$f:\mathbb{Z}→\mathbb{R}$は$a^2+b^2=c^2+d^2\quad\forall a,b,c,d\in\mathbb{Z}$ で$$f(a)+f(b)=f(c)+f(d)\quad\cdots(1)$$を満たす。$f(0),f(1),f(2),f(3),f(4),f(6)$の値を固定したとき満たす関数$f$がただ1つ存在することを示せ。
$(1)$を満たす全ての関数の集合を$ A$とする。また
$f(2n+1)-f(2n-1)=f(n+2)-f(n-2)\quad\cdots(2)$
$f(2n+2)-f(2n-2)=f(n+4)-f(n-4)\quad\cdots(3)$
$f(n)=f(-n)\quad\cdots(4)$
$(2),(3),(4)$を満たす全ての関数の集合を$ B$とする。
以下の補題を示す。
$f\in B$において$f(0),f(1),f(2),f(3),f(4),f(6)$の値を固定したとき満たす関数$f$がただ1つ存在する。
$k\in\mathbb{N},k\notin\{0,1,2,3,4,6\}$は奇数なら$(2)$に$k=2n+1$,偶数なら$(3)$に$k=2n+2$とすることで$k$より小さい関数の値で表せるので($f$の中身が負になったときは$(4)$を用いる)帰納的に$k\in\mathbb{N},f(k)$は$f(0),f(1),f(2),f(3),f(4),f(6)$のみで表せる。$f(0)$のときは明らかで$f(-k),k\in\mathbb{N}$の時は$(4)$より上のように表せることが従う。逆にその関数が$(2),(3),(4)$を満たすことを示す。
$(2),(3),(4)$は$n=k$と$n=-k$で同値であり、$n=0$は明らかだから正のときを考える。
$(2),(3)$において$n=1,2$のときはすぐ従う。$n≧3$のときは$f(2n+1),f(2n+2)$の値を求めるときに用いたので満たすことはすぐに分かる。
$(4)$において負の整数の関数の値を求めるときに用いたので満たすことはすぐに分かる。よって示せた。
$ A=B$を示せば補題1より題意を示したことになる。それを示すためいくつかの補題を示す。
その前に、
$g(n,m)=f(n+m)-f(n-m)$と定める。
以下はすぐに分かる。
$g(n,0)=g(0,m)=0$
$g(n,m)=g(m,n)$
$g(-n,m)=g(n,-m)=-g(n,m)$
$n+m,a+b$が共に偶数であるとき
$g(n,a)+g(m,b)=g(\dfrac{n+m}{2}+\dfrac{a-b}{2},\dfrac{n-m}{2}+\dfrac{a+b}{2})+g(\dfrac{n+m}{2}-\dfrac{a-b}{2},-\dfrac{n-m}{2}+\dfrac{a+b}{2})\cdots(5)$
$g(2n,1)=g(n,2)\quad\cdots(2')$
$g(2n,2)=g(n,4)\quad\cdots(3')$
$f\in B$において
$g(n,6)=g(n,3)+g(n,2)+g(n,1)\quad\forall n\in\mathbb{Z}$
まず$n=k$と$n=2k$が同値であることを示す。
$g(2k,6)=g(2k,3)+g(2k,2)+g(2k,1)$
$\iff g(2k,6)+g(2k,-2)=g(2k,3)+g(2k,1)$
$\iff g(2k+4,2)+g(2k-4,2)=g(2k+1,2)+g(2k-1,2)\quad\because(5)$
$\iff g(2k+4,2)+g(2k-4,2)=g(2k+2,1)+2g(2k,1)+g(2k-2,1)\quad\because(5)$
$\iff g(k+2,4)+g(k-2,4)=g(k+1,2)+2g(k,2)+g(k-1,2)\quad\because(2'),(3')$
$\iff g(k,6)+g(k,2)=g(k,3)+g(k,1)+2g(k,2)\quad\because(5)$
$\iff g(k,6)=g(k,3)+g(k,2)+g(k,1)$
よって示せた。
