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高校数学解説
文献あり

【習作】2次式の因数分解の小技

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はじめまして。鼈甲(べっこう)と申します。

Mathlogはよいサイトですね。
自分も書く側に回ってみてえよなあ。
登録してから2年か3年経っているはずで、記事をいくつも下書きに寝かせているのですが、一向に完成する見込みがないでやんす。
放置してるだけなんで、心配はご無用。
あと大風呂敷を広げすぎなんだよな。

だもんで、とっとと簡単な記事を書いてデビュー作としましょう。

2次式の因数分解の小技を紹介します。
求根の話が並走します。

暗黙の了解を詰める

もう少し前置きにお付き合い願う。

因数分解の結果の“同じさ”について

言いたくなった。

  1. 因数分解の結果は、係数に使ってよい数の体系を指定するごとに変わりうる。
  2. $(x+1)(x+2)=(x+2)(x+1)$ のように、積の順番が入れ替わったものは同じ分解と見なす。
  3. $2x+1=2(x+1/2)$ のように、逆数をもつ定数(この例では2)をくくり出す操作やその反対の操作をしたものは同じ分解と見なす。

だいたいこういう運用で回っていますよね。(3)は知名度が低いですが。
余談:じつは数の体系に「偶数の全体」みたいなキモいものを選ぶと結果の一意性が成り立たないことがある。

既約判定の省力化

たすきがけを試みるとき、整数範囲を探すだけで事足れりとすることが多いです。
その理由は、有理数範囲では候補が激増してやってられないというのが主だとは思いますが、次の定理にもこじつけられそうです。

$d\ge 2$を整数、$f(x)$整数係数$d$次多項式とする。次の2つの条件は同値である。

  • $f(x)$有理数係数$d$次未満の多項式の積に分解できる。
  • $f(x)$整数係数$d$次未満の多項式の積に分解できる。

(青雪江(旧版)雪江 命題1.11.34を$A=\mathbb{Z}$の場合に適用し、多少改変したもの)

つまり、整数係数で分解できなければ、有理数係数でも分解できず、根は無理数か虚数ばかりなので、大人しく別の方法に移行すべきなのだと、この定理は教えてくれます。
このへんは曖昧な認識のもと膾炙していますが、一応はテクニックといえるでしょう。
本稿では証明しません。高校範囲内に収まる証明がどこかにありそう。

また別の利用法はこうです。整数係数での分解を要求されていても、有理数係数で分解してから上記(3)のような調整を行って整数係数に直せばよいですし、それが常に有効ということがこの定理からわかります。

本題

変数の拡大縮小

昔、こんな感じの大きな係数の2次方程式を解く羽目になりました。
$x^2-3^5x+8\cdot 3^6=0$
こんな状況めったにないだろという話だが、3次方程式を冪根で解く際の補助方程式がこうなりがち。

どうするか。
見るからに3の累乗が臭いです。(視覚だか嗅覚だかはっきりしろ!)
$X\coloneqq x/3^3$とおきます。すると$x=3^3X$なので

\begin{align*} & x^2-3^5x+8\cdot 3^6=0 \\ \Leftrightarrow{}& 3^6X^2-3^8X+8\cdot 3^6=0 \\ \stackrel{(*1)}{\Leftrightarrow}{}& X^2-9X+8=0\\ \Leftrightarrow{}& (X-1)(X-8)=0 \\ \Leftrightarrow{}& X=1, 8 \\ \Leftrightarrow{}& x=3^3, 8\cdot 3^3 \end{align*}

このように問題を小さくすることができました。
今のは求解だったので(*1)で両辺を割ってよかったですが、因数分解の問題としてくくり出すだけにとどめれば――

\begin{align*} & x^2-3^5x+8\cdot 3^6 \\ ={}& 3^6X^2-3^8X+8\cdot 3^6 \\ ={}& 3^6(X^2-9X+8) \\ ={}& 3^6(X-1)(X-8) \\ ={}& (x-3^3) (x-8\cdot 3^3) \end{align*}
となります。あるいは慣れていれば――
\begin{align*} & x^2-3^5x+8\cdot 3^6 \\ ={}& 3^6 \left(\frac{x^2}{3^6}-3^2\frac{x}{3^3}+8\right) \\ ={}& 3^6 \left(\frac{x}{3^3}-1\right) \left(\frac{x}{3^3}-8\right) \\ ={}& (x-3^3) (x-8\cdot 3^3) \end{align*}

$X$に直さなくてもいいですね。聞いてるかイーロン?

