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高校数学解説
文献あり

極座標をn次元に一般化する

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はじめに

今回扱う内容は "極座標" です. 一度は耳にしたこともある人も多いでしょう. 2次元の場合は数学3に, 3次元の場合は数学4の範囲に掲載されている内容です. しかし, n次元に一般化したときはどのような振る舞いをするのでしょうか. 今回はこれについて深堀りします.

極座標の定義

極座標

極座標 [Polar Coordinate] とは, $n$次元ユークリッド空間$\mathbb{R}^n$における, $1$個の動径$r$$n-1$個の偏角$\theta_1,\theta_2,\cdots,\theta_{n-1}$によって定められた座標のこと. 座標上の点を$P\,(r,\theta_1,\theta_2,\cdots,\theta_{n-1})$と表す.

動径 … 線分$OP$の距離
偏角 … 半直線$OP$$x_n$軸を除く$n-1$個の座標軸それぞれとの一般角

極座標の定義です. “動径” と “偏角” の定義も記しておきました. 座標系に対する真新しい考え方なので, これだけではわかりにくいですが, 直交座標の定義と同時に見るとわかりやすいでしょう.

直交座標

直交座標 [Rectangular Coordinate] とは, $n$次元ユークリッド空間$\mathbb{R}^n$における, 直交する座標軸$x_1,x_2,\cdots,x_n$についてのそれぞれの成分によって定められた座標のこと. 座標上の点を$P\,(x_1,x_2,\cdots,x_n)$と表す.

おなじみの直交座標の定義です. “座標軸の成分” と少しごまかして記しました. (厳密には点$P$から座標軸$x_k$への垂直胞$\mathbb{R}^{n-1}$で定義)

直交座標は座標軸を視点におくのに対し, 極座標は動径と偏角を視点におく座標といえるでしょう. しかし, 2つの座標系は視点が違うだけで, 点$P$は同じなので, 直交座標と極座標の間で変換することができます.

直交座標と極座標の変換

直交座標と極座標において, “何らかの方法”で
$P\,(x_1,x_2,\cdots,x_n) \longleftrightarrow (r,\theta_1,\theta_2,\cdots,\theta_{n-1})$
と座標変換することができる.

今回の目標は, 座標変換の公式を導出することです. しかし, 極座標と直交座標の定義がいずれも抽象的すぎて, このままでは示すのが難しそうです. 今の段階では定義を理解することすらできない人もいるでしょう. ですので, まずは 2次元3次元 で示すことからして, そのあと n次元 に一般化しましょう.

2次元の場合

定義

先ほどの極座標と直交座標の定義に$n=2$を代入します. 少しわかりやすいように文面を変えておきました.

極座標 (2次元)

極座標 とは, 座標平面$\mathbb{R}^2$における, 動径$r$偏角$\theta$によって定められた座標のこと. 座標上の点を$P\,(r,\theta)$と表す.

動径 … 線分$OP$の距離
偏角 … 半直線$OP$$x$軸との一般角

直交座標 (2次元)

直交座標 とは, 座標平面$\mathbb{R}^2$における, 直交する座標軸$x,y$についてのそれぞれの成分によって定められた座標のこと. 座標上の点を$P\,(x,y)$と表す.

2次元の場合, とてもわかりやすい定義ですね. ここで, 直交座標と極座標の変換は
$P\,(x,y)\longleftrightarrow(r,\theta)$
とできるはずです. 変換公式を導出しましょう.

偏角の向き

ここで, 気づいている人もいるかもしれませんが, ある問題点があります.

動径$r$は線分$OP$の距離なので1通りですが, 偏角$\theta$は, 線分$OP$$x$軸との一般角ですので, 表し方は$x$軸から線分$OP$に回転する方法で, 左回りと右回りの2通りあります.

これでは不便なので, 予めどちら回りかを定義しておくべきでしょう. どちらでもよいみたいですが, 次のように定義するのが一般的です.

偏角の向き (2次元)

座標平面$(x,y)$において,
偏角$\theta$は, $x$軸正方向を起点として, $y$軸正方向に向かって$P$まで回転するものとする.

