3
競技数学解説
文献あり

OMC攻略② 偏微分

132
0
$$$$

何かしらの多変数関数の極値を求める方法に、偏微分がある。束縛条件がある場合、ない場合、どちらにしても必ず求まるというのが最大の魅力だ。

簡単な例

次の2変数関数の最小値を求めよ。
$f(x,y))=x^{2}+2xy+2y^2-6x+4y-1$

このように簡単に求めることができる。
y を固定して f(x,y)をxについての関数として見て微分すると,
$\frac{∂f}{∂x}=2x+2y−6=0$
同様に y について微分すると,
$\frac{∂f}{∂y}=2x+4y+4=0$
(x軸方向でもy軸方向でもfが最小になるためには、$\frac{∂f}{∂x},\frac{∂f}{∂y}$両方0であるのが必要条件)
この連立方程式を解いて,x=8,y=−5
もとの関数に代入して最小値は −35

平方完成でも解けるが、この関数が3次関数とか、複雑化すると無理になる。相加相乗など有名な不等式を用いようとしても同様だ。一方で偏微分の解法は全微分できる限り絶対に解ける
つまり、工夫をこらして有名不等式を使おうとするよりさっさと偏微分した方が速く解けたりする。偏微分の唯一の問題は、最大値最小値を求める以外にはほとんど役立たないことである。

実は、これは全微分が0になることがわかるだけであり、これが最小値なのか最大値なのかは分からないので、それを判断するには2変数関数は判別式,3変数以上だとヘッセ行列が必要になる。ここは理解できなければ読み飛ばしてもよい。

極値の種類の判定

C2級関数f(x,y)について、$(x_0,y_0)$ で全微分が0ならば、
$Δ(x_0​,y_0​)=f_{xx}​(x_0​,y_0​)f_{yy}​(x_0​,y_0​)−{f_{xy​}(x_0​,y_0​)}^2 $とおいたとき,
$ Δ(x_0,y_0)>0,f_{xx​}(x_0​,y_0​)>0 $ のとき極小
$ Δ(x_0,y_0)>0,f_{xx}​(x_0​,y_0​)<0 $ のとき極大
$ Δ(x_0,y_0)<0$ のとき鞍点

(ヘッセ行列は詳しく話すとかなり複雑なので省略する)

問題集(基本編)

これらは偏微分で解くことができる。実は、偏微分で解ける問題は結構多い。偏微分の弱点は計算量が多いこと。これを克服するためにたくさん解いて慣れよう。

Nesbittの不等式

次の不等式を証明せよ。(a,b,c>0)
$\frac{a}{b+c}+\frac{b}{c+a}+\frac{c}{a+b}≧\frac{3}{2}$

OMCB027(H)

正の実数 x,y,z について,
$\frac{y^2}{x^2}+\frac{z^2}{y^2}−\frac{2y}{x}+\frac{2z}{y}+\frac{3x}{z}$
の最小値を求めてください. ただし求める値は正の整数 a,bを用いて, $\sqrt{a}-b$ と表せるので,a+b の値を解答してください.

次の関数の極値を求めよ。
f(x,y)=xy(x-2y-3)

OMC246(B)

次の関数の最大値を求めよ。
$(3cosθ+7sinφ+9)^2+(3sinθ+7cosφ+12)^2$

次の関数の極値を求めよ。
$f(x,y)=(3xy+1)e^{-x^2-y^2}$

★他に偏微分で解ける問題
OMCB056(F)

応用編

ある式の最小値(最大値)を求める幾何学の問題において、直交座標を用いた解析的手法で、偏微分が使える形に帰着することができる。

第4回湖風祭コンテスト数学短答編第11問(自作)

ΔABCについて、BC=17,CA=26,AB=21である。
BC,CA,AB上にP,Q,Rをとるとき、PQ^2+QR^2+RP^2の最小値を求めよ。

ちなみにこの問題は初等的に解くこともでき、そちらの方が計算は少なく済むが、十分な知識と発想力がないと実現できない。

解答(一部のみ)

問題2

分母分子をcで割り、A=a/c,B=b/cと置換としても一般性は損なわない。
こっら偏微分でゴリゴリする。
$f(A,B)=\frac{A}{B+1}+\frac{B}{1+A}+\frac{1}{A+B}$
$\frac{∂f}{∂A}=\frac{1}{B+1}-\frac{B}{(1+A)^2}-\frac{1}{(A+B)^2}=0 $
$\frac{∂f}{∂B}=\frac{1}{A+1}-\frac{A}{(1+B)^2}-\frac{1}{(A+B)^2}=0 $
上の式から下の式を引くと、
$\frac{(A+B+1)(A+B+2)(A-B)}{(A+1)^2(B+1)^2}=0$
よってA=B
これを代入してA=B=1が分かる。
$ f_{AA}(1,1)=f_{BB}(1,1)=1/2、f_{AB}(1,1)=-1/4より$
$ Δ(1​,1​)=1/4-1/16=3/16>0だから、f(1,1)=3/2は極大値 fは連続かつf>0だから、fの最小値はf(1,1)=3/2 よって証明された。$

(cを変数と認めると最小値となる(a,b,c)は孤立点にならないので、偏微分が通用しない。)

問題3

問題2と似たような考え方で変数を減らす。
最小値を要求されているので、最小値の存在を仮定してよい。
y/x=A,z/y=Bとすると、
$f(A,B)=A^2+B^2-2A+2B+\frac{3}{AB}$
$ \frac{∂f}{∂A}=2A-2-\frac{3}{A^2B}=0$
$ \frac{∂f}{∂A}=2B+2-\frac{3}{AB^2}=0$
$ 分数を消して2B^2+2B=2A^2-2A=\frac{3}{AB}が分かるので、 B(B+1)=A(A-1)$ここからA=B+1を予想する。式変形して、
$ 2B(B+1)^2=3より,B(B+1)= \sqrt{3/2}であり、$
$f=A(A-1)+B(B+1)-A+B+\frac{3}{AB}=2\sqrt{3/2}-1+ \sqrt{6}=\sqrt{24}-1$
特に解答する値は25だ。

問題4

リンク先を読むこと。

問題5

三角関数は連続かつ有界だからこの関数が最大値を持つのは明らかである。
$\frac{ \partial f }{ \partial θ }=6 (12 + 7 cos(φ)) cos(θ) - 6 (9 + 7 sin(φ)) sin(θ)=0$ $ \frac{ \partial f }{ \partial φ }=42 ((3 + cos(θ)) cos(φ) - (4 + sin(θ)) sin(φ))=0$
この連立方程式を解くのはかなり大変だが、ごり押しすることで、
$(θ,φ)=(2πn+2tan^{-1}(1/2),2πm+2tan^{-1}(1/3))で $
最大値625
$(θ,φ)=(2πn-2tan^{-1}(2),2πm-2tan^{-1}(3))で $
最小値25
(n,mは整数)
よって625が答え

問題6

リンク先を読むこと。

問題7

気分が出たら作ります。

参考文献

投稿日:824
更新日:924
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

Youteru
Youteru
21
2139
高二です。JMOの合宿に参加するために数学オリンピックの勉強をしています。

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中