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エンタメ解説
文献あり

Stone-Weierstrassの定理で幻想をぶち壊す

192
1

あいさつ

んちゃ!
今回は、やなさんが朝起きたら思いついた重み1の直交基底系から任意の重みに対する直交基底系を構成する方法についてずんだもんが代筆いたします。
と言いたい所だけど、やなさん(主)には秘密にして欲しいのですが、残念ながらやなさんの言っているこの方法ではダメみたいです。
ただ、この方法が一般的にダメな理由を示す事は教育的観点から重要かもしれないと思い、僕が独断でダメな理由を証明していきます。
今回はいつもより抽象度の高い記事になっています。位相空間論の初歩を用いるので慣れていない人は参考文献:位相への30講などを読む事をお勧めします。


表記
  1. K[x]:={k=0Nakxk|a0,a1,...,aNK}
  2. K(x):={f(x)g(x)|f(x),g(x)K[x](g(x)0)}
  3. 距離空間(A,d)に対して以下の様な集合を定める。Bϵ(d;x)={yA|d(x,y)<ϵ}

Fourier展開から作る直交基底系

m,nN0:{0Tsin2mπTxsin2nπTxdx=T2(δm,nδm,n)0Tcos2mπTxcos2nπTxdx=T2(δm,n+δm,n)0Tsin2mπTxcos2nπTxdx=0

[1]
0Tsin2mπTxsin2nπTxdx=120T{cos2π(mn)Tcos2π(m+n)T}dx=T2(δm,nδm,n)
[2]
0Tcos2mπTxcos2nπTxdx=120T{cos2π(mn)T+cos2π(m+n)T}dx=T2(δm,n+δm,n)
[3]
0Tsin2mπTxcos2nπTxdx=120T{sin2π(m+n)T+sin2π(mn)T}dx=0

やなさんの思いついた方法

x=0yw(t)dt,T=0Uw(t)dtの様に変数変換を行うと下記の様に書ける。
m,nN0{ξn(x)=sin{2nπT0xw(t)dt}ηn(x)=cos{2nπT0xw(t)dt}0Uw(x)ξm(x)ξn(x)=T2(δm,nδm,n)0Uw(x)ηm(x)ηn(x)=T2(δm,n+δm,n)0Uw(x)ξm(x)ηn(x)=0

w(t)=t2とおくと次の式が成り立つ事を証明してください。
{0(3T)13x2sin(2mπ3Tx3)sin(2nπ3Tx3)dx=T2(δm,nδm,n)0(3T)13x2cos(2mπ3Tx3)cos(2nπ3Tx3)dx=T2(δm,n+δm,n)0(3T)13x2sin(2mπ3Tx3)cos(2nπ3Tx3)dx=0

[1]
x=0yt2dt=y33
[2]U=(3T)13
[3]
{0(3T)13x2sin(2mπ3Tx3)sin(2nπ3Tx3)dx=1T(δm,nδm,n)0(3T)13x2cos(2mπ3Tx3)cos(2nπ3Tx3)dx=1T(δm,n+δm,n)0(3T)13x2sin(2mπ3Tx3)cos(2nπ3Tx3)dx=0

w(t):=2Tπ1t2とおくと次の式が成り立つ事を証明してください。
{01sin(4marcsinx)sin(4narcsinx)1x2dx=π2(δm,nδm,n)01cos(4marccosx)cos(4narccosx)1x2dx=π2(δm,n+δm,n)01sin(4marcsinx)cos(4narccosx)1x2dx=0

[1]
x=0yw(t)dt=2Tπ0y11t2dt=2Tπarcsiny
[2]U=1
[3]
{01sin(4marcsinx)sin(4narcsinx)1x2dx=π2(δm,nδm,n)01cos(4marcsinx)cos(4narcsinx)1x2dx=π2(δm,n+δm,n)01sin(4marcsinx)cos(4narcsinx)1x2dx=0
[4]
cos(4marcsinx)=cos{4m(π2arccosx)}=cos{m(2π4arccosx)}=cos(4marccosx)
[5]
{01sin(4marcsinx)sin(4narcsinx)1x2dx=π2(δm,nδm,n)01cos(4marccosx)cos(4narccosx)1x2dx=π2(δm,n+δm,n)01sin(4marcsinx)cos(4narccosx)1x2dx=0

