皆様ごきげんよう。
文字が三つ、四つと並んだ式を前にして、「このまま全部計算するのは重そうだな」と感じたことはありませんか。
そんなとき、計算を始める前に見ておきたい構造の一つが、同次性です。文字を全部同じ倍率にするとどうなるか。そこを調べると、文字の大きさを一つずつ追わずに、比を考えればよい場合があります。
ただし、「同次式なら $t=y/x$」と覚えるだけでは、実際の問題で置き方に迷います。今回は定義から始めて、同次性を自分で見つけ、条件と式が同時に簡単になる比を選ぶところまで考えます。最後には、解答の計算よりも、その道筋をどう発見するかを重視した八つの演習を用意しました。
目次
1 同次式とは何か――比が現れる理由
2 何を基準に、どの比を作るか
3 見えていない同次性を作る
4 初見の問題で、どこから考えるか
5 演習――置換を自分で選ぶ
本編は式の計算、平方根、不等式、三角関数を中心に進みます。一部の解答では一変数の微分も使います。
まず、$x^2+3xy-2y^2$を見てください。$x^2$も$xy$も$y^2$も、文字の指数の合計は$2$です。$xy$は$x^1y^1$なので、$x,y$全体について$2$次です。
このように、零でない各項の次数がすべて同じ多項式を、同次式といいます。「斉次式」と書くこともあります。
| 式 | 各項の次数 |
|---|---|
| $x^2+3xy-2y^2$ | すべて$2$次 |
| $x^2y+yz^2$ | すべて$3$次 |
| $x^2+y+1$ | $2$次、$1$次、$0$次が混在 |
ここで、次数は「今、変数として扱っている文字」全体について数えます。例えば$a$を定数として$x,y$を考えるなら、$ax^2+xy+y^2$は$2$次同次式です。
$F(x,y)=x^2+3xy-2y^2$で、$x,y$を両方とも$2$倍にすると、
$$
\begin{aligned}
F(2x,2y)&=4x^2+12xy-8y^2\\
&=4F(x,y)
\end{aligned}
$$
となります。どの項にも、倍率の$2$が二つずつ掛かるからです。$2$の代わりに$t$を使えば$F(tx,ty)=t^2F(x,y)$。一般に、正の整数$n$について、$n$次同次式なら
$$
F(tx,ty)=t^nF(x,y)
$$
が成り立ちます。三変数でも、すべての文字を同時に$t$倍すれば同じです。
同次式の「値」と、比だけで扱える問題を区別する
$x^2+y^2$は同次式ですが、$(x,y)=(1,2)$で$5$、$(2,4)$で$20$です。比が同じでも値は変わります。
同次性が教えるのは、値が一定になることではなく、全体を同じ倍率で変えた影響を、まとめて外へ出せることです。
$x\ne0$のとき、$x,y$は
$$
(x,y)=x\left(1,\frac yx\right)
$$
と書けます。$x$が共通の倍率、$(1,y/x)$が比を表す部分です。したがって、$n$次同次式なら
$$
F(x,y)=x^nF\left(1,\frac yx\right).
$$
例えば、
$$
x^2+3xy-2y^2
=x^2\left\{1+3\frac yx-2\left(\frac yx\right)^2\right\}.
