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積分の体系化(Ⅱ)

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第2章 微分形接触と原始関数の予測

前章では、置換積分や部分積分を、微分法則から導いた。本章では、それらの法則を逆向きに利用し、被積分関数から原始関数を直接予測する方法を考える。
ここで目指すのは、特定の積分の解法を覚えることではない。
初めて見る被積分関数に対しても、どこに着目し、どの関数を原始関数の候補として考え、その候補が適切かをどう判断するのか。その思考過程を自分で再現できるようになることである。
原始関数の予測は、勘に頼るものではない。微分によって関数がどのような形へ変化するかを知っていれば、その変化を逆向きにたどることで候補を絞り込める。
そして、最初に考えた候補が完全に一致する必要もない。微分して生じる余計な項を調整したり、複数の微分形を組み合わせたりすることで、原始関数を構成できる場合がある。

2.1 微分形接触の原理

既知の微分構造を被積分関数の中に見つけ、必要な係数や項を調整して原始関数を求めることを、ここでは微分形接触と呼ぶ。
例えば、
$$ I=\int\frac{x}{(1+x^2)^3}\,dx $$
を考える。
まず、分母に三乗が現れていることに着目する。
冪関数を微分すると指数が1減る。したがって、分母の三乗は、分母が二乗の関数を微分した結果かもしれない。
そこで、
$$ F(x)=\frac{1}{(1+x^2)^2} $$
を原始関数の候補とする。
この候補を微分すると、外側の冪関数だけでなく、その内部の二次式も微分される。
$$ F'(x)=-\frac{4x}{(1+x^2)^3} $$
分母は一致しており、分子も定数倍を除けば一致する。
したがって、
$$ I=-\frac{1}{4(1+x^2)^2}+C $$
となる。
ここで行ったのは、分母の冪を一つ下げるという機械的な操作だけではない。
分母の形から原始関数を予測し、その内部を微分すると分子に必要な因子が現れることを確認している。
では、この被積分関数に対して最初に何を見るべきなのだろうか。

微分構造の逆算

被積分関数を観察するときには、単に目立つ部分を探すのではなく、その特徴がどのような微分操作によって生じるのかを考えたい。
例えば、次のような微分形を考える。
$$ \frac{d}{dx}g(x)^p =pg(x)^{p-1}g'(x) $$
$$ \frac{d}{dx}\ln|g(x)| =\frac{g'(x)}{g(x)} $$
$$ \frac{d}{dx}\arctan g(x) =\frac{g'(x)}{1+g(x)^2} $$
$$ \frac{d}{dx}\arcsin g(x) =\frac{g'(x)}{\sqrt{1-g(x)^2}} $$
$$ \frac{d}{dx}e^{g(x)} =g'(x)e^{g(x)} $$
これらの式から、原始関数を予測する際の手掛かりが得られる。ただし、それぞれの公式は微分可能性や分母・根号などの定義域に注意して用いる。
分母にある式と、その微分に対応する因子が分子にあれば、対数関数を考えられる。
分母が平方の和になっていれば、逆正接関数を考えられる。
平方根の内部が平方の差になっていれば、逆正弦関数などの微分形が候補になる。
また、指数関数が現れたときには、その指数を微分した因子が存在するかを調べられる。
ただし、これらは原始関数を決定するための条件ではなく、候補を発見するための手掛かりである。
例えば、分母が平方の和になっていても、分子が対応していなければ、そのまま逆正接関数の微分形として処理できるわけではない。
ある部分の形から候補を作り、残りの部分によってその候補を検証する。 この二つを分けて考えることが重要である。

候補の検証と修正

被積分関数を、
$$ I=\int f(x)\,dx $$
とし、原始関数の候補を、
$$ F_0(x) $$
とする。
このとき、
$$ F_0'(x)=af(x) $$
となったなら、係数を調整すればよい。ただし、係数は0でない定数とする。
$$ I=\frac{F_0(x)}{a}+C $$
また、
$$ F_0'(x)=f(x)+r(x) $$
となったなら、
$$ I=F_0(x)-\int r(x)\,dx $$
とできる。
つまり、候補を微分して完全に一致しなかった場合でも、その差が簡単に積分できるなら、予測は十分に役立っている。
ここで重要になるのは、候補が正しいかどうかという二択の判断ではない。
候補を微分した結果、元の被積分関数にどれだけ近づき、どのような積分が残るのかを考えることである。
微分形接触では、候補を発見することと、その候補を修正することが一続きの操作になっている。

2.2 合成関数と微分因子

合成関数の微分法則は、
$$ \frac{d}{dx}F(g(x))=F'(g(x))g'(x) $$
である。
これを逆向きに利用する場合、最も重要になるのが、被積分関数のどの部分を内部の関数と捉えるかという判断である。
この判断を曖昧なままにしてしまうと、知っている積分公式を当てはめるだけになり、少し形が変わった問題には対応しにくくなる。
そこで、具体例を通して、候補を見つけるまでの過程を考えてみよう。

