}\iff\exists\,t\in[0,1):\ G_t=1\iff m(\xi,\eta)\leqq1.
$$
(i) $\xi < \eta$ のとき。$0\leqq t < 1$ で $(1-t)^2\leqq(1+t)^2$ であるから
$$
\frac{\partial G_t}{\partial t}=\frac{\eta}{(1-t)^2}-\frac{\xi}{(1+t)^2}\geqq\frac{\eta-\xi}{(1+t)^2} > 0.
$$
よって $m=G_0=\xi+\eta$。
(ii) $\xi\geqq\eta$ のとき。Cauchy–Schwarz の不等式より
$$
G_t=\frac{(\sqrt\xi)^2}{1+t}+\frac{(\sqrt\eta)^2}{1-t}\geqq\frac{(\sqrt\xi+\sqrt\eta)^2}{(1+t)+(1-t)}=\frac{(\sqrt\xi+\sqrt\eta)^2}{2}.
$$
等号は $\frac{\sqrt\xi}{1+t}=\frac{\sqrt\eta}{1-t}$,すなわち $t=\frac{\sqrt\xi-\sqrt\eta}{\sqrt\xi+\sqrt\eta}\in[0,1)$ で成立するから,$m=\frac{(\sqrt\xi+\sqrt\eta)^2}{2}$。
したがって,面積をもたない集合を除いて
$$
\mathcal{U}=\lbrace 0\leqq\xi < \eta,\ \xi+\eta\leqq1\rbrace\cup\left\lbrace 0 < \eta\leqq\xi,\ \sqrt\xi+\sqrt\eta\leqq\sqrt2\right\rbrace.
$$
第1の集合は直角二等辺三角形 $\lbrace\xi\geqq0,\ \eta\geqq0,\ \xi+\eta\leqq1\rbrace$ の半分で,面積は $\frac14$。第2の集合では,$\xi\leqq\left(\sqrt2-\sqrt\xi\right)^2\iff\xi\leqq\frac12$ に注意して
$$
\int_0^{1/2}\xi\,d\xi+\int_{1/2}^{2}\left(\sqrt2-\sqrt\xi\right)^2d\xi=\frac18+\frac{5}{24}=\frac13.
$$
よって $S=2\left(\frac14+\frac13\right)=\frac76$。
$0\leqq t < 1$ に対し $\mathcal{T}_t$ を三角形 $\mathrm{D}\mathrm{P}_t\mathrm{Q}_t$(周と内部),$\mathcal{T}_1$ を線分 $\mathrm{DC}$ とすると
$$
\mathcal{R}_2=\bigcup_{0\leqq t\leqq1}\mathcal{T}_t.
$$
$\overline{\mathrm{P}_t\mathrm{Q}_t}\subset\mathcal{T}_t$ より左辺は右辺に含まれる。逆を示す。$(\xi,\eta)$ 座標で $\mathcal{T}_t=\lbrace\xi\geqq0,\ \eta\geqq0,\ G_t\leqq1\rbrace$($t < 1$)である。点が $\mathcal{T}_{t_0}$ に属するとする。$\eta > 0$ ならば $t_0 < 1$ かつ $G_{t_0}\leqq1$ であり,$t\to1-0$ で $G_t\to+\infty$ となるから,中間値の定理によりある $t_*\in[t_0,1)$ で $G_{t_*}=1$,すなわち点は $\overline{\mathrm{P}_{t_*}\mathrm{Q}_{t_*}}$ 上にある。$\eta=0$ ならば $0\leqq\xi\leqq1+t_0\leqq2$ であり,点は $t=1$ の線分 $\mathrm{DC}$ 上にある。
補題4 は,動く斜辺の掃く範囲が,固定された二本の脚をもつ直角三角形の和集合に一致することを示す。通過範囲の外縁は,これらの直角三角形の和集合の外縁として捉えられる。
