導入
今回は無限和で表された関数です。
というものを思いつきました。ここで、総和記号の添え字のですが、を全整数に動かしながら足していくことを表しています。総和の上端及び下端の極限の取り方ですが、任意に取ることができます。すなわち、記号を用いて書くなら、
という感じです。
そして、実はこの関数は、
という閉じた形を持ちます。
なので、例えばここにを代入すると、
という等式が得られたりします。今回はそんな関数のお話です。では、導出していきましょう。
導出
まず、任意の自然数に対し、を考えます。よく知られた因数分解公式を繰り返し用いて、
です。のとき、両辺をで割って、
という関係が得られます。ここで、の極限を考えます。元の関数が収束するのは、の場合ですが、簡単のためとしておきます。
そうすると、となるので、①から、
となります。左辺のは、初項公比の無限等比級数の和としてよく見かけますね。収束する範囲がであることからも、
とは親戚のように思えます。
さて、②の両辺に自然対数をとると、
となります。真数の積は和に変換できますから、
となります。両辺をで微分します。
両辺にを掛けて、
元の関数に近い形が出てきましたが、これはまだ自然数についてのみ足し上げただけです。負の整数も足さなければなりません。
この次の作業が少しトリッキーです。
まず、の範囲を、に制限します。このとき、自然数を用いて、と置きます。明らかにです。
③に代入すると、
となります。であることに注意してください。
なので、新たにとすると、の取りうる範囲はなので、よりとなります。よって、④⑤から、
両辺をで割って、
あとは、の極限を取るだけです。ここで、
ですから、とおくと、でです。
よって、
これはの不定形です。ロピタルを使うことも出来ますが、せっかくなのでしっかりと求めてみましょう。
まず求める極限の逆数を取ると、
ここで、関数を考えます。今は定数として扱っているので、これはを底とする指数関数です。
そして、であるので、先ほどの極限は、
とみなせて、これはに等しく、
であることから、
⑦の極限は、
と求まりました。
よって、⑥⑧から、
とが得られます。をに置きなおして、また、の動く範囲は全整数ですから、結局
となります。
ここで、とすれば、よりで、
より
となります。
(総和の上端と下端の極限の順序について、今回は上端→下端の順に取りましたが、おそらく逆でも可能なはずです。面倒なので省いています。)
よって、の閉じた形が得られました。
応用
さて、自身は全整数を動くわけですが、途中の③に、非負整数のみを動くような式が得られていました。
かつ
なので、前者から後者を引いて、
であり、
として、
でもあります。そしてこれらの級数に関しては、で収束します。
更に、
以前用いた関係式
を用いると、
左辺について、積分と総和を入れ替えて
今なので、が成り立ちますから、等比級数の和の公式を適用して、
またも積分と総和を入れ替えて
となります。これがに等しいので、例えばを代入すれば、
という等式が得られます。収束速度は遅いので実用的ではありません。
更に、⑨を用いれば、左辺の計算は省略して、
ここで、
ここで、ディガンマ関数は、階乗の一般化であるガンマ関数の対数微分であり、はオイラーの定数と呼ばれる、調和級数と自然対数の差の極限で定義される定数で、その値はおよそです。
いまだ無理数かどうか分かっていないなど、この定数自身も非常に興味深い数ですが、今回はひとまずおいておいて、
結局、
となります。
を代入すれば、
などが得られます。
まとめ
いかがだったでしょうか。高校生+の存在でも、身近なところから思わぬ表現が得られるのは嬉しいものです。
今回はこれで終わりです。