令和9(2027)年度東京大学大学院数理科学研究科修士課程入学試験を受験したので、それについて書こうと思います。
参考になるかもしれない方
・東大数学科の方
・解析志望の方
・問題を解くのが得意な方
・筆記試験で全完を目指す方
東大数学科所属で、今回の院試は内部受験になります。専攻は複素解析で、併願はせずに東大数理のみに出願しました。
週1回、1年度分のB問題の過去問(解析分野)を解いてきて発表しあう、というのを学科の同期たちと4月頃から行っていました。
自分は講究XAと同じ日だったので他の人の発表を聞いたりその場で解いたりするのがメインでした。
5月末に開催されました。試験についての説明の他、東大数理に所属している教員それぞれの専門分野についてのざっくりとした説明が行われます。対面・オンラインのどちらでも参加でき、自分はZoomで参加しました。
去年から出願がオンラインで完結するようになったみたいで、非常にスムーズに出願できました。
出願期間は7月頭の約1週間です。願書と一緒に提出する「アンケート」があり、そこにはこれまで勉強したことや大学院で研究したいことを書きます。意外と大変なので早めに取り掛かりましょう。
ちなみに、「英語表記による試験問題希望の有無」を選択させられますが、希望しても日本語と英語の問題文が両方もらえる訳ではないようです。
さらに細かいことですが、必要事項を入力したあと自動で生成される願書のPDFでは「英語表記による試験間題希望の有無」と書かれています。
7月下旬に受験票が発行され、それをもって出願が成功していることを確認できます。
本格的に対策し始めたのは夏季セミナーが終わってから(院試2週間前)です。
まず、対策のためにスプレッドシートを作りました。
進捗管理のスプレッドシート
進捗が視覚的にわかり、モチベーションにもつながります。必要な方は
こちら
からコピーしてお使いください。
数年分解いて時間内に解ききれるかを確認しました。英語の点数では差がつかないという話を聞いていたのであまり力を入れませんでした。
難易度はB問題よりは低いですが、2年生までに習ったことから幅広く出題されます。1問あたりにかけられる時間がB問題の約半分ということで、時間を測りながら数年分解きました。
3時間で6問以上解ければ安心してよいでしょう。
また、選択問題の5問のうち3問は解析分野なので解析の人は有利だと思います。
ここが一番の鬼門だと思います。18問から3問を選んで解くのですが、得意分野の問題が難問だったりすることがあり、点数は安定しにくいです。
ここで自分がとった戦略は18問のうちできるだけ多くの問題に手をつけられるようにするというものです。最終的には代数(群論、環論、Galois理論)、解析(測度論、複素解析、PDE)、応用数理(数値解析、確率統計、数理物理など)に手をつけられるようにしました。B問題で志望分野と違う分野の問題を解くと口頭試問でそのことについて聞かれるという噂がありますが、解けないよりは違う分野でも解けた方がよいです。
1つの年度から平均して5問程度解けるようであればB問題については安心してよいと思います。
アンケートで読んだ本として挙げたものについて復習を行いました。
試験の日は午前中に集合する必要があるので、1週間前からは早寝早起き(2時に寝て10時に起きる)をやっていました。
8月20日(院試4日前)に数学オリンピックの表敬訪問があり、その後ツクヨミアクアリウムに行きました。それ以降は特に勉強のやる気が起きず、受験者心得を読み込んだり学部生室の床を掃除したりしていました。
受験者心得は厳密に運用されるわけではないようです。例えば「受験票を携帯しない場合は、原則として試験室への入室は認めない。」と書かれていますが退室の度に受験票を持つ必要はありません。
実際の試験は常識的に運用されているので最低限持ち物と集合時刻を確認しておけばよいでしょう。
第2問の英訳からから取り掛かった。20分足らずで英訳を書き上げ、和訳に臨んだ。「hyperboloid of one sheet」が訳せなかったが、それ以外は割とできた。
1, 7, 2, 4の順で解いた。余った時間で3, 6, 5を解いた。
4×4行列が出てきて不穏だったが、必答なのでとりあえず手をつけた。(1)、(2)は難なく解くことができた。(3)では迷走したのち$A$の多項式で実現できないかと考え、$\mathbb{R}[x]/x(x-1)(x-i)(x+i)$を中国剰余定理で分解して$x$の$3$乗根を計算していたら$X=A^3$が適合することに気付いた。
答案は「$x^9-x=x(x-1)(x^2+1)(x+1)(x^4+1)$なのでCayley–Hamiltonの定理により$A^9=A$」と書き始めた。不安だったので$A^3$は何度も検算した。
およそ40分かかった。
(2)が$\frac{(2n-1)!!}{(2n)!!}\sim\frac 1{\sqrt n}$を使うと解ける見た目だったので、最悪の場合Stirlingの公式を使えばいいと思いながら着手した。
(2)は最終的に誘導を無視して
$$(2n+1)\biggl(\frac{(2n-1)!!}{(2n)!!}\biggr)^2=\prod_{k=1}^n\frac{(2k-1)(2k+1)}{(2k)^2}<1$$
から$\frac{(2n-1)!!}{(2n)!!}<\frac 1{\sqrt{2n+1}}<\frac 1{\sqrt n}$とする評価を用いた。
(2)では誘導を無視して$F:\mathbb{R}^3\to\mathbb{R}^2;(x,y,z)\mapsto(x^2+y^2+z^2,xy+yz+zx)$の像が$\{(s,t)\in\mathbb{R}^2\mid 0\leq s,\ -\frac s2\leq t\leq s\}$であることを示して2次函数の最小問題に帰着させた。
言われた通りに計算をしたら解けた。(2)は$0$から$z$への線分の積分路を用いて計算したが、$0$から$1$への線分と円弧を組み合わせると楽になることを教えてもらった。
方針はすぐ立ったが、ちゃんと記述すると面倒なタイプの問題だと思う。
(1)は$\det\begin{pmatrix}xI_n&B\\A&I_m\end{pmatrix}$を2通りで計算することで、(2)は$AB$の最小多項式を計算することで示した。固有ベクトルを追うのが正攻法らしい。
計算が大変だったが、議論で難しい点は無いはず。
11, 17, 18を解いた。余った時間で他の問題も覗いたが、完答はしていない。
$f(z)=\sum_{k=0}^\infty b_kz^k$, $g(z)=\sum_{k=0}^\infty c_kz^k$とおくと、$\log(1-z)=-\sum_{k=1}^\infty\frac{z^k}k$を用いることで
$$ka_k=kb_k-k\sum_{j=0}^{k-1}\frac{c_j}{k-j}$$
となる。第1項は$k\to\infty$で$0$になり、第2項は$(j+1){\lvert c_j\rvert}$を優函数として優収束定理により$-\sum_{j=0}^\infty c_j=-g(1)$に収束する。
約30分で完答。
令和7年度第16問のような難しい問題かと身構えたがそんなことはなく、計算をするだけで解くことができた。
分野の慣習は知らないが、級数が交換できることなどについては重要でないだろうと思って書かなかった。
約30分で完答。
(正定値と限らない)スカラー積と(可換や対称や結合的とは限らない)積が入った実Hilbert空間についての問題。(3)で条件をみたすスカラー積を構成するのが難しかった。
問題の吟味をする時間を含めて約90分で完答。
予定されていた18:30よりも早く筆記試験の結果が発表されました。筆記試験の合否結果と同時に口述試験の集合時刻が発表されるのですが、早い人は次の日の朝9:00に集合する必要があるようです。筆記試験合格者は162人中58人で、去年の64人より減っていました。
口述試験の内容は口止めされているため書きません。
発表されたら書きます。