DMで解説が欲しいと言ってくる人が想像以上に多かったのでここに解説を置いておこうと思います.
正の整数からなる数列 $a_1,\,a_2,\,a_3,\,\dots$ がある.この数列に含まれる整数を全種類 $1$ 個ずつ昇順に並べた数列 $b_1< b_2< b_3<\cdots$ が無限に続くとき,任意の正の整数 $i$ に対して $a_{i}+b_{i}< a_{i+1}+b_{i+1}$ が成り立つならば,ある正の整数 $n$ が存在して $a_n=b_n$ となることを示せ.
$a_n=b_1$ となるような正の整数 $n$ のうち最小のものを $k$ とする.
$k=1$ であるとき,$a_1=b_1$ が成り立ち,条件をみたす.
$k>1$であるとき,$a_s=b_s$ となるような正の整数 $s$ が存在しないと仮定する.このとき,
$$a_{k-1}+b_{k-1}< a_k+b_k=b_1+b_k\leq b_{k-1}+b_k$$
より,$a_{k-1}< b_k$ である.また仮定より,$a_{k-1}\neq b_{k-1}$ でもあるので,$a_{k-1}< b_{k-1}$ である.同様に,任意の正の整数 $n$ に対して,$a_n< b_n$ ならば $a_{n-1}+b_{n-1}< a_n+b_n\leq b_{n-1}+b_n$ より $a_{n-1}< b_{n-1}$ が分かるので,帰納的に $a_1< b_1$ が従うが,$b_1$ は数列 $a_1,\,a_2,\,a_3,\,\dots$ に現れる数のうち最小のものであるので矛盾.よって,題意は示された.
正の整数の組 $(a,b,p,q)$ であって,以下の条件をともにみたすものをすべて求めよ.
・$p,\,q$ は素数であり,$p\geq q$ をみたす.
・$p^a+p^b=a^q+1$ が成り立つ.
$p\geq q$ より,
$$a^p-1\geq a^q-1>a^q-p^b=p^a-1$$
となり,$a^p>p^a$ を得る.このとき,$(a,p)=(3,2)$ の場合を除いて $a< p$ である(以下この事実の証明.)
$p\geq 3$ であるときに $a^p>p^a$ ならば $a< p$ であることを示す.$a\geq p$ かつ$a^p\leq p^a$であることを仮定すれば,
$$(a+1)^p=a^p\left(1+\dfrac{1}{a}\right)^p\leq p^a\left(1+\dfrac{1}{p}\right)^p< p^a\left(1+\displaystyle\sum^p_{k=0}\dfrac{1}{k!}\right)< p^a×3\leq p^{a+1}$$
より,帰納的に $a\geq p$ ならば $a^p\leq p^a$ が従う.よって,$a<
p$ を得る.(これはAPMO2012-3などで用いられる微分を用いない方法だが,初見で思いつく難易度は非常に高い.$a^p>p^a$ と $(\log a)/a>(\log p)/p$ が同値であることから微分を用いて示す方が無難だろう.)
$(a,p)=(3,2)$ のとき
$p\geq q$ から $q=2$ であり,これらを与式に代入して $2^b=2$,すなわち $b=1$ である.よって,$(a,p)=(3,2)$ のとき,組 $(a,b,p,q) = (3,1,2,2)$ のみが条件をみたす.
$a< p$ のとき
与式において $a^q+1\equiv0\pmod p$ である.ここで $a+1$ が $p$ で割り切れると仮定すると,$a< p$ より $a+1=p$ が成立するが,与式の左辺が偶数であることから $a$ は奇数であり,このことから $p$ は偶数かつ素数,すなわち $p=2$ を得る.このとき $a=1$ であり,与式の右辺は $2$ と等しいが,左辺は明らかに $2$ より大きいので矛盾.よって,$p$ は $a+1$ の約数でなくかつ $a^q+1$ の約数であるため,$a^k\equiv-1\pmod p$ が成り立つような最小の正の整数 $k$ は $1$ の約数でなく $q$ の約数であるような数,すなわち $q$ と等しい.このような $k$ は $p$ を法とした $a$ の位数の約数であり,かつ $2k$ はその倍数であるので,結局位数は $2q$ と等しい.よって $p\equiv1\pmod q$ が従い,与式の両辺の $\mathrm{mod}\ q$ を見ることで $a\equiv 1\pmod q$ がわかる.$a\neq1$ であることから $a>q$ が従うため,
$$p^q+1< p^a+1< p^a+p^b=a^q+1$$
より $p< a$ が成り立ち,$a< p$ に矛盾.よって,$a< p$ のとき,条件をみたす組はない.