分母と分子の対応

次の積分を考える。
$$ I=\int\frac{x\cos(x^2)}{1+\sin^2(x^2)}\,dx $$
まず、分母を見る。
$$ 1+\sin^2(x^2) $$
ここには、ある関数の二乗に1を加えた構造がある。
この特徴から、逆正接関数の微分形を考えられる。
$$ \frac{d}{dt}\arctan t=\frac{1}{1+t^2} $$
そこで、二乗されている関数を一つのまとまりとして捉える。
$$ g(x)=\sin(x^2) $$
このとき、原始関数の候補は、
$$ F(x)=\arctan(\sin(x^2)) $$
となる。
ここまでの判断では、分母しか利用していない。候補が適切かどうかを確かめるには、分子も調べる必要がある。
内部の関数を微分すると、
$$ g'(x)=2x\cos(x^2) $$
である。
求めたい被積分関数の分子は、
$$ x\cos(x^2) $$
なので、必要な微分因子が定数倍を除いて一致している。
したがって、
$$ F'(x)=\frac{2x\cos(x^2)}{1+\sin^2(x^2)} $$
より、
$$ I=\frac12\arctan(\sin(x^2))+C $$
を得る。
この積分を解くときに、最初から複雑な合成関数全体を理解する必要はない。
分母の外側に逆正接関数の微分形を見つけ、その内部となる関数を決める。そして、分子がその内部の微分に対応しているかを確認すればよい。
さらに重要なのは、内部の関数が複雑になっても、判断の方法が変わらないことである。
例えば、正弦関数の内部が多項式になっていても、指数関数になっていても、外側に現れる構造は同じように認識できる。
合成関数の内部を一つずつ置換していくのではなく、複数の関数を一つの構造として捉えることが、計算を短縮するための鍵となる。

同一分母からの異なる予測

次の二つの積分を比較してみよう。
$$ I=\int\frac{x}{1+x^4}\,dx $$
$$ J=\int\frac{x^3}{1+x^4}\,dx $$
どちらも分母は同じである。しかし、分子が異なるため、適切な原始関数の候補も変わる。
まず、最初の積分では、
$$ 1+x^4=1+(x^2)^2 $$
と書ける。
逆正接関数の微分形を考えるなら、内部の候補は、
$$ g(x)=x^2 $$
である。
実際、
$$ g'(x)=2x $$
となり、分子の一次式と対応する。
したがって、
$$ I=\frac12\arctan(x^2)+C $$
を得る。
一方、二つ目の積分では分母全体を一つの関数として捉えてみる。
$$ g(x)=1+x^4 $$
すると、
$$ g'(x)=4x^3 $$
となり、分子と対応する。
したがって、対数関数の微分形から、
$$ J=\frac14\ln(1+x^4)+C $$
を得る。
最初の積分では、分母を平方の和として捉えた。二つ目では、分母全体を一つの関数として捉えた。
この違いから分かるのは、原始関数の候補を決める際に、分母の形だけを見ても十分ではないということである。
分母から候補を作り、分子との関係によってどの候補を採用するかを判断する。
この操作を繰り返すことで、同じ分母でも異なる微分構造を認識できるようになる。

候補の比較

次の積分を考える。
$$ I=\int\frac{2xe^{x^2}}{1+e^{2x^2}}\,dx $$
分母には指数関数が現れている。
そこで、まず分母全体を一つの関数として捉えてみる。
$$ g_1(x)=1+e^{2x^2} $$
これを微分すると、
$$ g_1'(x)=4xe^{2x^2} $$
となる。
しかし、分子は、
$$ 2xe^{x^2} $$
なので一致しない。
この時点で積分を諦める必要はない。分母の別の構造を考えればよい。
$$ 1+e^{2x^2}=1+(e^{x^2})^2 $$
と書けるので、逆正接関数の微分形が候補になる。
そこで、
$$ g_2(x)=e^{x^2} $$
と考える。
すると、
$$ g_2'(x)=2xe^{x^2} $$
となり、分子と一致する。
したがって、
$$ I=\arctan(e^{x^2})+C $$
を得る。
この積分では、最初に考えた候補が一致せず、別の候補に切り替えている。
しかし、その判断に試行錯誤を延々と続ける必要はない。
対数関数を予測したときに現れる分子は、分母全体の微分である。一方、逆正接関数を予測したときには、平方の内部となる関数の微分が分子に現れる。
この違いを知っていれば、どちらが適切かを計算前にある程度判断できる。
つまり、候補を比較する際には、その候補を微分するとどの因子が現れるはずかを先に予測することが重要なのである。

