数列 $\lbrace a_n\rbrace$ を
$$
a_1=\frac{1}{30},\qquad a_{n+1}=\frac{a_n}{(4n-17)a_n+1}\quad (n=1,2,3,\ldots)
$$
によって定める。$a_n$ が最大となる項を第 $k$ 項とするとき、$k$ および $a_k$ の値を求めよ。
漸化式の右辺は,分子が $a_n$ の単項式,分母が $a_n$ の一次式である。すなわち各更新は,原点を固定する一次分数変換 $\varphi_{c_n}$ である。この族について次が成り立つ。
問題文は,すべての $n$ について分母 $(4n-17)a_n+1$ が $0$ でないことを暗黙に前提している。$n\leqq4$ では $c_n < 0$ であるから,$a_1>0$ から正値性は自動的には伝播しない。実際,初期値だけを $a_1=\frac1{28}$ に変えると
$$
a_2=\frac1{15},\qquad a_3=\frac16,\qquad a_4=1,\qquad (4\cdot4-17)a_4+1=0
$$
となり,$a_5$ は定義されない。したがって正値性と定義可能性は仮定ではなく証明すべき事柄である。$\lbrace a_n\rbrace$ の存在を仮定して逆数をとる議論は循環的になりうるので,先に $\lbrace b_n\rbrace$ を独立に定め,次の補題で元の数列へ戻る。
すべての $n\in\mathbb{N}$ で $b_n>0$ ならば,問題の漸化式の分母 $(4n-17)a_n+1$ はすべての $n$ で正であり,$\lbrace a_n\rbrace$ は一意に定まって $a_n=\dfrac1{b_n}$($n\in\mathbb{N}$)を満たす。
$n$ についての帰納法で「$a_n$ が定まり $a_n=1/b_n$」を示す。$n=1$ では $a_1=1/30=1/b_1$ である。$a_n=1/b_n$ とすると
$$
(4n-17)a_n+1=\frac{c_n+b_n}{b_n}=\frac{b_{n+1}}{b_n} > 0
$$
であるから $a_{n+1}$ は定まり,$a_{n+1}=\dfrac{1/b_n}{b_{n+1}/b_n}=\dfrac1{b_{n+1}}$ である。
$x\mapsto1/x$ は $(0,\infty)$ 上で狭義単調減少であるから, 補題2 の仮定のもとで「$a_n$ の最大化」と「$b_n$ の最小化」は同値である。本解・別解2〜4・参考解1 は,いずれも何らかの方法で $b_n\geqq2$ を示して 補題2 を適用する。別解1 は $\lbrace a_n\rbrace$ を直接扱い,最初の5項の計算と帰納法で正値性を確保する。参考解2 は 補題1 (2) によって同じことを行う。
係数 $c_n$ の値は
$$
c_n=-13,\ -9,\ -5,\ -1,\ 3,\ 7,\ 11,\ \ldots
$$
であり,$c_n < 0\iff n\leqq4$,$c_n>0\iff n\geqq5$ である。$c_n=0$ となる自然数は存在しない($17/4\notin\mathbb{Z}$)。
全項が正であれば,
補題1
(3) より
$$
a_{n+1}-a_n=-c_na_na_{n+1}=(17-4n)a_na_{n+1}
$$
であり,隣接項の大小は $c_n$ の符号だけで決まる。ゆえに最大項の位置は $c_n$ の符号の切り替わりで決まり,初期値には依存しない。一方,最大値は初期値の逆数 $b_1=30$ と負の増分の総和 $\sigma_4=-28$ で決まる。本問で決定すべき事柄は,必要な情報によって次のように分離される。
| 決定すべき対象 | 必要な情報 | 本問での値 |
|---|---|---|
| 最大項の位置 $k$ | $c_n$ の符号が負から正へ変わる位置 | $c_4=-1$,$c_5=3$ |
| 最大値 $a_k$ | 初期値の逆数と負の増分の総和 | $b_5=30+\sigma_4=30-28=2$ |
| 論証の正当性 | 全項の正値性,最大項の一意性 | $b_n\geqq2$,$17/4\notin\mathbb{Z}$ |
階差 $c_n$ が $n$ の一次式であるから,$b_n$ は $n$ の二次式である(導出は
3.1 節
)。
$$
b_n=30+(n-1)(2n-17)=2n^2-19n+47=2\left(n-\frac{19}{4}\right)^2+\frac{15}{8}.
