エネルギー保存則では位置エネルギーを二重計上しないことを確認します。私の所属する作問サークルの販売している模試の解説から参照する記事です。
小球 A がばねで壁とつながれているところを考える。
小球 A の質量 $m$,速度 $v$,ばねののび $x$ とすると,「小球 A のもつ力学的エネルギー」としてエネルギーの合計 $U_{1}$ を考えることが多い。
$$ U_{1}=\frac{1}{2}mv^2+\frac{1}{2}kx^2 $$
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次に,小球 A,B がばねでつながれている場合を考える。
A,B の質量 $m, M$,速度 $v, V$,ばねののびを$x$とすると,系の力学的エネルギー $U_{2}$ は実際には次のように計上される。
$$U_{2} =\frac{1}{2}mv^2+\frac{1}{2}MV^2+\frac{1}{2}kx^2$$
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弾性力による位置エネルギー $\disp \frac{1}{2}kx^2$ というのは,「ばねに繋がれた物体がもつエネルギー」ではなく,「ばね(弾性力)」がもつエネルギーである.そのため,最初の $U_{1}$ は「小球 A とばねによる系の力学的エネルギー」,$U_{2}$ は「小球 A,B とばねによる系の力学的エネルギー」と呼ぶほうが正確かもしれない.
万有引力や静電気力なども同様である.2 物体の間で相互作用する力は,そのペアに対して位置エネルギーを蓄える.そのため,2 つが固定されず動いていたとしても,力学的エネルギーの計算において位置エネルギーを重複して計上しない.「2 つの電荷とその間の静電気力がもつ合計のエネルギー」「2 つの天体とその間の万有引力がもつ合計のエネルギー」と読み替えて考えるほうがよい.
こんなことを言われてもよくわからないと言われるかもしれないため,古典力学の範囲で,運動方程式からエネルギー保存則を導き,そこから「位置エネルギーはエネルギー保存則に二重計上しない」ことを確認しよう。
$u(t)$ を $t$ の関数として,合成関数の微分から,
$$ k \cdot u \cdot \frac{\dd{u}}{\dd{t}} = \frac{\dd}{\dd{t}} \left( \frac{1}{2}ku^2 \right) $$
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物体の位置(変位)を $t$ の関数 $x$ とすれば,
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速度 $v$ は微小時間 $\Delta{t}$ における位置(変位)の変化率を指し, $\Delta{t} \to +0$ に飛ばして $x(t)$ の時間微分として表現する。
$$ \disp v(t) = \lim_{\Delta{t} \to +0} \frac{x(t+\Delta{t})-x(t)}{\Delta{t}} = \frac{\mathrm{d}x}{\mathrm{d}t} $$
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加速度 $a$ は微小時間 $\Delta{t}$ における速度の変化率を指し, $\Delta{t} \to +0$ に飛ばして $v(t)$ の時間微分,主には $x(t)$ の二階時間微分として表現する。
$$ \disp a(t) = \lim_{\Delta{t} \to +0} \frac{v(t+\Delta{t})-v(t)}{\Delta{t}} = \frac{\mathrm{d}v}{\mathrm{d}t} = \frac{\mathrm{d}^2 x}{\mathrm{d}t^2} $$
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ここで,別の微分の記号を導入する。時間微分を $\dot{x}$ ,二階時間微分を $\ddot{x}$ として表す記法が存在する。
これを用いて, $v(t)=\dot{x}(t) \;,\; a(t)=\ddot{x}(t)$ と表記することも可能である。
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壁に一端を固定された自然長 $l$,ばね定数 $k$ のばねの他端に質量 $m$ の小球 A を取り付け,自然長からののびが $x$ となるように小球 A の座標 $x$ をとる。
運動方程式は:$m\ddot{x}=-kx$
両辺に $\dot{x}$ をかけると,
$$ m \cdot \underline{ \;\dot{x}\;} \cdot \frac{\mathrm{d}\dot{x}}{\mathrm{d}t} = -k \cdot x \cdot \underline{ \;\frac{\mathrm{d}x}{\mathrm{d}t}\;} $$
$$ \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}t}\left( \frac{1}{2} m \dot{x}^2 \right) = -\frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}t}\left( \frac{1}{2} k x^2 \right) $$
$$ \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}t}\left( \frac{1}{2} m \dot{x}^2 + \frac{1}{2} k x^2 \right) =0 $$
両辺 $t$ で積分して,定数 $E$ を用いれば,次の式を得る。