$\mathrm{A}\mapsto(0,1)$,$\mathrm{B}\mapsto\left(\frac12,\frac12\right)$,$\mathrm{C}\mapsto(2,0)$,$\mathrm{E}\mapsto(1,0)$ である。$\mathcal{P}$ 上の点 $\left(x,\frac{x^2}{4}\right)$ は $\left(\frac{(x+2)^2}{8},\ \frac{(x-2)^2}{8}\right)$ に移り,$\lvert x\rvert\leqq2$ で $\sqrt\xi+\sqrt\eta=\sqrt2$ を満たす。$\xi=\eta$ は $x=0$ に,$\xi+\eta=1$ は $y=0$ に対応し,二つの集合はそれぞれ (2.1) の $x\leqq0$ の部分($\triangle\mathrm{ABD}$)と $x\geqq0$ の部分に対応する。面積 $2\cdot\frac14=\frac12$,$2\cdot\frac13=\frac23$ は本解と一致する。
$\mathcal{R}_2=\Phi(\Omega)$ の面積を,境界を求めずに変数変換の公式で直接計算する。$\Phi$ は2根の交換で不変であるから,重複を除いてから面積倍率 $\lvert t-u\rvert$ を積分する(大学初年級)。
$\mathcal{R}_2=\Phi(\Omega_0)$ であり,$\Phi$ は $\Omega_0\cap\lbrace u < t\rbrace$ 上で単射である。
$(t,u)\in\Omega$,$u > t$ とすると $0\leqq t < u\leqq1$ であるから $(u,t)\in\Omega_0$ であり,$\Phi(u,t)=\Phi(t,u)$。よって $\Phi(\Omega)=\Phi(\Omega_0)$。$u < t$,$u' < t'$ で $\Phi(t,u)=\Phi(t',u')$ ならば, 補題1 (ii) より $\lbrace t,u\rbrace=\lbrace t',u'\rbrace$ であり,大小関係から $(t,u)=(t',u')$。
補題5
より $\Phi$ は $\Omega_0$ から対角線 $\lbrace t=u\rbrace$ を除いた部分で単射であり,$\Phi$ は $C^1$ 級で,(1.3) よりヤコビアンは $\Omega_0$ 上で $t-u\geqq0$ である。対角線は面積をもたないから,変数変換の公式より
$$
S=\iint_{\Omega_0}(t-u)\,du\,dt=\int_0^1\frac{(1+t)^2}{2}\,dt=\frac{2^3-1^3}{6}=\frac76.
$$
$\Omega_0=\Omega_-\cup\Omega_+$,$\Omega_-=[0,1]\times[-1,0]$,$\Omega_+=\lbrace 0\leqq u\leqq t\leqq1\rbrace$ と分ける。$t-u$ は一次関数であるから,その平均値は重心での値に等しい。$\Omega_-$ は面積 $1$,重心 $\left(\frac12,-\frac12\right)$,$\Omega_+$ は面積 $\frac12$,重心 $\left(\frac23,\frac13\right)$ であるから
$$
\lvert\Phi(\Omega_-)\rvert=1\cdot\left(\frac12+\frac12\right)=1,\qquad \lvert\Phi(\Omega_+)\rvert=\frac12\cdot\left(\frac23-\frac13\right)=\frac16.
$$
重複を除かずに積分すると
$$
\iint_\Omega\lvert t-u\rvert\,du\,dt=\int_0^1\left\lbrace\frac{(1+t)^2}{2}+\frac{(1-t)^2}{2}\right\rbrace dt=\int_0^1(1+t^2)\,dt=\frac43.
$$
$\Omega\setminus\Omega_0=\lbrace 0\leqq t < u\leqq1\rbrace$ は $\Phi$ により一対一に $\mathcal{C}[0,1]$ から弧 $\mathrm{BC}$ を除いた集合へ写るから,この値は $S+\lvert\mathcal{C}[0,1]\rvert$ であり,$\frac43-\frac16=\frac76$ となる。
$t-u=\int_u^t dv$ と書けば
$$
S=\operatorname{Vol}\lbrace (t,v,u)\mid -1\leqq u\leqq v\leqq t\leqq1,\ t\geqq0\rbrace.