分子からの着眼

ここまでは分母から考えてきたが、いつも分母を最初に見る必要はない。
例えば、
$$ I=\int x\cos(x^2)\,dx $$
では、分母が存在しない。
しかし、余弦関数の内部にある二次式を微分すると、
$$ (x^2)'=2x $$
となり、前に掛けられている因子と対応する。
また、正弦関数を微分すると余弦関数が現れる。
この二つを組み合わせれば、
$$ I=\frac12\sin(x^2)+C $$
を得る。
このように、分子・分母という形にこだわる必要はない。
指数関数や三角関数が現れたときには、その内部を微分した因子が、被積分関数の別の場所に存在しないか調べることができる。
要するに、どこを一つの関数と見るかは、その部分の微分が被積分関数の残りの部分にどう現れるかによって判断するのである。

2.3 積・商の微分形

合成関数の微分形が見つからない場合でも、積や商の微分を逆向きに利用できることがある。
積の微分法則は、
$$ \frac{d}{dx}\{u(x)v(x)\} =u'(x)v(x)+u(x)v'(x) $$
である。
また、商の微分法則は、
$$ \frac{d}{dx}\frac{u(x)}{v(x)} =\frac{u'(x)v(x)-u(x)v'(x)}{v(x)^2} $$
となる。
これらの公式から、被積分関数に現れる項の組合せを説明できないか考えてみよう。

商の微分形

次の積分を考える。
$$ I=\int\frac{1-2x-x^2}{(1+x^2)^2}\,dx $$
分母に二次式の二乗が現れている。
商を微分すると分母が二乗になるので、原始関数の候補として、
$$ F(x)=\frac{P(x)}{1+x^2} $$
という形を考えられる。
では、分子の関数をどのように選べばよいだろうか。
商の微分では、分子の微分と分母の微分が現れる。
求めたい被積分関数の分子は二次式なので、まず一次式を候補にしてみる。
$$ P(x)=ax+b $$
これを用いると、
$$ F(x)=\frac{ax+b}{1+x^2} $$
である。
微分すると、
$$ F'(x)=\frac{a(1-x^2)-2bx}{(1+x^2)^2} $$
を得る。
したがって、分子の係数を比較すれば、
$$ a=1,\qquad b=1 $$
となる。
よって、
$$ I=\frac{x+1}{1+x^2}+C $$
である。
ここでは、分母の二乗から商の微分を考え、その後に分子の次数から原始関数の分子を予測している。
この方法の利点は、最初から原始関数の分子を正確に思いつく必要がないことだ。
分子の次数などから候補の形を考え、未知の係数を微分によって決定すればよい。

積の微分形

次の積分を考える。
$$ I=\int\{(1+x^2)\cos x+2x\sin x\}\,dx $$
被積分関数には二つの項がある。
一方の項には正弦関数、もう一方には余弦関数が現れている。
ここで、正弦関数を微分すると余弦関数になることに着目する。
また、
$$ (1+x^2)'=2x $$
である。
つまり、二つの項は、
$$ u'(x)v(x)+u(x)v'(x) $$
という積の微分形に対応している。
そこで、
$$ F(x)=(1+x^2)\sin x $$
を予測できる。
実際、
$$ F'(x)=2x\sin x+(1+x^2)\cos x $$
となるので、
$$ I=(1+x^2)\sin x+C $$
を得る。
この例では、二つの項のうち一方を先に積分するのではなく、両方の項が一つの積を微分した結果ではないかと考えている。
特に、二つの関数がそれぞれ微分された形で別々の項に現れている場合には、積の微分形を疑う価値がある。

複合的な微分構造

次の積分を考える。
$$ I=\int \frac{(1+x^2)\cos x-2x\sin x}{(1+x^2)^2}\,dx $$
分母が二乗なので、商の微分が候補になる。
さらに、分子には正弦と余弦が現れている。
ここで、分母を一乗にした商を想像し、その分子には正弦関数が入っているのではないかと考える。
$$ F(x)=\frac{\sin x}{1+x^2} $$
この候補を微分すれば、
$$ F'(x)= \frac{(1+x^2)\cos x-2x\sin x}{(1+x^2)^2} $$
となり、求めたい被積分関数と一致する。
したがって、
$$ I=\frac{\sin x}{1+x^2}+C $$
を得る。
ここでは、分母の二乗から商の微分を予測し、分子に含まれる正弦・余弦の関係から、商の分子となる関数を決めている。
つまり、複数の微分法則を別々に覚えるだけでなく、その組合せによってどのような式が現れるかも考えている。
これができるようになると、一見複雑な被積分関数でも、もとの原始関数は非常に単純な場合があると分かる。

2.4 微分形の調整と組合せ

原始関数の候補を微分しても、被積分関数と完全には一致しないことがある。
このとき、候補を捨てて最初から考え直す必要はない。
重要なのは、何が一致していて、何が不足しているのかを調べることである。

部分的な一致の利用

例えば、
$$ I=\int\frac{2x+3}{1+x^2}\,dx $$
を考える。
分母を微分すると、
$$ (1+x^2)'=2x $$
となる。
これは分子全体とは一致しないが、一部分とは一致している。
そこで、
$$ \frac{2x}{1+x^2} $$
という部分を対数関数の微分形として取り出せる。
残った、
$$ \frac{3}{1+x^2} $$
は逆正接関数の微分形である。
したがって、
$$ I=\ln(1+x^2)+3\arctan x+C $$
を得る。
ここで行っているのは、被積分関数全体を一つの微分形に対応させることではない。
一致する部分を先に処理し、残りを別の既知形として捉えているのである。
このように、微分形接触は、被積分関数の一部分に対しても利用できる。

