こんにちは,nmoonです.こちらは先日(?)行われた nmoon杯 の問題を解説した記事となっています.ずっと作ろうと思いながら何もしないままでいたんですが,解説が欲しいという声もあったので,重い腰を上げて作ることにしました.開催から時間が経っているのでおかしなことを書いているかもしれませんが,ご了承ください.
この記事では,直線$XY$のことを単に$XY$と表記することがあります.
鋭角三角形$ABC$の重心を$G$,外接円を$\Gamma$とする.直線$BG,CG$と$\Gamma$との交点をそれぞれ$P(\not=B),Q(\not=C)$とし,三角形$BGQ$の外接円と$CGP$の外接円の交点を$X(\not=G)$としたとき,$\Gamma$の点$B,C$での接線の交点は直線$GX$上にあることを示せ.
この問題は,3点が同一直線上にあることを示す問題です.大まかな方針としては
1.角度の和が180度になることを示す.
2.根心を利用する.
3.その他定理を適用できる形にする.
の3つをBaseにとりあえず考えてみます.
今回は1つ目の方針でやってみましょう.
$\Gamma$の点$B,C$での接線の交点を$T$とおき,$\angle{A}=x$とおく.$A,Q,B,C,P$は同一円周上にあるので,
$$\angle{BQC}=\angle{BPC}=x$$
がわかる.また,四角形$BQGX$,$CPGX$は内接四角形なので,$$\angle{BXC}=\angle{BQG}+\angle{CPG}=2x$$
となる.また,接弦定理より,
$$\angle{BTC}=180^{\circ}-\angle{BCT}-\angle{CBT}=180^{\circ}-2\angle{A}=180^{\circ}-2x$$
よって,$\angle{BXC}+\angle{BTC}=180^{\circ}$なので,$B,X,C,T$も同一円周上にある.よって,円周角の定理から
$$ \angle{GXT}=\angle{GXB}+\angle{TXB}=(180^{\circ}-x)+x=180^{\circ}$$
よって,示された.
線分$AB$を直径とする半円の中心を$O$とし,半円上に点$P(\not=A,B)$をとった,また,半直線$OP$上に点$Q$をとり,三角形$APQ$の外接円の中心を$X$,三角形$BPQ$の外接円の中心を$Y$としたとき,三角形$OXY$の外接円は直線$AB$に接することを示せ.
問題の図を見る限りでは角度追跡で終わりそうです.最後は接弦定理で締めたいので,その式を頑張って作っていきます.
仮定より,$XA=XP,OA=OP,XO=XO$から三角形$XAO$と$XPO$は合同であるので,$\angle{AOX}=\angle{POX}$がわかる.同様にして,$\angle{BOY}=\angle{POY}$もわかる.
また,仮定より,$XY$は$PQ$の垂直ニ等分線なので,線分$PQ$の中点を$M$とすると,
$$\angle{YXO}=180^{\circ}-\angle{XMO}-\angle{XOM}=90^{\circ}-\angle{XOM}=90^{\circ}-\ displaystyle\frac{1}{2}(180^{\circ}-\angle{BOP})=\displaystyle\frac{1}{2}\angle{BOP}=\angle{BOY}$$
よって,接弦定理の逆より示された.
凹みのない四角形$ABCD$の対角線$AC$と$BD$の交点を$E$とする.円$ABE$と円$CDE$は点$P(\not=E)$で,円$BCE$と円$ADE$は点$Q(\not=E)$で交わる.線分$AC$の中点を$M$としたとき,$E,M,P,Q$は同一円周上にあることを示せ.
一気に難易度が上がりましたね.
この問題は実際にこのまま角度追跡をして解き切るのは難しいです.ここで,この問題における対称性に気づくと,少しは示しやすくなるのではないでしょうか.
線分$BD$の中点を$N$とする.このとき,四角形$EMNP$と$EMQN$が内接四角形になれば良い(実際には,ここで点の位置の厳密な議論が必要になりますが,ここでは省略させていただきます.)
対称性より,四角形$EMNP$が内接四角形であることを示せば良い.
4点$A,B,P,E$と$C,D,E,P$がそれぞれ同一円周上にあるので,
$$\angle{PAE}=\angle{PBE},\angle{PCE}=\angle{PDE}$$
がわかる.よって,三角形$APC$と$BPD$は相似である.よって,$AP:AM=BP:BN$なので,$\angle{PAM}=\angle{PBN}$と合わせて,三角形$PAM$と$PBN$も相似である.
よって,$\angle{EMP}=\angle{ENP}$なので,円周角の定理の逆より示された.
鋭角三角形$ABC$の内心を$I$,内接円を$\omega$,$\omega$と辺$BC$との接点を$D$,外接円を$\Gamma$とする.直線$AI$と$\Gamma$との交点を$M(\not=A)$とし,$\angle{A}$内の混線内接円と$\Gamma$との接点を$T$とする.このとき,直線$MD$は線分$AT$の中点を通った.このとき,$DI=DT$を示せ.ただし,三角形$ABC$の$\angle{A}$内の混線内接円とは,三角形$ABC$の外接円に内接し,かつ辺$AB,AC$にも接する円のことを指す.
