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高校数学解説
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極座標をn次元に一般化する

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はじめに

今回扱う内容は "極座標" です. 一度は耳にしたこともある人も多いでしょう. 2次元の場合は数学3に, 3次元の場合は数学4の範囲に掲載されている内容です. しかし, n次元に一般化したときはどのような振る舞いをするのでしょうか. 今回はこれについて深堀りします.

極座標の定義

極座標

極座標 [Polar Coordinate] とは, n次元ユークリッド空間Rnにおける, 1個の動径rn1個の偏角θ1,θ2,,θn1によって定められた座標のこと. 座標上の点をP(r,θ1,θ2,,θn1)と表す.

動径 … 線分OPの距離
偏角 … 半直線OPxn軸を除くn1個の座標軸それぞれとの一般角

極座標の定義です. “動径” と “偏角” の定義も記しておきました. 座標系に対する真新しい考え方なので, これだけではわかりにくいですが, 直交座標の定義と同時に見るとわかりやすいでしょう.

直交座標

直交座標 [Rectangular Coordinate] とは, n次元ユークリッド空間Rnにおける, 直交する座標軸x1,x2,,xnについてのそれぞれの成分によって定められた座標のこと. 座標上の点をP(x1,x2,,xn)と表す.

おなじみの直交座標の定義です. “座標軸の成分” と少しごまかして記しました. (厳密には点Pから座標軸xkへの垂直胞Rn1で定義)

直交座標は座標軸を視点におくのに対し, 極座標は動径と偏角を視点におく座標といえるでしょう. しかし, 2つの座標系は視点が違うだけで, 点Pは同じなので, 直交座標と極座標の間で変換することができます.

直交座標と極座標の変換

直交座標と極座標において, “何らかの方法”で
P(x1,x2,,xn)(r,θ1,θ2,,θn1)
と座標変換することができる.

今回の目標は, 座標変換の公式を導出することです. しかし, 極座標と直交座標の定義がいずれも抽象的すぎて, このままでは示すのが難しそうです. 今の段階では定義を理解することすらできない人もいるでしょう. ですので, まずは 2次元3次元 で示すことからして, そのあと n次元 に一般化しましょう.

2次元の場合

定義

先ほどの極座標と直交座標の定義にn=2を代入します. 少しわかりやすいように文面を変えておきました.

極座標 (2次元)

極座標 とは, 座標平面R2における, 動径r偏角θによって定められた座標のこと. 座標上の点をP(r,θ)と表す.

動径 … 線分OPの距離
偏角 … 半直線OPx軸との一般角

直交座標 (2次元)

直交座標 とは, 座標平面R2における, 直交する座標軸x,yについてのそれぞれの成分によって定められた座標のこと. 座標上の点をP(x,y)と表す.

2次元の場合, とてもわかりやすい定義ですね. ここで, 直交座標と極座標の変換は
P(x,y)(r,θ)
とできるはずです. 変換公式を導出しましょう.

偏角の向き

ここで, 気づいている人もいるかもしれませんが, ある問題点があります.

動径rは線分OPの距離なので1通りですが, 偏角θは, 線分OPx軸との一般角ですので, 表し方はx軸から線分OPに回転する方法で, 左回りと右回りの2通りあります.

これでは不便なので, 予めどちら回りかを定義しておくべきでしょう. どちらでもよいみたいですが, 次のように定義するのが一般的です.

偏角の向き (2次元)

座標平面(x,y)において,
偏角θは, x軸正方向を起点として, y軸正方向に向かってPまで回転するものとする.

わかりやすくいうと, x軸が右向き, y軸が上向きとすると, 偏角θの向きは, 右から上なので, 左回りになります.

2次元の場合, 左回りで十分ですが, 3次元以上に広げる際, 先ほどの定義が重要になります. しっかりと理解しておきましょう.

変換公式

では, 変換公式の導出です. 直交座標(x,y)と極座標(r,θ)の関係を連立方程式にして, これを解けば変換公式が求まります.

P(x,y)として, 点Pからx,y軸への垂線の足をX,Yとする.

このとき OP=x2+y2, OX=x, OY=y

動径の定義 r:=OP
偏角の定義 θ:=POX から cosθ=OXOP, sinθ=OYOP

したがって,

{x=rcosθy=rsinθ

{r=x2+y2θ=arccosxx2+y2=arcsinyx2+y2

が示された.

座標変換の公式 (2次元)

直交座標(x,y)と極座標(r,θ)において, 次の2つの等式のうちいずれかを用いることによって, 座標変換できる. 2つの等式は同値である.