$$
判別式は $19^2-8\cdot47=-15 < 0$ であり,$b_n$ は実数 $n$ に対しても正である。
ここには二つの特徴的な点がある。階差の零点 $n=\frac{17}{4}$ と,放物線の軸 $n=\frac{19}{4}$ である。$f(x)=2x^2-19x+47$ とおくと
$$
f(x+1)-f(x)=4x-17=f'\!\left(x+\frac12\right)
$$
であり(二次式では厳密に成り立つ。
5.5 節
),両者は $\frac12$ だけずれる。整数上の最小点は $c_{k-1} < 0 < c_k$ を満たす $k=\lfloor 17/4\rfloor+1=5$ であり,これは $\frac{19}{4}$ に最も近い整数と一致する。階差の零点 $\frac{17}{4}$ を丸めると誤った値 $4$ を得る。
さらに,任意の $m,n$ について
$$
b_n-b_m=2\left\lbrace\left(n-\frac{19}{4}\right)^2-\left(m-\frac{19}{4}\right)^2\right\rbrace=(n-m)\lbrace2(n+m)-19\rbrace
$$
である。よって $b_n$ の大小は $\left\lvert n-\frac{19}{4}\right\rvert=\frac{\lvert4n-19\rvert}{4}$ の大小と一致する。$4n-19$ は奇数であり,$\lvert4n-19\rvert=\lvert4m-19\rvert$($m\neq n$)は $m+n=\frac{19}{2}$ を要するから起こらない。したがって $a_n$ はすべて相異なり,全項の大小順は
$$
a_5 > a_4 > a_6 > a_3 > a_7 > a_2 > a_8 > a_1 > a_9 > a_{10} > \cdots
$$
となる(
3.5 節
)。特に $b_n-2=\dfrac{(4n-19)^2-1}{8}=(n-5)(2n-9)$ であり,$b_n=2$ のもう一つの根 $\frac92$ は軸 $\frac{19}{4}$ に関して $5$ と対称な点である。この点が整数でないことが,最小点の一意性にほかならない。
以下は数値設定からの分析であり,出題者の意図についての推定を含む。
| 着目する構造 | 導かれる解法 |
|---|---|
| 各更新の増減が $c_n$ の符号だけで決まる( 補題1 (3)) | 別解1 |
| 逆数の階差 $\Delta b_n=c_n$ の符号変化 | 本解 |
| 負の増分の総和 $-28$ による一様な下界 | 別解3 |
| 任意の二項間の階差の和 | 別解4 |
| 一般項が二次式 | 別解2,3.1 節 |
| 減少量 $-\sigma_m$ が和一定の二数の積 | 参考解1 |
| 変換の合成則(1 パラメータ変換群) | 参考解2 |
補助数列 $\lbrace b_n\rbrace$ を $\lbrace a_n\rbrace$ と独立に定め,階差 $\Delta b_n=4n-17$ の符号から $b_n$ が第5項まで狭義減少し,以後狭義増加することを示す。$b_5=2$ を計算すれば,全項の正値性と最小値が同時に得られる。最後に $a_n=1/b_n$ を帰納的に確かめる。一般項は用いない。
数列 $\lbrace b_n\rbrace$ を
$$
b_1=30,\qquad b_{n+1}=b_n+4n-17\quad(n\in\mathbb{N})
$$
で定める。
$b_{n+1}-b_n=4n-17$ は $1\leqq n\leqq4$ で負,$n\geqq5$ で正であるから
$$
b_1 > b_2 > b_3 > b_4 > b_5,\qquad b_5 < b_6 < b_7 < \cdots.
$$
よって $n\neq5$ ならば $b_n>b_5$ である。
$$
b_5=30+(-13)+(-9)+(-5)+(-1)=2.
$$
ゆえにすべての $n\in\mathbb{N}$ で $b_n\geqq2>0$ であり,等号は $n=5$ のときに限る。
$n$ についての帰納法で,$a_n$ が定まり $a_n=1/b_n$ であることを示す。$a_1=\frac1{30}=\frac1{b_1}$ である。$a_n=1/b_n$ ならば
$$
(4n-17)a_n+1=\frac{4n-17+b_n}{b_n}=\frac{b_{n+1}}{b_n} > 0
$$
であるから $a_{n+1}$ は定まり,
$$
a_{n+1}=\frac{1/b_n}{b_{n+1}/b_n}=\frac1{b_{n+1}}.
$$
$a_n=\dfrac1{b_n}\leqq\dfrac12$ であり,等号は $n=5$ のときに限る。よって最大項はただ一つ存在し,
$$
\boxed{k=5,\qquad a_k=\frac12}
$$
| $n$ | $1$ | $2$ | $3$ | $4$ | $5$ | $6$ | $7$ | $8$ | $9$ |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| $c_n$ | $-13$ | $-9$ | $-5$ | $-1$ | $3$ | $7$ | $11$ | $15$ | $19$ |
| $b_n$ | $30$ | $17$ | $8$ | $3$ | $2$ | $5$ | $12$ | $23$ | $38$ |
| $a_n$ | $\frac1{30}$ | $\frac1{17}$ | $\frac18$ | $\frac13$ | $\frac12$ | $\frac15$ | $\frac1{12}$ | $\frac1{23}$ | $\frac1{38}$ |
3.1 節は一般項の別導出,3.2〜3.5 節は高校数学の範囲で完結する別解,3.6 節は高校数学の範囲にあるが手順の多い参考解,3.7 節は変換群の観点に立つ参考解である。
階差が一次式なら一般項は二次式である。等差数列の和による導出(別解2)のほかに,二次式を仮定して係数を決める方法,和を中点での積分に置き換える方法,最小項を中心に展開する方法がある。いずれも答の数式は同じだが,現れる構造が異なる。
$q(n)=An^2+Bn+C$ とおくと $\Delta q(n)=A(2n+1)+B=2An+(A+B)$ である。これが $4n-17$ に一致する条件から $A=2$,$B=-19$,さらに $q(1)=30$ から $C=47$ を得る。逆に $q(n)=2n^2-19n+47$ は $q(1)=30$,$\Delta q(n)=4n-17$ を満たすから,帰納法により $b_n=q(n)$ である。言い換えれば,$I_n=b_n-(2n^2-19n)$ は $\Delta I_n=(4n-17)-(4n-17)=0$ を満たす不変量で,$I_n=I_1=47$ である。