$$ \frac{1}{2} m \dot{x}^2 + \frac{1}{2} k x^2 = E $$
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小球 A,B を両端に取り付けた,自然長 $l$ ,ばね定数 $k$ のばねの他端に質量 $m,M$ の小球 A を取り付ける。小球 A,B の位置を $x_{1}\;,\; x_{2} \; (x_{1}< x_{2})$ とする。ばねののびは $x_{2}-x_{1}-l$ で表される。
運動方程式は: $\begin{cases} m \cdot \ddot{x}_{1} = k(x_{2}-x_{1}-l) \quad -\text{①}\\ M \cdot \ddot{x}_{2} = -k(x_{2}-x_{1}-l) \quad -\text{②} \\ \end{cases}$
$①$ の両辺を $\dot{x}_{1}$ 倍,$②$ の両辺を $\dot{x}_{2}$ 倍して
$$\begin{cases}\disp m \cdot \underline{\; \dot{x}_{1} \;} \cdot \frac{\dd{\dot{x}_{1}}}{\dd t} = \underline{\; \dot{x}_{1} \;} \cdot k(x_{2}-x_{1}-l) \\ \disp M \cdot \underline{\; \dot{x}_{2} \;} \cdot \frac{\dd{\dot{x}_{2}}}{\dd t} = -\underline{\; \dot{x}_{2} \;} \cdot k(x_{2}-x_{1}-l) \end{cases}$$
2式を足し合わせると,
$$ m \cdot x_{1} \cdot \frac{\dd{\dot{x}_{1}}}{\dd t} + M \cdot x_{2} \cdot \frac{\dd{\dot{x}_{2}}}{\dd t} = -k\left( \dot{x}_{2}-\dot{x}_{1} \right)\left( x_{2}-x_{1}-l \right) $$
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$\disp \frac{\dd}{\dd t}\left( x_{2}-x_{1}-l \right) = \dot{x}_{2} - \dot{x}_{1} $ より,
$$ m \cdot \dot{x}_{1} \cdot \frac{\dd{\dot{x}_{1}}}{\dd t} + M \cdot \dot{x}_{2} \cdot \frac{\dd{\dot{x}_{2}}}{\dd t} = -k \cdot \left( x_{2}-x_{1}-l \right) \cdot \frac{\dd}{\dd t} \left( x_{2}-x_{1}-l \right) $$
$$ \frac{\dd}{\dd t} \left( \frac{1}{2} m \dot{x}_{1}^2 + \frac{1}{2} M \dot{x}_{2}^2 \right)= - \frac{\dd}{\dd t} \left\{ \frac{1}{2} k \left( x_{2}-x_{1}-l \right)^2 \right\} $$
$$ \frac{\dd}{\dd t} \left\{ \frac{1}{2} m \dot{x}_{1}^2 + \frac{1}{2} M \dot{x}_{2}^2 + \frac{1}{2} k \left( x_{2}-x_{1}-l \right)^2 \right\} = 0 $$
両辺 $t$ で積分して,定数 $E$ を用いれば,次の式を得る。
$$ \frac{1}{2} m \dot{x}_{1}^2 + \frac{1}{2} M \dot{x}_{2}^2 + \frac{1}{2} k \left( x_{2}-x_{1}-l \right)^2 = E $$
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万有引力・静電気力・磁力はともに距離$r$の 2 乗に反比例する。
$$ F_\text{万有引力}= \frac{-GMm}{r^2} \;,\; F_\text{静電気力}= \frac{q_{1}q_{2}}{4\pi\varepsilon_{0}} \cdot \frac{1}{r^2} \;,\; F_\text{磁力}= \frac{m_{1}m_{2}}{4\pi\mu_{0}} \cdot \frac{1}{r^2} $$
これを定数 $c$ を用いてまとめると $\disp F=\frac{c}{r^2}$ となる。物理量の大きさが,その発生源からの距離の 2 乗に反比例する性質を「逆2乗の法則」「逆2乗則」という[1]。
中心点$O$ を $x=0$ とする座標をとる。$O$ に力源$M$を固定して,$M$ と引力・斥力を及ぼしあうような性質をもつ点粒子$A$(位置$x$)の運動を考える。(つまり荷電粒子どうしや磁石どうしを置いてその運動をみるということ。)
運動方程式は: $\disp m\ddot{x}=\frac{c}{x^2}$
両辺に $\dot{x}$ をかけると,
$$ m \cdot \underline{ \;\dot{x}\;} \cdot \frac{\mathrm{d}\dot{x}}{\mathrm{d}t} = \frac{c}{x^2} \cdot \underline{ \;\frac{\mathrm{d}x}{\mathrm{d}t}\;} $$
$$ \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}t}\left( \frac{1}{2} m \dot{x}^2 \right) = \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}t}\left( -\frac{c}{x} \right) $$