$$
共通の倍率を取り除こうとすると、自然に$y/x$が残ります。そこで初めて$t=y/x$と名前を付けるのです。「同次式だから、この公式を使う」という順序ではありません。
三変数なら、$x\ne0$のとき
$$
u=\frac yx,\qquad v=\frac zx
$$
とおき、$x:y:z=1:u:v$と表せます。同じ$n$次の$F,G$について、
$$
\frac{F(x,y,z)}{G(x,y,z)}
=\frac{F(1,u,v)}{G(1,u,v)}
$$
となります。ただし、分母は零でないものとします。
二変数では一つ、三変数では二つの比が残る。共通の倍率を一つ外しただけなので、三変数がいきなり一変数になるとは限りません。その先を減らすには、条件式や対称性など、もう一つの手掛かりが必要です。一般の$m$変数でも、一つの非零の文字を基準にすれば$m-1$個の比が残ります。
割る前に、その文字が零の場合を確かめる
$x$で割るなら、$x=0$の場合を先に調べます。条件から$x\ne0$が分かれば、それを一言書けば十分です。比で表せない場合を、最初から解の候補から消してはいけません。
同じ倍率を外すという目的は共通ですが、何を基準にするかで、残る式の扱いやすさは変わります。大切なのは、割った後の目的の式だけでなく、条件式も一緒に見ることです。
正の数$h$を一つ選び、
$$
X=\frac xh,\quad Y=\frac yh,\quad Z=\frac zh
$$
とします。次の三つは別々の裏技ではなく、「扱いやすい量が$1$になるよう、全体を同じ倍率で調整する」という同じ操作です。
| 基準にする$h$ | 新しい文字の条件 |
|---|---|
| $x+y+z$ | $X+Y+Z=1$ |
| $\sqrt{x^2+y^2+z^2}$ | $X^2+Y^2+Z^2=1$ |
| $\sqrt[3]{xyz}$ | $XYZ=1$ |
第一行は$x+y+z\gt0$、第二行は$(x,y,z)\ne(0,0,0)$、第三行は$x,y,z\gt0$の場合を考えています。和が負でも、同じ次数の式の比を扱うなど、負の倍率が許される場面なら和を$1$にできます。不等式を扱うときは、倍率の符号を別に確かめてください。
この操作を規格化、あるいは正規化と呼びます。和を基準にすれば$Z=1-X-Y$と消去でき、対称な式なら三つの文字を同じ立場に保てます。二乗和が繰り返し現れるなら二乗和、積や逆数が現れるなら積を基準にする、という選び方ができます。
ただし、規格化してよい理由は「同次式が一つ見つかったから」ではありません。調べたい値や不等式がどう変わり、元の条件をどう戻せるかまで確認します。
例えば、正の$x,y,z$について
$$
x^2+y^2+z^2\ge\sqrt[3]{xyz}(x+y+z)
$$
を示すなら、$x,y,z$をそれぞれ$h=\sqrt[3]{xyz}$で割って$XYZ=1$にすると、目標は$X^2+Y^2+Z^2\ge X+Y+Z$です。ここで$S=X+Y+Z$とおけば、相加相乗平均から$S\ge3$であり、
$$
X^2+Y^2+Z^2\ge\frac{S^2}{3}\ge S.
$$
最初の不等式は、$(X-Y)^2+(Y-Z)^2+(Z-X)^2\ge0$を整理したものです。等号は$X=Y=Z=1$、元の文字では$x=y=z$のときです。規格化によって、立方根を含む式が、和と二乗和の比較に変わりました。
もちろん、同じ不等式を規格化の記号を使わずに証明しても構いません。大切なのは、何を基準に比較しているかが分かることです。
一つの倍率で、条件を二つ自由に追加することはできない
和を$1$にした後、同じ三つの文字の積まで勝手に$1$にはできません。また、整数を同じ数で割れば整数でなくなることがあります。整数条件や固定された長さなど、問題固有の条件はそのまま残るとは限りません。
分子と分母に選ぶものは、一文字ずつである必要はありません。例えば$(x+y)/z$や$xy/z^2$も、すべての文字を同じ倍率にしても変わらない比です。どちらも、分子と分母の次数が揃っています。
ここで、実際に比を選んでみましょう。
例題
直角三角形の直角を挟む二辺を$a,b$、斜辺を$c$とする。次の式の最小値を求めよ。
$\displaystyle \frac{a^2(b+c)+b^2(c+a)+c^2(a+b)}{abc}$
$s=(a+b)/c$とおく。$a^2+b^2=c^2$より$s^2=1+2ab/c^2$であり、$ab\gt0$、$2ab\le a^2+b^2$から$1\lt s\le\sqrt2$である。
求める式を$E$とすると、
$\displaystyle \begin{aligned}E&=\frac{c(a^2+b^2)+(a+b)(ab+c^2)}{abc}\\&=s+\frac{(1+s)c^2}{ab}\\&=s+\frac2{s-1}.\end{aligned}$
$f(s)=s+2/(s-1)$とおけば、$1\lt s\le\sqrt2$で$f'(s)=1-2/(s-1)^2\lt0$。よって最小値は
$\displaystyle \boxed{2+3\sqrt2}$
であり、$a=b$のときにとる。
解説|なぜ $(a+b)/c$ を選ぶのか
比を選ぶときに見ること
繰り返し出るまとまりは何か。条件式はそのまとまり同士をどう結んでいるか。一つの比を置くと、残った量まで同じ文字で表せるか。
「どの文字で割れるか」だけでなく、どの比なら、条件と目的の式を一緒に整理できるかを考えます。
次の式を$\tan\theta$の式で表すことを考えます。ただし、$\cos\theta\ne0$とします。
$$
\frac{\sin^2\theta+\sin\theta\cos\theta}{1+\cos^2\theta}
$$
最初から「$\cos^2\theta$で割る」と覚えているかもしれません。ただ、今回はその操作を選ぶ理由を考えてみましょう。
$\tan\theta=\sin\theta/\cos\theta$は、$\sin\theta$と$\cos\theta$の比です。比だけで書きたいなら、この二つを変数と思ったとき、同じ倍率の影響が消える形にできないか、と考えます。
分子は$2$次です。分母では、定数の$1$が次数を揃える妨げになっています。しかし、三角関数には
$$
1=\sin^2\theta+\cos^2\theta
$$
という条件があります。これを使えば、分母は$\sin^2\theta+2\cos^2\theta$となります。分子も分母も$2$次に揃ったので、$t=\tan\theta$とおけば
$$
\begin{aligned}
&\frac{\sin^2\theta+\sin\theta\cos\theta}{\sin^2\theta+2\cos^2\theta}\\
&\qquad=\frac{t^2+t}{t^2+2}.