わかりやすくいうと, $x$軸が右向き, $y$軸が上向きとすると, 偏角$\theta$の向きは, 右から上なので, 左回りになります.

2次元の場合, 左回りで十分ですが, 3次元以上に広げる際, 先ほどの定義が重要になります. しっかりと理解しておきましょう.

変換公式

では, 変換公式の導出です. 直交座標$(x,y)$と極座標$(r,\theta)$の関係を連立方程式にして, これを解けば変換公式が求まります.

$P\,(x,y)$として, 点$P$から$x,y$軸への垂線の足を$X,Y$とする.

このとき $OP=\sqrt{x^2+y^2}$, $OX=x$, $OY=y$

動径の定義 $r\coloneqq OP$
偏角の定義 $\theta\coloneqq\angle POX$ から $\cos\theta=\dfrac{OX}{OP}$, $\sin\theta=\dfrac{OY}{OP}$

したがって,

$$\begin{cases} x=r\cos\theta\\ y=r\sin\theta \end{cases}$$

$$\begin{cases} r=\sqrt{x^2+y^2} \\ \theta=\arccos{\dfrac{x}{\sqrt{x^2+y^2}}}=\arcsin{\dfrac{y}{\sqrt{x^2+y^2}}} \end{cases}$$

が示された.

座標変換の公式 (2次元)

直交座標$(x,y)$と極座標$(r,\theta)$において, 次の2つの等式のうちいずれかを用いることによって, 座標変換できる. 2つの等式は同値である.

$\begin{cases} x=r\cos\theta\\ y=r\sin\theta \end{cases}$

$\begin{cases} r=\sqrt{x^2+y^2} \\ \theta=\arccos{\dfrac{x}{\sqrt{x^2+y^2}}}=\arcsin{\dfrac{y}{\sqrt{x^2+y^2}}} \end{cases}$

変換公式が求まりました. これによって, 一方の座標がわかればもう一方もわかるようになります.

具体例を2つ記しました. 公式に代入すると, どちらの方向でも変換できます.

  • $(r,\theta)=(2,\dfrac{\pi}{3})\,\longleftrightarrow\, (x,y)=(1,\sqrt{3})$
  • $(x,y)=(1,1)\,\longleftrightarrow\,(r,\theta)=(\sqrt2,\dfrac{\pi}{4})$

極方程式

ここからは少し余談です. 今回の目標からは少しずれますが, 重要な概念ですので軽く紹介します.

極方程式

極方程式 [Polar Function] とは, 座標平面$\mathbb{R}^2$における, 極座標$(r,\theta)$を用いて, 陰関数$f(r,\theta)=0$で表した方程式のこと.

定義だけではわかりにくいですが, 陰関数の定義が “$f(x,y)=0$をみたす点全体の集合” ということを考えれば, 極方程式は, “$f(r,\theta)=0$をみたす点全体の集合” と捉えればよさそうです. このように考えれば, 陰関数の変換$f(x,y)=0\,\leftrightarrow\,f(r,\theta)=0$についても, 先ほどの変換公式が使えます.

極方程式の変換公式

陰関数$f(x,y)=0$ または 極方程式$f(r,\theta)=0$ において, 座標変換の公式を代入することで, $f(x,y)=0\,\leftrightarrow\,f(r,\theta)=0$ と互いに他の方程式に変換できる.

極方程式の変換公式を用いる, いくつかの具体例です.

  1. 直線 $x-\sqrt{3}\,y=2$ を極方程式に変換すると, $(r\cos\theta)-\sqrt{3}\,(r\sin\theta)=2$ より $r\,\cos(\theta+\dfrac{\pi}{6})=1$

  2. 楕円 $3(x-1)^2+4y^2=12$ を極方程式に変換すると, $3\,(r\cos\theta-1)^2+4\,(r\sin\theta)^2=12$ より $r\,(2-\cos\theta)=3$

  3. カージオイド $r=1+\cos\theta$ を陰関数に変換すると, $\sqrt{x^2+y^2}=1\,+\cos(\arccos\dfrac{x}{\sqrt{x^2+y^2}})$ より $x+\sqrt{x^2+y^2}=x^2+y^2$