$n=0$のときは明らかだから$n=2k+1,k\in\mathbb{Z}$のとき補題が成り立つことを示す。すなわち、
$g(2k+1,6)-g(2k+1,2)=g(2k+1,3)+g(2k+1,1)$を示す。
(左辺)
$=g(2k+1,6)+g(2k+1,-2)$
$=g(2k+5,2)+g(2k-3,2)\quad\because(5)$
$=g(2k+6,1)+g(2k+4,1)+g(2k-2,1)+g(2k-4,1)\quad\because(5)$
$=g(k+3,2)+g(k+2,2)+g(k-1,2)+g(k-2,1)\quad\because(2')$
$ g(k+1,4)+g(k,4)\quad\because(5)$
(右辺)
$=g(2k+1,3)+g(2k+1,1)$
$=g(2k+2,2)+g(2k,2)\quad\because(5)$
$=g(k+1,4)+g(k,4)\quad\because(3')$
よって(左辺)$=$(右辺)が示せた。
以上より補題が示せた。
$f\in B$において
$g(n,m)=g(n-3,m)+g(n-4,m)+g(n-5,m)-g(n-7,m)-g(n-8,m)-g(n-9,m)+g(n-12,m)\quad\forall n,m\in\mathbb{Z}$
補題2.1より
$g(n+m-6,6)=g(n+m-6,3)+g(n+m-6,2)+g(n+m-6,1)$
$g(n-m-6,6)=g(n-m-6,3)+g(n-m-6,2)+g(n-m-6,1)$
両辺差を取り、(5)を用いることで補題の式を得る。
$h(n)=h(n-3)+h(n-4)+h(n-5)-h(n-7)-h(n-8)-h(n-9)+h(n-12)\quad\forall n\in\mathbb{Z}$を満たす関数$h$は
$h(0)=h(-6)+h(-8)+h(-10)-h(-14)-h(-16)-h(-18)+h(-24)$を満たす。
$h(n)=h(n-3)+h(n-4)+h(n-5)-h(n-7)-h(n-8)-h(n-9)+h(n-12)$において
$n=0,-3,-4,-5,-7,-8,-9,-12$の等式を全て足し合わせることで得る。
$f\in B$において
$g(2n,m)=g(n,2m)\quad\forall m,n\in\mathbb{Z}$
$n=k$と$n=-k$が同値であり$n=0$も成り立つので$n$が正のときを考えればよい。$m$についても同様。$m$を固定する。
$n=1,2,3,4,5,6$が成り立つとき任意の正の整数$n$で成り立つことを帰納的に示す。そのとき先程の議論より$-6≦n≦0$でも成り立つ。
$n=k-1,k-2,\cdots,k-12$が成り立つと仮定して$n=k≧7$が成り立つことを示す。
$ g(2k,m)$
$=g(2k-6,m)+g(2k-8,m)+g(2k-10)-g(2k-14,m)+g(2k-16,m)+g(2k-18,m)+g(2k-24,m)\quad\because L2.2,L2.3$
$=g(k-3,2m)+g(k-4,2m)+g(k-5,2m)-g(k-7,2m)-g(k-8,2m)-g(k-9,2m)+g(k-12,2m)$
$\quad\because $帰納法の仮定
$=g(k,2m)\quad\because L2.2$
よって示せた。
あとは$1≦n≦6,\forall m\in\mathbb{N}$を示せば良い。
$1≦n≦6,1≦m≦6$をしらみ潰しに示して、$1≦m≦6,\forall n\in\mathbb{N}$が従い、$n,m$は対称であるから$1≦n≦6,\forall m\in\mathbb{N}$である場合も示せた。
以上より補題が示せた。
$f\in B$において
$g(3n,m)=g(n,3m)\quad\forall m,n\in\mathbb{Z}$
補題2より
$0=g(2(n+m),n-m)-g(2(n-m),n+m)$
$=g(3n,m)-g(n,3m)\quad\because(5)$
$f\in B$において
$ g(kn,m)=g(n,km)\quad\forall k,m,n\in\mathbb{Z}\Rightarrow g(2kn,m)=g(n,2km)\quad\forall k,m,n\in\mathbb{Z}$