以上より,求める組は ${(a,b,p,q)=(3,1,2,2)}$ である.
$n$ を整数とする.整数に対して定義され整数値をとる全単射な関数 $f$ であって,任意の整数 $a,\,b$ に対して
$$f^b(a)+f^{f(b)}(a)=n$$
が成り立つようなものをすべて求めよ.
与式への代入を$P(a,b)$とあらわす.また,整数$N$に対して,「$N$サイクル」を,ある整数kが存在して$f^k(N)$が取りうる値全体の集合,「$N$サイクル長」を,$N$サイクルの要素数とする.(今回の文脈ではこの要素数が有限であることが証明できる.)
$P(a,0)$より$f^{f(0)}(a)=n-a$がわかる.$n-(n-a)=a$より,任意の整数$a$に対して$a$サイクル長は$2f(0)$の約数である.また,$$f(n-a)=f(f^{f(0)}(a))=f^{f(0)}(f(a))=n-f(a)$$より$f(a)+f(n-a)=n$がわかる.よって$f$は全単射より$f^{f(b)}(a)=f(n-f^{b-1}(a))=f^b(n-a)$がわかる.$f(0)\not=0$のとき,ここから任意の整数$a$に対する$a$サイクル長の最小公倍数を$l$とおけば(任意の$a$サイクル長は$2f(0)$の約数であるため,これはある$0$でない整数値であることがわかる.),$f(b)-b\equiv f(0)\pmod {l}$がわかる.また任意の$a\not=n-a$なる$a$に対して,$f^d(a)=n-a$なる最小の$d$を取ってくれば$a$サイクル長は$2d$に等しいので$l$は偶数である.$\dfrac{l}{2}$がある素数$p$で割り切れると仮定しよう.このとき,$2f(0)\equiv0\pmod l$であることから任意の$b$に対して$f(b)\equiv b\pmod p$が成立する.よって$b\equiv f(b)\equiv f(f(b))...\equiv f^{f(0)}(b)=n-b$より$p$は$n-2b$を割り切る.
$n$が奇数であるとき,$n-2b=1$なる$b$が取れ,これは素因数をもたないのでこのような$p$はとれない.よって$l=2$であり,かつ任意の$a$に対して$a\not=n-a$であるので,$f^d(a)=n-a$なる最小の$d$は$1$に等しい.よって任意の整数$a$に対して$f(a)=n-a$が成立する必要がある.逆にこのとき$b$と$n-b(=f(b))$の偶奇が異なることから${a,n-a}={f^b(a),f^{f(b)}(a)}$であるので与式左辺は$a+(n-a)=n$と常に等しく,確かに条件をみたすことがわかる.
$n$が偶数のとき,$n-2b=2$なる$b$がとれるので$l$の素因数としてあり得るのは$2$のみであ,かつ$l$は$4$の約数である.$a=n-a$なる$a$が取れ,このとき$f^{f(0)}(a)=a$が成立する.またこのような$a$はただ一つだけ存在するので,$a$サイクルに整数$c(\not =a)$が含まれるならばそれと相異なる整数$n-c$も$a$サイクルに含まれ,$a$以外の$a$サイクルの要素同士でペアが作れ,$a$サイクル長が$1$より大きい奇数となるが,これは$l$が$2$以外の素数で割り切れないことに矛盾.よって$a$サイクルの要素は$a$のみであり,よって$f(a)=a$が従う.よって与式においてこのような$a$を$k$として$b$に代入すれば任意の整数$a$に対して$2f^k(a)=n$がわかるがこれは$f$が全単射であることから不合理.よってこのとき条件を
満たす全単射は存在しない.