また, 極方程式を用いることで, 次のようなとても多くの曲線を表現することができます. 一部の曲線については, 陰関数も記しておきます. (以下のものは一般例ではありません)

  1. 直線 [Linear Line] ... $r\,\cos\,(\theta\,+\dfrac{\pi}{6})=1\,\longleftrightarrow\,x-\sqrt{3}\,y=2$
  2. 楕円 [Elipse] ... $r\,(2-\cos\theta)=3\,\longleftrightarrow\,3(x-1)^2+4y^2=12$
  3. 双曲線 [Hyperbola] ... $r\,(1+2\cos\theta)=3\,\longleftrightarrow\,3(x-2)^2-y^2=3$
  4. 正葉曲線 [Rose Curve] ... $r=\sin 3\theta$
  5. カージオイド [Cardioid] ... $r=1+\cos\theta$
  6. 対数螺旋 [Logarithmic Spiral] ... $r=e^\theta$

2重積分

もう1つ余談です. 座標変換の公式 の応用例です.

2重積分の変数変換

$(x,y)=(X\,(t,u),\,Y\,(t,u))$ と変数変換したとき,
$$\iint_{D}f(x,y)\,dxdy=\iint_{D}f(X\,(t,u),\,Y\,(t,u))\cdot|\det J\,|\,dtdu$$
ここで, ヤコビアン [Jacobian] は, $J=\begin{pmatrix} \frac{\partial X}{\partial t} & \frac{\partial Y}{\partial t} \\ \frac{\partial X}{\partial u} &\frac{\partial Y}{\partial u} \end{pmatrix}$ の行列式

重積分における, おなじみの公式です.

2重積分の中には, $(x,y)=(r\cos\theta,r\sin\theta)$ と変数変換することで, 計算しやすくなるものもあります.

$$\iint_{D}\dfrac{1}{\sqrt{x^2+y^2}}\,dxdy \qquad D:\,\{x^2+y^2\leq1\}$$

$(x,y)=(r\cos\theta,r\sin\theta)$ として, $r=\sqrt{x^2+y^2}$ をみたす.

また, $D:\,\{x^2+y^2\leq 1\}\rightarrow\{0\leq r\leq1,\:0\leq\theta<2\pi\}$ であり,

$\det J=\begin{vmatrix} (r\cos\theta)_r & (r\sin\theta)_r \\ (r\cos\theta)_{\theta} & (r\sin\theta)_{\theta} \end{vmatrix}=\begin{vmatrix} \cos\theta & \sin\theta \\ -r\sin\theta & r\cos\theta \end{vmatrix}=\cos\theta\cdot r\cos\theta\,-\sin\theta\cdot(-r\sin\theta)=r$ であるから

$\displaystyle\iint_{D}\dfrac{1}{\sqrt{x^2+y^2}}\,dxdy=\iint_{D}\dfrac{1}{r}\cdot \det J\,drd\theta=\int_{0}^{2\pi}\int_{0}^{1}\dfrac{1}{r}\cdot r\,drd\theta=\int_{0}^{1}dr\int_{0}^{2\pi}d\theta$ $=$$2\pi$

$(x,y)=(r\cos\theta,r\sin\theta)$ のとき, ヤコビアンは $\det J=$$r$ となります. 割と有名な公式です.

$$\int_{-\infty}^{\infty}e^{-x^2}\,dx$$

$I=\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty}e^{-x^2}\,dx$ として,

$I^2=\displaystyle\bigg(\int_{-\infty}^{\infty}e^{-x^2}\,dx\bigg)^2=\int_{-\infty}^{\infty}e^{-x^2}\,dx\int_{-\infty}^{\infty}e^{-y^2}\,dy$

$=$$\displaystyle\int_{-\infty}^{\infty}\int_{-\infty}^{\infty}e^{-x^2}e^{-y^2}\,dxdy=\iint_{\mathbb{R}}e^{-(x^2+y^2)}\,dxdy$

ここで, $(x,y)=(r\cos\theta,r\sin\theta)$ として, $r^2=x^2+y^2$ をみたす.