$g(kn,m)=g(n,km)$の$n$を$2n$に置き換えると
$g(2kn,m)=g(2n,km)=g(n,2km)$
最後の変形では補題2を用いた。
$f\in B$において
$g((2t+1)n,m)-g((2t-1)n,m)=g((t+2)n,2m)-g((t-2)n,2m)\quad\forall t,m,n\in\mathbb{Z}$
補題2より
$g(2tn,n+m)=g(tn,2(n+m))$
$g(2tn,n-m)=g(tn,2(n-m))$
両辺差を取り$(5)$を用いることで得る。
$f\in B$において
$g(kn,m)=g(n,km)\quad\forall k,m,n\in\mathbb{Z}$
$k$が正のときのみで良い。
$k=1$のときは明らか。
$ k=2,3$のときは補題2,補題3.1より、
それ以外の場合は帰納法で示す。
$0≦k≦t-1$のとき成り立つと仮定して$k=t$のときを示す。$t$が偶数のときは補題3.2で$k=t/2$のときを用いればすぐに従う。奇数のときを考える。$t=2t'+1,t'\in\mathbb{Z}$とする。$t≧5⇒t'≧2$であることに注意する。
補題3.3より
$g((2t'+1)n,m)-g((2t'-1)n,m)=g((t'+2)n,2m)-g((t'-2)n,2m)\cdots(6)$
$g((2t'+1)m,n)-g((2t'-1)m,n)=g((t'+2)m,2n)-g((t'-2)m,2n)\cdots(7)$
$2t'+1 > 2t'-1,t'+2,t'-2≧0$であるから帰納法の仮定を用いることで
$g((2t'-1)n,m)-g((2t'-1)m,n)=0$
$g((t'+2)n,2m)-g((t'+2)m,2n)=0$
$g((t'-2)n,2m)-g((t'-2)m,2n)=0$
これらと$(6),(7)$から、
$g((2t'+1)n,m)-g((2t'+1)m,n)=0$が従う。
よって示せた。
$a^2+b^2=c^2+d^2$を満たす$\forall a,b,c,d\in\mathbb{Z}$において$p,q,r,s\in\mathbb{Z}$が存在して
$a=pr+qs,b=ps-qr$で$c=pr-qs,d=ps+qr $または$c=ps+qr,d=pr-rs$となる。逆にそれらは$a^2+b^2=c^2+d^2$を満たす。
$mod\> 4$から$a+c,b+d$が共に偶数または$a+d,b+c$が共に偶数である。$c,d$の対称性より$a+c,b+d$が共に偶数である$\cdots(8)$ときのみ考えれば良い。
$a^2+b^2=c^2+d^2$
$\iff (a+c):(d-b)=(d+b):(a-c)$
この比を互いに素な整数で$p:q $としたとき$x,y\in\mathbb{Z}$が存在して、
$a+c=xp,d-b=xq,d+b=yp,a-c=yq$
と表せる。$(8)$より$p,q$共に偶数または$x,y$が共に偶数であるが$p,q$は互いに素であるから$x,y$が共に偶数。
$x=2r,y=2s,r,s \in\mathbb{Z}$とし$a,b,c,d$について解くと
$a=pr+qs,b=ps-qr,c=pr-qs,d=ps+qr$を得る。それらが$a^2+b^2=c^2+d^2$を満たすことはすぐに分かる。
$f\in B$において
$g(pr,qs)=g(ps,qr)\quad\forall p,q,r,s\in\mathbb{Z}$
補題3より
$g(pr,qs)=g(prs,q)=g(ps,qr)$
$ A=B$である。
$A\subset B $であることはすぐ分かる。
補題4.1より$ A$の条件は
$f(pr+qs)+f(ps-qr)=f(ps+qr)+f(pr-qs)\quad\forall p,q,r,s\in\mathbb{Z}$
$\iff g(pr,qs)=g(ps,qr)\quad\forall p,q,r,s\in\mathbb{Z}$と同値であるから補題4.2より$ A\supset B$も得る。よって$ A=B$
補題1,補題4より題意は示された。