1

2022*2021/2+1変数母関数の畳み込みを計算する.

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0

 正三角形状に非負整数を並べた配列が整った三角形であるとは,最下行以外に位置する任意の数について, そのすぐ下に位置する左右2つの数の最小値以下であることを指します.また, n段の整った三角形の整い度を,以下に示す二項係数の総積で定めます. 以下は 4 段の整った三角形の一例となっています.
0121522766
 ただし, 上からx(1)段目, 左からy(1)個目に位置する数を ax,y で表すものとし, i=0,1, に対し ai,0=0 とします.
x=2ny=1x1(ax,yax2,y1ax,yax1,y)
2022段の整った三角形であって, 以下を満たすものすべてについて, それらの整い度の総和を求めてください.
a2022,i=10000(1i2022),a2021,1000=5678

解説
 以下, 整数の組 (i,j)ij を満たす正整数の組を指すものとし, (x1,y1)(x2,y2) とは辞書式順序において (x1,y1)(x2,y2) より後に来ないことを意味する.


 N=10000, M=100005678=4322 とし, {an,m} を定義し直す.

以下のように(問題文の例)左に 0 を追加し, 下から n(0) 段目, 左から m(0) 個目に位置する数を an,m とする.
a3,0a3,1a3,2a3,3a3,4a2,0a2,1a2,2a2,3a1,0a1,1a1,2a0,1=0022601560172

このとき, 非負整数 {bn,m},{cn,m} を以下のように定義する.

  • bn,m=an,man,m1.
  • cn,m=an,man+1,m.

このとき, 問題文の最後の条件より, 以下が成立. 逆にこれを満たすとき組 ({bn,m},{cn,m}){an,m} と一対一に対応する.

条件
  • (i,j)(2021,2021) について,
    bi,1+bi,2++bi,j+ci1,j+ci2,j++cj1,j=N.
  • c999,1000=M.

そして整い度は, {bi,j},{ci,j} を用いて以下のように表せる.

({bn,m},{cn,m})に対して整い度は以下で表される.
(i,j)(2021,2021)(bi,j+ci1,jbi,j)

これの総和 S を 変数 xi,j((i,j)(2021,2021)),y による形式的冪級数を用いて求める. 2 変数冪級数 f(x,y)

f(x,y):=11xy=i=0j=0(i+ji)xiyj

とする. 整い度の総和 S について以下が成立する.

整い度の総和 S は以下の冪級数 FyM(i,j)(2021,2021)xi,jNの係数である.
F:=(i,j)(2021,2021)f(k=jixi,k,k=i2021xk,j)((i,j)=(1000,1000),f(k=jixi,k,yk=i2021xk,j))

これは展開したときの xi,j の指数が bi,1+bi,2++bi,j+ci1,j+ci2,j++cj1,j に対応し, y の指数が c999,1000 に対応していることからわかる.
以下の補題を用いて, [(i,j)(2021,2021)xi,jN]F を求めていく. ( y の多項式として展開する. )


[xn]((ax+b)n11αx)=(a+bα)n.

証明
[xk](11αx)=αk,[xk](ax+b)n=(nk)akbnk より,
((ax+b)n11αx)=k=0n([xk](11αx))([xnk](ax+b)n)=k=0n(nk)(bα)kank=(a+bα)n

y1 次以下の多項式 An,m が以下を満たすとする.

  • A0,0=1
  • Ai,1=0,Ai,i+1=0
  • An,m=An1,m+An,m1(0mn)
    ( (n,m)=(1000,1000) のとき, An,m=yAn,m1+An1,m )

このとき, 以下が成立.

[(i,j)(n,n)xi,jN](i,j)(n,n)f(k=jixi,k,k=i2021xk,j)=(k=0nAn,kn+1t20211skxt,s)N

証明
 (n,m) について, 以下が成立することを示せば, (n,n) の場合が上の式となる.
[(i,j)(n,m)xi,jN](i,j)(n,m)f(k=jixi,k,k=i2021xk,j)=((k=m+1nxn,k)(k=0m1An,kn+1t20211skxt,s)+An,mn+1t20211smxt,s+k=m+1nAn1,k(n+1t20211sm)(nt2021m+2sk)xt,s)N
 (n,m)=(1,1) のとき, 成り立つことは確認できる.
上の式と
f(k=m+1nxn,k,k=n2021xk,m+1)=11(k=m+2nxn,k+k=n+12021xk,m+1)xn,m+1
に補題を適用すると, (n,m) について成り立つとき, 以下のように (n,m+1) についても成り立つ.
[(i,j)(n,m+1)xi,jN](i,j)(n,m+1)f(k=jixi,k,k=i2021xk,j)=[xn,m+1N](([(i,j)(n,m)xi,jN](i,j)(n,m)f(k=jixi,k,k=i2021xk,j))×f(k=m+1nxn,k,k=n2021xk,m+1))=[xn,m+1N](((k=m+1nxn,k)(k=0m1An,kn+1t20211skxt,s)+An,mn+1t20211smxt,s+k=m+1nAn1,k(n+1t20211sm)(nt2021m+1sk)xt,s)N×11(k=m+2nxn,k+k=n+12021xk,m+1)xn,m+1)=((k=m+2nxn,k)(k=0m1An,kn+1t20211skxt,s)+An,m(n+1t20211smxt,s)(k=m+2nxn,k+k=n+12021xk,m+1)+k=m+1nAn1,k(n+1t20211sm+1)(nt2021m+2sk)xt,s)N=((k=m+2nxn,k)(k=0mAn,kn+1t20211skxt,s)+(An,m+An1,m+1)n+1t20211sm+1xt,s+k=m+2nAn1,k(n+1t20211sm+1)(nt2021m+2sk)xt,s)N=((k=m+2nxn,k)(k=0mAn,kn+1t20211skxt,s)+An,m+1n+1t20211sm+1xt,s+k=m+2nAn1,k(n+1t20211sm+1)(nt2021m+2sk)xt,s)N
(n,n) から (n+1,1) についても同様に示される.

特に,

[(i,j)(2021,2021)xi,jN]F=(k=02021A2021,k)N=(A2022,2022)N

An,m の漸化式より y の一次式 An,m について以下が成立

  • (An,m の係数の総和) = ( (0,0) から xy の領域内で x,y いずれかの正方向に 1 進むことを繰り返し, (n,m) に到達する経路数)
  • (An,my の係数) = ( (0,0) から xy の領域内で x,y いずれかの正方向に 1 進むことを繰り返し, (1000,1000) を通り, (n,m) に到達する経路数)

よって, カタラン数 Cn:=1n+1(2nn) を用いて以下のようになる.

(A2022,2022)N=((C2022C1000C1022)+C1000C1022×y)N

特に, 以下に示す yM の係数が求める整い度の総和となる.

S=(NM)(C1000C1022)M(C2022C1000C1022)NM

投稿日:34
更新日:34
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