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現代数学解説
文献あり

Hirsch 微分トポロジーの問題2.1.4、2.1.5

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問題2.1.4

 多項式の集合は$C^\infty_W(\mathbb R,\mathbb R)$の中で稠密であるが、$C^0_S(\mathbb R,\mathbb R)$の中ではそうでない。

 弱位相の方の稠密性については、Weierstrassの近似定理の直接の結果による。よって強位相の非稠密性について述べる。
 もし稠密であれば、多項式の列$\{p_n\}$$f=e^x$に収束するものが存在する。
 しかし、指数関数はどんな多項式よりもはやく発散するので、基本近傍形の$\varepsilon=\{\varepsilon_i\}$の“外側”の$i$$|f(x)-p_n(x)|\geq \varepsilon_i$となり、矛盾。(もしくは、もっと直接に問題2.1.2を適用しても矛盾する。)
 よって、稠密ではない。

問題2.1.5

 閉写像の集合は$C^\infty_S(\mathbb R,\mathbb R)$の閉集合であるが、開集合ではない。

 閉集合である事を示せという事なので、補集合が開であることを示します。

(閉性)
 閉写像の集合を$\mathrm{Cl}$とし、$\mathrm{Cl}^c$を考える。
 任意に$f\in \mathrm{Cl}^c$を取る。これは閉写像ではないので、ある閉集合$A$とその上の点列$\{x_n\}$で、$f(x_n)\to s \in \overline{f(A)}\backslash f(A)$なるものが存在する。
 ここで、点列$\{x_n\}$は、$f$の連続性から有界でない事に注意する。
 よって適当に部分列をとって、$x_n\to\infty$(または$\to-\infty$)になるように取り直せて、$K=\{x_n|n\in\mathbb N\}$とすると、これは閉(離散)集合である。
 また、その取り方により$s\not\in f(K)$であるが、$f(x_n)\to s$より、特に$s\in \overline{f(K)}$であるから、$f(K)$は閉集合ではない。
 各$x_n$は離散的なので、各$n$に対して十分小さい$\delta_n>0$を選んで、各$I_n=(x_n-\delta_n,x_n+\delta_n)$が互いに交わらないようにとれる。
 そこで、$K'_n=[x_n-\delta_n/2,x_n+\delta_n/2]$かつ$\varepsilon_n=|f(x_n)-s|/2>0$をとり、チャート$\Phi,\Psi$を各$K'_n$に整合するように適当に取ると、これにより$f$の基本近傍$\mathcal N:=\mathcal N( f;\Phi,\Psi,K',\varepsilon)$を得る。
 いま、任意の$g\in\mathcal N$に対して、各$n$で、$|g(x_n)-f(x_n)|<\varepsilon_n$であるから、$|g(x_n)-s|\geq\varepsilon_n>0$、すなわち$g(x_n)\neq s$
 また、同様に$|g(x_n)-s|<\varepsilon_n+|f(x_n)-s|=3\varepsilon_n$であるから、$g(x_n)\to s$
 したがって、$g(K)$は閉集合ではなく、$g\in\mathrm{Cl}^c$である。
 すなわち$f\in\mathcal N\subset\mathrm{Cl}^c$であり、$f$は任意だったので、$\mathrm{Cl}^c$は開、つまり$\mathrm{Cl}$は閉集合である。

 非開性を示す前に、一つだけ注意をする。
 $g$$C^\infty_S$の元$f$の近傍であるとは、ある$r$が存在して、$|g^{(k)}(x)-f^{(k)}(x)|<\varepsilon_i$が全ての$k\leq r$で成り立つような$r$次の近傍$\mathcal N(f;\Phi,\Psi,K,\varepsilon)$の元であることをいう。
 つまり、いっぺんに無限階の微分を同じ$\varepsilon$で抑える必要はないということです。
 (もうすこし直感的にいえば、$C^\infty_S$$f$での基本近傍は、ある$r$を用いて$\mathcal N^\infty(f)=\mathcal N^r(f;\Phi,\Psi,K,\varepsilon)\cap C^\infty$と書ける、ということ。)

(非開性)
 点$0\in\mathrm{Cl}$をとり、その任意の基本近傍$\mathcal N^r=\mathcal N^r(0;\Phi,\Psi,\{K_i\}_{i\in A},\{\varepsilon_i\}_{i\in A})$をとる。
 (もし$\mathrm{Cl}$が開集合なら、この近傍のある$\mathcal N$で、$0\in\mathcal N\cap C^\infty\subset\mathrm{Cl}$となることに注意する。)
 いま、bump関数$\lambda$として、その台が十分小さいものを取り、十分大きい各自然数$n\in\mathbb N$に対して、$f_n(x)=s_n\lambda(x-n)$を考える。($\lambda$の台は十分小さいので、各$f_n$の台は交わらない。)
 ただし各$s_n$は以下のように与える。
 $\Phi=\{U_i\}$は局所有限かつ$K_i$はコンパクトであるから、各$n$に対して$f_n$の台が各$U_i$と交わる$i$の集合$I_n$は有限である。
 そこで、$s_n<\min_{i\in I_n}\frac{\varepsilon_i}{2\max_{k=0,…,r}\left\|D^k\lambda(x-n)\right\|}$を満たすように$s_n>0$をとる。
 とくに、$s_n\to 0$となるように取り直す。
 
 ここで、$g=\sum_nf_n$とおく。
 $g$の台の連結成分は、ある一つの$n$に対して一つの$f_n$の台が対応するので、その任意の微分の評価は$s_n$の取り方より$\varepsilon_i$未満になるようになっており、$g\in\mathcal N^r$である。
 ところで、$K=\{n\in \mathbb R|s_n>0\}$とするとこれは閉集合であるが、$g(K)=\{s_n|n\in K\}$$g(n)\to 0\not\in g(K)$より閉集合ではない。
 よって$g$は閉写像ではなくかつ$C^\infty$級なので、$g\in\mathcal N^r\cap C^\infty\not\subset \mathrm{Cl}$である。
 $\mathcal N^r$は任意だったので、$\mathrm{Cl}$は開でないことがわかる。

 どうでもいいですが、長いこと2.1.6が難しくてクネクネしてました。

参考文献

[1]
M.W.Hirsch(松本堯生(訳)), 微分トポロジー, p50
投稿日:10日前
更新日:5日前
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