微分形の組合せ

次の積分を考える。
$$ I=\int\frac{x^2}{(1+x^2)^2}\,dx $$
分母が二乗なので、商の微分が候補になる。
そこで、
$$ F_0(x)=\frac{x}{1+x^2} $$
と予測してみる。
これを微分すると、
$$ F_0'(x)=\frac{1-x^2}{(1+x^2)^2} $$
となる。
求めたい分子は二次の項だけなので、完全には一致しない。
しかし、分母の形は一致している。
そこで、もう一つの既知形を考える。
$$ \frac{d}{dx}\arctan x=\frac{1}{1+x^2} $$
これを通分すれば、
$$ \frac{d}{dx}\arctan x =\frac{1+x^2}{(1+x^2)^2} $$
となる。
つまり、二つの原始関数の候補から、
$$ 1-x^2 $$
$$ 1+x^2 $$
という二種類の分子を作れる。
この二つの差を取れば、定数項が消え、二次の項だけが残る。
実際、
$$ x^2=\frac12(1+x^2)-\frac12(1-x^2) $$
である。
したがって、
$$ I=\frac12\arctan x-\frac{x}{2(1+x^2)}+C $$
を得る。
この積分では、最初の候補だけで解こうとすると一致しない。しかし、その候補と別の微分形を組み合わせることで原始関数を構成できた。
ここで重要なのは、候補の選び直しではなく、既に見つけた微分形を利用し、不足している成分を補うという考え方である。

原始関数の直接修正

微分形接触では、被積分関数を分解する代わりに、原始関数の候補を修正することもできる。
例えば、
$$ I=\int(x^2+2x+3)e^x\,dx $$
を考える。
指数関数は微分しても形が変わらず、多項式は微分によって次数が下がる。
したがって、原始関数も多項式と指数関数の積になっていると予測できる。
まず、
$$ F_0(x)=x^2e^x $$
とすると、
$$ F_0'(x)=(x^2+2x)e^x $$
となる。
求めたい被積分関数と比べると、
$$ 3e^x $$
が不足している。
この不足分は簡単に補える。
$$ F(x)=(x^2+3)e^x $$
とすれば、
$$ F'(x)=(x^2+2x+3)e^x $$
となるので、
$$ I=(x^2+3)e^x+C $$
を得る。
ここでは、求めたい被積分関数を分解するのではなく、最初に予測した原始関数に項を追加している。
これは瞬間部分積分と同じ発想である。
ただし、このような計算を毎回部分積分として書き下す必要はない。どの項が余分に現れるか、どの項が不足するかを直接考えられれば、原始関数を短い計算で構成できる。

修正の有効性

候補の修正が常に有効とは限らない。
候補を微分した結果、元の被積分関数との差が、元の積分と同じくらい複雑になる場合もある。
そのようなときには、候補を修正し続けるよりも、別の微分構造を探した方がよい。
例えば、ある候補を微分したことで新しく平方根や複雑な分母が現れ、元の積分よりも扱いにくくなったなら、その候補は積分を簡単にするという目的に合っていない可能性がある。
反対に、候補を微分した結果、残った部分が定数倍の調整や簡単な既知形だけで済むなら、その候補は有効である。
ここでも、判断の基準は明確である。
微分した結果、求めたい積分がどれだけ簡単になるか。
候補が一見もっともらしいかどうかではなく、その候補によって計算が進むかを判断したい。

2.5 平方和と対数・逆正接

微分形接触では、式を展開してしまうと見えにくくなる構造がある。
その一つが、二つの関数の平方の和である。
例えば、
$$ I=\int\frac{1-x^2}{x^4+3x^2+1}\,dx $$
を考える。
分母は四次式だが、次のように書ける。
$$ x^4+3x^2+1=(1+x^2)^2+x^2 $$
つまり、二つの関数の平方の和になっている。
ここで逆正接関数の微分形を一般化してみよう。
二つの関数について、
$$ t=\frac{u(x)}{v(x)} $$
と置く。ただし、分母が0にならない区間で考える。
合成関数と商の微分法則から、
$$ \frac{d}{dx}\arctan\frac{u(x)}{v(x)} =\frac{u'(x)v(x)-u(x)v'(x)}{u(x)^2+v(x)^2} $$
を得る。
ここで注目したいのは、分母である。
二つの関数の平方の和を、商の逆正接関数を微分した結果として作れる。
そこで、元の積分では、
$$ u(x)=x $$
$$ v(x)=1+x^2 $$
と考えてみる。
分母は一致するので、次に分子を確認する。
$$ u'v-uv'=(1+x^2)-2x^2 $$
$$ =1-x^2 $$
となる。
求めたい被積分関数と一致したので、
$$ I=\arctan\left(\frac{x}{1+x^2}\right)+C $$
を得る。
この例では、四次式を因数分解していない。
平方の和という構造を認識し、その二つの式の商から逆正接関数を予測している。

