https://x.com/fumokmm/status/1894636605568422314
https://x.com/p_ark_channel2/status/1894276913105178918
これらのポストについて、数学的に真面目に考えてみることにする。
両者で距離が同じなのは明らかである。物が距離$d$で等間隔に並んでいるものとし、手前から1番目、2番目、3番目......$i$番目と数えていくとき、$i$番目の物を取りに行って戻ってくるまでの距離は
$$
2d
$$
であり、もし物が$N$個あるのであれば、すべての物を取ってくるのにかかる距離$L$は
$$
L=\sum_{i=1}^{N}2id
$$
である。仮に取ってくる順番が逆になったとしても
$$
L'=\sum_{i=N}^{1}2id
$$
となるだけであり、両者の値は、和の交換法則から明らかに等しい。今、距離$l$での速さを$v(l)$とおくと、$L$を走るのにかかる時間は
$$
T=\int_{0}^{L}\frac{dl}{v(l)}
$$
のように求められる。
$v(l)=v_0$ならば
$$
T=\int_{0}^{L}\frac{dl}{v_0}=\left[ \frac{l}{v_o}\right]_0^{L}=\frac{L}{v_0}
$$
である。速度一定なら、かかる時間は等しい。
しかし、現実には速度は一定ではない。疲れの影響があるからだ。この記事では一歩踏み込んで、疲れによる速度変化の影響も考えてみることにする。
ここでは、サボタージュや両者の身体的な差は考えないものとする。つまり、両者走る能力は同じであり、どちらも全力疾走で走るとするのだ。
このときネックになってくるのは、往復移動である。一方向に全力疾走するだけならまだしも、反復横跳びのように、行って、戻ってを繰り返すのは大きく体力を消耗する。そして、反復運動による体力の消耗は、距離が短い方が大きいと思われる。
すると、手前から物を取っていく場合、最初は短い距離の反復運動によって、激しく体力を消耗し、急激に速度が低下すると考えられる。ある程度距離を走れば、反復運動の距離も長くなり体力の消耗も落ち着くであろう。
奥側から物を取っていく場合、最初は反復距離が長いから、体力の消耗具合は緩やかである。しかし、物が近くなっていくにつれ反復距離も短くなり、体力の消耗も激しくなる。結果、速さは急激に低下する。
以上を前提として考えたときに、本当にかかる時間が同じか、確かめてみよう。以上の前提をもとに描いたのが、下図である。縦軸が$1/v$と速度の逆数になっていることに注意せよ。
速度の逆数の変化
$C_{FF}$は、手前側から最初に取っていくときの速度変化を(Front First)、$C_{BF}$は、奥側から最初に取っていくときの速度変化を表している(Back First)。
先ほど示した$T$の式から、この面積値は、かかる時間と等しい。$C_{FF}$と$C_{BF}$の面積の差を求めれば、かかる時間の差を求められる。疲れによる速度変化は、傾き$k$の直線で近似している。
といっても簡単である。ほとんどの部分は打ち消し合って、赤線で囲まれた面積しか残らない。$C_{FF}$が$kd(L-2d)$だけ面積が大きくなっている。つまり、時間がかかることを意味している。
実際のケースでは、こんなきれいな直線にはならず、何らかの曲線になるであろう。しかし、その場合でも、その変化具合が両者で同じであるならば、同様の議論が適用できる。そして普通、身体的差を無視すれば、走る行程が同じである以上、同じと考えられる。
以上の議論より、手前から物を取っていく方が、奥側から物を取っていくのに比べ、不利な条件と言える。