\end{aligned}
$$
「比で表せ」と要求されたから、倍率が消える形を探し、そのために条件式で次数を揃えた。この順番なら、別の問題にも持ち出せます。
なお、$\cos\theta=0$では元の式は$1$ですが、$\tan\theta$自体が定義されません。元の式が定義される範囲と、置換後の式を使える範囲は区別します。
「tanで書ける」の意味にも注意する
今の操作は、$\sin\theta,\cos\theta$の有理式を、$\tan\theta$の有理式として整理するための方法です。与えられた式が最初から同次の形で書かれている必要はありません。
また、$\sin\theta$は、角度を$-\pi/2\lt\theta\lt\pi/2$に限れば$t/\sqrt{1+t^2}$と書けますが、これは$t$の有理式ではありません。範囲を限らなければ、$\theta$と$\theta+\pi$で$\tan$は同じ、$\sin$は逆符号なので、$\tan$だけでは一般に値が決まりません。式の種類と角度の範囲を含めて判断します。
$x+y+z=1$という条件があるなら、$1$を$x+y+z$に置き換えられます。目標を$2$次に揃えたいときは、
$$
1=(x+y+z)^2,\qquad x=x(x+y+z)
$$
とすれば、定数項も$1$次の項も$2$次にできます。これは元の条件を満たす範囲での変形です。条件なしで同じ式だと主張しているわけではありません。
例えば、$x+y+z=1$のもとで$x^2+y^2+z^2\ge1/3$を示すことは、
$$
3(x^2+y^2+z^2)\ge(x+y+z)^2
$$
を示すことに帰着し、差は$(x-y)^2+(y-z)^2+(z-x)^2$となります。定数を条件式で置き換えると、対称性と平方の形が見えました。
このように次数を揃える操作を、同次化と呼びます。何でも高い次数にすればよいのではなく、揃えた後に比や因数分解を使いやすくなるかが判断の基準です。
もう一つ、二つの式から同次方程式を作る方法もあります。同じ$n$次の同次式$F,G$について、
$$
F(x,y)=1,\qquad G(x,y)=k
$$
なら、$G(x,y)-kF(x,y)=0$です。右辺の定数を消すと、比を調べる方程式になります。これは$G/F=k$を考えることと同じです。
ただし、定数を消した式だけで終わってはいけません。零でない組$(a,b)$について$G(a,b)=kF(a,b)$と$F(a,b)\gt0$が分かれば、正の数
$$
h=\frac1{\sqrt[n]{F(a,b)}}
$$
を使い、$(x,y)=(ha,hb)$とすれば元の二式に戻せます。$F(a,b)\le0$のときは、この正の倍率による戻し方はできません。解を求める問題では、元の条件に戻せるかを必ず確認します。
最後に、対称性との組合せも整理しておきましょう。三変数が同じ立場にある式では、
$$
p=x+y+z,\quad q=xy+yz+zx,\quad r=xyz
$$
とまとめることがあります。これらの次数は順に$1,2,3$なので、$p\ne0$なら$q/p^2$や$r/p^3$が、共通の倍率で変わらない量です。
例えば$x^3+y^3+z^3=p^3-3pq+3r$ですから、$p^3$で割ると$1-3q/p^2+3r/p^3$になります。元の文字を一本ずつ割る代わりに、対称なまとまりの比を使っています。
ただし、$p,q,r$を好きな値に独立に動かせるわけではありません。実数$x,y,z$から作られるなら$q\le p^2/3$ですし、正の文字なら$q,r\gt0$です。ほかにも関係があります。まとめた後に、その量がとれる範囲を調べることまでが置換です。
入試では「ここで同次式を使いなさい」とは教えてくれません。東大などの難関大学の問題でも、出題される数学は高校で学ぶ範囲です。そのまま全部の文字を扱うと大変そうなら、まず「何かを見つければ、追う量を減らせないか」と考える価値があります。
ただし、変数が多いから同次式、とは限りません。例えば$x+y=1$なら条件による消去、$x,y$を交換しても変わらない式なら対称性、$x^4-y^4$なら因数分解が手掛かりです。整数なら偶奇、三角関数なら周期性、図形なら辺や角の関係もあります。
直角三角形の例では、同次性で大きさを外し、$a,b$の対称性で和と積にまとめ、三平方の定理でその二つを結びました。同次性だけを探していたら、よい比の選択までは進めません。
問題を前にしたときの、有力な視点
① 何を求め、何個の量を追おうとしているか。そのまま全部を扱う必要があるか。
② 条件式、対称性、繰り返すまとまり、因数分解など、文字をまとめる手掛かりはないか。