$$
立方体 $[-1,1]^3$ は,3座標の大小の順序により,座標の置換で互いに移る6つの部分に(体積0の境界を除いて)分かれるから,$\operatorname{Vol}\lbrace -1\leqq u\leqq v\leqq t\leqq1\rbrace=\frac{2^3}{3!}$。そのうち $t < 0$ の部分の体積は $\frac{1^3}{3!}$ であるから,$S=\frac{2^3-1^3}{3!}=\frac76$。
$\frac{2^3-1^3}{3!}$ は 3.8 節 (ii) の $\lvert\mathcal{C}[-1,1]\rvert-\lvert\mathcal{C}[-1,0]\rvert$ と同じ式であり,三数の順序の体積はその確率的・組合せ的な表現である。$\lvert\mathcal{C}[a,b]\rvert=\iint_{a\leqq u\leqq t\leqq b}(t-u)\,du\,dt=\frac{(b-a)^3}{6}$ は,三次則の積分による確認になる。
各線分のうち,$\mathrm{Q}_t$ から接点 $\mathrm{T}_t$ までの部分だけを残すと,それらは互いに交わらずに $\mathcal{R}_2$ を掃く。接点の速度は線分の方向を向くので,単位時間に掃く面積は $\mathrm{Q}_t$ の運動だけで決まる。
補題5
より,$u$ を $[-1,t]$ に制限しても通過範囲は変わらない。$u=-1$ は $\mathrm{Q}_t$,$u=t$ は $\mathrm{T}_t$ に対応するから
$$
\mathcal{R}_2=\bigcup_{0\leqq t\leqq1}\overline{\mathrm{Q}_t\mathrm{T}_t}.
$$
$0\leqq a < b\leqq1$ のとき $\overline{\mathrm{Q}_a\mathrm{T}_a}\cap\overline{\mathrm{Q}_b\mathrm{T}_b}\subset L_a\cap L_b=\lbrace\Phi(a,b)\rbrace$ であり,$L_a$ 上で $\Phi(a,b)$ は $u=b > a$ に対応するから $\overline{\mathrm{Q}_a\mathrm{T}_a}$ に属さない。よって短縮した線分は互いに交わらない。
$$
\mathrm{X}(t,s)=(1-s)\mathrm{T}_t+s\mathrm{Q}_t=\bigl(2t-s(1+t),\ t^2-st(1+t)\bigr)\qquad\bigl((t,s)\in[0,1]^2\bigr)
$$
とおく。$\mathrm{T}_t\neq\mathrm{Q}_t$ と上の事実より $\mathrm{X}$ は単射であり,
$$
\left\lvert\det\frac{\partial(x,y)}{\partial(t,s)}\right\rvert=s(1+t)^2.
$$
よって
$$
S=\int_0^1\!\!\int_0^1 s(1+t)^2\,ds\,dt=\int_0^1\frac{(1+t)^2}{2}\,dt=\frac76.
$$
$\mathrm{T}_t'=(2,2t)$ は $\mathrm{T}_t-\mathrm{Q}_t=(1+t)(1,t)$ に平行であり,接点は線分に沿って滑る(法線方向の速度は $0$)。$\mathrm{X}(t,s)$ の速度 $(1-s)\mathrm{T}_t'+s\mathrm{Q}_t'$ の法線成分は $s$ について一次で,$s=0$ で $0$,$s=1$ で $\mathrm{Q}_t'=(1,-1)$ の法線成分に等しい。よって,時刻 $t$ までに掃かれた面積を $W(t)$ とすると
$$
W'(t)=\frac12\left\lvert\det\left(\mathrm{Q}_t',\ \mathrm{T}_t-\mathrm{Q}_t\right)\right\rvert=\frac{(1+t)^2}{2}.