{x=rcosθy=rsinθ

{r=x2+y2θ=arccosxx2+y2=arcsinyx2+y2

変換公式が求まりました. これによって, 一方の座標がわかればもう一方もわかるようになります.

具体例を2つ記しました. 公式に代入すると, どちらの方向でも変換できます.

  • (r,θ)=(2,π3)(x,y)=(1,3)
  • (x,y)=(1,1)(r,θ)=(2,π4)

極方程式

ここからは少し余談です. 今回の目標からは少しずれますが, 重要な概念ですので軽く紹介します.

極方程式

極方程式 [Polar Function] とは, 座標平面R2における, 極座標(r,θ)を用いて, 陰関数f(r,θ)=0で表した方程式のこと.

定義だけではわかりにくいですが, 陰関数の定義が “f(x,y)=0をみたす点全体の集合” ということを考えれば, 極方程式は, “f(r,θ)=0をみたす点全体の集合” と捉えればよさそうです. このように考えれば, 陰関数の変換f(x,y)=0f(r,θ)=0についても, 先ほどの変換公式が使えます.

極方程式の変換公式

陰関数f(x,y)=0 または 極方程式f(r,θ)=0 において, 座標変換の公式を代入することで, f(x,y)=0f(r,θ)=0 と互いに他の方程式に変換できる.

極方程式の変換公式を用いる, いくつかの具体例です.

  1. 直線 x3y=2 を極方程式に変換すると, (rcosθ)3(rsinθ)=2 より rcos(θ+π6)=1

  2. 楕円 3(x1)2+4y2=12 を極方程式に変換すると, 3(rcosθ1)2+4(rsinθ)2=12 より r(2cosθ)=3

  3. カージオイド r=1+cosθ を陰関数に変換すると, x2+y2=1+cos(arccosxx2+y2) より x+x2+y2=x2+y2


また, 極方程式を用いることで, 次のようなとても多くの曲線を表現することができます. 一部の曲線については, 陰関数も記しておきます. (以下のものは一般例ではありません)

  1. 直線 [Linear Line] ... rcos(θ+π6)=1x3y=2
  2. 楕円 [Elipse] ... r(2cosθ)=33(x1)2+4y2=12
  3. 双曲線 [Hyperbola] ... r(1+2cosθ)=33(x2)2y2=3
  4. 正葉曲線 [Rose Curve] ... r=sin3θ
  5. カージオイド [Cardioid] ... r=1+cosθ
  6. 対数螺旋 [Logarithmic Spiral] ... r=eθ

2重積分

もう1つ余談です. 座標変換の公式 の応用例です.

2重積分の変数変換

(x,y)=(X(t,u),Y(t,u)) と変数変換したとき,
Df(x,y)dxdy=Df(X(t,u),Y(t,u))|detJ|dtdu
ここで, ヤコビアン [Jacobian] は, J=(XtYtXuYu) の行列式

重積分における, おなじみの公式です.

2重積分の中には, (x,y)=(rcosθ,rsinθ) と変数変換することで, 計算しやすくなるものもあります.

D1x2+y2dxdyD:{x2+y21}

(x,y)=(rcosθ,rsinθ) として, r=x2+y2 をみたす.

また, D:{x2+y21}{0r1,0θ<2π} であり,

detJ=|(rcosθ)r(rsinθ)r(rcosθ)θ(rsinθ)θ|=|cosθsinθrsinθrcosθ|=cosθrcosθsinθ(rsinθ)=r であるから

D1x2+y2dxdy=D1rdetJdrdθ=02π011rrdrdθ=01dr02πdθ =2π

(x,y)=(rcosθ,rsinθ) のとき, ヤコビアンは detJ=r となります. 割と有名な公式です.

ex2dx

I=ex2dx として,

I2=(ex2dx)2=ex2dxey2dy

=ex2ey2dxdy=Re(x2+y2)dxdy

ここで, (x,y)=(rcosθ,rsinθ) として, r2=x2+y2 をみたす.

また, detJ=r, D:{x,yR}{r0,0θ2π} であるから,
I2=Re(x2+y2)dxdy=02π0er2rdrdθ=0rer2dr02πdθ=[12er2]0[θ]02π=π
I>0 より I=π

ガウス積分 [Gaussian Integral] とよばれる, 非常に有名な積分公式です. 最も美しい公式として知られています.

証明の途中, 赤字で "=" と示した部分は, 数学的に少し厳密性に欠けています. (厳密には, 広義積分の一様収束から積分と極限の交換可能性を示せばよい)

3次元の場合

ここからは本題です. 2次元 から 3次元 に拡張します.

定義

極座標と直交座標の定義にn=3を代入します.