上記の計算から分かりますように、任意の重みに対する直交基底系を誰でも知っているFourier展開から構成出来る事が分かります。しかし、完全性が保たれず結果的に、得られた基底の一次結合によって関数を表す事はできません。
本方法で得られた基底系により完全性が保たれているかどうかを調べるために、Stone-Weierstrassの定理について書いていきます。

Stone-Weierstrassの定理

必要な部分これだけ

First Step: Weierstrassの多項式近似定理

Weierstrassの多項式近似定理

区間[a,b]上で定義された連続関数f(x)はいかなる任意の正数ϵに対しても、適当な多項式P(x)が存在して、以下の不等式を満たす。
|f(x)P(x)|<ϵ

[1]まず、区間を[0,1]に限定します。
そのために下記の様な一次変換を考えます。
φ(x)=xaba
[2]すると、合成関数f:=fφは区間[0,1]上で定義された連続関数になる。
この連続関数fに対してWeierstrassの多項式近似定理が成立する事を証明します。
[3]Bernstein多項式:φn,k:=nCkxk(1x)nk(n=0,1,2,...,n)に対して、下記の様な多項式を考えます。
Bn(x):=k=0nf(kn)φn,k(x)
[4]φn,k(x)の母関数:φ(t):=k=0nφn,k(x)tkを考える。
φ(t)=k=0nnCk(xt)k(1x)nk=(xt+1x)n
[5]φ(1),φ(1),φ(1)を求める。
{φ(1)=k=0nφn,k(x)=1φ(1)=k=0nkφn,k(x)=nxφ(1)=k=0nk(k1)φn,k(x)=n(n1)x2
[6]
0<δ:δ|knx|φn,k(x)δ|knx|1δ2(knx)2φn,k(x)=1δ2δ|knx|(k2n22kxn+x2)φn,k(x)1δ2k=0n(k2n22kxn+x2)φn,k(x)=1δ2k=0n{k(k1)n2+12nxn2k+x2}φn,k(x)=1δ2{n(n1)n2x2+12nxnx+x2}=x(1x)nδ2=(x12)2+14nδ214nδ2
[7]f(x)は連続関数なので以下式が成り立ちます。
ϵR(0<ϵ):δR(0<δ) s.t. x,x[0,1](|xx|<δ)|f(x)f(x)|<ϵ
[8]Bn(x)f(x)一様収束する事を証明
当たり前の事だが各点収束との違いを意識せよ
|f(x)Bn(x)|=|f(x)k=0nf(kn)φn,k(x)|=|k=0n{f(x)f(kn)}φn,k(x)|k=0n|f(x)f(x)+f(x)f(kn)|φn,k(x)k=0n|f(x)f(x)|φn,k(x)+k=0n|f(x)f(kn)|φn,k(x)ϵk=0nφn,k(x)+(|xkn|<δ+δ|xkn|)|f(x)f(kn)|φn,k(x)ϵ+ϵ|xkn|<δφn,k(x)+δ|xkn||f(x)f(kn)|φn,k(x)(M:=maxx,x[0,1]|f(x)f(x)|)2ϵ+Mδ|xkn|φn,k(x)2ϵ+M14nδ2n2ϵ

second step:Stone-Weierstrassの定理

まずは基本的事項を回収していこう。

実連続関数の集合C([a,b])に次の様な和、スカラー積を定義するとこれはR-加群となる。
{f,gC([a,b]):x[a,b]:(f+g)(x)=f(x)+g(x)λR:fC([a,b]):x[a,b]:(λf)(x)=λf(x)