③ 各項の次数は揃っているか。文字を全部同じ倍率にすると、目的の式と条件はどう変わるか。
④ 揃っていなければ、条件式で定数や低い次数の項を置き換えられないか。二つの式を組み合わせられないか。
⑤ どの比なら、目的の式と条件が同時に簡単になるか。置いた量の範囲と、元の文字への戻し方まで確かめる。
問題の見出しには、使う置換を書いていません。まずは問題だけを読み、何をまとめ、何を基準にするかを考えてみてください。
「解答」は答案としての道筋、「解説」はその道筋を見つけるための見方です。前半から順に取り組み、最後の二問は時間を取って考えることをおすすめします。
問題
実数$x,y$について、$x^2+3xy+y^2=0$を満たす組$(x,y)$をすべて求めよ。
$x=0$なら$y=0$である。$x\ne0$のとき、$t=y/x$とおけば$t^2+3t+1=0$より$t=(-3\pm\sqrt5)/2$。
したがって、求める組は
$\displaystyle \boxed{\begin{aligned}(x,y)&=\left(a,\frac{-3+\sqrt5}{2}a\right)\\&\quad\text{または}\quad\left(a,\frac{-3-\sqrt5}{2}a\right)\end{aligned}}$
である。ただし、$a$は任意の実数であり、$a=0$で$(0,0)$も含まれる。
方程式は$2$次同次式です。値を$0$にする条件なので、共通の倍率を外して比を求められます。$x^2$で割ると、二つの文字についての式が、$y/x$についての二次方程式になります。
ここで求まるのは$x,y$それぞれの値ではなく、二通りの比です。その比を保ったまま、共通の倍率を任意に変えた組も解になります。
$y=0$を先に分け、$x/y$で割っても同じです。基準に絶対的な正解があるわけではありません。ただし、零の場合を確認することは、どちらの置き方でも必要です。
問題
実数$x,y,z$は$(x,y,z)\ne(0,0,0)$であり、
$\displaystyle y^2+xz=2x^2,\qquad z^2+xy=2x^2$
を満たす。このような組$(x,y,z)$をすべて求めよ。
$x=0$なら二式から$y=z=0$となるので、$x\ne0$である。$u=y/x$、$v=z/x$とおくと、
$\displaystyle u^2+v=2,\qquad v^2+u=2.$
二式の差より$(u-v)(u+v-1)=0$。
$u=v$なら$u^2+u-2=0$より$(u,v)=(1,1),(-2,-2)$。
$u+v=1$なら$u^2-u-1=0$より
$\displaystyle \begin{aligned}(u,v)&=\left(\frac{1+\sqrt5}{2},\frac{1-\sqrt5}{2}\right)\\&\quad\text{または}\quad\left(\frac{1-\sqrt5}{2},\frac{1+\sqrt5}{2}\right).\end{aligned}$
これらはすべて二式を満たす。したがって、求める組は
$\displaystyle \begin{aligned}(x,y,z)&=a(1,1,1),\\&\quad a(1,-2,-2),\\&\quad a(2,1+\sqrt5,1-\sqrt5),\\&\quad a(2,1-\sqrt5,1+\sqrt5)\end{aligned}$
である。ただし、$a$は零でない任意の実数とする。
両方の条件式に$x^2$があり、すべての項が$2$次です。$x$を基準にすると、二つの右辺を同時に定数$2$にできます。これが$x$を選ぶ理由です。
同次性で三つの文字を二つの比に減らした後、今度は二式の対称性を見ます。$u,v$を交換すると一方の式が他方になるので、差を取ると$u-v$が現れます。「同次性→比→対称性→因数分解」という流れです。
また、方程式を満たす$(u,v)$が得られれば、$(x,y,z)=x(1,u,v)$として戻せます。今回は条件式自体が同次なので、共通の倍率$x\ne0$に新しい制約はありません。
問題
$x,y,z$は非負の実数で、$x+y+z\gt0$とする。次の式の最大値を求めよ。
$\displaystyle \frac{xy+2z(x+y)}{(x+y+z)^2}$
$h=x+y+z$、$X=x/h$、$Y=y/h$、$Z=z/h$とおくと、$X+Y+Z=1$、$X,Y,Z\ge0$である。$XY\le(X+Y)^2/4$より、求める式は
