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累次積分の順序交換のq類似

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$$\newcommand{bk}[0]{\boldsymbol{k}} \newcommand{bl}[0]{\boldsymbol{l}} \newcommand{calA}[0]{\mathcal{A}} \newcommand{calS}[0]{\mathcal{S}} \newcommand{CC}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{F}[5]{{}_{#1}F_{#2}\left[\begin{matrix}#3\\#4\end{matrix};#5\right]} \newcommand{ol}[0]{\overline} \newcommand{Q}[5]{{}_{#1}\phi_{#2}\left[\begin{matrix}#3\\#4\end{matrix};#5\right]} \newcommand{QQ}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{ZZ}[0]{\mathbb{Z}} $$

この記事では, 以下のような累次積分の順序の交換の$q$類似について考える.

\begin{align*} \int_0^1f(t)\left(\int_0^tg(s)\,ds\right)dt=\int_0^1g(s)\left(\int_{s}^1f(s)\,dt\right)ds \end{align*}

まず, 区間$(0,a)$における$q$積分を以下のように定義する.

\begin{align*} \int_0^af(x)\,d_qx=\sum_{0\leq n}aq^nf(aq^n) \end{align*}
そして, 区間$(a,b)$における$q$積分を
\begin{align*} \int_a^bf(x)\,d_qx&=\int_0^bf(x)\,d_qx-\int_0^af(x)\,d_qx \end{align*}
によって定義する.

以下の等式が成り立つ.
\begin{align*} \int_0^1f(t)\left(\int_0^tg(s)\,d_qs\right)d_qt=\int_0^1g(s)\left(\int_{sq}^1f(s)\,d_qt\right)d_qs \end{align*}

以下の計算によって示される.
\begin{align*} \int_0^1f(t)\left(\int_0^tg(s)\,d_qs\right)d_qt&=\int_0^1f(t)\left(\sum_{0\leq m}tq^mg(tq^m)\right)d_qt\\ &=\sum_{0\leq n,m}q^nf(q^n)q^{n+m}g(q^{n+m})\\ &=\sum_{0\leq n\leq m}q^nf(q^n)q^mg(q^m)\\ &=\sum_{0\leq n,m}q^nf(q^n)q^mg(q^m)-\sum_{0\leq m< n}q^mg(q^m)q^nf(q^n)\\ &=\int_0^1g(s)\left(\int_0^1f(t)d_qt\right)\,d_qs-\int_0^1g(s)\left(\int_0^{sq}f(t)d_qt\right)\,d_qs\\ &=\int_0^1g(s)\left(\int_{sq}^1f(s)\,d_qt\right)d_qs \end{align*}

このように, $q$積分だと順序を交換したときに1か所だけ$s$$sq$になっているところがあるので, よく使われる反復積分のように
\begin{align*} \int_{0< s< t<1}f(s)g(t)\,d_qsd_qt \end{align*}
のように書いたときに, 通常の積分と同じように計算すると$s$から積分したときと$t$から積分したときの値が異なってしまうので注意する必要がある.

投稿日:327
更新日:327
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Wataru
Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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