また, $\det J=r$, $D:\,\{x,y\in\mathbb{R}\}\rightarrow\{r\geq 0\,,\, 0\leq\theta\leq 2\pi\}$ であるから,
$$I^2=\iint_{\mathbb{R}}e^{-(x^2+y^2)}\,dxdy=\int_{0}^{2\pi}\int_{0}^{\infty}e^{-r^2}\cdot r\,drd\theta=\int_{0}^{\infty}re^{-r^2}dr\int_{0}^{2\pi}d\theta=\bigg[\dfrac{1}{2}e^{-r^2}\bigg]_{0}^{\infty}\big[\theta\big]_{0}^{2\pi}=\pi$$
$I>0$ より $I=$$\sqrt{\pi}$

ガウス積分 [Gaussian Integral] とよばれる, 非常に有名な積分公式です. 最も美しい公式として知られています.

証明の途中, 赤字で "=" と示した部分は, 数学的に少し厳密性に欠けています. (厳密には, 広義積分の一様収束から積分と極限の交換可能性を示せばよい)

3次元の場合

ここからは本題です. 2次元 から 3次元 に拡張します.

定義

極座標と直交座標の定義に$n=3$を代入します.

極座標 (3次元)

極座標 とは, 座標空間$\mathbb{R}^3$における, 動径$r$偏角$\theta,\phi$によって定められた座標のこと. 座標上の点を$P\,(r,\theta,\phi)$と表す.

動径 … 線分$OP$の距離
偏角 … 半直線$OP$$x,y$軸それぞれとの一般角

直交座標 (3次元)

直交座標 とは, 座標空間$\mathbb{R}^3$における, 直交する座標軸$x,y,z$についてのそれぞれの成分によって定められた座標のこと. 座標上の点を$P\,(x,y,z)$と表す.

お察しの通り, 座標変換の方法は
$P:\,(x,y,z)\,\longleftrightarrow\,(r,\theta,\phi)$
となるはずです. 同じように導出しましょう.

偏角の向き

偏角の向き (3次元)

座標空間$(x,y,z)$において, 点$P$から$yz$平面への垂線の足を$H$とする.
偏角$\theta$は, $x$軸正方向を起点として, 平面$OPH$の内部$yz$平面の方向に向かって, $P$まで回転し,
偏角$\phi$は, $y$軸正方向を起点として, $yz$平面の内部$z$軸正方向に向かって, $H$まで回転するものとする.

3次元における偏角の向きの一般的な定義です. 2次元のときよりも 条件がとても多く, 格段にわかりにくく, また噛み砕いて説明するのが困難ですが, 3次元における偏角の向きが, 2次元からの自然な拡張であることを意識してみれば, 理解できるようになるでしょう.

3次元以上における偏角の向きには, 人によって解釈の違いがあり, これといった定義がありません. ここでは, 最もわかりやすく, かつ一般的に通用している定義を採用します.

変換公式

2次元と同様に, 直交座標$(x,y,z)$と極座標$(r,\theta,\phi)$の関係を連立方程式にして, これを解けば変換公式が求まります. 先ほどの偏角の向きを意識すれば, 楽に導出できるでしょう.

$P\,(x,y,z)$ とする.

$P$から$x$軸, $yz$平面への垂線の足を$X,H$として, 点$H$から$y,z$軸への垂線の足を$Y,Z$とする.

このとき $OP=\sqrt{x^2+y^2+z^2}$, $OH=\sqrt{y^2+z^2}$, $OX=x$, $OY=y$, $OZ=z$

また, 動径と偏角の定義から
$r\coloneqq OP$
$\theta\coloneqq\angle POX$ より $\cos\theta=\dfrac{OX}{OP}$, $\sin\theta=\dfrac{OH}{OP}$

$\phi\coloneqq\angle HOY$ より $\cos\phi=\dfrac{OY}{OH}$, $\sin\phi=\dfrac{OZ}{OH}$

したがって,
$$ \begin{cases} x=r\cos\theta \\ y=r\sin\theta\cos\phi \\ z=r\sin\theta\sin\phi \end{cases} $$
$$ \begin{cases} r=\sqrt{x^2+y^2+z^2} \\ \theta=\arccos\dfrac{x}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}} \\ \phi=\arccos\dfrac{y}{\sqrt{y^2+z^2}}=\arcsin\dfrac{z}{\sqrt{y^2+z^2}} \end{cases}$$
が示された.