[0]和、スカラー積に関して閉じている:
ϵR(0<ϵ):δR(0<δ) s.t. x,xR(|xx|<δ):{|f(x)f(x)|<ϵ|g(x)g(x)|<ϵ
|{f(x)+g(x)}{f(x)+g(x)}||f(x)f(x)|+|g(x)g(x)|<ϵ+ϵ=2ϵ
λR:|λf(x)λf(x)|=|λ||f(x)f(x)|<|λ|ϵ
[1]和に関する結合法則
x[a,b]:f,g,hC([a,b]):(f+(g+h))(x)=f(x)+(g+h)(x)=f(x)+(g(x)+h(x))=(f(x)+g(x))+h(x)=(f+g)(x)+h(x)=((f+g)+h)(x)
[2]零元:x[a,b]:0(x)=0
x[a,b]:f[a,b]:(f+0)(x)=f(x)+0(x)=f(x)+0=f(x)=0+f(x)=0(x)+f(x)=(0+f)(x)
[3]逆元:
x[a,b]:fC([a,b]):gC([a,b]) s.t. g(x)=f(x)
(f+g)(x)=f(x)+g(x)=f(x)f(x)=0=f(x)+f(x)=(g+f)(x)
[4]可換性
x[a,b]:f,gC([a,b]):(f+g)(x)=f(x)+g(x)=g(x)+f(x)=(g+f)(x)
[5]スカラーに関する結合法則
α,βR:x[a,b]:fC([a,b]):((αβ)f)(x)=(αβ)f(x)=α(βf(x))=α(βf)(x)
[6]ベクトルに関する分配法則
α,βR:x[a,b]:fC([a,b]):((α+β)f)(x)=(α+β)f(x)=αf(x)+βf(x)=(αf+βf)(x)
[7]スカラーに関する分配法則
αR:x[a,b]:f,gC([a,b]):(α(f+g))(x)=α(f+g)(x)=αf(x)+αg(x)=(αf+αg)(x)
[8]スカラーに関する単位
x[a,b]:fC([a,b]):(1f)(x)=1f(x)=f(x)

区間I=[a,b]は閉集合

距離関数d:R×R(x,y)|xy|Rを定める。
区間I=[a,b]の補集合J=(,a)(b,)が開集合である事を示す。
実際、
(i)任意のx(,a)に対してϵ=axとおくとBϵ(d,ϵ)(,a)
(ii)同様に任意のx(b,)に対してϵ=xbとおくとBϵ(d,ϵ)(b,)が得られる。
ゆえに、Jが開集合である事が示されたので、Iは閉集合である事が示された。

区間I=[a,b]はコンパクト

[1]任意の無限列{xn}nN0Iを考える。
必要なら一つの値に収束する部分列を選び改めて{xn}nN0と置き直す。
[2]次に区間Iを次の様に分割する。
{I=k=12nInkInk=[a+k12n(ba),a+k2n(ba)](k=1,2,...,2n)
[3]この様に分割したとき、Iは閉集合なので、ある適当なxIn,k0Iが存在して、次の式が成り立つ。
ϵR(0<ϵ):NN s.t. nN:|xnx|<ϵ
特に、ϵ=12n+1となる様にとれば、次の様な包含関係が成り立つ。{xn+N}nNJn:=In,k01In,k0In,k0+1ただし、
In,k={(k02n<k)[a+k12n(ba),a+k2n(ba)](k=1,2,...,2n)
とした。
この様なJnは必ず、無限列を含みますのでxは集積点である事が示せた。
つまり、区間Iはコンパクト

