9

有理点と正多角形

383
0

はじめに

この記事では正三角形であって、すべての頂点が格子点上にあるものは存在しないことを示し、その派生としてすべての頂点が有理点上にあるものは正方形のみであることを示す。

正三角形であって、すべての頂点が格子点上にあるものは存在しない。

 正三角形OPQのすべての頂点が格子点上にあると仮定し、Oを原点とした座標平面を考える。
 P=(a,b)Z2,Q=(α,β)Z2とおくとQPを反時計回りにπ3だけ回転させた点であるからQ=(12(a3b),12(3a+b))
より
α=12(a3b)
となり
a2αb=3
しかし左辺は有理数で右辺は無理数より矛盾。よって題意が従う。

 今回は正三角形の場合を示したが、一般に正多角形についても同様のことがピックの定理からわかる。( ピックの定理-wikipedia を参照)また、上の証明は格子点上という条件を有理点に変えても同様なことが成り立つことが容易にわかる。

すべての頂点が有理点上にある正三角形は存在しない。

次の命題はどうだろうか。

すべての頂点が有理点上にある正多角形は正方形のみである。

命題1と同様な手順で考察してみる。
 まず、複素平面上にて、原点(z0)と点(1,0)(=z1)を結ぶ辺を一辺に持ち、上半面に存在する正n角形を考え各頂点を反時計回りにz0,z1,...,zn1とし、これらを計算してみる。
 ベクトルの考え方より
zk=z1+(z2z1)+(z3z2)+...+(zkzk1)
 =l=0k1cos2kπn + il=0k1sin2kπn
 =sinkπnsinπn{cos(k1)πn+isin(k1)πn}
となる。ただし、途中で以下の命題を用いた。

ディリクレ核

θ2πZのとき次が成り立つ。
k=1ncoskθ=cos(n+1)θ2sinnθ2sinθ2 , k=1nsinkθ=sin(n+1)θ2sinnθ2sinθ2

k=0ncoskθ=sin(n+1)θ2cosnθ2sinθ2 , k=0nsinkθ=sin(n+1)θ2sinnθ2sinθ2

次の等式
cos(2k+1)θ2cos(2k1)θ2=2sinkθsinθ2,sin(2k+1)θ2sin(2k1)θ2=2coskθsinθ2
のそれぞれ両辺k=1またはk=0からnまで足し合わせて得る。

 命題3を示すには一つの点が原点にあるものについて示せば十分である。よって一つを原点におきz0とし、反時計回りにz1,...,zn1とする。そしてz1=a+bi (a,bQ)とすればzkは先の議論におけるzkの原点からの距離をa2+b2倍し、反時計回りにargz1だけ回転すれば得られるので

zk=zk(a+bi)=Uk1(cosπn){(acos(k1)πnbsin(k1)πn)+i(asin(k1)πn+bcos(k1)πn)

となる。ただしUn(x)n次の第二種チェビシェフ多項式。またzk=αk+βki (αk,βkQ)とおくと

αk2+βk2a2+b2=4Uk12(cosπn)

より

k,Uk12(cosπn)Q

が分かる。
例えばk=2とするとU2(x)=2xより

cos2πnQ

となる。またcos2πn=1+cos2πn2よりこれはcos2πnQとも同値である。

もし仮にこれが5以上のnについて成り立たなければこれは矛盾であり、n=3についてはもう示してあるので題意が示されたことになる。しかしpを有理数としたとき、cospπが有理数となる条件はすでに知られている。

pを有理数とする。
cospπが有理数⇔pを既約分数で表した時の分母が1,2,3
sinpπが有理数⇔pを既約分数で表した時の分母が1,2,6
tanpπが有理数⇔pを既約分数で表した時の分母が1,4

 証明は、例えば 有理数となる三角関数の値 - くらげnote が分かりやすい。
 これより、n=1,2,3,4,6のときは矛盾しないがそれ以外では矛盾する。
 ゆえに、残すところはn=6の場合のみとなった。これを示そう。
 先の議論で、n=6とすれば
α2=sinπ3sinπ6{acosπ6bsinπ6}=32a32b
より
3a2αb=3
となり矛盾する。ゆえに示された。

追記:よく考えたら有理点の場合も格子点の場合とまったく同様にピックの定理から従うことに気づいた。一辺aですべての頂点が有理点上にある正n角形について、面積をSとするとS=na24tanπnが簡単な考察よりわかり、n5のときは命題5とピックの定理よりSは有理数かつ無理数となり矛盾する。よって従う。

まとめ

 以上の議論から命題3:すべての頂点が有理点上にある正多角形は正方形のみであることが分かったわけだが、自分がこの問題を考えたきっかけは、高校数学の正四面体に関する問題を解く際に展開図を描いたことである。このとき正三角形の頂点がすべて格子点上にあったら描くの楽だな、と考えていった結果今回の記事のような内容に行き当たった。
 また、ピックの定理を使わない別証明を与えられたのは嬉しいが、途中のチェビシェフ多項式の値が計算できるような気がしなくもなくてもやもやしている。そのあたりも今後調べたい。間違いなどあったらご指摘いただけると嬉しい。

投稿日:20241028
更新日:20241028
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

色んな分野の数学をやりたいです。

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中