座標変換の公式 (3次元)

直交座標$(x,y,z)$と極座標$(r,\theta,\phi)$において, 次の2つの等式のうちいずれかを用いることによって, 座標変換できる. 2つの等式は同値である.

$\begin{cases} x=r\cos\theta \\ y=r\sin\theta\cos\phi \\ z=r\sin\theta\sin\phi \end{cases}$

$\begin{cases} r=\sqrt{x^2+y^2+z^2} \\ \theta=\arccos\dfrac{x}{\sqrt{x^2+y^2+z^2}} \\ \phi=\arccos{\dfrac{y}{\sqrt{y^2+z^2}}}=\arcsin\dfrac{z}{\sqrt{y^2+z^2}} \end{cases}$

3次元の場合の変換公式が求まりました. 蛇足なので, 具体例は省略します.

3重積分

3重積分の変数変換

$(x,y,z)=(X\,(t,u,v),\,Y\,(t,u,v),\,Z\,(t,u,v))$ と変数変換したとき,
$$\iiint_{D}f(x,y)\,dxdydz=\iiint_{D}f(X,Y,Z)\cdot|\det J\,|\,dtdudv$$
ここで, ヤコビアン は, $J=\begin{pmatrix} \frac{\partial X}{\partial t} & \frac{\partial Y}{\partial t} & \frac{\partial Z}{\partial t} \\ \frac{\partial X}{\partial u} &\frac{\partial Y}{\partial u} & \frac{\partial Z}{\partial u} \\ \frac{\partial X}{\partial v} &\frac{\partial Y}{\partial v} & \frac{\partial Z}{\partial v} \end{pmatrix}$ の行列式

とても仰々しいですが, 2重積分 から拡張したものだと考えれば, 公式の意味をすぐに理解できます.
これもまた, 変換公式を用いて$(x,y,z)\rightarrow(r,\theta,\phi)$ とすることで, 計算しやすくなるものもあります. 面倒くさいですが, ヤコビアンの導出はしておきましょう.

ヤコビアンの導出

$(x,y,z)=(r\cos\theta,\,r\sin\theta\cos\phi,\,r\sin\theta\sin\phi)$ とする.

このとき,
$\frac{\partial x}{\partial r}=(r\cos\theta)_r=\cos\theta$
$\frac{\partial y}{\partial r}=(r\sin\theta\cos\phi)_r=\sin\theta\cos\phi$
$\frac{\partial z}{\partial r}=(r\sin\theta\sin\phi)_r=\sin\theta\sin\phi$
$\frac{\partial x}{\partial \theta}=(r\cos\theta)_{\theta}=-r\sin\theta$
$\frac{\partial y}{\partial \theta}=(r\sin\theta\cos\phi)_{\theta}=r\cos\theta\cos\phi$
$\frac{\partial z}{\partial \theta}=(r\sin\theta\sin\phi)_{\theta}=r\cos\theta\sin\phi$
$\frac{\partial x}{\partial \phi}=(r\cos\theta)_{\phi}=0$
$\frac{\partial y}{\partial \phi}=(r\sin\theta\cos\phi)_{\phi}=-r\sin\theta\sin\phi$
$\frac{\partial z}{\partial \theta}=(r\sin\theta\sin\phi)_{\phi}=r\sin\theta\cos\phi$
であるから,

ヤコビアンは
$\det J=\begin{vmatrix} \frac{\partial x}{\partial r} & \frac{\partial y}{\partial r} & \frac{\partial z}{\partial r} \\ \frac{\partial x}{\partial \theta} &\frac{\partial y}{\partial \theta} & \frac{\partial z}{\partial \theta} \\ \frac{\partial x}{\partial \phi} &\frac{\partial y}{\partial \phi} & \frac{\partial z}{\partial \phi} \end{vmatrix}=\begin{vmatrix} \cos\theta & \sin\theta\cos\phi & \sin\theta\sin\phi \\ -r\sin\theta & r\cos\theta\cos\phi & r\cos\theta\sin\phi \\ 0 & -r\sin\theta\sin\phi & r\sin\theta\cos\phi \end{vmatrix}$