$\displaystyle \begin{aligned}XY+2Z(X+Y)&\le\frac{(1-Z)^2}{4}+2Z(1-Z)\\&=\frac47-\frac74\left(Z-\frac37\right)^2\\&\le\frac47.\end{aligned}$
二つの等号が同時に成り立つのは$X=Y=2/7$、$Z=3/7$のときである。よって最大値は$\boxed{4/7}$で、$x:y:z=2:2:3$のときにとる。
分母に和の二乗があるので、和を基準にすれば分母を丸ごと消せます。ここで$x$を基準にしても二変数にはなりますが、$(1+u+v)^2$という分母が残ります。
和を$1$にした後も、すぐに$X=1-Y-Z$と展開する必要はありません。$X,Y$は同じ立場で、目的の式には積$XY$と和$X+Y$だけが現れます。$Z$を固定すると和$X+Y=1-Z$が決まるため、積は$X=Y$のとき最大です。
同次性が一つ、対称性と積の評価がもう一つ、追う量を減らしています。なお、これは最大値の問題で、$XY$の係数が正だから使えた評価です。「対称ならいつでも二つを等しくする」と一般化してはいけません。
問題
実数$x,y$が$x^4+x^2y^2+y^4=1$を満たすとき、$x^2+xy+y^2$の最大値と最小値を求めよ。
$k=x^2+xy+y^2\gt0$とおく。条件式を用いると、
$\displaystyle \begin{aligned}3-k^2&=2(x-y)^2k\ge0,\\3k^2-1&=2(x+y)^2k\ge0.\end{aligned}$
よって$1/3\le k^2\le3$。最小値は$\boxed{1/\sqrt3}$、最大値は$\boxed{\sqrt3}$である。
最小値は$x=-y$、$3x^4=1$のとき、最大値は$x=y$、$3x^4=1$のときにとり、いずれも元の条件を満たす。
条件の左辺は$4$次、目的の式は$2$次です。したがって、二つの式をそのまま割っても倍率は消えません。目的の式そのものは、共通の倍率を変えると値が変わります。比を求めるだけで終わらず、条件を使って大きさも決める必要があります。
一方、どちらも$x,y$に対称で、$x^2+y^2$と$xy$で表せます。そこで、同じ$2$次のまとまりの比$t=xy/(x^2+y^2)$を選びます。ここで$s=x^2+y^2$とおくと、条件式は$s^2(1-t^2)=1$となるので、比$t$を決めれば、正の大きさ$s$まで決まります。
これは、二乗和による規格化としても読めます。$h=\sqrt{x^2+y^2}$、$X=x/h$、$Y=y/h$とおけば$X^2+Y^2=1$で、$t=XY$です。$X,Y$を一つずつ解く必要はなく、その積だけを追えば十分でした。
二つの式から定数を消す見方もできます。$F=x^4+x^2y^2+y^4$、$G=x^2+xy+y^2$として、$F=1$、$G=k$なら
$\displaystyle G^2-k^2F=0.$
今回は次数が違うので、$G$を二乗して$4$次に揃えています。これを$(x^2+y^2)^2$で割り、$-1/2\le t\le1/2$を使うと、
$\displaystyle k^2=\frac{1+t}{1-t},\qquad \frac13\le k^2\le3$
が得られます。端の値が分かったら、元の式で$3-G^2$と$3G^2-1$を整理すると、答案の平方の形になります。最後に正の平方根を取れるのは、$G\gt0$だからです。
考えるときには比と大きさを分けて見通しを立て、答案には短い証明を残しました。置換は解法を見つける道具であり、使った記号をすべて答案に残す必要はありません。
問題
$\theta$が実数全体を動くとき、次の式のとりうる値の範囲を求めよ。
$\displaystyle \frac{\sin\theta\cos\theta}{(1+\sin^2\theta)(1+\cos^2\theta)}$
$u=\sin\theta\cos\theta=\frac12\sin2\theta$とおくと、$-1/2\le u\le1/2$であり、この区間のすべての値をとる。
分母は$2+\sin^2\theta\cos^2\theta=2+u^2$なので、与式は$f(u)=u/(2+u^2)$である。区間内で
$\displaystyle f'(u)=\frac{2-u^2}{(2+u^2)^2}\gt0$
より、求める範囲は$\boxed{-2/9\le f(u)\le2/9}$である。
本文の三角関数の例を読んだ直後だと、すぐに$\tan\theta$と置きたくなるかもしれません。しかし、この問題では$\sin\theta$と$\cos\theta$を入れ替えても式が変わりません。積を先に見た方が、その対称性を保てます。