極座標 (3次元)

極座標 とは, 座標空間R3における, 動径r偏角θ,ϕによって定められた座標のこと. 座標上の点をP(r,θ,ϕ)と表す.

動径 … 線分OPの距離
偏角 … 半直線OPx,y軸それぞれとの一般角

直交座標 (3次元)

直交座標 とは, 座標空間R3における, 直交する座標軸x,y,zについてのそれぞれの成分によって定められた座標のこと. 座標上の点をP(x,y,z)と表す.

お察しの通り, 座標変換の方法は
P:(x,y,z)(r,θ,ϕ)
となるはずです. 同じように導出しましょう.

偏角の向き

偏角の向き (3次元)

座標空間(x,y,z)において, 点Pからyz平面への垂線の足をHとする.
偏角θは, x軸正方向を起点として, 平面OPHの内部yz平面の方向に向かって, Pまで回転し,
偏角ϕは, y軸正方向を起点として, yz平面の内部z軸正方向に向かって, Hまで回転するものとする.

3次元における偏角の向きの一般的な定義です. 2次元のときよりも 条件がとても多く, 格段にわかりにくく, また噛み砕いて説明するのが困難ですが, 3次元における偏角の向きが, 2次元からの自然な拡張であることを意識してみれば, 理解できるようになるでしょう.

3次元以上における偏角の向きには, 人によって解釈の違いがあり, これといった定義がありません. ここでは, 最もわかりやすく, かつ一般的に通用している定義を採用します.

変換公式

2次元と同様に, 直交座標(x,y,z)と極座標(r,θ,ϕ)の関係を連立方程式にして, これを解けば変換公式が求まります. 先ほどの偏角の向きを意識すれば, 楽に導出できるでしょう.

P(x,y,z) とする.

Pからx軸, yz平面への垂線の足をX,Hとして, 点Hからy,z軸への垂線の足をY,Zとする.

このとき OP=x2+y2+z2, OH=y2+z2, OX=x, OY=y, OZ=z

また, 動径と偏角の定義から
r:=OP
θ:=POX より cosθ=OXOP, sinθ=OHOP

ϕ:=HOY より cosϕ=OYOH, sinϕ=OZOH

したがって,
{x=rcosθy=rsinθcosϕz=rsinθsinϕ
{r=x2+y2+z2θ=arccosxx2+y2+z2ϕ=arccosyy2+z2=arcsinzy2+z2
が示された.

座標変換の公式 (3次元)

直交座標(x,y,z)と極座標(r,θ,ϕ)において, 次の2つの等式のうちいずれかを用いることによって, 座標変換できる. 2つの等式は同値である.

{x=rcosθy=rsinθcosϕz=rsinθsinϕ

{r=x2+y2+z2θ=arccosxx2+y2+z2ϕ=arccosyy2+z2=arcsinzy2+z2

3次元の場合の変換公式が求まりました. 蛇足なので, 具体例は省略します.

3重積分

3重積分の変数変換

(x,y,z)=(X(t,u,v),Y(t,u,v),Z(t,u,v)) と変数変換したとき,
Df(x,y)dxdydz=Df(X,Y,Z)|detJ|dtdudv
ここで, ヤコビアン は, J=(XtYtZtXuYuZuXvYvZv) の行列式

とても仰々しいですが, 2重積分 から拡張したものだと考えれば, 公式の意味をすぐに理解できます.
これもまた, 変換公式を用いて(x,y,z)(r,θ,ϕ) とすることで, 計算しやすくなるものもあります. 面倒くさいですが, ヤコビアンの導出はしておきましょう.

ヤコビアンの導出

(x,y,z)=(rcosθ,rsinθcosϕ,rsinθsinϕ) とする.

このとき,
xr=(rcosθ)r=cosθ
yr=(rsinθcosϕ)r=sinθcosϕ
zr=(rsinθsinϕ)r=sinθsinϕ
xθ=(rcosθ)θ=rsinθ
yθ=(rsinθcosϕ)θ=rcosθcosϕ
zθ=(rsinθsinϕ)θ=rcosθsinϕ
xϕ=(rcosθ)ϕ=0
yϕ=(rsinθcosϕ)ϕ=rsinθsinϕ
zθ=(rsinθsinϕ)ϕ=rsinθcosϕ
であるから,

ヤコビアンは
detJ=|xryrzrxθyθzθxϕyϕzϕ|=|cosθsinθcosϕsinθsinϕrsinθrcosθcosϕrcosθsinϕ0rsinθsinϕrsinθcosϕ|

ここで サラスの公式より, detJ=r2sinθ

9回の偏微分と行列式の計算に心が折れそうになりました. もう二度とやりたくないです.

n次元に一般化する

定義

最初に記した, 極座標と直交座標の定義です. 最初とは違い, すんなりと理解できるでしょう.