ここで サラスの公式より, $\det J=$$r^2 \sin\theta$

9回の偏微分と行列式の計算に心が折れそうになりました. もう二度とやりたくないです.

n次元に一般化する

定義

最初に記した, 極座標と直交座標の定義です. 最初とは違い, すんなりと理解できるでしょう.

極座標 (再掲)

極座標 とは, $n$次元ユークリッド空間$\mathbb{R}^n$における, $1$個の動径$r$$n-1$個の偏角$\theta_1,\theta_2,\cdots,\theta_{n-1}$によって定められた座標のこと. 座標上の点を$P\,(r,\theta_1,\theta_2,\cdots,\theta_{n-1})$と表す.

動径 … 線分$OP$の距離
偏角 … 半直線$OP$$x_n$軸を除く$n-1$個の座標軸それぞれとの一般角

直交座標 (再掲)

直交座標 とは, $n$次元ユークリッド空間$\mathbb{R}^n$における, 直交する座標軸$x_1,x_2,\cdots,x_n$についてのそれぞれの成分によって定められた座標のこと. 座標上の点を$P\,(x_1,x_2,\cdots,x_n)$と表す.

偏角の向き

2次元や3次元で定義された偏角の向きも, n次元に一般化することができます. とてもわかりにくいので, 読み飛ばしていただいて結構です.

偏角の向き (n次元)

$n$次元ユークリッド空間$\mathbb{R}^n$において, 直交座標$(x_1,x_2,\cdots,x_n)$として, $n-1$個の偏角を $\theta_1,\theta_2,\cdots,\theta_{n-1}$ とする.

また, 点$P$から胞$x_2 x_3 \cdots x_n$, 点$H_1$から胞$x_3 x_4\cdots x_n$,$\cdots$, 点$H_{n-2}$から$x_n$軸 への垂線の足を $H_1,H_2,\cdots,H_{k-1}$ と定める.

このとき, $k=\{1,2,\cdots,n-1\}$において, 偏角$\theta_k$は, $x_k$軸正方向を起点にして, 平面$OPH_k$の内部を, 胞$x_k \cdots x_{n-1}$の方向に, 点$H_{k}$ ($k=n-1$のときは点$P$) まで回転するものとする.

変換公式

n次元における, 極座標と直交座標の変換公式を導出します. 抽象的でわかりにくいですが, 2次元や3次元からの一般化と考えれば, 難なく理解できるでしょう.

$P\,(x_1,x_2,\cdots,x_n)$とする.

$P$から胞$x_2 x_3 \cdots x_n$, 点$H_1$から胞$x_3 x_4\cdots x_n$,$\cdots$, 点$H_{n-2}$から$x_n$軸 への垂線の足を$H_1,H_2,\cdots,H_{n-1}$ として,
$P,H_1,\cdots,H_{n-1}$から$x_1,x_2,\cdots,x_n$軸への垂線の足をそれぞれ $X_1,X_2,\cdots,X_n$ とする.

このとき, $OP=\sqrt{x_1^2+x_2^2+\cdots+x_n^2}$, $OH_2=\sqrt{x_2^2+x_3^2+\cdots+x_n^2}$,$\cdots$, $OH_{n-1}=\sqrt{x_{n-1}^2+x_n^2}$,
$OX_1=x_1$, $OX_2=x_2$,$\cdots$, $OX_n=x_n$

また, 動径と偏角の定義から
$r\coloneqq OP$
$\theta_1 \coloneqq\angle POX_1$ より $\cos\theta_1=\dfrac{OX_1}{OP}$, $\sin\theta_1=\dfrac{OH_1}{OP}$