距離空間(A,d)の部分集合Cについて次の事が成り立つ。
コンパクトな集合Cは有界かつ閉集合。

対偶を取り、集合Cが有界でない、または開集合ならばコンパクトでないを示す。
[1]集合Cが有界でないとする。
この場合ある点x0Cをとり、次の様な集合列Cn=Bn(d,x0)Cを考える。
そして次の様な無限列{xn}nN0Cを作る。
{x1C1xnCnCn1(n=2,3,...)
するとこれは無限列でありなおかつ、集積点を持たない。
ゆえに、集積点にならないのでコンパクトではない。
[2]集合Cが開集合であるとする。
この場合、開集合の性質より無限列{xn}nN0Cが存在してその収束点xxCとなる様に出来る。
ゆえに、集積点にならないのでコンパクトではない。

任意の連続関数fC([a,b])に対してf([a,b])はコンパクト

無限列{yn}nN0f([a,b])を取る。
まず、f([a,b])の定義より次式が成り立つ。
nN0:xn[a,b] s.t. yn=f(xn)
[a,b]は有界かつ閉集合なのでコンパクト。ゆえに、適当な部分列{xnk}kN0はある集積点x[a,b]を持つ。
(i)f([a,b])の定義よりf(x)f([a,b])
(ii)fの連続性より
ϵR(0<ϵ):KN s.t. kN(K<k):|f(x)ynk|<ϵ
が成り立つ。
つまり、数列f(x)は数列{ynk}kN0の集積点である事が分かる。

C([a,b])は次の積をさらに導入する事でR多元環となる。
f,gC([a,b]):(fg)(x)=f(x)g(x)

[0]積に関して閉じている。
ϵR(0<ϵ):δR(0<δ) s.t. x,xR(|xx|<δ):{|f(x)f(x)|<ϵ|g(x)g(x)|<ϵ
|f(x)g(x)f(x)g(x)|=|f(x){g(x)g(x)}+{f(x)f(x)}g(x)||f(x)||g(x)g(x)|+|f(x)f(x)||g(x)|(M+N)ϵ(M:=maxx[a,b]|f(x)|,N:=maxx[a,b]|g(x)|👈f([a,b]),g([a,b]))
[1]積の結合法則
x[a,b]:f,g,hC([a,b]):(f(gh))(x)=f(x)(gh)(x)=f(x)(g(x)h(x))=(f(x)g(x))h(x)=(fg)(x)h(x)=((fg)h)(x)
[2]双線形性
x[a,b]:r1,r2R:f,g,hC([a,b]):((r1f+r2g)h)(x)=(r1f+r2g)(x)h(x)=(r1f(x)+r2g(x))h(x)=r1f(x)h(x)+r2g(x)h(x)=(r1(fh))(x)+(r2(gh))(x)
x[a,b]:r1,r2R:f,g,hC([a,b]):(f(r1g+r2h))(x)=f(x)(r1g+r2h)(x)=f(x)(r1g(x)+r2h(x))=(r1(fg))(x)+(r2(fh))(x)

分離

SC([a,b])が部分R多元環とする。この時下記の式が成り立つならば、x,y[a,b](xy)Sは分離すると言う。
fC([a,b]) s.t. f(x)f(y)

消滅しない

SC([a,b])が部分R多元環とする。この時下記の式が成り立つならば、Sx[a,b]で消滅しないと言う。
fC([a,b]) s.t. f(x)0

2点固有性

SC([a,b])が部分R多元環とする。この時下記の式が成り立つならば、二点固有性を持つという。
A,BR:x,y[a,b]:fC([a,b]) s.t. f(x)=Af(y)=B

