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現代数学解説
文献あり

あなたも√sinxの積分を求めませんか?

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今回の問題

0π2sinxdx,0π2cosxdx,0π2tanxdxを求めよ。

三角関数に平方根がついたものを0からπ2で積分します。

今回使う道具

ベータ関数

実部が正の複素数x,yに対して、次のように定義される。
B(x,y):=01tx1(1t)y1dt

今回はベータ関数をたくさん使います。
まず次の補題を証明しましょう。

B(x,y)=20π2sin2x1θcos2y1θdθ

B(x,y)=01tx1(1t)y1dtt=sin2θ,dt=2sinθcosθ=0π2sin2x2θ(1sin2θ)y12sinθcosθdθ=20π2sin2x1θcos2y1θdθ

定積分する

sinxの積分とcosxの積分

具体的な値を求める前に、次の補題を示しましょう。シンプルな置換です。

0π2sinxdx=0π2cosxdx

0π2sinxdx=π20sin(π2t)dtx=π2t,dx=dt=0π2costdt

今のはKing Propertyという有名なテクニックですね。
それでは計算していきましょう。

0π2sinxdx=0π2sin12xdx=0π2sin12xcos0xdx=0π2sin2341xcos2121xdx=12B(34,12)=Γ(34)Γ(12)2Γ(54)=π Γ(34)2Γ(54)=2πΓ(34)2

0π2sinxdx=0π2cosxdx=2πΓ(34)2

求められました。ガンマ関数が残ってしまいましたが…
数値的にはだいたい1.19814023くらいです。
導出の最後の等式は相反公式を利用しました。

tanxの積分

同じように計算していきましょう。

0π2tanxdx=0π2sinxcosxdx=0π2sin12xcos12xdx=0π2sin2341xcos2141xdx=12B(34,14)=Γ(34)Γ(14)2Γ(1)=12Γ(34)Γ(14)=12Γ(114)Γ(14)=π2sinπ4=π2

0π2tanxdx=π2

なかなかきれいな形になったのではないでしょうか。
ちなみに値はだいたい2.221441469くらいです。

不定積分

今度は不定積分を求めていきます。初等関数で表されるとは思えませんが...

cosxの不定積分

比較的(?)計算しやすいcosxの不定積分から求めていきます。

0xcostdt=0x121cost2dt=0x12sin2t2dt=20x212sin2θdθt=2θ,dt=2dθ

ここで第二種楕円積分を用います。

第二種楕円積分

E(k,φ)=0φ1k2sin2θdθ

続き

20x212sin2θdθ=20x2122sin2θdθ=2E(2,x2)

cosxdx=2E(2,x2)+C (Cは積分定数)

sinxの不定積分

こちらはπ2uに置換すればいいです。

sinxdx=2E(2,π4x2)+C
(Cは積分定数)

tanxの不定積分

この積分はかなり難しいです。(打つのめんどくさい)
まずは2つの補題を示しましょう。

4acb2>0となるとき、
1ax2+bx+cdx=24acb2arctan(2ax+b4acb2)+C

二次式 ax2+bx+c を平方完成すると、
ax2+bx+c=a(x2+bax+ca)=a((x+b2a)2D4a2)
と変形できる。ここでD=b24acである。
u=x+b2aと置くと、積分は次の形になる
I=dxa(u2D4a2)
ここで、k2=D4a2 とおくと、
I=1aduu2+k2
ここで以下の公式を用いる。
dxx2+α2=1αarctan(xα)+C
これを適用すると、
I=1a1karctan(uk)+C
もとの変数 x に戻すと
I=1a2aDarctan(2a(x+b2a)D)+C=24acb2arctan(2ax+b4acb2)+C

arctan(α)+arctan(β)=arctan(α+β1αβ)

tan(A+B)=tanA+tanB1tanAtanB
A=arctanα,B=arctanβを代入すると、
tan(arctanα+arctanβ)=α+β1αβ
両辺arctanをとるとarctan(α)+arctan(β)=arctan(α+β1αβ)

これらの補題を使って、tanxの積分を求めていきます。
早速大胆に置換します。

I=tanxdx=2t21+t4dtt=tanx,dx=2t1+t4dt=12(tt22t+1tt2+2t+1)dt
このように部分分数分解によって2つの積分に分けることができた。
左側の積分をI1、右側の積分をI2とすると、
2I=I1I2
となる。それぞれ計算していく。
I1=tt22t+1dt=12(2t2t22t+1dt+2t22t+1dt)=12((t22t+1)t22t+1dt+21t22t+1dt)=12log|t22t+1|+arctan(2t1)
I2=tt2+2t+1dt=12(2t+2t2+2t+1dt2t2+2t+1dt)=12((t2+2t+1)t2+2t+1dt21t2+2t+1dt)=12log|t2+2t+1|+arctan(2t+1)
よって、
I=12(I1I2)=12((12log|t22t+1|+arctan(2t1))(12log|t2+2t+1|+arctan(2t+1)))=122log|t22t+1t2+2t+1|+12(arctan(2t1)+arctan(2t+1))=122log|t22t+1t2+2t+1|+12(arctan(2t1t2))=122log|tan(x)2tan(x)+1tan(x)+2tan(x)+1|+12arctan(2tan(x)1tan(x))

tanxdx=122log|tan(x)2tan(x)+1tan(x)+2tan(x)+1|+12arctan(2tan(x)1tan(x))+C

かなり複雑な式になりました。
試しに積分してみるとこうなります。

0π6tanxdx=122log(1+361+3+6)+12arctan(6+22)

ちゃんと解けるのがすごいですね!
ちなみに値は0.257824531くらいです。

参考文献

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cbrtx
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何の変哲もないただの学生。

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