$\theta_2 \coloneqq\angle H_1 OX_2$ より $\cos\theta_2=\dfrac{OX_2}{OH_1}$, $\sin\theta_2=\dfrac{OH_2}{OH_1}$
$\vdots$
$\theta_{n-1} \coloneqq\angle H_{n-2} OX_{n-1}$ より $\cos\theta_2=\dfrac{OX_{n-1}}{OH_{n-2}}$, $\sin\theta_2=\dfrac{OX_n}{OH_{n-2}}$

したがって,
$$ \begin{cases} x_1=r\cos\theta_1 \\ x_2=r\sin\theta_1\cos\theta_2 \\ x_3=r\sin\theta_1\sin\theta_2\cos\theta_3 \\ \vdots \\ x_{n-1}=r\sin\theta_1\cdots\sin\theta_{n-2}\cos\theta_{n-1}\\ x_n=r\sin\theta_1\cdots\sin\theta_{n-1} \end{cases} $$
が示された. (厳密には数学的帰納法を用いる)

直交座標と極座標の変換公式

$n$次元ユークリッド空間$\mathbb{R}^n$における, 直交座標$(x_1,x_2,\cdots,x_n)$と極座標$(r,\theta_1,\cdots,\theta_{n-1})$において, 次の2つの等式のうちいずれかを用いることによって, 座標変換できる. 2つの等式は同値である.

$$ \begin{cases} x_1=r\cos\theta_1 \\ x_2=r\sin\theta_1\cos\theta_2 \\ x_3=r\sin\theta_1\sin\theta_2\cos\theta_3 \\ \vdots \\ x_{n-1}=r\sin\theta_1\cdots\sin\theta_{n-2}\cos\theta_{n-1}\\ x_n=r\sin\theta_1\cdots\sin\theta_{n-1} \end{cases} $$
$$\begin{cases} r=\sqrt{x_1^2+x_2^2+\cdots+x_n^2} \\ \theta_1=\arccos\dfrac{x_1}{\sqrt{x_1^2+x_2^2+\cdots+x_n^2}} \\ \theta_2=\arccos\dfrac{x_2}{\sqrt{x_2^2+x_3^2+\cdots+x_n^2}} \\ \vdots\\ \theta_{n-1}=\arccos\dfrac{x_{n-1}}{\sqrt{x_{n-1}^2+x_n^2}}=\arcsin\dfrac{x_n}{\sqrt{x_{n-1}^2+x_n^2}} \end{cases}$$

今回の目標である, n次元における直交座標と極座標の変換公式 を無事に導出することができました. 最後まで見てくださり, 本当にありがとうございました.

補足

最後に補足です. "$\cdots$" を使わずに この変換公式を表すこともできます.

変換公式 の一般的な記法

極座標と直交座標の変換$(x_1,x_2,\cdots,x_n)\longleftrightarrow (r,\theta_1,\cdots,\theta_{n-1})$ において,
$$\begin{cases} x_1=r\cos\theta_1 \\ x_k=r\cos\theta_k\displaystyle\prod_{s=1}^{k-1}\sin\theta_s & \{k\ne 1,n\} \\ x_n=r\displaystyle\prod_{s=1}^{n-1}\sin\theta_s \end{cases}$$
$$\begin{cases} r=\sqrt{\displaystyle\sum_{s=1}^{n}x_s} \\ \theta_k=\arccos\dfrac{x_k}{\sqrt{\displaystyle\sum_{s=k}^{n}x_s}} & \{k\ne n\} \\ \theta_{n-1}=\arccos\dfrac{x_{n-1}}{\sqrt{x_{n-1}^2+x_n^2}}=\arcsin\dfrac{x_n}{\sqrt{x_{n-1}^2+x_n^2}} \end{cases}$$

参考文献

投稿日:20241215
更新日:20241215
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  1. はじめに
  2. 極座標の定義
  3. 2次元の場合
  4. 定義
  5. 偏角の向き
  6. 変換公式
  7. 極方程式
  8. 2重積分
  9. 3次元の場合
  10. 定義
  11. 偏角の向き
  12. 変換公式
  13. 3重積分
  14. n次元に一般化する
  15. 定義
  16. 偏角の向き
  17. 変換公式
  18. 補足
  19. 参考文献