SC([a,b])が部分R多元環とする。
この時、以下二つの条件は同値

  1. Sは任意の二点を分離し、かつ、任意の点で消滅しない。
  2. S2点固有性を持つ。

[(1)(2)]Sは任意の二点を分離し、かつ、任意の点で消滅しないとする。
すると以下の式が成り立つ。
{x,y[a,b]:uS s.t. u(x)u(y)x[a,b]:vS s.t. v(x)0
そこで、次の様な新しい関数w(x)Sを考える。
w(x)=u(x)+λv(x)
そして次の様な二つの条件について考える。
(1)w(x)=w(y)を満たす場合。
(i)v(x)=v(y)が成り立つとすると、u(x)=u(y)となりuの与え方に反する。それゆえにありえない。
(ii)v(x)v(y)が成り立つとすると、
λ=u(y)u(x)v(y)v(x)
(2)次にw(x)=0を満たす場合を考える。この場合は
λ=u(x)v(x)
上記条件(1)(2)が成り立たない様にλを取り次の様な新しい連続関数を作る。
{f1(z)=w(z)(w(z)w(y))w(x)(w(x)w(y))f2(z)=w(z)(w(x)w(z))w(y)(w(x)w(y))f1(x)=1f1(y)=0f2(x)=0f1(y)=1
SR多元環なのでf1,f2Sであり、その一次結合f=af1+bf2Sの元。
さらにf(x)=af(y)=bですから、Sの2点固有性が証明された。
[(2)(1)]Sは二点固有性を持つので、例えば任意のx,y[a,b]に対してf(x)=1,f(y)=2が成り立つ。ゆえにSは任意の二点を分離する。また、上の条件を用いれば任意の点で消滅しない事も分かる。

Stone-Weierstrassの定理

部分多元環SC([a,b])が次の性質を満たすとする。
Sが任意の2点を分離し、任意の点で消滅しないならば、S=C([a,b])が成り立つ!
Sは閉包

とりあえず、次の様な距離関数d:C([a,b],C[a,b])(f,g)supx[a,b]|f(x)g(x)|Rを考える。(👈別に距離関数なら何でもいい)そして以下の事が成り立つ事を示す。
ϵR(0<ϵ):fC([a,b]):Bϵ(d;f)S
以下、上述のϵ,fを用いる。
[1]x0[a,b]に対して以下の様な集合を考える。
S(x0):={gS|f(x0)=g(x0)}
すると、Sの二点固有性によりSである事が分かる。
[2]また、gS(x0)に対して次の様なC([a,b])の部分集合を考える。
U(g):={x[a,b]|f(x)ϵ<g(x)}
[3]xC([a,b])(xx0)に対してSは2点固有性を持つので、あるgSが存在して以下の式が成り立つ。
g(x0)=f(x0)g(x)=f(x)gS(x0)xU(g)
[4]U(g)[a,b]は実は開集合
xU(g):ϵR(0<ϵ):δR(0<δ) s.t. x[a,b](|xx|<δ):{|f(x)f(x)|<ϵ|g(x)g(x)|<ϵ
f(x)ϵ<f(x)ϵ+ϵ<g(x)ϵ
g(x)2ϵ<g(x)ϵ
f(x)(ϵ2ϵ)<g(x)(ϵ<ϵ2)
を満たすようにとる。するとBδ(|,|;x)U(g)が得られる。
ゆえに、U(g)[a,b]は実は開集合である事が分かる。
[5]つまり、{U(g)[a,b]|gS(x0)}[a,b]の開被覆である事が分かる。イメージが湧かない人はSは二点固有性を持つのでgをx0とg(x)=f(x)となる様に取れたこと思い出そう。
[6][a,b]はコンパクトなので、有限開被覆です。ゆえに、高々有限個のある連続関数関数g1,g2,...,gnS(x0)が存在して次式が成り立つ。
[a,b]=k=1nU(gk)
ここで、x[a,b]:h(x):=max(g1(x),g2(x),...,gn(x))とおくと、以下の式が得られる。
{hS(h(x0)=f(x0))x[a,b]:f(x)ϵ<h(x)(👈U(g))
[7]
S(ϵ):={hS|x[a,b]:f(x)ϵ<h(x)}
とおくと[6]よりS(ϵ)
[8]hS(ϵ)に対して次の様な集合を定める。
V(h):={x[a,b]|h(x)<f(x)+ϵ}
すると、Sの二点固有性よりx0[a,b]に対してh(x0)=f(x0)を満たすhS(ϵ)が存在しx0V(h)が得られる。
また[4]と同じ議論により、V(h)[a,b]は開集合である事が分かる。
さらに[5]と同じ理由からV(h)[a,b]の開被覆である事も分かる。
[9][a,b]はコンパクトなので、あるh1,h2,...,hmS(ϵ)が存在して
[a,b]=l=1mV(hl)
が成り立つ。
[10][6]と同じ要領で
k(x):=min(h1(x),h2(x),...,hm(x))とおくと、kSであり、
x[a,b]:|f(x)k(x)|<ϵ
が得られる。
[11]つまり、d(f,k)<ϵ。したがって、Bϵ(d;f)Sが得られたので、S=C([a,b])