逆正接関数と角度の変化

この微分形には、幾何学的な意味がある。
二つの関数の値を平面上の点の座標として考える。
$$ P=(v(x),u(x)) $$
原点から点までの距離を、
$$ r(x)=\sqrt{u(x)^2+v(x)^2} $$
とする。
また、原点から点を見た方向の角度を考える。
$$ \theta(x)=\arctan\frac{u(x)}{v(x)} $$
ただし、角度は連続に定められる区間で考える。
すると、
$$ \theta'(x) =\frac{u'v-uv'}{u^2+v^2} $$
となる。
つまり、逆正接関数を含む微分形は、平面上を動く点の角度の変化率として理解できる。
ここで分母に現れる平方の和は、原点からの距離の二乗である。
一方、分子は、二つの座標とその微分を交差させた形になっている。
この構造を知っていれば、分母が平方の和になっている積分を見たときに、逆正接関数の内部を商として予測する発想につながる。

対数関数と距離の変化

同じ二つの関数を用いて、今度は次の関数を考える。
$$ F(x)=\frac12\ln(u(x)^2+v(x)^2) $$
これを微分すると、
$$ F'(x) =\frac{uu'+vv'}{u^2+v^2} $$
となる。
先ほどの逆正接関数と比較すると、分母は同じである。しかし、分子の形が異なる。
逆正接関数では、
$$ u'v-uv' $$
が現れた。
一方、対数関数では、
$$ uu'+vv' $$
が現れる。
この違いも幾何学的に理解できる。
距離について、
$$ F(x)=\ln r(x) $$
なので、対数関数の微分形は、原点からの距離の対数の変化率に対応している。
つまり、同じ平方の和から、角度に対応する逆正接関数と、距離に対応する対数関数という二つの候補を考えられる。
では、どちらを利用すればよいのだろうか。
ここでも判断するのは分子である。
先ほどと同じく、
$$ u(x)=x,\qquad v(x)=1+x^2 $$
とすれば、
$$ uu'+vv'=x+2x(1+x^2) $$
$$ =2x^3+3x $$
となる。
したがって、
$$ \frac{d}{dx} \left\{\frac12\ln(x^4+3x^2+1)\right\} =\frac{2x^3+3x}{x^4+3x^2+1} $$
である。
一方、逆正接関数の微分形では、
$$ 1-x^2 $$
という分子が現れる。
したがって、これらを組み合わせれば、
$$ J=\int\frac{2x^3-x^2+3x+1}{x^4+3x^2+1}\,dx $$
も直接求められる。
分子を、
$$ 2x^3-x^2+3x+1=(2x^3+3x)+(1-x^2) $$
と分ければよい。
したがって、
$$ J=\frac12\ln(x^4+3x^2+1) +\arctan\left(\frac{x}{1+x^2}\right)+C $$
を得る。
この方法の本質は、四次式を含む有理関数を特別な公式として覚えることではない。
分母を平方の和と見たとき、そこからどのような微分形を作れるかを考え、分子との関係によって候補を選んでいるのである。

2.6 未定係数による原始関数の構成

ここまでは、被積分関数の一部分から原始関数の候補を比較的直接に予測してきた。
しかし、複数の微分形が混ざっている場合には、原始関数の形をある程度まとめて仮定し、その係数を決める方が効率的なこともある。
例えば、
$$ I=\int\frac{2x^3-x^2+2x+5}{(1+x^2)^2}\,dx $$
を考える。
まず、分母が二次式の二乗であることに着目する。
この形から、分母が一乗の有理関数を微分した結果を考えられる。
また、対数関数や逆正接関数を微分して通分しても、同じ分母を持つ有理関数が現れる。
そこで、原始関数に含まれそうな関数として、
$$ \ln(1+x^2) $$
$$ \arctan x $$
$$ \frac{x}{1+x^2} $$
$$ \frac{1}{1+x^2} $$
を考える。
なぜこの四つなのだろうか。
最初の二つは、微分すると分母が一乗の有理関数になる。これを通分すれば、分母が二乗の有理関数として表せる。
後の二つは、微分すると最初から分母が二乗になる。
したがって、これらを組み合わせれば、求めたい被積分関数と同じ種類の式を作れる可能性がある。
そこで、次の形を仮定する。
$$ F(x)=a\ln(1+x^2)+b\arctan x+\frac{cx+d}{1+x^2} $$
ここで、係数は未知の定数とする。
微分すると、
$$ F'(x) =\frac{2ax}{1+x^2} +\frac{b}{1+x^2} +\frac{c(1-x^2)-2dx}{(1+x^2)^2} $$
となる。
通分すると、
$$ F'(x) =\frac{2ax^3+(b-c)x^2+(2a-2d)x+(b+c)}{(1+x^2)^2} $$
を得る。
分母が一致しているので、分子の係数を比較すればよい。
$$ \begin{cases} 2a=2\\ b-c=-1\\ 2a-2d=2\\ b+c=5 \end{cases} $$
したがって、
$$ a=1,\qquad b=2,\qquad c=3,\qquad d=0 $$
となる。
よって、
$$ I=\ln(1+x^2)+2\arctan x+\frac{3x}{1+x^2}+C $$
を得る。
この方法では、原始関数を一度に思いついていない。
被積分関数の形を微分によって再現できそうな関数を選び、それらを組み合わせたうえで係数を決めている。