一次関数 $c(t)=4t-17$ に対しては $\int_{j-1/2}^{j+1/2}c(t)\,dt=c(j)$ が成り立つ(区間の中点での値が平均値に等しい)。よって
$$
\sigma_{n-1}=\sum_{j=1}^{n-1}c(j)=\int_{1/2}^{\,n-1/2}(4t-17)\,dt=\Bigl[2t^2-17t\Bigr]_{1/2}^{\,n-1/2}=2n^2-19n+17
$$
であり,$b_n=30+\sigma_{n-1}=2n^2-19n+47$ である。積分の上端が $n-\frac12$ であることが,軸 $\frac{19}{4}$ が零点 $\frac{17}{4}$ から $\frac12$ ずれる理由である。
$b_5=2$ から左右へ階差を加える。整数 $t\geqq0$ に対して
$$
b_{5+t}=2+\sum_{i=0}^{t-1}(4i+3)=2+t(2t+1),
$$
$1\leqq r\leqq4$ に対して
$$
b_{5-r}=2-\sum_{j=5-r}^{4}c_j=2+\sum_{i=1}^{r}(4i-3)=2+r(2r-1)
$$
である。後者は前者で $t=-r$ としたものに等しいから,$t\geqq-4$ なるすべての整数で $b_{5+t}=2+t(2t+1)$ が成り立つ。$t=n-5$ とおけば $b_n=2+(n-5)(2n-9)=2n^2-19n+47$ である。三角数 $T_r=\frac{r(r+1)}{2}$ を用いると $b_{5+t}=2+T_{2t}$($t\geqq0$),$b_{5-r}=2+T_{2r-1}$ と表せる。
補題1 (3) により,$a_n>0$ かつ $1+c_na_n>0$ ならば,$a_{n+1}>a_n$ と $c_n < 0$ は同値である。$n\leqq4$ では分母の正値性が自動的には従わない( 1.3 節 )ので,最初の5項を直接計算する。$n\geqq5$ では $c_n>0$ により分母が $1$ を超えることを帰納的に示す。逆数も補助数列も用いない。
漸化式に従って計算すると
$$
\begin{aligned}
a_2&=\frac{1/30}{1-13/30}=\frac{1/30}{17/30}=\frac1{17},\\
a_3&=\frac{1/17}{1-9/17}=\frac{1/17}{8/17}=\frac18,\\
a_4&=\frac{1/8}{1-5/8}=\frac{1/8}{3/8}=\frac13,\\
a_5&=\frac{1/3}{1-1/3}=\frac{1/3}{2/3}=\frac12.
\end{aligned}
$$
各分母 $\frac{17}{30},\frac{8}{17},\frac38,\frac23$ は $0$ と $1$ の間にあるから,$n=1,2,3,4$ で $a_{n+1}>a_n>0$ であり,
$$
0 < a_1 < a_2 < a_3 < a_4 < a_5=\frac12.
$$
次に,$n\geqq5$ について「$a_n$ が定まり $a_n>0$」を帰納法で示す。$n=5$ では成り立つ。$n\geqq5$ で成り立つとすると,$4n-17\geqq3>0$ より $(4n-17)a_n+1>1$ であるから,$a_{n+1}$ は定まり
$$
0 < a_{n+1}=\frac{a_n}{(4n-17)a_n+1} < a_n.
$$
よって $a_5 > a_6 > a_7 > \cdots > 0$ である。以上より $a_n$ は第5項でただ一つの最大値をとり,
$$
\boxed{k=5,\qquad a_k=\frac12}
$$
逆数の漸化式を最後まで解き,正の二次式を自然数上で最小化する。実数上の最小点(軸)と整数上の最小点を区別することが要点である。
階差を加えて
$$
b_n=30+\sum_{j=1}^{n-1}(4j-17)=30+2n(n-1)-17(n-1)=2n^2-19n+47.
$$
平方完成すると
$$
b_n=2\left(n-\frac{19}{4}\right)^2+\frac{15}{8}=2\left(\frac{4n-19}{4}\right)^2+\frac{15}{8}
$$
であり,$b_n>0$ である。よって
補題2
により $a_n=\dfrac1{2n^2-19n+47}$ であり,$a_n$ の最大化は $b_n$ の最小化と同値である。
$b_n$ は $\lvert4n-19\rvert$ の狭義増加関数である。$4n-19$ は奇数であるから $\lvert4n-19\rvert\geqq1$ であり,等号は $4n-19=\pm1$,すなわち $n=5$ または $n=\frac92$ のときに限るが,後者は自然数でない。ゆえに
$$
b_n\geqq2\cdot\frac1{16}+\frac{15}{8}=2
$$
であり,等号は $n=5$ のときに限る。したがって
$$
\boxed{k=5,\qquad a_k=\frac12}
$$
最小項の位置を先に探さず,すべての項に共通する下界を直接構成し,その等号成立条件から最小項を決める。部分和 $\sigma_m$ が最も小さくなるのは,負の増分をすべて取り込み,正の増分をまだ一つも取り込んでいないときである。この状態からの隔たりを二つの非負量に分解する。
$c_j < 0\iff j\leqq4$,$c_j>0\iff j\geqq5$ であり,$\sigma_4=-13-9-5-1=-28$ である。整数 $m\geqq0$ に対して
$$
P_m=\sum_{j=5}^{m}c_j,\qquad R_m=\sum_{j=m+1}^{4}(-c_j)
$$
とおく(空和は $0$)。各項の符号から $P_m\geqq0$,$R_m\geqq0$ であり,$P_m=0\iff m\leqq4$,$R_m=0\iff m\geqq4$ である。$m\leqq4$ ならば $\sigma_m=\sigma_4-\sum_{j=m+1}^{4}c_j=-28+R_m$,$m\geqq4$ ならば $\sigma_m=\sigma_4+\sum_{j=5}^{m}c_j=-28+P_m$ であるから,いずれの場合も
$$
\sigma_m=-28+P_m+R_m.
