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数学と世界史を語る1

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お願い

 本記事(シリーズ)は,筆者による独自解釈が強めの記事です.参考文献を挙げるべしという指摘はごもっともですが,お応えできません.小説か随筆のようなものとしてお読みください.
 また,筆者は非常に怠惰な人間であり,これまでに始めたブログ等は数知れず,しかし,今に至るまで続いているものは一つもありません.つまり,本シリーズはいつ終わるかわかりません.
 以上のことをご理解いただいたうえでお読みください.  

フランス革命暦

 1789年.
 フランス史上の最重要年号と言っていいだろう.あるいは,18世紀世界史の最重要年号でもあろうか.
 言うまでもなく,フランス革命が始まった年号である.
 当時のフランスは財政的に破綻寸前の状況であった.聖職者や貴族のほとんどは,それを自力で解決しようとは考えず,平民への徴税をより過酷にすることで対応しようとした.それに反対した平民が,まともな統治をしてほしい(あるいは自分たちでそのような統治をしたい)と考えて始まったのがフランス革命である.
 その後何十年かのフランス史は非常に濃密だが,それを語るには余白も足りず,場違いでもあり,そもそも私の知識も足りないので,やめておこう.
 
 ここで注目したいのはフランス革命暦である.
 フランス革命暦をかいつまんで説明すると,このようなものだ.

  • 1年=30日×12か月+余りと考える.「余り」の日は休みである.
  • 1か月=3週間であり,1週間=10日間である.→つまり1か月は常に30日である.
  • 1日=10時間,1時間=100分,1分=100秒である.

 如何にも「理性的」という感じがする(「理性的」の解説は後ほど).
 もしも人類が今の1時間,1分,1秒の感覚を持っていなければ,

  • 1日=24時間=1440分=86400

よりも,随分とわかりやすいことだろう.
 しかし我々には,この時間感覚が染みついてしまっているから,今さら変える気にはなれない.
 その感覚は,当時も似たようなものだろう.現代社会ほど時計が普及していなかったとしても.

 それにもかかわらず,どうしてフランス革命暦が採用されたのか?その答えを簡単に言えば,当時の特権階級(聖職者)に対する反発が大きかったからだ.
 そもそも1週間はなぜ7日なのか.これは,旧約聖書の創世記に由来するところが大きい.創世記によれば,神は6日間で天地を創造し,7日目に休んだ.人間社会もこれに倣うべしということで,1週間は7日となった.[1]
 話を戻して,フランス革命の根底には,聖職者や貴族の横暴を許すまじという精神が流れている.フランス革命暦が採用された当時(1793年)は革命の最も激しい時期であった.「キリスト教は忌むべき存在である.キリスト教に由来する週の概念など消し去ってしまえ」と当時の為政者は考えた.そして,1週間は10日となったのである.

 しかしキリスト教と絶縁するといっても,キリストに代わって,人々は何を信じればよいのだろうか?
 明治の日本のとある天才は「武士道」と答えるかもしれないが[2],フランスはさにあらず.
 この時代のフランスに流れていた思想といえば,モンテスキュー,ヴォルテール,ルソーに代表される啓蒙思想だ.
 当時の人々は,権威や伝統,キリスト教によって大きく制約を受けていた.それに対して,自分の行動や職業などを「理性的に」選択した方が,自分の人生をより豊かにすることができ,ひいては社会全体をより良く発展させられる,と考えるのが啓蒙思想・理性主義と呼ばれる考え方である.
 もう少し端的に言えば,啓蒙とは,教会や貴族から都合よく搾取されるだけの人々を,その無知蒙昧な状態から解放することである.より具体的には「権威に服属するのではなく,理性的に世界を見て,知り,活動せよ」という思想だと言えよう.  

10進数は真に理性的なのか

 ここまで述べたように,フランス革命暦は,理性主義の帰結の一つである.
 しかし私は疑問に思う.当時革命暦を採用した人々は,なぜ10進数こそが理性的であると考えたのだろうか.
 例えばだ.360日=12か月×30日として良いのであれば,この1230を特別扱いして,1日=8×12時間×30分×30秒などとしても良かったのではないか(こうすれば,1秒は今と全く同じである).
 1日を8つに分けることだって,合理的な説明ができなくもない.午前0時を基準にして,最初の2つ(06時)は寝る時間,次の4つ(618時)は活動時間,最後の2つ(1824時)はオフの時間だと言えば,そうかもしれないと思うだろう.
 ここまでの主張を端的にまとめると,こうだ.
 当時の生活習慣を無視してまで進めた「理性主義」は,10進数を特別視していた.これを,理性的だと果たして言えるだろうか.
 