候補となる関数の選定

係数を決める方法で重要なのは、どの関数を候補に含めるかという判断である。
候補を増やせば必ずよいというわけではない。必要のない関数を加えてしまうと、未知の係数が増え、かえって計算が複雑になる。
そこで、まず被積分関数の特徴を観察する。
今回の場合、被積分関数は有理関数であり、分母は二次式の二乗だった。
したがって、対数関数、逆正接関数、分母が一乗の有理関数を考えることには理由がある。
反対に、指数関数や三角関数を突然候補に加える理由は見当たらない。
つまり、候補は思いつくままに選ぶのではなく、その候補を微分すると、求めたい種類の式が現れるかどうかによって絞り込む。
もし、最初に選んだ候補だけでは係数が一致しなければ、そこで初めて別の候補を加えることを考えればよい。
このようにすると、最初から大きな式を仮定せずに済む。
微分形接触では、原始関数の完成形を一瞬で思いつくことだけが重要なのではない。必要な関数を少しずつ選び、微分によって構造を再現するという方法も有効なのである。

2.7 原始関数の探索と解法選択

ここまで、合成関数、積・商の微分、複数の微分形の組合せなどを考えてきた。
しかし、実際に初見の積分を解くときには、どの方法が適切かを教えてくれる見出しは存在しない。
一つの被積分関数に対して、複数の原始関数の候補を考えられる場合もある。
そのため、微分形接触を実際に使いこなすには、候補を思いつくことに加えて、候補を比較し、採用するかどうかを判断する必要がある。
積分を見たとき、私はまず被積分関数全体の構造を確認する。
このとき、最初から特定の公式を当てはめようとする必要はない。
例えば、分数式であれば、分母がどのような関数によって構成されているかを見る。分母に冪が現れれば冪関数や商の微分を、平方の和が現れれば逆正接関数を考えられる。
一方、指数関数や三角関数が掛けられている場合には、その内部を微分した因子が存在するかを考える。
また、二つ以上の項が足し引きされている場合には、それらが積や商を微分して生じた項ではないかと考えられる。
ただし、いつも分母から見るべきだという意味ではない。
被積分関数の中で、微分によって現れたと考えやすい特徴を探すことが目的である。
そのうえで、候補となる原始関数を考える。

微分結果の予測

候補が複数ある場合、それぞれを最後まで微分する必要はない。
例えば、
$$ I=\int\frac{x^3}{1+x^4}\,dx $$
に対して、分母を平方の和と見れば、逆正接関数も連想できる。
しかし、その場合には内部の関数を微分して一次式が現れる。
求めたい分子は三次式なので、直接対応しない。
一方、分母全体を微分すれば三次式が現れる。
したがって、対数関数の方が適切だと判断できる。
この判断では、二つの候補を実際に最後まで計算して比較しているわけではない。
候補を微分したときに生じる因子を予測し、被積分関数と対応するかを確かめている。
慣れてくると、この比較を頭の中で行えるようになる。

式の分解

原始関数の候補がすぐに見つからない場合でも、被積分関数を少し変形するだけで既知形が現れることがある。
例えば、
$$ I=\int\frac{x^2}{1+x^2}\,dx $$
を考える。
分母には平方の和があるため、逆正接関数を考えられる。しかし、分子が二次式なので、そのままでは一致しない。
分母全体の微分を考えても、分子とは一致しない。
この場合、複雑な原始関数を予測する前に、多項式の除算によって簡単な形にできないか考える。
$$ \frac{x^2}{1+x^2} =1-\frac{1}{1+x^2} $$
したがって、
$$ I=x-\arctan x+C $$
となる。
ここでの発想は、原始関数の候補を増やすことではない。
被積分関数を既知の微分形が見えやすい形へ変えているのである。
最初の形で候補が見つからなくても、式変形によって認識できる構造が増える場合がある。