混線内接円の問題ですね.
混線内接円についての構図の知識がある人はすぐに解けるかもしれません(作問者は知識が少ないためこんなのを問題にしました).
まずは,以下の補題を順に示していく(以下は,構図として使われるものが多いので,証明含め頭に入れておくことを勧める).
線分$AI$を直径とする円と$\Gamma$の交点を$P(\not=A)$とすると,$P,D,M$は同一直線上にある.
$AB,AC$と$\omega$との接点をそれぞれ$F,E$とすると,仮定より,$P$は完全四角形$BCEF$のミケル点である.よって,三角形$BFP$と$CEP$,三角形$PEF$と$PCB$はそれぞれ相似である.よって,
$$BD:CD=BF:CE=BP:CP$$
よって,角の二等分線の定理の逆より,$\angle{BPD}=\angle{CPD}$がわかるので,あとは円周角の定理の逆により示される.
$AO$と$\Gamma$との交点を$ Q(\not=A)$とすると,$P,I,Q$は同一直線上にある.
仮定より,$\angle{API}=\angle{APQ}=90^{\circ}$になるので,示された.
弧$BAC$の中点を$N$とすると,$T,I,N$は同一直線上にある.また,$\angle{ATB}=\angle{CTD}$である.
ここでは,証明は省略する(かなり長くなるので).気になる人は調べてみると良い.(気が向いたら追加するかも)
線分$AT$と$PM$との交点を$K$とすると,六角形$NARTEQ$について,パスカルの定理から,$K,I,O$は同一直線上にあることがわかる.よって,$IO$は線分$AT$の垂直二等分線であり,特に$IA=IT$である.
ここで,三角形$AIT$と三角形$IDT$について,$T$が孤$BAC$の中点なので,補題3と合わせて,
$$\angle{ATI}=\angle{NTB}-\angle{ATB}=\angle{NTC}-\angle{CTD}=\angle{ITD}$$
また,$NM \parallel ID$より,
$$\angle{TAI}=\angle{TNM}=\angle{TID}$$
よって,三角形$AIT$と三角形$IDT$は相似である.よって,$IA=IT$と合わせて,$DI=DT$が示された.
この解説の後半で示した,”三角形$AIT$と三角形$IDT$が相似である”という事実も構図として使えるものなので,こちらも理解しておくといいかもしれない.
鋭角三角形$ABC$の垂心を$H$,外接円を$\Gamma$とし,直線$AH$と$BC$の交点を$D$,直線$BH$と$\Gamma$の交点を$E(\not = B)$,直線 $CH$と$\Gamma$の交点を$F (\not = C)$,円$DFH$と$\Gamma$の交点を$P(\not = F)$とする.また,円 $DFH$と直線$PH$の交点を$Q$としたとき,$A , P , D , Q$は同一円周上にあった.
このとき,$\angle{ACB}=45^{\circ}$を示せ.
最終問題です.想定解は強めの2番級だったんですか,さらに簡単な解法が見つかったので,強めの1番級から弱めの2番級くらいの難易度に落ち着いたと思われます.最終問題だからと身構えてしまった人も一度挑戦してみてください.
こちらでは想定していた解法を紹介したいと思います.
線分$BH$の中点を$M$,$CH$と$\Gamma$との交点のうち,$C$でない方を$G$,$AK$と円$DFH$との交点のうち,$A$から遠い方を$R$,$AP$と円$DEH$との交点のうち,$P$でない方を$S$とする.
中心が$H$で,半径$\sqrt{AH \times DH}$の円で反転する.このとき,各点が映る点は以下の通りである.
$$A→D,C→G,E→M,P→Q,R→S$$
よって,特に$R,H,S$は同一直線上.なので,
$$\angle{ABH}=\angle{APE}=\angle{SHE}$$
なので,$AB \parallel RH$.よって,
$$\angle{GAH}=\angle{HRA}=\angle{HFQ}$$
から,4点$A,Q,G,F$は同一円周上にあることがわかる.また,$H,D,B,G$も同一円周上にあるので,
$$AG\times AB = AH\times AD = AQ\times AR$$
よって,4点$Q,R,B,G$も同一円周上.以上から,
$$\angle{ABC}=\angle{AFC}=\angle{GQR}=180^{\circ}-\angle{ABR}=180^{\circ}-\angle{ABC}-\angle{CBR}=90^{\circ}-\angle{ABC}$$
よって,$\angle{ABC}=45^{\circ}$が示された.
解説は以上です.最後に,testerをしてくれた ぽもどーろくん と,このコンテストに参加してくださった方々に感謝を申し上げます.ここまで読んでくださり,ありがとうございました.