$s=\sin\theta$、$c=\cos\theta$と一時的に書きましょう。$1=s^2+c^2$を用い、分子にも$1$を掛けて$4$次に揃えると、与式は
$\displaystyle \frac{sc(s^2+c^2)}{(2s^2+c^2)(s^2+2c^2)}$
です。分母は$2(s^2+c^2)^2+s^2c^2$なので、まとまりの比$u=sc/(s^2+c^2)$を置けば$u/(2+u^2)$になります。三角関数に戻せば$s^2+c^2=1$なので、$u=\sin\theta\cos\theta$だったわけです。
つまり、答えの置換は「積を思いついた」だけではありません。条件で同次化し、対称性を保つ比を選んだ結果として説明できます。
$t=\tan\theta$でも表せますが、$\cos\theta\ne0$の範囲で
$\displaystyle \frac{t(1+t^2)}{2t^4+5t^2+2}$
となります。この式は$t\ne0$では$t\mapsto1/t$でも変わらず、結局$u=t/(1+t^2)$とまとめると簡単です。最初から$u$を選べば式が短くなり、$\cos\theta=0$の場合もそのまま含められます。
問題
底面が正方形で、頂点が底面の中心の真上にある四角錐を考える。体積が$1$であるとき、表面積(底面を含む)の最小値を求めよ。また、そのときの高さは、底面の一辺の長さの何倍か。
底面の一辺を$a\gt0$、高さを$h\gt0$、表面積を$S$とする。側面の三角形の高さは$\sqrt{h^2+a^2/4}$なので、
$\displaystyle S=a^2+a\sqrt{a^2+4h^2},\qquad a^2h=3.$
$t=\sqrt{a^2+4h^2}/a\gt1$とおくと、$S=a^2(1+t)$であり、$a^6(t^2-1)=4a^4h^2=36$である。したがって、
$\displaystyle \begin{aligned}S^3&=36\frac{(t+1)^2}{t-1}\\&=36\left\{(t-1)+4+\frac4{t-1}\right\}\\&\ge36\cdot8=288.\end{aligned}$
相加相乗平均の等号は$t-1=2$、すなわち$h/a=\sqrt2$のときに成り立つ。実際、$h=\sqrt2a$、$a^3=3/\sqrt2$とすれば体積は$1$となる。
よって、表面積の最小値は$\boxed{\sqrt[3]{288}}$で、そのときの高さは底面の一辺の長さの$\boxed{\sqrt2}$倍である。
見た目は立体の最大・最小問題です。体積が一定なので、まず$h=3/a^2$と消去することもできます。しかし、表面積へ代入すると平方根の中に$a^2$と$1/a^4$が混ざり、式が重くなります。
ここで、大きさと形を分けられないかと考えます。長さを全部同じ倍率にすると、表面積はその倍率の二乗、体積は三乗になります。したがって、表面積の三乗と体積の二乗の比は変わりません。多項式ではない式でも、「全部同じ倍率にするとどうなるか」という見方は使えます。
この問題の体積は$1$なので、まず$S^3$を形の比だけで表す方針が立ちます。$h/a$と置いてもよいのですが、表面積には$\sqrt{a^2+4h^2}$というまとまりが現れています。そのまとまりと$a$の比を$t$にすれば、$S=a^2(1+t)$と平方根が消えます。
さらに$t^2-1=4h^2/a^2$なので、$a^6(t^2-1)=4(a^2h)^2$となり、体積の条件にもつながります。目的の式に現れるまとまりを比にし、その比が条件式にどう結び付くかまで確かめたわけです。
最後に、最適な比を求めただけでは体積$1$の四角錐が得られたことにはなりません。答案では、その比を保って実際の$a,h$を選べることも確認しています。
問題
正の実数$a,b,c,d$が
$\displaystyle a+b+c=\sqrt2\,d,\qquad a^2+b^2+c^2=d^2$
を満たすとき、$d\left(1/a+1/b+1/c\right)$の最小値を求めよ。
条件式から$d$を消去すると、
$\displaystyle a^2+b^2+c^2=2(ab+bc+ca).$
$a,b,c$について対称なので、$a$を最大のものとしてよい。条件は$(a-b-c)^2=4bc$と書ける。$a=b+c-2\sqrt{bc}$では$a=(\sqrt b-\sqrt c)^2$が$b,c$の大きい方より小さくなり矛盾するので、