式の統合

反対に、被積分関数を分解しない方がよい場合もある。
例えば、
$$ I=\int e^x\left(\ln(1+x^2)+\frac{2x}{1+x^2}\right)dx $$
を考える。
括弧の中には、対数関数と有理関数が現れている。
これらを別々に積分しようとすると、かえって計算が複雑になりそうである。
そこで、括弧全体が何を微分した結果なのかを考えてみる。
まず、
$$ \frac{d}{dx}\ln(1+x^2)=\frac{2x}{1+x^2} $$
である。
つまり、括弧の中には、ある関数とその微分が足し合わされている。
さらに、外側には指数関数が掛けられている。
指数関数を含む積の微分を考えると、
$$ \frac{d}{dx}\{e^xf(x)\} =e^x\{f(x)+f'(x)\} $$
となる。
この形に対応させれば、
$$ f(x)=\ln(1+x^2) $$
と予測できる。
したがって、
$$ I=e^x\ln(1+x^2)+C $$
を得る。
この例では、被積分関数を細かく分けるよりも、複数の項を一つの積の微分構造として捉える方が簡単だった。
つまり、式変形を考える際には、分解する方向だけでなく、まとめる方向も考えられる。

候補の優先順位

ここまでの考え方を整理すると、原始関数の候補を比較する際には、次のような判断が役立つ。

  • 微分したとき、求めたい被積分関数の特徴を再現できるか。
  • 必要な微分因子が、既に被積分関数の中に存在するか。
  • 一致しない部分があっても、簡単に修正できるか。
  • 式を分解した方が簡単か、それとも一つの構造としてまとめた方が簡単か。
  • その候補を採用した結果、元の積分よりも簡単になるか。
    これらをすべて順番に確認する必要はない。
    重要なのは、候補を一つ見つけたら無条件に採用するのではなく、微分した結果や残る計算を考えて判断することである。
    そして、適切な候補が見つからなければ、別の微分構造を探したり、被積分関数を変形したりすればよい。

解法の切替え

最後に、微分形接触を無理に適用する必要はないことも確認しておきたい。
例えば、
$$ I=\int e^{x^2}\,dx $$
を考える。
指数関数を原始関数の候補にすると、
$$ \frac{d}{dx}e^{x^2}=2xe^{x^2} $$
となる。
求めたい被積分関数にはない因子が現れる。
一方、
$$ J=\int xe^{x^2}\,dx $$
なら、必要な因子が既に存在するため、
$$ J=\frac12e^{x^2}+C $$
と求められる。
この二つの積分は見た目が似ている。しかし、内部の微分因子の有無によって、直接既知形へ帰着できるかどうかが異なる。
なお、最初の積分は初等関数で原始関数を表せないことが知られている。ただし、微分形接触によって候補が見つからないというだけで、初等関数による積分が不可能だと判断できるわけではない。
原始関数の候補が見つからなければ、置換や部分積分、別の式変形によって構造を変えることも考えられる。
微分形接触の目的は、すべての積分を無理に暗算で求めることではない。
原始関数を直接予測できる構造が存在するなら、それを見抜いて不要な計算を省くことである。

2.8 例題

ここまでの考え方を、いくつかの積分で確認してみよう。
それぞれの例題では、すぐに計算を始めるのではなく、まず原始関数の候補を考えてほしい。
その際、どの部分に着目し、どの微分構造を利用しようとしているのかも意識するとよい。

例題1

$$ I=\int\frac{x}{\sqrt{1-x^4}}\,dx $$
分母に平方根が現れている。
ここで、
$$ 1-x^4=1-(x^2)^2 $$
と書ける。
この形から、逆正弦関数の微分形を考えられる。
$$ \frac{d}{dt}\arcsin t =\frac{1}{\sqrt{1-t^2}} $$
そこで、内部の関数を、
$$ g(x)=x^2 $$
とする。
微分すると、
$$ g'(x)=2x $$
となり、分子と対応する。
したがって、
$$ I=\frac12\arcsin(x^2)+C $$
を得る。
ただし、実数で被積分関数が定義される開区間で考える。
この例では、平方根を取り除くための置換を探すのではなく、平方根の内部を既知の逆三角関数の微分形として認識している。

例題2

$$ I=\int\frac{\sin x}{1+\cos^2x}\,dx $$
分母は平方の和になっている。
そこで、逆正接関数の微分形を考える。
$$ g(x)=\cos x $$
とすれば、
$$ g'(x)=-\sin x $$
である。
求めたい分子とは符号だけが異なる。
したがって、
$$ I=-\arctan(\cos x)+C $$
となる。
この積分では、分母を平方の和として捉えるだけでなく、正弦関数が余弦関数を微分した結果であることにも着目している。

例題3

$$ I=\int\frac{1+(1-x)e^x}{(1+e^x)^2}\,dx $$
分母が二乗なので、商の微分を考えてみる。
分母を一乗にした関数が原始関数の候補になると予測できる。
そこで、
$$ F(x)=\frac{P(x)}{1+e^x} $$
と考える。
分子には一次式と指数関数の積が現れているので、まず、
$$ P(x)=x $$
を試してみる。
このとき、
$$ F'(x)=\frac{1+e^x-xe^x}{(1+e^x)^2} $$
となる。
分子を整理すれば、
$$ 1+e^x-xe^x=1+(1-x)e^x $$
であるから、被積分関数と一致する。
したがって、
$$ I=\frac{x}{1+e^x}+C $$
を得る。
この例では、分母の二乗から商の微分を考え、分子に現れる一次式と指数関数の関係から、原始関数の形を予測している。