$$
同様に,接点から $\mathrm{P}_t$ までの部分 $\overline{\mathrm{T}_t\mathrm{P}_t}$($t\leqq u\leqq1$)は $\mathcal{C}[0,1]$ をちょうど一度掃き,その速度は $\frac12\left\lvert\det\left(\mathrm{P}_t',\ \mathrm{P}_t-\mathrm{T}_t\right)\right\rvert=\frac{(1-t)^2}{2}$ で,積分すると $\frac16$ になる。
$s=0$ で $\mathrm{T}_t$,$s=1$ で $\mathrm{Q}_t$ となる。二つの速度の和 $\frac{(1+t)^2+(1-t)^2}{2}=1+t^2$ は線分全体の延べの掃過速度 $\int_{-1}^1\lvert t-u\rvert\,du$ に等しく, 3.10 節 の延べ面積 $\frac43$ と整合する。この方法は置換 $u=t-s(1+t)$ により参考解1 と同じ積分になる。
以下は独立の解法とは数えず,既出の解法の表現違いまたは部分的な短縮として扱う。
| 解法 | 主に利用する構造 | 対象 | 範囲 | 長所 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|---|
| 本解 | 平方完成,許容区間 $I_x$ | (1)(2) | 高校 | 発想が最短,全境界を明示 | 3つの場合分け,連続性の明記 |
| 3.1 判別式 | 二根 | (1) | 高校 | 一行で完結 | 包絡線だけでは十分性がない |
| 3.2 焦点・準線 | 正方形,垂直二等分線 | (1) | 高校 | 純幾何的 | (2) には別の方法が要る |
| 3.3 逆像法 | 解の配置 | $\mathcal{R}_2$ | 高校 | 点を固定する視点 | 判別式だけでは不十分 |
| 3.4 補集合・剪断 | 等積変形 | 面積 | 高校 | 計算が単純 | 領域が既知であること |
| 3.5 線積分 | Green の定理 | 面積 | 大学 | 境界だけで求積 | 向きと外周の確定 |
| 別解1 | 和と積,相加相乗平均 | (2) | 高校 | 計算が最短級 | $y=0$ と除算の扱い |
| 別解2 | 根の配置と接線の配置 | (1)(2) | 高校 | 図形的な見通し | 接点が線分上にあること |
| 別解3 | 区間分割,アフィン相似 | (2) | 高校 | 積分が不要,$\frac{2^3-1^3}{6}$ の構造 | 重なりが面積0であることの論証 |
| 別解4 | 定和切片,Cauchy–Schwarz | (2) | 高校 | 端点の運動から境界を発見 | $t=1$ の分離,面積倍率 $2$ |
| 参考解1 | 交換対称性,ヤコビアン | (2) | 大学 | 境界が不要,一重積分に帰着 | 単射性の確認 |
| 参考解2 | 法線速度 | (2) | 大学 | 運動としての直観 | 重複の除去が前提 |
試験場での第一選択は本解である。問題文から直接に出発し,二次関数の値域という標準的な操作だけで必要十分性まで完結し,図示に必要な境界をすべて与える。別解1 は面積の計算が最も短く,別解2 は領域の形を最もよく見通す。別解3 は $\frac76=\frac{2^3-1^3}{6}$ という構造を積分なしに説明し,参考解1 はそれを変数変換の一行の積分にまとめる。別解4 と参考解2 は,端点の運動という別の対象から同じ放物線に到達する。
本問から抽出される,パラメータを含む直線・線分の通過範囲を求める問題に対する探索手順を述べる。
(1) 動く対象を,構造が見える形でパラメータ表示する。端点の座標を直接追うより,中点と方向ベクトルを先に求め,直線の式,線分上の位置パラメータ $u$,端点の軌跡を作る。
(2) 自由度と制約を分離する。元のパラメータ $t$ の範囲と,線分上の位置 $u$ の範囲を明示する。直線の結果を線分に流用しない。
(3) 固定断面を第一候補とする。$x$ を固定するか($y=f_x(t)$),$y$ を固定するか($x=k_y(t)$)を比較し,パラメータの許容区間を先に確定してから最大・最小を求める。
(4) 等号が生じる場所を列挙する。区間の端点,区間内の停留点,二根の一致(包絡線),パラメータ領域の境界の像が境界の候補である。一般にはヤコビアンの零点の像とパラメータ領域の境界の像に限られる(
5.4 節
)。包絡線の候補が実際に線分上で実現されるか,すなわち接点が線分上にあるかを確かめる。