$$
よって
$$
b_n=30+\sigma_{n-1}=2+P_{n-1}+R_{n-1}\geqq2
$$
であり,等号は $P_{n-1}=R_{n-1}=0$,すなわち $n-1=4$ のときに限る。
補題2
により $a_n=1/b_n\leqq\frac12$ であり,等号は $n=5$ のときに限る。
$$
\boxed{k=5,\qquad a_k=\frac12}
$$
一般項を求める代わりに,任意の二項の間の階差の和を計算する。第5項を候補とし,他のすべての項との差が正であることを示す。最大項の決定より強い,全項の大小順まで得られる。
$m < n$ のとき,$j=m,\ldots,n-1$ の $n-m$ 項の等差数列の和として
$$
b_n-b_m=\sum_{j=m}^{n-1}(4j-17)=(n-m)\cdot\frac{(4m-17)+(4n-21)}{2}=(n-m)\lbrace2(m+n)-19\rbrace.
$$
$m=n$ では両辺とも $0$ であり,$m$ と $n$ を入れ替えると両辺とも符号だけが変わるから,この等式はすべての $m,n\in\mathbb{N}$ で成り立つ。
$b_5=30-13-9-5-1=2$ であり,$m=5$ とすると
$$
b_n-2=(n-5)(2n-9).
$$
$n\leqq4$ では $n-5\leqq-1$,$2n-9\leqq-1$ であるから積は $1$ 以上,$n\geqq6$ では $n-5\geqq1$,$2n-9\geqq3$ であるから積は $3$ 以上である。よって $b_n\geqq2$ であり,等号は $n=5$ のときに限る。
補題2
により
$$
\boxed{k=5,\qquad a_k=\frac12}
$$
さらに,$m < n$ のとき $2(m+n)-19$ は奇数で $0$ にならないから
$$
a_n>a_m\iff b_n < b_m\iff m+n\leqq9
$$
が成り立つ。これから全項の大小順 $a_5 > a_4 > a_6 > a_3 > a_7 > a_2 > a_8 > a_1 > a_9 > a_{10} > \cdots$ が従う。
初期値からの減少量 $D_m=-\sigma_m=m(15-2m)$ を,展開せずに一次因子の積のまま扱う。$2D_m=X\cdot Y$($X=2m$,$Y=15-2m$)とすると $X+Y=15$ は一定であり,相加平均・相乗平均の不等式が使える。実数上の上界を整数条件で鋭くし,等号条件から最小項を決める。
$b_n=30-D_{n-1}$ であるから,整数 $m\geqq0$ における $D_m$ の最大値を求めればよい。
$m\geqq8$ では $m>0$,$15-2m < 0$ より $D_m < 0$ である。$0\leqq m\leqq7$ では $X=2m\geqq0$,$Y=15-2m\geqq1$ であり,相加平均・相乗平均の不等式より
$$
2D_m=XY\leqq\left(\frac{X+Y}{2}\right)^2=\frac{225}{4},\qquad D_m\leqq\frac{225}{8}=28+\frac18.
$$
$D_m$ は整数であるから $D_m\leqq28$ である。等号 $D_m=28$ は $XY=56$,$X+Y=15$,すなわち $X,Y$ が $u^2-15u+56=(u-7)(u-8)=0$ の2解であることと同値であり,$\lbrace X,Y\rbrace=\lbrace7,8\rbrace$ を得る。$X=2m$ は偶数であるから $X=8$,$m=4$ に限る。$m\geqq8$ では $D_m < 0 < 28$ であるから,すべての整数 $m\geqq0$ で $D_m\leqq28$ が成り立ち,等号は $m=4$ のときに限る。
よって $b_n=30-D_{n-1}\geqq2$ であり,等号は $n=5$ のときに限る。
補題2
により
$$
\boxed{k=5,\qquad a_k=\frac12}
$$
補題1
(2) により,更新の合成はパラメータの加法で表される。よって $a_n=\varphi_{\sigma_{n-1}}\!\left(\frac1{30}\right)$ であり,
$$
\psi(t)=\varphi_t\!\left(\frac1{30}\right)=\frac1{30+t}\qquad(t>-30)
$$
は狭義単調減少であるから,$a_n$ の最大化は累積パラメータ $\sigma_{n-1}$ の最小化に帰着する。$\psi$ は微分方程式 $\psi'=-\psi^2$,$\psi(0)=\frac1{30}$ の解であり,数列 $\lbrace a_n\rbrace$ はこの単調な曲線を時刻 $\sigma_0,\sigma_1,\sigma_2,\ldots=0,-13,-22,-27,-28,-25,-18,-7,8,\ldots$ で観測したものである。時刻は一度後退してから前進に転じ,その折り返しの瞬間に $a_n$ は最大となる。
$\sigma_m=m(2m-15)=\dfrac{(4m-15)^2-225}{8}$ であり,$4m-15$ は奇数であるから $(4m-15)^2\geqq1$,等号は $4m-15=\pm1$,すなわち $m=4$($m=\frac72$ は整数でない)のときに限る。よって
$$
\sigma_m\geqq\frac{1-225}{8}=-28\qquad(m\geqq0)
$$
であり,等号は $m=4$ のときに限る。特に $30+\sigma_m\geqq2>0$ である。
$n$ についての帰納法で「$a_n$ が定まり $a_n=\varphi_{\sigma_{n-1}}(1/30)$」を示す。$n=1$ では $\varphi_0(1/30)=1/30$ である。$n$ で成り立つとし,
補題1
(2) を $x=\frac1{30}$,$t=\sigma_{n-1}$,$s=c_n$ に適用する。$1+tx=\frac{30+\sigma_{n-1}}{30}>0$,$1+(s+t)x=\frac{30+\sigma_n}{30}>0$ であるから,分母 $1+c_na_n$ は正で
$$
a_{n+1}=\varphi_{c_n}\bigl(\varphi_{\sigma_{n-1}}(1/30)\bigr)=\varphi_{\sigma_n}(1/30).
