この記事では, 以下のような累次積分の順序の交換の$q$類似について考える.
\begin{align*} \int_0^1f(t)\left(\int_0^tg(s)\,ds\right)dt=\int_0^1g(s)\left(\int_{s}^1f(s)\,dt\right)ds \end{align*}
まず, 区間$(0,a)$における$q$積分を以下のように定義する.
\begin{align*}
\int_0^af(x)\,d_qx=\sum_{0\leq n}aq^nf(aq^n)
\end{align*}
そして, 区間$(a,b)$における$q$積分を
\begin{align*}
\int_a^bf(x)\,d_qx&=\int_0^bf(x)\,d_qx-\int_0^af(x)\,d_qx
\end{align*}
によって定義する.
以下の等式が成り立つ.
\begin{align*}
\int_0^1f(t)\left(\int_0^tg(s)\,d_qs\right)d_qt=\int_0^1g(s)\left(\int_{sq}^1f(s)\,d_qt\right)d_qs
\end{align*}
以下の計算によって示される.
\begin{align*}
\int_0^1f(t)\left(\int_0^tg(s)\,d_qs\right)d_qt&=\int_0^1f(t)\left(\sum_{0\leq m}tq^mg(tq^m)\right)d_qt\\
&=\sum_{0\leq n,m}q^nf(q^n)q^{n+m}g(q^{n+m})\\
&=\sum_{0\leq n\leq m}q^nf(q^n)q^mg(q^m)\\
&=\sum_{0\leq n,m}q^nf(q^n)q^mg(q^m)-\sum_{0\leq m< n}q^mg(q^m)q^nf(q^n)\\
&=\int_0^1g(s)\left(\int_0^1f(t)d_qt\right)\,d_qs-\int_0^1g(s)\left(\int_0^{sq}f(t)d_qt\right)\,d_qs\\
&=\int_0^1g(s)\left(\int_{sq}^1f(s)\,d_qt\right)d_qs
\end{align*}
このように, $q$積分だと順序を交換したときに1か所だけ$s$が$sq$になっているところがあるので, よく使われる反復積分のように
\begin{align*}
\int_{0< s< t<1}f(s)g(t)\,d_qsd_qt
\end{align*}
のように書いたときに, 通常の積分と同じように計算すると$s$から積分したときと$t$から積分したときの値が異なってしまうので注意する必要がある.