(5) 必要条件で終わらず,十分性を示す。断面の許容区間が区間をなし関数が連続ならば,上下端の間はすべて実現される。それが使えない場合は,逆像の解の配置,写像の単射性,充填の補題(
補題4
)を用いる。
(6) 対称性による重複を調べる。和と積のような対称式による写像では,$(t,u)$ と $(u,t)$ が同じ点を与えないかを確かめる。面積の変数変換や掃過面積の計算の前には必須である。
(7) 境界の確定後に求積法を選ぶ。断面の積分,三角形と弓形の差,三次則と加法性,面積倍率,補集合,剪断,境界積分を比較する。
(8) 検算する。境界の接続,特別な $t$ に対する線分,別方向の断面,包含関係による上下の評価,延べ面積と被覆度,別解による再計算を確かめる。
| 症状 | 検討する表現・道具 | 本問での例 |
|---|---|---|
| 直線の式がパラメータの二次式 | 平方完成,判別式,包絡線 | 本解,3.1 節 |
| 点の座標が二数の和と積 | 解と係数の関係,解の配置 | 別解1,別解2 |
| 一方の座標を固定すると積または和が一定 | 相加相乗平均 | 別解1 |
| 直線族が固定曲線の接線族 | 接線に関する符号,三接線三角形 | 別解2,別解3 |
| 区間を縮めると図形が相似に縮む | アフィン相似,次数則と加法性 | 別解3 |
| 端点が二本の固定直線上を一次的に動く | 二直線を軸とする座標,切片形 | 別解4 |
| パラメータの入れ替えで同じ点を与える | 重複の除去,面積倍率 | 参考解1,参考解2 |
| 定点と動点の中点・直交が見える | 垂直二等分線,焦点・準線 | 3.2 節 |
| 外周が確定している | 補集合,剪断,Green の定理 | 3.4 節,3.5 節 |
本問の構造は次のように一般化される。$\alpha < \beta$,$\alpha\leqq p < q\leqq\beta$ とし,$t\in[p,q]$ に対して線分 $\Phi(\lbrace t\rbrace\times[\alpha,\beta])$($\alpha < t < \beta$ では,$L_t$ のうち固定接線 $L_\alpha,L_\beta$ に挟まれた部分)を考える。その通過範囲 $\mathcal{R}=\Phi([p,q]\times[\alpha,\beta])$ は,
補題1
により「一方の根が $[p,q]$,他方の根が $[\alpha,\beta]$ にある点」の集合である。他方の根が $[\alpha,p]$,$[p,q]$,$[q,\beta]$ のいずれにあるかで分け(重なりは $L_p\cup L_q$ 上),$P=p-\alpha$,$Q=q-p$,$R=\beta-q$ とおけば,
補題2
と三次則(
3.8 節
)より
$$
\lvert\mathcal{R}\rvert=\frac{Q^3}{6}+\frac{PQ(P+Q)}{2}+\frac{QR(Q+R)}{2}.
$$
第1項は曲線三角形 $\mathcal{C}[p,q]$,第2・3項は三接線三角形である($P=0$ または $R=0$ のとき,対応する項は退化して $0$ になる)。本問は $(\alpha,\beta,p,q)=(-1,1,0,1)$,$(P,Q,R)=(1,1,0)$ の場合で,$\frac16+1+0=\frac76$ となる。
類題の設計の観点からは,次の対応が読み取れる。
| 事項 | 高校数学での扱い | 一般理論 |
|---|---|---|
| 直線の通過範囲 | 平方完成,判別式,解の配置 | 凸共役(Legendre 変換),包絡線 |
| 境界の発生源 | 断面での最大・最小 | 逆関数定理,写像の臨界値(折り目特異点) |
| 和と積 | 解と係数の関係 | 対称積写像,商空間 $\mathbb{R}^2/S_2$ |
| 面積の計算 | 定積分,三角形の面積 | 変数変換の公式,Green の定理 |
| 放物線と接線の面積比 | 定積分で $\frac13$ | Archimedes の求積,Bézier 曲線,アフィン不変性 |
| 面積の三次則 | 拡大と剪断 | 差積(Vandermonde 行列式),Selberg 積分 |
| 二本のレールを結ぶ直線族 | 糸かけ | Steiner による円錐曲線の生成 |
本解,別解1〜4,3.1〜3.4 節はすべて左欄の範囲で完結する。右欄は,それらの計算が成り立つ理由を説明する理論である。
$f(t)=t^2$ の凸共役(Legendre 変換)は
$$
f^*(x)=\sup_{t\in\mathbb{R}}\left(xt-f(t)\right)=\frac{x^2}{4}