$$
ゆえに $a_n=\psi(\sigma_{n-1})\leqq\psi(-28)=\frac12$ であり,等号は $n-1=4$ のときに限る。
$$
\boxed{k=5,\qquad a_k=\frac12}
$$
合成則は行列で計算することもできる。$\varphi_c$ に $M(c)=\begin{pmatrix}1&0\\ c&1\end{pmatrix}$ を対応させると $M(s)M(t)=M(s+t)$ であり,
$$
M(c_{n-1})\cdots M(c_1)\begin{pmatrix}1\\ 30\end{pmatrix}=M(\sigma_{n-1})\begin{pmatrix}1\\ 30\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}1\\ 30+\sigma_{n-1}\end{pmatrix}
$$
の成分比として $a_n=\dfrac{1}{30+\sigma_{n-1}}$ を得る。
以下は独立の解法とは数えず,既出の解法の表現違いまたは部分的な短縮として扱う。
| 解法 | 主に利用する構造 | 正値性の確保 | 一般項 | 範囲 | 長所 | 注意点 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 本解 | 階差の符号変化 | 単調性と $b_5=2$ | 不要 | 高校 | 計算量が最小,位置と値を分離 | 補助数列を先に定義 |
| 3.1 節 | 階差が一次なら二次式 | - | 導出 | 高校 | 半整数のずれの由来が見える | 仮定した形の検証 |
| 別解1 | 分母と $1$ の比較 | 直接計算と帰納法 | 不要 | 高校 | 逆数を用いない | $n\leqq4$ の分母の正値性 |
| 別解2 | 二次式の平方完成 | 判別式が負 | 必要 | 高校 | 数列全体が分かる | 実数上と整数上の区別 |
| 別解3 | 負の増分の総和 | 一様な下界 $b_n\geqq2$ | 不要 | 高校 | 一つの不等式に集約 | 等号の達成の確認 |
| 別解4 | 二項間の階差の和 | 候補との比較 | 不要 | 高校 | 全項の大小順まで得る | $n\leqq4$ で両因子が負 |
| 参考解1 | 和一定の二数の積 | $D_m\leqq28$ | 因数分解形 | 高校 | 不等式による最適化 | 範囲の除外と整数条件 |
| 参考解2 | 変換の合成則 | $\sigma_m\geqq-28$ | 不要 | 大学 | 逆数が効く理由を示す | 合成の定義域 |
試験場での第一選択は本解である。一つの式 $\Delta b_n=4n-17$ から位置が決まり,$b_5=2$ の計算で値と正値性が同時に確定する。逆数に気付かなければ別解1 で完答できる。別解3・別解4 は局所的な増減を経由せず大域的な不等式を直接示すので,符号が複数回変わる類題にも拡張しやすい。別解2 は数列全体の情報を与え,参考解1 は二次式の最適化を不等式の問題として読み替える。
すべての解法は一つの原理,すなわち「$\lbrace\varphi_c\rbrace$ の加法構造(
補題1
)と正値性」に基づく。違いは $\min_m\sigma_m$ をどう証明するかにあり,局所的な符号(本解・別解1),一様な下界(別解3),候補との比較(別解4),明示的な二次式(別解2),相加平均・相乗平均の不等式(参考解1),変換群のパラメータ(参考解2)に分かれる。
| 症状 | 検討する表現・道具 | 本問での例 |
|---|---|---|
| 分子が $a_n$ の単項式,分母が $a_n$ の一次式 | 逆数(固定点 $0$ での共役) | 本解, 1.2 節 |
| 各更新の増減が係数の符号だけで決まる | 隣接項比較(分母と $1$ の比較) | 別解1 |
| 階差の符号変化が一度だけ | 離散凸性,局所最小=大域最小 | 本解, 補題4 |
| 符号付き増分の累積 | 正部分・負部分への分解と下界 | 別解3, 定理5 |
| 最大項の候補が先に分かる | 候補との差の因数分解 | 別解4 |
| 一般項が二次式 | 軸に最も近い整数,奇数の平方 | 別解2 |
| 二次式が和一定の一次因子の積 | 相加平均・相乗平均と整数条件 | 参考解1 |
| 写像族が合成で閉じる | 1 パラメータ変換群,累積パラメータ | 参考解2 |
| 連続化して考えたくなる | 中点公式 $\Delta f(x)=f'(x+\frac12)$ | 5.5 節 |
増分を $d_1=-3$,$d_2=2$,$d_3=-4$,$d_j=j$($j\geqq4$)とすると,部分和は
$$
s_0=0,\quad s_1=-3,\quad s_2=-1,\quad s_3=-5,\quad s_4=-1,\quad s_5=4,\quad\ldots
$$
である。$m=1$ は局所最小であるが大域最小ではなく,大域最小は $m=3$ の $-5$ である。また負の部分の総和は $3+4=7$ であるが,$-7$ は達成されない。符号の並びが「非正のものが先,非負のものが後」になっていないからである(
定理5
)。本問で局所判定と負の増分の総和の評価がともに鋭いのは,$c_n$ が単調増加で符号変化が一度だけだからである。
