私が考え付くような内容は大抵誰かが既に考えてることだと思いますが, 「過去のどこそこに似たような内容があった!」等あれば, 私としても是非とも内容を知りたいですし, 優しく教えてください.
$a\text{、}b\text{、}c$を正の定数とし、$x$の関数$f(x)=x^3+ax^2+bx+c$を考える。
(3) すべての自然数$n$に対して、$\sqrt[\huge 3]{f(n)}$が自然数であるとする。 このとき関数$f(x)$は、自然数の定数$m$を用いて$f(x)=(x+m)^3$と表されることを示せ。
この問題を考えます. 確か整数問題botにも載っていた気がします. (なんなら私はそこで知りました)
当たり前っちゃ当たり前っぽい主張ですけど, これだけだとなんのこっちゃわかんないですよね. とりあえず誘導も見てみましょう.
以下、定数はすべて実数とする。
(1)定数$p\text{、}q$に対し、次を満たす定数$r$が存在することを示せ。
\begin{equation}
x\geq 1\text{ならば}|px+q|\leq rx
\end{equation}
(2) 恒等式$(\alpha-\beta)(\alpha^2+\alpha\beta+\beta^2)=\alpha^3-\beta^3$を用いて、次を満たす定数$k\text{、}l$が存在することを示せ。
\begin{equation} x\geq 1\text{ならば}\biggl|\sqrt[\huge 3]{f(x)}-x-k\biggl|\leq\frac{l}{x} \end{equation}
なんだこれは……たまげた誘導だなあ.
一応誘導に乗って解いてみましたが, 制限時間のある試験の中でこのような問題を解くのは至難の業だと思います.
実際, 普通に考えて高校生が三角不等式を使い慣れてるわけないですし, どう足掻いたところで(2)の計算はごちゃつきますし, $\epsilon-\delta$もどきの類題もそうなかなかなく, 対策できていない人がほとんどな気がします.
なので, 誘導は無視して, 高校数学的な解法で解きましょう.
発想としては, 大きな$x$で$f(x)\fallingdotseq(x+m)^3$が成立してくれてるはず(そうじゃないと解けない)なので覚悟を決めて, $f(k)=(k+m)^3$が成立してるとき, $f(k+1)\fallingdotseq(k+1+m)^3$が成立することを示しに行きます.
多項式がらみの整数問題なんてどうせ大きな範囲で議論すれば解けるんで変なことせず素直に解きます.
$a,b,c$が正の定数であるため, 自然数$n$に対して, $f(n)$は$f(n)>n^3$を満たす.
\begin{equation*}
\text{任意の }n\in\mathbb{N}\text{に対して, }\sqrt[\huge 3]{f(n)}\in\mathbb N\Rightarrow \text{任意の }n\in\mathbb N \text{に対して, }m\in\mathbb{N}\text{が存在して, }f(n)=(n+m)^3
\end{equation*}
が成立する. 以降, 「任意の$n\in\mathbb N$に対して, $m\in\mathbb N$が存在して, $f(n)=(n+m)^3$」を$(*)$と略す.
十分大きな$n$に対して,
\begin{equation*}
3n^2+(9-2a)n+7-a-b>0
\end{equation*}
が成立する. また, 十分大きな$x$に対して, $f(x)$は狭義単調増加関数である.
$k\in\mathbb{N}$を$3k^2+(9-2a)k+7-a-b>0$を満たしてかつ, $k\leq x$において$f(x)$が狭義単調増加関数となるようにとる.
$(*)$が成立するには, $f(k)=(k+m)^3$を満たす$m\in\mathbb N$が存在することが必要である.
このとき, $(k+m)^3< f(k+1)<(k+m+2)^3$であることを示す.
・$(k+m)^3< f(k+1)$は, $f(k)< f(k+1)$より従う.
・$f(k+1)<(k+m+2)^3$について,
$f(k+1)=f(k)+3k^2+(3+2a)k+a+b+1$
$(k+m+2)^3=(k+m)^3+6(k+m)^2+12(k+m)+8$
であるが, $f(k)=(k+m)^3$であるため,
$3k^2+(3+2a)k+a+b+1<6(k+m)^2+12(k+m)+8$
すなわち,
$3k^2+(9-2a)k+7-a-b+12km+6m^2+12m>0$
を示せば良い.
ここで, $m\geq1$から,
\begin{flalign*}
3k^2+(9-2a)k+7-a-b+12km+6m^2+12m>3k^2+(9-2a)k+7-a-b>0
\end{flalign*}であるため, $f(k+1)<(k+m+2)^3$も示された.
ゆえに, $(k+m)^3< f(k+1)<(k+m+2)^3$が示された.
(*)が成立するには, $f(k+1)=(k+1+m_1)^3$を満たす$m_1\in\mathbb N$が存在することが必要だが, 先程の議論から, このような$m_1$としてありえるものは$m_1=m$のみである.
また, $(*)$が成立するには, $m_1$の存在に加え, $f(k+2)=(k+2+m_2)^3,\text{ }f(k+3)=(k+3+m_3)^3$を満たす$m_2,m_3\in\mathbb N$が存在することが必要であるが, $m_1=m$を考えると同様の議論により, このような$m_2,m_3$としてあり得るものは$m_2=m_3=m$のみである.
以上より, (*)が成立するには$x=k,k+1,k+2,k+3$で$f(x)=(x+m)^3$が成立することが必要であるが, $f(x),(x+m)^3$はともに三次多項式であり, これが成立するには$f(x)=(x+m)^3$が$x$の恒等式となることが必要. $\square$
やっていることは誘導と大して変わりませんが, こっちの方が随分やりやすいと思います.
この程度ならまだ標準的な高校生でも問題なく捻り出せそうな気がしますし, 試験会場で解くにしても現実的なはずです. (こんな問題解かなくても受かるので, 満点狙いのめちゃ強数学徒さんだけで十分でしょうけど)
余談ですが, 「$k\leq x$において$f(x)$が狭義単調増加関数となるようにとる」のくだりから察せられるように, $a,b,c$の正負はなんでもいいみたいですね. あとは, 色んな次数の多項式に対しても, この性質を拡張できるという事実も明らかです.
一応, ここからもう少しだけややこしい議論をすること自体は可能なんですけど, それをやりだすとまた長くなってしまうので, また別の機会にまとめられるほどの余力と時間があったら書きます.