$$
であり,(1) の答えは $f^*$ のグラフとその下側の集合である。Fenchel–Young の不等式 $f^*(x)\geqq xt-f(t)$ の等号は $x=f'(t)=2t$ で成立するから,$y=tx-f(t)$ は $f^*$ の傾き $t$ の支持直線(接線)であり,その切片が $-f(t)=-t^2$ である。これが $L_t:y=tx-t^2$ の正体である。包絡線の条件 $\partial_t(tx-t^2)=0$ は上限を与える $t$ の停留条件であり,判別式 $x^2-4y=0$ はその $t$ が重根になる条件である。(1.2) の平方完成は三者を同時に示している。
制御点 $\mathrm{B},\mathrm{E},\mathrm{C}$ の二次 Bézier 曲線 $\boldsymbol{\gamma}(t)=(1-t)^2\mathrm{B}+2t(1-t)\mathrm{E}+t^2\mathrm{C}$ は放物線の弧であり,$\boldsymbol{\gamma}'(t)=2(1-t)(\mathrm{E}-\mathrm{B})+2t(\mathrm{C}-\mathrm{E})$ より,両端での接線は制御多角形の辺である。非退化な二次 Bézier 曲線は,3つの制御点を移すアフィン変換により本問の弧 $\mathrm{BC}$ に移る。アフィン変換は面積比を保つから,「曲線と制御多角形の二辺で囲まれた部分は制御三角形の $\frac13$」「弦との間の弓形は制御三角形の $\frac23$」が一般に成り立つ。後者は Archimedes『放物線の求積』の定理(弓形は,弦に平行な接線の接点を頂点とする内接三角形の $\frac43$ 倍)と同値であり,Archimedes は内接三角形を繰り返し追加する取り尽くし法でこれを示した。別解3 の自己相似分割は,同じ構造を接線の側から見たものである。
$\Phi(t,u)=(t+u,\ tu)$ は2根から係数への写像(Vieta 写像)であり,交換 $(t,u)\mapsto(u,t)$ で不変である。$\Phi$ は,交換で移り合う2点を同一視した商空間 $\mathbb{R}^2/S_2$ から閉集合 $\lbrace x^2-4y\geqq0\rbrace$ への同相写像を誘導し,(1) の答えはこの像そのものである。$X=t+u$,$d=t-u$ とおくと $\Phi$ は $(X,d)\mapsto\left(X,\ \frac{X^2-d^2}{4}\right)$ と書け,線形変換 $(t,u)\mapsto(X,d)$,折り畳み $(X,d)\mapsto(X,\ d^2)$,微分同相 $(X,Z)\mapsto\left(X,\ \frac{X^2-Z}{4}\right)$ の合成である。したがって $\Phi$ は対角線 $d=0$ に沿って Whitney の折り目(fold)特異点をもち,$\mathcal{P}$ はその臨界値集合である。
境界の局在は次のように示される。$\Phi$ は連続で $\Omega$ はコンパクトであるから $\Phi(\Omega)$ は閉集合であり,その境界点 $\mathrm{X}$ は $\Phi(\Omega)$ に属する。$\mathrm{X}$ のある逆像 $p$ が $\Omega$ の内点で,そこでのヤコビアンが $0$ でなければ,逆関数定理により $\Phi$ は $p$ の近傍を $\mathrm{X}$ の近傍の上へ写し,$\mathrm{X}$ は内点となって矛盾する。よって
$$
\partial\Phi(\Omega)\subset\Phi(\partial\Omega)\cup\Phi(\lbrace t=u\rbrace)
$$
であり,
1.5 節
の表はこの包含の具体化である。
$n$ 個の実数 $t_1,\ldots,t_n$ からモニック多項式 $\prod_i(z-t_i)$ の係数への写像のヤコビアンは,符号を除いて差積 $\prod_{i < j}(t_i-t_j)$ に等しい。$n=2$ の場合が (1.3) の $t-u$ である。したがって,根がすべて $[0,1]$ にあるモニックな $n$ 次実多項式全体の,係数空間 $\mathbb{R}^n$ における体積は
$$
\frac{1}{n!}\int_{[0,1]^n}\prod_{i < j}\lvert t_i-t_j\rvert\,dt_1\cdots dt_n=\frac{1}{n!}S_n\left(1,1,\tfrac12\right)
$$
