Artin環のKrull次元は$0$である.
$R$を可換環, $\mathfrak{p}_0$を$R$の素イデアルとする. このとき, 素イデアルの降鎖$\mathfrak{p}_0 \supsetneq \mathfrak{p}_1 \supsetneq \cdots \supsetneq \mathfrak{p}_n$の長さ$n$の上限を$\mathfrak{p}_0$の高度といい, $\ht_R{\mathfrak{p}_0}$あるいは単に$\ht{\mathfrak{p}_0}$と書く.
$R$, $\mathfrak{p}_0$を定義1の通りとする. 素イデアルの昇鎖$\mathfrak{p}_0 \subsetneq \mathfrak{p}_1 \subsetneq \cdots \subsetneq \mathfrak{p}_n$の長さ$n$の上限を$\mathfrak{p}_0$の余高度といい, $\coht_R{\mathfrak{p}}$あるいは単に$\coht{\mathfrak{p}_0}$と書く.
高度・余高度は$0$のこともあります ($1$からではない).
$R$を可換環, $X = \Spec(R)$を$R$の素イデアルの集合とする. このとき, $R$のKrull次元$\dim{R}$を次のように定義する :
\begin{equation}
\dim{R} = \sup{\set{\ht_R{\mathfrak{p}} \mid \mathfrak{p} \in X}} \text{.}
\end{equation}
Krull次元を単に次元ということも多い.
$\mathbb{Z}$はPIDですから, $\mathbb{Z}$の素イデアルは$(0)$または$(p)$ $(p \text{は素数})$です. よって$\dim{\mathbb{Z}} = 1$です. 一般的に, 体でないPIDの次元は$1$です.
定義から, つぎのことがわかります.
\begin{align} &\ht_R{\mathfrak{p}} = \dim{R_{\mathfrak{p}}}, \\ &\coht_R{\mathfrak{p}} = \dim{R / \mathfrak{p}}, \\ &\ht_R{\mathfrak{p}} + \coht_R{\mathfrak{p}} \le \dim{R} \text{.} \end{align}
まず, 次のいくつかの補題を用意します.
Artin環の剰余環もArtin環である.
対応定理から明らか.
対応定理とは次の定理のことです.
$R$を可換環, $I$をそのイデアルとし, $\varPhi$を$R$の$I$を含むイデアルの集合, $\varPsi$を$R / I$のイデアルの集合とする. このとき,
(1) $f \colon \varPhi \to \varPsi, \mathfrak{a} \mapsto \varphi(\mathfrak{a})$は全単射である. ($\varphi \colon R \to R / I$は自然な射. )
(2) $f$はイデアルの包含関係を保つ.
Artin整域は体である.
整域$R$がArtin的であるとする. $0 \neq a \in R$をとる. $(a) \supseteq (a^2) \supseteq (a^3) \supseteq \cdots$であるが, $R$はArtinだから十分大きい$n$に対し$(a^n) = (a^{n + 1})$, すなわち$a^n = u a^{n + 1}$ $(\exists u \in \mathrm{U}(R))$が成り立つ. この等式を変形して$a^n (1 - u a) = 0$, $a \neq 0$で$R$は整域だから$1 - u a = 0$, ゆえに$a$は$R$内で可逆である.
定理1の証明をします.
$R$をArtin環とし, $\mathfrak{p}$をその素イデアルとする. 補題2より整域$R / \mathfrak{p}$もまたArtinであり, 補題4より体であるから, $\mathfrak{p}$は極大イデアル. したがって$\ht{\mathfrak{p}} = 0$. ゆえに$\dim{R} = 0$である.
定理1から, $R$がArtin環のとき$\Spec(R) = \Max(R)$, すなわち, 素イデアルは極大イデアルであることがわかります.