極座標 (再掲)

極座標 とは, n次元ユークリッド空間Rnにおける, 1個の動径rn1個の偏角θ1,θ2,,θn1によって定められた座標のこと. 座標上の点をP(r,θ1,θ2,,θn1)と表す.

動径 … 線分OPの距離
偏角 … 半直線OPxn軸を除くn1個の座標軸それぞれとの一般角

直交座標 (再掲)

直交座標 とは, n次元ユークリッド空間Rnにおける, 直交する座標軸x1,x2,,xnについてのそれぞれの成分によって定められた座標のこと. 座標上の点をP(x1,x2,,xn)と表す.

偏角の向き

2次元や3次元で定義された偏角の向きも, n次元に一般化することができます. とてもわかりにくいので, 読み飛ばしていただいて結構です.

偏角の向き (n次元)

n次元ユークリッド空間Rnにおいて, 直交座標(x1,x2,,xn)として, n1個の偏角を θ1,θ2,,θn1 とする.

また, 点Pから胞x2x3xn, 点H1から胞x3x4xn,, 点Hn2からxn軸 への垂線の足を H1,H2,,Hk1 と定める.

このとき, k={1,2,,n1}において, 偏角θkは, xk軸正方向を起点にして, 平面OPHkの内部を, 胞xkxn1の方向に, 点Hk (k=n1のときは点P) まで回転するものとする.

変換公式

n次元における, 極座標と直交座標の変換公式を導出します. 抽象的でわかりにくいですが, 2次元や3次元からの一般化と考えれば, 難なく理解できるでしょう.

P(x1,x2,,xn)とする.

Pから胞x2x3xn, 点H1から胞x3x4xn,, 点Hn2からxn軸 への垂線の足をH1,H2,,Hn1 として,
P,H1,,Hn1からx1,x2,,xn軸への垂線の足をそれぞれ X1,X2,,Xn とする.

このとき, OP=x12+x22++xn2, OH2=x22+x32++xn2,, OHn1=xn12+xn2,
OX1=x1, OX2=x2,, OXn=xn

また, 動径と偏角の定義から
r:=OP
θ1:=POX1 より cosθ1=OX1OP, sinθ1=OH1OP

θ2:=H1OX2 より cosθ2=OX2OH1, sinθ2=OH2OH1

θn1:=Hn2OXn1 より cosθ2=OXn1OHn2, sinθ2=OXnOHn2

したがって,
{x1=rcosθ1x2=rsinθ1cosθ2x3=rsinθ1sinθ2cosθ3xn1=rsinθ1sinθn2cosθn1xn=rsinθ1sinθn1
が示された. (厳密には数学的帰納法を用いる)

直交座標と極座標の変換公式

n次元ユークリッド空間Rnにおける, 直交座標(x1,x2,,xn)と極座標(r,θ1,,θn1)において, 次の2つの等式のうちいずれかを用いることによって, 座標変換できる. 2つの等式は同値である.

{x1=rcosθ1x2=rsinθ1cosθ2x3=rsinθ1sinθ2cosθ3xn1=rsinθ1sinθn2cosθn1xn=rsinθ1sinθn1
{r=x12+x22++xn2θ1=arccosx1x12+x22++xn2θ2=arccosx2x22+x32++xn2θn1=arccosxn1xn12+xn2=arcsinxnxn12+xn2

今回の目標である, n次元における直交座標と極座標の変換公式 を無事に導出することができました. 最後まで見てくださり, 本当にありがとうございました.

補足

最後に補足です. "" を使わずに この変換公式を表すこともできます.

変換公式 の一般的な記法

極座標と直交座標の変換(x1,x2,,xn)(r,θ1,,θn1) において,
{x1=rcosθ1xk=rcosθks=1k1sinθs{k1,n}xn=rs=1n1sinθs
{r=s=1nxsθk=arccosxks=knxs{kn}θn1=arccosxn1xn12+xn2=arcsinxnxn12+xn2

参考文献

投稿日:20241215
更新日:20241215
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  1. はじめに
  2. 極座標の定義
  3. 2次元の場合
  4. 定義
  5. 偏角の向き
  6. 変換公式
  7. 極方程式
  8. 2重積分
  9. 3次元の場合
  10. 定義
  11. 偏角の向き
  12. 変換公式
  13. 3重積分
  14. n次元に一般化する
  15. 定義
  16. 偏角の向き
  17. 変換公式
  18. 補足
  19. 参考文献