どうもこんにちは、🐟🍊みかん🍊🐟です。今回は相加相乗平均の関係の証明をしていきます。相加相乗平均の関係は
$$
\frac{a+b}2\ge\sqrt{ab}
$$
という形の不等式です。この不等式は高校数学範囲内での証明が非常に困難であることが知られており、しかもかなり天下り的な計算を必要とします。今回はその相加相乗平均の関係の2変数の場合を証明していこうと思います。
これはネタ記事です。「もっといい方法あるだろ」とか、「あまりに一般性がない証明方法過ぎて参考にならない」みたいなこと言わないでください。僕泣いちゃいます。
$0< a< b$のとき、次の等式が成り立つ。
$$
\int_a^b\frac{\sqrt{(b-x)(x-a)}}xdx=\pi\left(\frac{a+b}2-\sqrt{ab}\right)
$$
区間$[a,b]$をまたぐダンベル積分路(「あれ」です)をとり$C$とします。このとき、
$$
\int_a^b\frac{\sqrt{(b-x)(x-a)}}xdx=2\oint_{C}\frac{\sqrt{(b-z)(z-a)}}zdz
$$
となります。
$$
f(z)=\frac{\sqrt{(b-z)(z-a)}}z
$$
とおくと、留数定理により
$$
\frac1{2i\pi}\oint_{C}\frac{\sqrt{(b-z)(z-a)}}zdz=\operatorname{Res}_{z=0}f(z)+\operatorname{Res}_{z=\infty}f(z)
$$
なので、結局留数計算に帰着されます。原点における留数は
\begin{aligned}
\operatorname{Res}_{z=0}f(z)
&=\lim_{z\to0}\sqrt{(b-z)(z-a)}\\
&=i\sqrt{ab}
\end{aligned}
となり、無限遠点における留数は
\begin{aligned}
\operatorname{Res}_{z=\infty}f(z)
&=-\operatorname{Res}_{z=0}\frac1{z^2}f\left(\frac1z\right)\\
&=-\lim_{z\to0}\frac d{dz}\sqrt{(bz-1)(az-1)}\\
&=\frac{a+b}{2i}
\end{aligned}
と求まるので、これらの和を$i\pi$倍することで
$$
\int_a^b\frac{\sqrt{(b-x)(x-a)}}xdx=\pi\left(\frac{a+b}2-\sqrt{ab}\right)
$$
を求めることができました。
$a,b\in[0,\infty)$とすると、
$$
\frac{a+b}2\ge\sqrt{ab}
$$
であり、$a=b$の時に限り等号が成立する。
$a\le b$として一般性を失いません。$a=b$のときは等号の成立が明らかなので、$0< a< b$のときに不等号が成立することを示せば十分です。まず補題1から、
\begin{aligned}
\int_a^b\frac{\sqrt{(b-x)(x-a)}}xdx&>0\\
\therefore\quad\pi\left(\frac{a+b}2-\sqrt{ab}\right)&>0\\
\frac{a+b}2&>\sqrt{ab}
\end{aligned}
となって示されます。
いかがだったでしょうか。この証明を見てわかるように、相加相乗平均の関係を証明することは非常に難しいのです。三変数となってしまえばどうすればいいか皆目見当もつきませんね。歴代の数学者たちの強さを感じました。これからも様々な主張を知り理解していきたいですね。