 この問いは言い換えれば「10進数は果たして最善の記数法なのか」とも言える.そこで,10進数以外の素晴らしい記数法をいくつか挙げよう.
 現代的な価値観から言えば,2進数や16進数は非常に素晴らしい記数法に見える.現代社会に不可欠の存在であるコンピュータが2進数によって動くからだ.とはいえ,今考えているのはフランス革命当時で「理性的」と言える記数法である.当時の価値観で,2進数や16進数を「理性的」だと判断することは不可能かもしれない.
 では,12進数や30進数はどうだろう.12進数を基準とする単位として,「ダース」や「グロス」がある.これらは,非常に面倒な単位に見えるが,「分ける」という観点から見ると優れた単位である.10個のものを3人や4人で分けようとすると,余りが出てしまう.しかし12という数は約数が多いため,「分ける」という操作に対して強い優位性があるのだ.3060も同様である(だからこそメソポタミアでは60進法が使われたのだろう).
 では,フランス革命の当時の政府(ジャコバン派)は,どうして10進数を特別視したのだろうか.いや,もっと言えば,そもそも我々人類は,なぜ10進数を特別視しているのだろうか.

10進数を使う理由

 答えはシンプルで,我々の両手の指が10本だからである.
 文明ができるよりも遥か以前に,人類は,1,2,3,と指を折りながら数えることを習得しただろう.人や家畜を数えたり,食べ物を数えたりするときに.
 そうすれば10を一つの単位にする発想(つまり10進数)が生まれるのは,当然とも言えるだろう.[3]
 我々にとって10進数が非常に自然で,これ以外の記数法に抵抗を覚えるのは,指の本数に起因しているのだ.

 とはいえ,これを「理性的」と呼んでいいか否かは別問題である.
 私が思うに,もしもジャコバン派がもう少し理性的であれば,10進数にこだわることはなかっただろう.「1か月=10日×3週間」にはしたかもしれないが,「1日=10時間=1000分=100000秒」にはしなかっただろう.それまでの時間間隔が狂ってしまうからだ.そうまでして「1日=24時間=1440分=86400秒」を毛嫌いするのは,理性的とはかけ離れているように思う.
 一方で,もしジャコバン派が理性的の「極み」にあったとするならば,フランス国民に対して「10進時間」をしっかりと教育し,それをゆくゆくは世界標準にするのだという百年の計があったのかもしれない.[4]

 ただ,歴史を見れば結論は簡単だ.ジャコバン派は理性的ではない.気に食わない政敵をどんどこギロチン送りにして,最後は自分たちもギロチンにかけられているのだから.
 理性的な人間が,あれだけの恐怖政治をして,「テロ」の語源になるような真似をするだろうか?[5]ここでは非常にシンプルに,ジャコバン派はアホだったと結論づけたい.

まとめ

 最後に,覚えておいてほしいことをまとめておく.

  • フランス革命は1789年に起きた.
  • 恐怖政治はやめましょう(恐怖政治は179394年).
  • 指が10本だから10進数.ここは日本だけど2進数じゃない←しょうもな

蛇足

 もし地球外生命体で,両手の指の本数が8本の知的生命体が存在した場合のことを考えてみよう.
 注釈で記したアフォーダンス理論から考えて,彼らは自然に8進数を使うようになる.
 8進数は2進数と非常に相性がいいので,彼らの文明が発展してコンピュータを生み出したとき,そこから先の文明の発達は他の文明の発達よりも速いだろう.
 それが良いのか悪いのかはさっぱりわからないが,そんな仮定を置いたSF小説があれば,見てみたい気もする.

 ちなみに地球で言えばタコである.タコは動物の中でも知能が高い方だとよく知られている.
 もしヒトが存在しなくて,タコが地球の覇者となることがあれば…….いや,タコは肉食だからそもそも人間のような文明発達をし得ないだろう.この妄想は却下だ.[6]





投稿日:20241228
更新日:20241228
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て
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  1. フランス革命暦
  2. 10進数は真に理性的なのか
  3. 10進数を使う理由
  4. まとめ
  5. 蛇足