$\displaystyle a=b+c+2\sqrt{bc}.$
ここで$h=\sqrt{bc}$、$t=(b+c)/h\ge2$とおくと、$a/h=t+2$、$d/h=\sqrt2(t+1)$である。よって与式は
$\displaystyle \begin{aligned}d\left(\frac1a+\frac1b+\frac1c\right)&=\sqrt2(t+1)\left(\frac1{t+2}+t\right)\\&=\frac{\sqrt2(t+1)^3}{t+2}.\end{aligned}$
$t\ge2$で
$\displaystyle 4(t+1)^3-27(t+2)=(t-2)(2t+5)^2\ge0$
より、最小値は$\boxed{27\sqrt2/4}$である。等号は$t=2$、すなわち$b=c$のときに成り立つ。実際、任意の$h\gt0$について
$\displaystyle (a,b,c,d)=(4h,h,h,3\sqrt2\,h)$
は元の条件を満たす。$a,b,c$の入れ替えも許される。
ここまでの見方をつなぐ問題です。まず、文字が四つあるからといって、四つ全部の値を求める必要はありません。目的の式は、全部を同じ倍率にしても変わりません。二つの条件も、その変更に対応しています。
$a/d,b/d,c/d$と置くのは自然な第一案です。条件は、三つの比の和が$\sqrt2$、二乗和が$1$となります。ただし、それだけでは逆数の和を直接評価しにくい。そこで、二つの条件を組み合わせて$d$を消すと、三変数の対称な同次方程式が得られます。
対称性から$a$を最大に選ぶことはできますが、この段階で$b=c$と決めてはいけません。条件を$(a-b-c)^2=4bc$と整理して初めて、最大の$a$を$b+c+2\sqrt{bc}$と表せます。ここでは符号の判定に、変数の順序が働いています。
残った式には$b+c$と$\sqrt{bc}$が現れます。どちらも、$b,c$を同じ倍率にすると同じ倍率だけ変わる量です。そこで、その比$t=(b+c)/\sqrt{bc}$を取ります。$b/h,c/h$と書けば積が$1$なので、これは残った二変数の積を基準にした規格化でもあります。
しかも、$h(1/b+1/c)=t$です。条件だけでなく、目的の逆数の和まで同じ$t$で書けることが、この比を選ぶ決め手です。$b/c$でも解けますが、平方根と逆数を別々に追う必要が生じます。
変数の多さから構造を探す。共通の倍率を外せると見る。条件を結び、対称性で順序を決め、最後にまとまりの比を取る。ここまで進めば、残るのは$t\ge2$での一変数の評価です。
問題
正の実数$x,y,z$について、次の式の最大値と、その最大値をとるときの$x:y:z$を求めよ。
$\displaystyle \frac{xy(x-y)^2+yz(y-z)^2+zx(z-x)^2}{(x+y+z)^4}$
同次性より$x+y+z=1$としてよい。$q=xy+yz+zx$、$r=xyz$とおくと、与式は
$\displaystyle E=q-4q^2+3r$
である。$0\lt q\le1/3$であり、対称性から$x\ge y,z$としてよい。
次の正の数$A,B$を定める。
$\displaystyle A=\frac{1+2\sqrt{1-3q}}3,\qquad B=\frac{1-A}{2}.$
このとき$A+2B=1$、$2AB+B^2=q$である。また、
$\displaystyle 0\le(y-z)^2=1+2x-3x^2-4q$
より$x\le A$である。
$R(t)=t^3-t^2+qt$とおくと、
$\displaystyle R(x)=r,\qquad R(A)=AB^2.$
$x\ge1/3$であり、
$\displaystyle \begin{aligned}R'(x)&=(x-y)(x-z)\ge0,\\R''(t)&=6t-2\ge0\quad(x\le t\le A)\end{aligned}$
なので、$R$は$[x,A]$で減少せず、$r\le AB^2$となる。等号は$A=x$、すなわち$y=z$のときに限る。実際、$A\gt x$なら$x\gt1/3$で、$R'$はその区間で狭義に増加する。
したがって、$q$を変えずに$(x,y,z)$を$(A,B,B)$に置き換えると、$E$は減らない。$t=A/B\ge1$とおけば、
$\displaystyle E\le f(t)=\frac{2t(t-1)^2}{(t+2)^4}.$
微分すると
$\displaystyle f'(t)=\frac{-2(t-1)(t^2-9t+2)}{(t+2)^5}.$
