今回扱う内容は "極座標" です. 一度は耳にしたこともある人も多いでしょう. 2次元の場合は数学3に, 3次元の場合は数学4の範囲に掲載されている内容です. しかし, n次元に一般化したときはどのような振る舞いをするのでしょうか. 今回はこれについて深堀りします.
極座標 [Polar Coordinate] とは,
動径 … 線分
の距離
偏角 … 半直線と 軸を除く 個の座標軸それぞれとの一般角
極座標の定義です. “動径” と “偏角” の定義も記しておきました. 座標系に対する真新しい考え方なので, これだけではわかりにくいですが, 直交座標の定義と同時に見るとわかりやすいでしょう.
直交座標 [Rectangular Coordinate] とは,
おなじみの直交座標の定義です. “座標軸の成分” と少しごまかして記しました. (厳密には点
直交座標は座標軸を視点におくのに対し, 極座標は動径と偏角を視点におく座標といえるでしょう. しかし, 2つの座標系は視点が違うだけで, 点
直交座標と極座標において, “何らかの方法”で
と座標変換することができる.
今回の目標は, 座標変換の公式を導出することです. しかし, 極座標と直交座標の定義がいずれも抽象的すぎて, このままでは示すのが難しそうです. 今の段階では定義を理解することすらできない人もいるでしょう. ですので, まずは 2次元 や 3次元 で示すことからして, そのあと n次元 に一般化しましょう.
先ほどの極座標と直交座標の定義に
極座標 とは, 座標平面
動径 … 線分
の距離
偏角 … 半直線と 軸との一般角
直交座標 とは, 座標平面
2次元の場合, とてもわかりやすい定義ですね. ここで, 直交座標と極座標の変換は
とできるはずです. 変換公式を導出しましょう.
ここで, 気づいている人もいるかもしれませんが, ある問題点があります.
動径
これでは不便なので, 予めどちら回りかを定義しておくべきでしょう. どちらでもよいみたいですが, 次のように定義するのが一般的です.
座標平面
偏角
わかりやすくいうと,
2次元の場合, 左回りで十分ですが, 3次元以上に広げる際, 先ほどの定義が重要になります. しっかりと理解しておきましょう.
では, 変換公式の導出です. 直交座標
このとき
動径の定義
偏角の定義
したがって,
が示された.
直交座標
変換公式が求まりました. これによって, 一方の座標がわかればもう一方もわかるようになります.
具体例を2つ記しました. 公式に代入すると, どちらの方向でも変換できます.
ここからは少し余談です. 今回の目標からは少しずれますが, 重要な概念ですので軽く紹介します.
極方程式 [Polar Function] とは, 座標平面
定義だけではわかりにくいですが, 陰関数の定義が “
陰関数
極方程式の変換公式を用いる, いくつかの具体例です.
直線
楕円
カージオイド
また, 極方程式を用いることで, 次のようなとても多くの曲線を表現することができます. 一部の曲線については, 陰関数も記しておきます. (以下のものは一般例ではありません)
もう1つ余談です. 座標変換の公式 の応用例です.
ここで, ヤコビアン [Jacobian] は,
重積分における, おなじみの公式です.
2重積分の中には,
また,
ここで,
また,
ガウス積分 [Gaussian Integral] とよばれる, 非常に有名な積分公式です. 最も美しい公式として知られています.
証明の途中, 赤字で "=" と示した部分は, 数学的に少し厳密性に欠けています. (厳密には, 広義積分の一様収束から積分と極限の交換可能性を示せばよい)
ここからは本題です. 2次元 から 3次元 に拡張します.
極座標と直交座標の定義に
極座標 とは, 座標空間
動径 … 線分
の距離
偏角 … 半直線と 軸それぞれとの一般角
直交座標 とは, 座標空間
お察しの通り, 座標変換の方法は
となるはずです. 同じように導出しましょう.
座標空間
偏角
偏角
3次元における偏角の向きの一般的な定義です. 2次元のときよりも 条件がとても多く, 格段にわかりにくく, また噛み砕いて説明するのが困難ですが, 3次元における偏角の向きが, 2次元からの自然な拡張であることを意識してみれば, 理解できるようになるでしょう.
3次元以上における偏角の向きには, 人によって解釈の違いがあり, これといった定義がありません. ここでは, 最もわかりやすく, かつ一般的に通用している定義を採用します.
2次元と同様に, 直交座標
点
このとき
また, 動径と偏角の定義から
したがって,
が示された.
直交座標
3次元の場合の変換公式が求まりました. 蛇足なので, 具体例は省略します.
ここで, ヤコビアン は,
とても仰々しいですが, 2重積分 から拡張したものだと考えれば, 公式の意味をすぐに理解できます.
これもまた, 変換公式を用いて
このとき,
であるから,
ヤコビアンは
ここで サラスの公式より,
9回の偏微分と行列式の計算に心が折れそうになりました. もう二度とやりたくないです.
最初に記した, 極座標と直交座標の定義です. 最初とは違い, すんなりと理解できるでしょう.
極座標 とは,
動径 … 線分
の距離
偏角 … 半直線と 軸を除く 個の座標軸それぞれとの一般角
直交座標 とは,
2次元や3次元で定義された偏角の向きも, n次元に一般化することができます. とてもわかりにくいので, 読み飛ばしていただいて結構です.
また, 点
このとき,
n次元における, 極座標と直交座標の変換公式を導出します. 抽象的でわかりにくいですが, 2次元や3次元からの一般化と考えれば, 難なく理解できるでしょう.
点
点
このとき,
また, 動径と偏角の定義から
したがって,
が示された. (厳密には数学的帰納法を用いる)
今回の目標である, n次元における直交座標と極座標の変換公式 を無事に導出することができました. 最後まで見てくださり, 本当にありがとうございました.
最後に補足です. "
極座標と直交座標の変換