係数を $c_n=\alpha n-\beta$($\alpha>0$,$r=\beta/\alpha>0$,$r\notin\mathbb{Z}$)とすると,負の増分は $n\leqq\lfloor r\rfloor$ に限られ,最大項は第 $\lfloor r\rfloor+1$ 項である。負の部分の総和を $N=\sum_{j=1}^{\lfloor r\rfloor}(\beta-\alpha j)$ とし,最大値に $M>0$ を指定したければ
$$
a_1=\frac{M}{1+NM}
$$
とすればよい。このとき $b_1=\frac1M+N$,$b_{\lfloor r\rfloor+1}=\frac1M>0$ であり,正値性は自動的に保たれる。本問は $\alpha=4$,$\beta=17$,$r=\frac{17}{4}$,$N=28$,$M=\frac12$ の場合で,$a_1=\frac{1/2}{15}=\frac1{30}$ を与える。$\frac1M$ と $\alpha,\beta$ を整数にとれば全項が単位分数になる。$r\in\mathbb{Z}$ とすると $c_r=0$ により最大項が二つになり,問題として不適切になる。
| 事項 | 高校数学での扱い | 一般理論 |
|---|---|---|
| 逆数をとる変形 | $\frac1{a_{n+1}}=\frac1{a_n}+c_n$ | 一次分数変換の共役による線形化,標準座標 |
| 更新の合成 | 行列の積として計算 | $\mathrm{PGL}(2,\mathbb{R})$ の 1 パラメータ部分群 |
| 分数漸化式の線形化 | 逆数,不変量 | 離散 Riccati 方程式,双線形形式 |
| 階差の符号による増減 | 増減表 | 離散凸性(局所最小=大域最小) |
| 単峰性 | 増減の切り替わり | 逆数の凸性,対数凹性,$s$ 凹性 |
| 階差と微分のずれ | 扱わない | 中点公式,Euler–Maclaurin の公式 |
| 二次式の整数上の最小 | 平方完成,軸に最も近い整数 | 格子上の二次形式の最小化(最近ベクトル問題) |
| 累積和の下界 | 負の増分の総和 | 正部分・負部分への分解,部分和の順序比較 |
本解・別解1〜4・参考解1 と 3.1 節は左欄の範囲で完結する。右欄は,それらの計算が成り立つ理由を説明する理論である。
実数を成分とする正則な $2\times2$ 行列 $\begin{pmatrix}\alpha&\beta\\ \gamma&\delta\end{pmatrix}$ は $x\mapsto\dfrac{\alpha x+\beta}{\gamma x+\delta}$ により $\mathbb{R}\cup\lbrace\infty\rbrace$ に作用し,スカラー倍の違いを同一視した群 $\mathrm{PGL}(2,\mathbb{R})$ が一次分数変換全体をなす。$\varphi_c$ には $M(c)=\begin{pmatrix}1&0\\ c&1\end{pmatrix}$ が対応し,$M(s)M(t)=M(s+t)$ であるから $\lbrace M(c)\rbrace$ は 1 パラメータ部分群である。$N=\begin{pmatrix}0&0\\ 1&0\end{pmatrix}$ とすると $N^2=O$ より $M(c)=I+cN=\exp(cN)$ である。$c\neq0$ のとき $\operatorname{tr}M(c)=2$ で,$\varphi_c$ の固定点は $0$ のみである(放物型)。
$x\mapsto1/x$ に対応する $J=\begin{pmatrix}0&1\\ 1&0\end{pmatrix}$ で共役をとると
$$
JM(c)J=\begin{pmatrix}1&c\\ 0&1\end{pmatrix}
$$
となり,$\varphi_c$ は平行移動 $y\mapsto y+c$ に移る。係数 $c_n$ が $n$ ごとに変わっても,すべての $M(c_n)$ が一つの可換な部分群に属するため,同時に平行移動へ変換できる。これが非自励的な(係数が $n$ に依存する)漸化式が解ける理由である。
また $\dfrac{\partial}{\partial c}\varphi_c(x)=-\varphi_c(x)^2$ であるから,$t\mapsto\varphi_t(x)$ は微分方程式 $\dot y=-y^2$ の解であり,$\lbrace\varphi_c\rbrace$ はベクトル場 $V=-x^2\dfrac{d}{dx}$ の流れである。流れが平行移動になる座標 $u$ は $V u=1$,すなわち $-x^2u'(x)=1$ を満たし,$u=\dfrac1x+\text{定数}$ となる(標準座標)。微分可能性を仮定しなくても,次の一意性が成り立つ。
関数 $h:(0,\infty)\to\mathbb{R}$ と実数 $\lambda$ が,$x>0$,$1+cx>0$ を満たすすべての $(x,c)$ について $h(\varphi_c(x))=h(x)+\lambda c$ を満たすならば,ある定数 $\mu$ によって $h(x)=\dfrac{\lambda}{x}+\mu$ と表される。
$x,y>0$ を任意にとり $c=\dfrac1y-\dfrac1x$ とおくと,$1+cx=\dfrac xy>0$,$\varphi_c(x)=y$ である。よって $h(y)-h(x)=\lambda\left(\dfrac1y-\dfrac1x\right)$,すなわち $h(y)-\dfrac{\lambda}{y}=h(x)-\dfrac{\lambda}{x}$ がすべての $x,y>0$ で成り立つ。
