$89\frac{567}{1234}$と書けば$89$以上$90$以下であることはすぐわかります。もっと言えば小数部分が小さそうだということもわかります。これに対し$\frac{110393}{1234}$は大きさの検討がしづらくなります。せいぜいぱっと見では$100$弱といったところでしょう。
このように、大きさがわかりやすいというのが帯分数の大きなメリットになります。
この特長が生かされているのが料理のレシピです。小さじ$\frac{5}{2}$と書かれるより、小さじ$2\frac{1}{2}$と書かれたほうがわかりやすいでしょう。
あくまでも小学校レベルの話にはなりますが、$4$等分したうちの$7$つ分$\left(\frac{7}{4}\right)$というのはわかりづらいという話があります。$1$と$4$等分したうちの$3$つ分$\left(1\frac{3}{4}\right)$の方が幾分かイメージしやすいでしょう。
帯分数の場合
\begin{align}
3\frac{2}{5}+4\frac{1}{3}&=3+4+\frac{6+5}{15}\\
&=7\frac{11}{15}
\end{align}
仮分数の場合
\begin{align}
\frac{17}{5}+\frac{13}{3}&=\frac{51+65}{15}\\
&=\frac{116}{15}
\end{align}
このように帯分数の場合、加減法の場合は帯分数の計算が楽になります。仮分数では分子の数が大きくなりやすいのです。ただし、以下のように、繰り上がり、繰り下がりがある場合は面倒です。
\begin{align} 4\frac{2}{3}+2\frac{4}{5}&=6\frac{22}{15}\\ &=7\frac{7}{15}\\ \ \\ 4\frac{2}{3}-2\frac{4}{5}&=4\frac{10}{15}-2\frac{12}{15}\\ &=3\frac{25}{15}-2\frac{12}{15}\\ &=1\frac{13}{15} \end{align}
帯分数
\begin{align}
2\frac{2}{7}\times 3\frac{1}{4}&=2\times3+2\times\frac{1}{4}+\frac{2}{7}\times3+\frac{2}{7}\times\frac{1}{4}\\
&=6+\frac{1}{2}+\frac{6}{7}+\frac{1}{14}\\
&=6\frac{20}{14}\\
&=7\frac{3}{7}
\end{align}
仮分数
\begin{align}
\frac{16}{7}\times\frac{13}{4}&=\frac{52}{7}
\end{align}
乗除法の場合、仮分数のほうが計算しやすいことは火を見るより明らかでしょう。そのため、普通、帯分数の乗除は仮分数に直して計算します。
中学生になると、文字式や根号を使った式では記号「$\times$」を省略します。これに対して帯分数で省略されている記号は「$+$」です。これは紛らわしく、実際、高校生になると$G\frac{Mm}{r^2}$のような式を扱いますが、これは$G+\frac{Mm}{r^2}$ではなく$G\times\frac{Mm}{r^2}$です。
$2\frac{1}{3}$より$\frac{7}{3}$の方が単純な表記ではないでしょうか。個人的な意見ですが、数学の表記は「わかりやすさ」と「単純さ」を重視していると思っています。例えば$\frac{98}{343}$よりも$\frac{2}{7}$の方がわかりやすく、単純です。また、$1=1.0=1.00$ですが、一番単純な$1$を使うことになります1)。単純さという視点では仮分数のほうが好まれるのだろうと思います。
わかりやすさという点では帯分数に分がありますが、計算力がついてくると仮分数でもそれなりに大きさがわかるようになり、仮分数の加減法も苦ではなくなります。そうなると、帯分数の利点が少なくなり、仮分数を使うことになるのでしょう。