$t_0=(9+\sqrt{73})/2$とおく。もう一方の根$(9-\sqrt{73})/2$は$1$より小さいので、$f$は$1\le t\le t_0$で増加し、$t\ge t_0$で減少する。
よって、求める最大値は
$\displaystyle \boxed{\frac{2t_0(t_0-1)^2}{(t_0+2)^4}},\qquad t_0=\frac{9+\sqrt{73}}2$
であり、そのときの比は$\boxed{x:y:z=t_0:1:1}$およびその入れ替えである。これらの比は正の実数で実現でき、各段階の等号も成り立つ。
見た目は三変数の四次式です。しかも、$x=y=z$とすると分子は$0$なので、「対称だから全部等しいときが最大」という予想は、最初から成立しません。
最初の選択――分母の和を基準にする
分子も分母も$4$次なので、全体の大きさは不要です。分母に$(x+y+z)^4$があるため、和を$1$にするのが自然です。$y/x,z/x$でも二変数になりますが、分母が残り、三つの文字の対称性も見えにくくなります。
次の選択――対称なまとまりに記録する
$p=x+y+z$、$q=xy+yz+zx$、$r=xyz$とすると、分子は$p^2q-4q^2+3pr$です。これは$q^2$や$p^2q$を展開して、同じ種類の項をまとめれば確かめられます。$p=1$にした後は、$E=q-4q^2+3r$となります。
ここで重要なのは、見た目が短くなったことだけではありません。$q$を固定すれば、$r$が大きいほど$E$も大きいと分かりました。そこで次の目標が、「和と$q$を変えずに、積$r$を大きくできないか」に決まります。
ただし$q,r$は自由に選べません。そこで一つの文字を$t$として残り二つを見ると、和が$1-t$、積が$q-t+t^2$になります。全体の積は
$\displaystyle t(q-t+t^2)=R(t)$
という一変数の三次式で表せます。新しい難しい定理を導入したのではなく、残り二つの和と積を条件から書いただけです。
「二つを等しくする」を、ここで初めて正当化する
残り二つが実数であるためには、「和の二乗−積の$4$倍」が非負です。その差が$0$になる大きい方の$t$が$A$で、残り二つは$B,B$になります。これが答案の$A,B$の作り方です。
元の最大の文字を$x$と選ぶと、$R'(x)=(x-y)(x-z)\ge0$。さらに$t\ge x\ge1/3$では$R'$は減らないので、$R(A)\ge R(x)$が分かります。この比較があるから、同じ$q$のもとで二つを等しくしてよいのです。対称性だけから置いたのではありません。
そこで初めて三変数を$A,B,B$に減らし、もう一度同次性を使って$t=A/B$という一つの比にします。あとは高校数学の微分で最大値を求められます。
一見するとかなり難しい問題ですが、使ったのは、同次性、和と積、二次方程式の実数条件、一変数の微分です。この記事の外にある特殊な不等式や、多変数の微分法は使っていません。
難しかったのは、道具を知っているかどうかよりも、どの順番で何を減らすかを選ぶところです。「和を基準にする→対称な量へまとめる→一つを固定して残りを比較する→もう一度比を取る」と、ここまでの見方を重ねることで解けました。
最後に、どの問題で何を選んだかを振り返っておきます。これは問題を解く前の対応表ではなく、解いた後に自分の選択を整理するための表です。
| 問題 | 文字を減らした手掛かり |
|---|---|
| 演習1 | 共通の倍率を外し、一つの比へ |
| 演習2 | 二つの比と、二式の対称性 |
| 演習3 | 和を$1$にし、和が一定の二数の積を評価 |
| 演習4 | 二乗和を基準にし、比と大きさを分ける |
| 演習5 | 条件で同次化し、積と二乗和の比へ |
| 演習6 | 面積と体積の倍率を見て、まとまりの比へ |
| 演習7 | 条件の消去、順序、積を基準にした比 |
| 演習8 | 和で規格化し、対称性を使って再び比へ |
同次性を見つけても、その時点で置換が決まるわけではありません。条件や繰り返すまとまりを見て、何を基準にすれば必要な量をまとめて表せるかを考えます。
次に複雑な式に出会ったら、まずは「この文字を全部、そのまま追う必要があるだろうか」と立ち止まってみてください。次数を見て、条件を見て、比を一つ試す。その一手を自分で選べるようになれば、同次式は知識から、実際に使える見方へ変わります。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
皆さんの日常に良き数学の彩のあらんことを。それでは、ごきげんよう。