$$ \frac{\mathrm{d}}{\mathrm{d}t}\left( \frac{1}{2} m \dot{x}^2 + \frac{c}{x} \right) =0 $$
両辺 $t$ で積分して,定数 $E$ を用いれば,次の式を得る。
$$ \frac{1}{2} m \dot{x}^2 + \frac{c}{x} = E \quad\to\quad \mathrm{ex.}\quad \frac{1}{2}mv^2+k\frac{q_{1}q_{2}}{r}=\mathrm{const.} $$
位置が $x_{1}$ の点粒子$A$,$x_{2}$ の点粒子$B$ をおく。 $A,B$ が互いに引力・斥力を及ぼしあうような性質をもつもの(つまり荷電粒子どうしや磁石どうしを置いてその運動をみるということ)であるとき,$A,B$の運動を考える。$x_{1}< x_{2}$ とする。
運動方程式は: $\begin{cases} \disp m \cdot \ddot{x}_{1} = -\frac{c}{\left( x_{2}-x_{1} \right)^2} \quad -\text{①}\\ \disp M \cdot \ddot{x}_{2} = \frac{c}{\left( x_{2}-x_{1} \right)^2} \quad -\text{②} \\ \end{cases}$
$①$ の両辺を $\dot{x}_{1}$ 倍,$②$ の両辺を $\dot{x}_{2}$ 倍して
$$\begin{cases}\disp m \cdot \underline{\; \dot{x}_{1} \;} \cdot \frac{\dd{\dot{x}_{1}}}{\dd t} = \underline{\; \dot{x}_{1} \;} \cdot \left\{ - \frac{c}{\left( x_{2}-x_{1} \right)^2} \right\} \\ \disp M \cdot \underline{\; \dot{x}_{2} \;} \cdot \frac{\dd{\dot{x}_{2}}}{\dd t} = \underline{\; \dot{x}_{2} \;} \cdot \frac{c}{\left( x_{2}-x_{1} \right)^2} \end{cases}$$
2式を足し合わせると,
$$ m \cdot x_{1} \cdot \frac{\dd{\dot{x}_{1}}}{\dd t} + M \cdot x_{2} \cdot \frac{\dd{\dot{x}_{2}}}{\dd t} = \frac{c}{\left( x_{2}-x_{1} \right)^2} \cdot \left( \dot{x}_{2}-\dot{x}_{1} \right) $$
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$\disp \frac{\dd}{\dd t}\left( x_{2}-x_{1} \right) = \dot{x}_{2} - \dot{x}_{1} $ より,
$$ m \cdot \dot{x}_{1} \cdot \frac{\dd{\dot{x}_{1}}}{\dd t} + M \cdot \dot{x}_{2} \cdot \frac{\dd{\dot{x}_{2}}}{\dd t} = \frac{c}{\left( x_{2}-x_{1} \right)^2} \cdot \frac{\dd}{\dd t} \left( x_{2}-x_{1} \right) $$
$$ \frac{\dd}{\dd t} \left( \frac{1}{2} m \dot{x}_{1}^2 + \frac{1}{2} M \dot{x}_{2}^2 \right)= - \frac{\dd}{\dd t} \left( \frac{c}{ x_{2}-x_{1} } \right) $$
$$ \frac{\dd}{\dd t} \left\{ \frac{1}{2} m \dot{x}_{1}^2 + \frac{1}{2} M \dot{x}_{2}^2 + \frac{c}{ x_{2}-x_{1} } \right\} = 0 $$
両辺 $t$ で積分して,定数 $E$ を用いれば,次の式を得る。
$$ \frac{1}{2} m \dot{x}_{1}^2 + \frac{1}{2} M \dot{x}_{2}^2 + \frac{c}{ x_{2}-x_{1} } = E \quad\to\quad \mathrm{ex.}\quad \frac{1}{2}mv^2+\frac{1}{2}MV^2-G\frac{Mm}{r}= \mathrm{const.} $$
多変数でも同様に時間微分を行うことができる。ただし,これまで運動方程式に行ってきた「速度をかける」という操作は,正確には「速度との内積をとる」に変化する。運動方程式自体ベクトル量を比べている,というのもある。
実は途中計算自体はこれまでとさほど変わらないので,これまでと同様にエネルギー保存則を導ける。
基本的には運動方程式の両辺に速度をかけて(あるいは速度との内積をとって)「(ある物理量)の時間微分が$0$」を導くことで,エネルギー保存を得る。実際には,
$\disp m\ddot{x} \to \frac{1}{2}m\dot{x}^2 $(運動エネルギー)
$\disp -kx \to +\frac{1}{2}kx^2$(弾性力による位置エネルギー・移項で符号が逆転)
$\disp \frac{c}{x^2} \to +\frac{c}{x}$(逆2乗則の力による位置エネルギー・移項で符号が逆転)
のように対応している。
この内容を物理(工大祭物理販売用2026)の解答に長々と載せるのも気が引けたので,こちらの記事で説明しました。