$f(0)=0$であるとき,$b=0$として任意の整数$a$に対して$2a=n$が成立するが,これは明らかに不合理.
以上より,求めるべき全単射は$n$ が奇数のとき$f(a)=n-a$,$n$が偶数のとき存在しない.
これは初め自分が提案した想定解だが,HighSpeedさんによってより簡単な解法が提案され,現在の位置に置かれることとなった.(具体的には,与式を$f^{f(b)-b}(a)=n-a$と変形してから議論を進める)
$a$ を正の整数とする.$a^n+2^n+1$ が $3$ で割って $2$ 余る素因数をもつような正の整数 $n$ が存在しないならば,$a$ は $4$ で割り切れることを示せ.
まず,以下の補題を示す.この際,$a^n+2^n+1$ やその約数を $3$ で割った余りが $2$ になるとき,$a^n+2^n+1$ は $3$ で割って $2$ 余る素因数をもつため,そのような $a$ は条件をみたさないことに注意する.
補題:条件をみたす $a$ を $18$ で割った余りは $4$ である.
証明
$a$ が奇数ならば $a^n+2^n+1$ は $2$ で割り切れるので,$a$ は偶数としてよい.
$a\equiv 0\pmod {3}$ であるとき,$a^2+2^2+1\equiv 2 \pmod 3$ となるので,条件をみたさない.また,$a\equiv 2\pmod {3}$ であるとき,$a+2+1\equiv 2 \pmod 3$ となるので,条件をみたさない.よって,$a\equiv 1\pmod {3}$ であるほかなく,$a$ が偶数であることもあわせると,$a\equiv4\pmod 6$ が必要である.
$a\equiv 10\pmod {18}$ であるとき,
$a^2+2^2+1\equiv15\ \ (\mathrm{mod}\ 18) \Rightarrow \dfrac{a^2+2^2+1}{3}\equiv5\ \ (\mathrm{mod}\ {6}) \Rightarrow \dfrac{a^2+2^2+1}{3}\equiv2\ \ (\mathrm{mod}\ {3})$
となり,条件をみたさない.$a\equiv 16\pmod {18}$ であるとき,
$a^4+2^4+1\equiv33\ \ (\mathrm{mod}\ {18}) \Rightarrow \dfrac{a^4+2^4+1}{3}\equiv 11\ \ (\mathrm{mod}\ 6) \Rightarrow \dfrac{a^4+2^4+1}{3}\equiv 2\ \ (\mathrm{mod}\ {3}$
となり,条件をみたさない.以上より,$a\equiv 4\pmod {18}$ であるほかなく,補題が示された.
次に,$a$ が $2$ でちょうど $1$ 回割り切れるとして矛盾を導く.
このとき,奇数 $A$ を用いて $a=2A$ と表せる.補題より $a\equiv 4\pmod {18}$ なので,$A\equiv 2 \pmod 9$ である.よって,$(2A)^2+A^2+1\equiv 3\pmod 9$ が成り立ち,$A$ が奇数であることから
$(2A)^2+A^2+1\equiv2\pmod 4$ が成り立つため,$\dfrac{(2A)^2+A^2+1}{6}$ は $3$ で割って $2$ 余る奇数である.よって,$\dfrac{(2A)^2+A^2+1}{6}$ は $3$ で割って $2$ 余る奇数の素因数 $p$ をもつ.
ここで,$p$ と $a$ は互いに素であるから,Fermat の小定理より
$a^{2p-4}+2^{2p-4}+1\equiv a^{-2}\left(1+A^2+(2A)^2\right)\equiv 0\pmod p$
が成り立つため,$p$ は $a^{2p-4}+2^{2p-4}+1$ を割り切るが,これは条件に矛盾.
したがって,補題より,$a$ が $2$ で $1$ 回以上割り切れることもあわせると,$a$ は $2$ で $2$ 回以上割り切れることが分かり,題意は示された.
行間が分からない部分などがあればぜひ質問してください.