例題4

$$ I=\int\frac{2x^2+3}{(1+x^2)^2}\,dx $$
分母の二乗から、商の微分を考えられる。
しかし、分子の定数項と二次の項は、単純に商の微分だけで再現するには適していない。
そこで、逆正接関数の微分形も組み合わせることを考える。
$$ \frac{d}{dx}\arctan x =\frac{1+x^2}{(1+x^2)^2} $$
$$ \frac{d}{dx}\frac{x}{1+x^2} =\frac{1-x^2}{(1+x^2)^2} $$
これらを組み合わせれば、求めたい分子を作れる。
実際、
$$ 2x^2+3=\frac52(1+x^2)+\frac12(1-x^2) $$
なので、
$$ I=\frac52\arctan x+\frac{x}{2(1+x^2)}+C $$
を得る。
この例では、最初に見つけた微分形だけで解こうとせず、二つの微分形を組み合わせることが有効だった。

例題5

$$ I=\int\frac{1+x^2}{1+x^4}\,dx $$
分母は四次式だが、ある二つの式の平方の和として表せないかを考えてみる。
ここで、
$$ 1+x^4=(1-x^2)^2+2x^2 $$
と変形できる。
したがって、
$$ 1+x^4=(1-x^2)^2+(\sqrt2x)^2 $$
である。
この形から、商の逆正接関数を予測できる。
$$ u(x)=\sqrt2x $$
$$ v(x)=1-x^2 $$
とすれば、
$$ u'v-uv' =\sqrt2(1-x^2)+2\sqrt2x^2 $$
$$ =\sqrt2(1+x^2) $$
となる。
求めたい分子は、この定数倍である。
したがって、
$$ I=\frac{1}{\sqrt2} \arctan\left(\frac{\sqrt2x}{1-x^2}\right)+C $$
を得る。ただし、この表示は分母が0にならない区間ごとに用いる。区間をまたぐ場合には逆正接関数の枝を適切に調整する。
この例では、最初から分母が平方の和として与えられていたわけではない。
原始関数に逆正接関数を予測し、その微分形を作れるように分母を変形している。
つまり、被積分関数から直接既知形を見つけるだけでなく、利用したい微分形に合わせて式を作り変えるという考え方が使われている。

例題6

$$ I=\int e^{x^3}\cos(e^{x^3})x^2\,dx $$
この積分では、指数関数と余弦関数が組み合わされている。
まず、余弦関数が現れていることから、正弦関数を微分した結果ではないかと考える。
そこで、
$$ F(x)=\sin(e^{x^3}) $$
を候補とする。
微分すると、
$$ F'(x)=3x^2e^{x^3}\cos(e^{x^3}) $$
となる。
被積分関数の3倍なので、
$$ I=\frac13\sin(e^{x^3})+C $$
を得る。
この例では、複数の合成関数が重なっている。しかし、外側の正弦関数から順に微分した結果を予測すれば、一つの構造として認識できる。

例題7

$$ I=\int\frac{2x^3+10x}{x^4+10x^2+9}\,dx $$
分母は四次式である。
例題5と同じように、平方の和を探すことも考えられる。
実際、
$$ x^4+10x^2+9=(x^2+3)^2+(2x)^2 $$
と表せる。
しかし、逆正接関数の微分形を利用する前に、分母全体を微分した結果を確認してみる。
$$ (x^4+10x^2+9)'=4x^3+20x $$
これは分子の2倍である。
したがって、対数関数の微分形へ直接帰着できる。
$$ I=\frac12\ln(x^4+10x^2+9)+C $$
この例で重要なのは、分母を平方の和へ変形できるとしても、必ず逆正接関数を選ぶ必要はないということだ。
分母全体の微分が分子に対応していれば、対数関数の方が簡単に求められる。
一方、次の積分ではどうだろうか。
$$ J=\int\frac{6-2x^2}{x^4+10x^2+9}\,dx $$
分母は同じだが、分子は異なる。
そこで、
$$ u(x)=2x,\qquad v(x)=x^2+3 $$
と考える。
すると、
$$ u'v-uv'=2(x^2+3)-4x^2 $$
$$ =6-2x^2 $$
となる。
したがって、
$$ J=\arctan\left(\frac{2x}{x^2+3}\right)+C $$
を得る。
このように、同じ分母から異なる原始関数を予測できる場合がある。
どちらが適切かは、分母の見た目だけでなく、分子がどの微分構造に対応しているかによって判断するのである。


微分形接触の本質は、原始関数を勘で当てることではない。
被積分関数から微分構造を予測し、候補を微分して検証し、必要に応じて修正する。その過程を繰り返すことで、初めて見る積分に対しても原始関数の候補を自分で構成できるようになる。
大切なのは、知っている微分公式を増やすことだけではない。
一つの微分公式から、どれだけ多くの形を認識できるかということである。

投稿日:15時間前
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