すなわち,すべての $\varphi_c$ を $c$ に比例する平行移動へ同時に変換する座標は,$1/x$ の一次関数に限られる。逆数をとる変形は,この意味で本質的に唯一の加法化である。これは他の解法の不存在を主張するものではなく,線形化する座標の選択についての主張である。
$a_{n+1}=\dfrac{\alpha_na_n+\beta_n}{\gamma_na_n+\delta_n}$ の形の漸化式は離散 Riccati 方程式と呼ばれる。$a_n=u_n/v_n$ とおき
$$
\begin{pmatrix}u_{n+1}\\ v_{n+1}\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}\alpha_n&\beta_n\\ \gamma_n&\delta_n\end{pmatrix}\begin{pmatrix}u_n\\ v_n\end{pmatrix}
$$
と定めれば,比 $u_n/v_n$ は元の漸化式を満たす。非線形の一階漸化式は二次元の線形漸化式に帰着する。本問では係数行列が $M(c_n)$ であり,$u_{n+1}=u_n$,$v_{n+1}=c_nu_n+v_n$ である。$u_n\equiv1$ とすれば $v_n=b_n$ となる。
表示 $a_n=u_n/v_n$ には $(u_n,v_n)\mapsto(\lambda_nu_n,\lambda_nv_n)$ という自由度があるが,どの表示でも
$$
u_nv_{n+1}-u_{n+1}v_n=c_nu_nu_{n+1}
$$
が成り立つ($\frac{v_{n+1}}{u_{n+1}}-\frac{v_n}{u_n}=c_n$ の分母を払ったもの)。未知量を二つの量の比に分けて双線形な関係式に直す操作は,可積分系における広田の双線形化法と同じ発想である。
連続版では,Riccati 方程式 $y'=q_0(t)+q_1(t)y+q_2(t)y^2$ が $y=-\dfrac{w'}{q_2w}$ により二階線形微分方程式に帰着する。$q_0=q_1=0$ の場合は $z=1/y$ により $z'=-q_2$ となり,参考解2 の $\psi'=-\psi^2$ は $(1/\psi)'=1$ に対応する。
実数列 $\lbrace x_n\rbrace_{n\geqq1}$ がすべての $n$ で $\Delta^2x_n\geqq0$ を満たすとする。自然数 $k$ が $\Delta x_k\geqq0$ と,$k\geqq2$ のときはさらに $\Delta x_{k-1}\leqq0$ を満たすならば,$x_k=\min_nx_n$ である。さらに $\Delta x_k>0$ であり,$k\geqq2$ のときは $\Delta x_{k-1} < 0$ でもあるならば,最小値をとる添字は $k$ のみである。
仮定より $\Delta x_n$ は $n$ について単調非減少である。$n>k$ ならば
$$
x_n-x_k=\sum_{j=k}^{n-1}\Delta x_j\geqq(n-k)\Delta x_k\geqq0,
$$
$n < k$ ならば
$$
x_n-x_k=-\sum_{j=n}^{k-1}\Delta x_j\geqq-(k-n)\Delta x_{k-1}\geqq0
$$
である。後半の仮定のもとでは,それぞれ最後の不等号が狭義になる。
本問では $x_n=b_n$,$\Delta b_n=4n-17$,$\Delta^2b_n=4$ であり,$\Delta b_4=-1 < 0 < 3=\Delta b_5$ から $k=5$ が唯一の最小点である。狭義の凸性 $\Delta^2x_n>0$ だけでは最小点は一意とは限らない。$\Delta x_r=0$ となる $r$ があれば $x_r=x_{r+1}$ がともに最小となりうる。
正数列 $\lbrace a_n\rbrace$ について $\lbrace1/a_n\rbrace$ が凸ならば,$\Delta(1/a_n)$ は単調非減少であるから $1/a_n$ は減少から増加へ高々一度しか転じず,$a_n$ は単峰的である。一方,$a_n^2\geqq a_{n-1}a_{n+1}$(対数凹性)ならば $-\log a_n$ が凸であり,その指数 $1/a_n$ も凸である。逆は成り立たない。本問の数列は $1/a_n$ が凸であるが
$$
a_6^2=\frac1{25} < \frac1{24}=a_5a_7
$$
であり,対数凹ではない。連続関数に対しては,$s < 0$ のとき $f^s$ が凸であることを $s$ 凹性と呼び($s=0$ は対数凹性),$s$ 凹ならば $t\leqq s$ なるすべての $t$ について $t$ 凹である(Borell,Brascamp–Lieb)。本問の $\lbrace a_n\rbrace$ は,この階層の $s=-1$ に相当する性質の離散版をもち,$s=0$ の性質はもたない。
$f$ が $C^3$ 級ならば,$x+\frac12$ を中心とする Taylor 展開により,ある $\xi\in(x,x+1)$ が存在して
$$
f(x+1)-f(x)=f'\!\left(x+\frac12\right)+\frac{f'''(\xi)}{24}
$$