応用

ここでは実例を交えてやなさんの幻想をぶち壊します。

例2で得られた直交基底系{cos(4narccosx),sin(4narcsinx)}nN0によって張られる空間をSとします。
するとSC([0,1])である事を証明してください。

[1]S:={k=0{Akcos(4narccosx)+Bksin(4narcsinx)}|{Ak}kN0,{Bk}kN0R}である事を用います。
[2]Sで分離不可能な点を探す。s(x)=k=0{Akcos(4narccosx)+Bksin(4narcsinx)}の様に定める。
すると以下の様に計算できる。
x=0の場合s(0)=k=0Akまた、x=1とするとs(1)=k=0Ak
この計算から、0,1に関してSは分離不可能であるため、Stone-Weierstrassの定理によりSC([0,1])が証明された。

👆と思いますよね?
???『ずんだもん大丈夫かい?そんなんじゃ東の探偵の名が泣くでー!』
東の探偵ずんだもん『君は?まさか...』
西の探偵あんこもん『そう僕はあんこもんさ!』
西の探偵あんこもん『SATORUさんからの指摘があったように、この証明は全くのでたらめです。十分性、必要性という基本的な部分の誤用が起きています。』
西の探偵あんこもん『Stone-Weierstrassの定理から言えるのは、対偶を取って「SC([a,b])ならばSは二点分離不可能または、消滅する点を持つ」です。』
東の探偵ずんだもん『あっ...』
西の探偵あんこもん『そうですよ。この証明を完成させるには次の方法を取るしかないです。』
西の探偵あんこもん『実際に、xSを構成出来ない事を示しましょう。』

x=k=0{Akcos(4narccosx)+Bksin(4narcsinx)}の様に置く。
すると直交性を用いて係数を定めていく事が出来る。
A0=1π01x1x2dx=1π0π2sinθdθ=1πcosθ|0π2=1π
An=2π01xcos(4narccosx)1x2dx=2π0π2cosθcos(4nθ)dθ=1π[sin(4n+1)θ4n+1+sin(4n1)θ4n1]0π2=2(16n21)π
Bn=2π01xsin(4narcsinx)1x2dx=2π0π2sinθsin(4n)θdθ=1π[sin(4n1)θ4n1sin(4n+1)θ4n+1]0π2=8n(16n21)π
ゆえに以下の式が得られる。
x=1π2πn=1116n21{cos(4narccosx)+4nsin(4narcsinx)}
特にx=12とすると
π21=2n=1(1)n116n21=18n=1(1)n1n2116=18n=11n211614n=114n2116=18n=11n2116116n=11n21256<18+18ζ(2)116ζ(2)=18+116ζ(2)=18+π296<18+1696=18+16=724<1
となり矛盾する。
つまり、xを表す事が出来ません。

最後に

今回の記事はどうでしたか?
最初は任意の重みに対して直交基底系を構成出来る事にぬか喜びしていたやなさん。
しかし、残念ながら今回の方法だと完全直交基底系を構成できませんでした。
ただ、その結果自体は残念なものでしたが、その代わり位相空間論から得られるStone-Weierstrassの定理を用いるという稀有な体験をする事が出来ました。
この様に、出来ない事を自分で証明する事で知見が深まるのも数学の醍醐味ですね。
それではばいちゃ

参考文献

投稿日:16日前
更新日:15日前
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  4. 応用
  5. 最後に
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