である。ここで $S_n(\alpha,\beta,\gamma)=\int_{[0,1]^n}\prod_i t_i^{\alpha-1}(1-t_i)^{\beta-1}\prod_{i < j}\lvert t_i-t_j\rvert^{2\gamma}\,dt$ は Selberg 積分であり,
$$
S_n(\alpha,\beta,\gamma)=\prod_{j=0}^{n-1}\frac{\Gamma(\alpha+j\gamma)\,\Gamma(\beta+j\gamma)\,\Gamma(1+(j+1)\gamma)}{\Gamma(\alpha+\beta+(n+j-1)\gamma)\,\Gamma(1+\gamma)}
$$
が成り立つ。これより体積は $n=2$ で $\frac16$(本問の $\lvert\mathcal{C}[0,1]\rvert$),$n=3$ で $\frac{1}{180}$ となる。また根を $t\mapsto a+ht$ と変換すると,$k$ 番目の基本対称式は $h^k e_k$ に低次の基本対称式の一次結合を加えたものに変わり,係数空間は対角成分 $h,h^2,\ldots,h^n$ の三角型のアフィン変換を受ける。よって体積は $h^{n(n+1)/2}$ 倍になる。$n=2$ の指数 $3$ が
補題3
の三次則である。
二直線 $\ell,\ell'$ の点列の間に透視対応でない射影対応があるとき,対応点を結ぶ直線全体は,$\ell,\ell'$ に接する円錐曲線の接線全体をなす(Steiner による円錐曲線の生成の双対)。本問の $\mathrm{P}_t\in L_1$,$\mathrm{Q}_t\in L_{-1}$ は $t$ の一次式であり,両直線の無限遠点どうしが対応するから,無限遠直線も接線となり,包絡線は放物線になる。対応が透視対応でないことは,交点 $\mathrm{D}$ が $L_1$ 上では $\mathrm{P}_{-1}$,$L_{-1}$ 上では $\mathrm{Q}_1$ と異なる $t$ に対応することから分かる。糸かけはこの事実の視覚化である。
また,放物線の二接線の交点の $y$ 座標は傾きの積に等しかった(
1.4 節
)から,直交する二接線の交点の軌跡(orthoptic)は準線 $y=-1$ である。本問の二本のレールは,準線上の点 $\mathrm{D}$ から引いた二接線として選ばれている。
直線 $\alpha x+\beta y+\gamma=0$ を係数 $[\alpha:\beta:\gamma]$ で表すと,$L_t:tx-y-t^2=0$ は $[t:-1:-t^2]$ であり,$\alpha^2-\beta\gamma=0$ を満たす。接線全体は双対射影平面の二次曲線をなし,その双対曲線が $\mathcal{P}$(斉次座標で $X^2-4YW=0$)である。また $(x,y,t)$ 空間の曲面 $\Sigma:y=tx-t^2$ は,$t$ が一定の直線を母線とする双曲放物面である。$\mathcal{R}_1$ は $\Sigma$ の $(x,y)$ 平面への射影であり,$\mathcal{P}$ はその見かけの輪郭($\partial_t(tx-t^2-y)=0$ の像)である。いずれも,放物線が境界になる理由の高次の解釈である。
放物線の弓形の面積は Archimedes(紀元前3世紀)の『放物線の求積』に遡る。曲線族の包絡線は17世紀末の Leibniz らにより,凸共役の原型である Legendre 変換は18世紀末の Legendre により導入された。Green の定理の名は1828年の Green の論文に由来する。二つの射影的な点列・線束から円錐曲線を生成する理論は19世紀前半の Steiner による。二次 Bézier 曲線の構成は,1950年代末から1960年代の de Casteljau(Citroën)と Bézier(Renault)による自動車設計の研究に由来する。Selberg 積分は1944年に Selberg により与えられた。本問は,大学入試で定番の「直線の通過範囲」に線分化とパラメータの制限を加えることで,これらの理論が交わる小さな具体例になっている。
| 設問 | 答 |
|---|---|
| (1) | 放物線 $y=\frac{x^2}{4}$ とその下側の部分(境界を含む) |
| (2) の範囲 | 線分 $\mathrm{AB}$,弧 $\mathrm{BC}$,線分 $\mathrm{CD}$,$\mathrm{DA}$ で囲まれた閉領域 |
| (2) の面積 | $\frac76$ |