が成り立つ。$f$ が二次以下の多項式ならば誤差項は $0$ である。本問の $f(x)=2x^2-19x+47$ では $\Delta f(n)=4n-17=f'(n+\frac12)$ であり,階差の零点 $\frac{17}{4}$ と軸 $\frac{19}{4}$ のずれ $\frac12$ はこの公式から生じる。整数上の最小点は $\lfloor17/4\rfloor+1$ であり,$\frac{19}{4}$ に最も近い整数である。
同じことは和と積分の関係としても表せる。一次関数 $c(t)$ では $\sum_{j=1}^{n-1}c(j)=\int_{1/2}^{\,n-1/2}c(t)\,dt$ が厳密に成り立つ(
3.1 節
(b))。これに対し,差分を微分に置き換えた $\dfrac{d}{dn}\left(\dfrac1a\right)=4n-17$ を解くと $\dfrac1a=2n^2-17n+45$ となり,軸は $\frac{17}{4}$,予測される最大項は第4項となって誤る。和と積分の端点補正は一般には Euler–Maclaurin の公式が与える。
一方,数列を連続な流れに厳密に埋め込むこともできる。参考解2 のとおり $a_n=\psi(\sigma_{n-1})$,$\psi'=-\psi^2$ であり,連続な時間の役割を果たすのは添字 $n$ ではなく累積パラメータ $\sigma_{n-1}$ である。
一変数の凸二次関数を整数上で最小化するには,軸に最も近い整数を選べばよい。軸が半整数のときに限り最小点は二つになり,これは階差の零点が整数であること($c_r=0$)と同値である。平方完成 $b_n=2\left(n-\frac{19}{4}\right)^2+\frac{15}{8}$ は,複素数 $z_0=\frac{19+i\sqrt{15}}{4}$ を用いて $b_n=2\lvert n-z_0\rvert^2$ とも書け,実軸上の整数点と $z_0$ との距離の最小化と見ることもできる。
多変数では事情が異なる。正定値二次形式 $Q$ について $Q(\boldsymbol{z}-\boldsymbol{z}_0)$ を整数点 $\boldsymbol{z}\in\mathbb{Z}^d$ 上で最小化する問題は格子の最近ベクトル問題であり,連続最小点 $\boldsymbol{z}_0$ の各成分を丸めても最小点が得られるとは限らない。一般の次元ではこの問題は NP 困難である(van Emde Boas,1981)。本問の「軸に最も近い整数」は,一変数に特有の単純さに依っている。
別解3 の議論は次の一般的な形にまとめられる。
実数列 $\lbrace d_j\rbrace_{j\geqq1}$ について $N=\sum_{j\geqq1}\max(-d_j,0)$ が有限であるとし,$s_m=\sum_{j=1}^{m}d_j$($m\geqq0$)とおく。このとき $s_m\geqq-N$ であり,等号成立は「$j\leqq m$ ならば $d_j\leqq0$,かつ $j>m$ ならば $d_j\geqq0$」と同値である。
$d_j^{+}=\max(d_j,0)$,$d_j^{-}=\max(-d_j,0)$ とおくと $d_j=d_j^{+}-d_j^{-}$ であるから
$$
s_m+N=\sum_{j\leqq m}d_j^{+}+\sum_{j>m}d_j^{-}\geqq0.
$$
等号は右辺の各項がすべて $0$ であること,すなわち $j\leqq m$ で $d_j^{+}=0$,$j>m$ で $d_j^{-}=0$ であることと同値である。
本問では $d_j=c_j$,$N=28$ であり,等号条件を満たす $m$ は $4$ のみである。
4.3 節
の例では等号条件を満たす $m$ が存在せず,下界 $-N$ は達成されない。
また,$d_1\leqq d_2\leqq\cdots\leqq d_L$ ならば,$\lbrace1,\ldots,L\rbrace$ の任意の置換 $\pi$ と $0\leqq m\leqq L$ に対して
$$
\sum_{j=1}^{m}d_j\leqq\sum_{j=1}^{m}d_{\pi(j)}
$$
が成り立つ(左辺は $m$ 個の最小のものの和である)。$\varphi_s\circ\varphi_t=\varphi_t\circ\varphi_s$ であるから,最初の $L$ 回の更新をどの順序で行っても $L$ 回後の値は変わらない。しかし途中の値は順序に依存し,本問の順序($c_n$ の小さい順)は,すべての時刻で値を同時に最大にする並べ方である。実際,どの順序でも部分和は $-28$ 以上であるから正値性は保たれ,各時刻の値 $\dfrac1{30+(\text{部分和})}$ は元の順序で最大となる。
Riccati 方程式の名は 18 世紀前半の J. Riccati に由来し,一次分数変換は 19 世紀の A. F. Möbius らによって体系的に研究された。和と積分の差を記述する Euler–Maclaurin の公式は 18 世紀前半に Euler と Maclaurin がそれぞれ得たものである。双線形形式による非線形方程式の解法は広田良吾(1971)がソリトン方程式に対して創始した。離散凸性の理論は室田一雄らにより 1990 年代以降に離散凸解析として整備された。$s$ 凹性の階層は Borell(1975),Brascamp と Lieb(1976)の仕事に遡る。本問はこれらの理論が交わる,最も単純な具体例の一つである。