一般化して述べます。

$ax^2+bx+c=0$を解く際、$a$が整数、$b$$m^k$の倍数、$c$$m^{2k}$の倍数であるならば、$X\coloneqq x/m^k$と変換すると考えやすくなる。

また、同様に次が成り立ちます。

$ax^2+bx+c=0$を解く際、$a$$m^{2k}$の倍数、$b$$m^k$の倍数、$c$が整数であるならば、$X\coloneqq m^k x$と変換すると考えやすくなる。

これらの操作は変数変換の中でも基本の一つで、いわば変数の拡大縮小です。
またこれらには、多項式の各項を等比数列的な別々の数で割るような効果がある、と言い表せるでしょう。

2次の係数を定数に移す「禁術」

次に、先日YouTubeを見ていておすすめに飛び込んできた動画から。
Wrath of Math, A Forbidden Jutsu for Quadratic Equations (二次方程式の禁術) Wrath
その中で紹介されていたのがこちら。

$ax^2+bx+c=0$を解くには、代わりに$x^2+bx+ac=0$を解いてその解を$a$で割ればよい。

2次の係数が1だとたすきがけが楽なので、ありがたいですね。

これが成り立つ理由は、動画内でも1つの解説が与えられています。紹介した手前是非見に行ってほしいところです。英語わからんでも大体伝わるし。

せっかくなので別の解説を与えてみましょう。
$ax^2+bx+c=0$の両辺を$a$倍すると$a^2x^2+abx+ac=0$となります。これを$X\coloneqq ax$により変換すると$X^2+bX+ac=0$となります。その解を$a$で割ったものは、確かに$X/a=x$です。
つまりやっていることはさっきの拡大縮小(の後者)と同じです。しかも全ての整数係数2次方程式はそれが使える形に変形できるんですね。

なお、動画のタイトルにつけられた forbidden jutsu というのは、NARUTO用語からの借用のようです。
俺も漫画で対抗するか↓

まっ習った方法じゃねーから脱法だな!
――桃山晶(『僕の心のヤバイやつ』)桜井

引用機能ってこんな表示になるんだ。

中項分割との関係

因数分解のオーソドックスな手法を振り返りましょう。
$b=b_1+b_2$ ...(条件ア) なる2数$b_1,b_2$を用いて、次のように1次の項を「分割」したとします。
\begin{align*} & ax^2+bx+c \\ ={}& ax^2+b_1x+b_2x+c \end{align*}
このとき、もし運よく $a:b_1=b_2:c$ ...(条件イ) になっていれば、$k \coloneqq a/b_2=b_1/c$を用い、上式に続けて

\begin{align*} ={}& (ax+b_1)x+(b_2x+c) \\ ={}& k(b_2x+c)x+(b_2x+c) \\ ={}& (kx+1)(b_2x+c) \\ \end{align*} と因数分解することができます。

これ名前あるんですかね? 英語では splitting the middle term という名前がついているようです。本稿ではインターネット上で僅かに見られた「中項分割」という訳語を採用しました。

では、いかにしてこのような2数を見つけるのか?
エスパーに覚醒する(めざめる)のも浪漫がありますが、機械的に考えます。
(条件イ)は$b_1b_2=ac$に同値。これと(条件ア)を合わせると、解と係数の関係より、$t^2-bt+ac=0$の2解が$t=b_1,b_2$であることがわかります。
$t^2-bt+ac=0$
2次の係数が定数項に移っている! 「禁術」と同じことになった!

例題

例題を用意しましたが、いかにも人工的ですね。実用性あるんでしょうか?

$14x^2+45x+36$ の根を求めよ。または、因数分解せよ。

解答例
(1次の係数, 定数項)がそれぞれ(3, 9)で割り切れるから、
$X\coloneqq x/3$ により、次の式に置き換える。
$14x^2+45x+36=3^2(14X^2+15X+4)$
「禁術」により、次の式を考える。(変換としては $X=Y/14$ である)
$Y^2+15Y+56=(Y+7)(Y+8)$
よってこの根は $Y=-7, -8$
よって $X=Y/14=-1/2, -4/7$
よってもとの式の根は $x=3X=-3/2, -12/7$
因数分解としては、最高次の係数を揃えて
$14x^2+15x+4=14(x+3/2)(x+12/7)=(2x+3)(7x+12). \quad\blacksquare$

$14x^2+65x+66$ の根を求めよ。または、因数分解せよ。

解答例
「禁術」により、次の式を考える。($x=X/14$)
$X^2+65X+924$
でかすぎる。
$65=5\cdot 13$$924=66\cdot 14=2^2\cdot 3\cdot 7\cdot 11$の間には共通の素因数もありません。
無力だ……。
う、う、う、うおおおん

もう少し粘ります。
924を2数の積に分け、それらの和が正の奇数65になるためには、2数がともに正で、一方が $2^2$ を因数に持つことが必要。また7と11が一方に偏ると和が65を超えてしまう。
$2^2\cdot 7+3\cdot 11=61$ は不適。$2^2\cdot 11+3\cdot 7=65$ が適。
よって根は $X=-44, -21$
よってもとの式の根は $x=X/14=-22/7, -3/2$
因数分解としては、
$14x^2+65x+66=14(x+22/7)(x+3/2)=(7x+22)(2x+3). \quad\blacksquare$

おわりに

なんだ長々とやってほとんど一つしか紹介していないじゃないか。
四字熟語でいうなら同工異曲でしたね。

では、筆者の次回作にご期待下さい~(失踪フラグ)

参考文献

投稿日:16日前
更新日:8日前
OptHub AI Competition

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好きなパロディ四字熟語は識即絶句。エキゾチックな名前の数学者一位は Exoo (ジェフリー・エグゾー, Geoffrey Exoo) だと思っている。

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