環のスペクトラムの構造層とその具体例について書いていく.よく具体例は証明が省かれるので,そこら辺を詳しく書いた.
以下,を可換環,での素イデアル全体とする.イデアルに対しでを含む素イデアル全体とする.
環のスペクトラムの構造層
にはのイデアルを閉集合系とする位相を入れる.
開集合に対し,は次の条件(※)を満たすようにとる.
(※) 各に対し,に含まれるの開近傍とが存在して,任意のについてかつを満たす.
そのような写像を集めた集合をおき,開集合に対し制限写像をと定める.
に演算をただしとして定める.
の零元はであり,単位元はである.
前層になることを示すのは簡単なため省略する.を開集合,をの開被覆とする.
は任意のでとするとき,任意のに対しとなるが存在するのでよって.
各に対しは,,を満たすとする.ここでを,各に対しとなるをとり,と定める.上ではの値は一致するのではwell-defindeである.そして任意のに対してであることは定め方から分かる.
以上よりは可換環の層になることが確かめられた.
具体例 of
具体例を見ていこう.環のスペクトラムはと書ける.
の開集合をとしたとき,の構造について考えてみよう.単項イデアルを含む素イデアルはのみである.ゆえにとなる.
さての閉集合はは単項イデアル整域であることに注意すると,は有限集合であることが分かる.なので,に含まれる開集合はと有限個の素イデアルを除いた素イデアル全体であることが分かる.
なので開集合に対し,例えばは任意のに対してである.もであるが,分母がに割り当てる写像はに属さない.なぜなら開集合は必ず交わるからだ.
以上の考察から次が分かる.
一般化すると次が成り立つ.
写像をとして定める.するとはwell-defindeな準同型写像である.
初めには単射であることを示す.各に対しとするとき,でである.は整域なためである.ゆえにでである.
次には全射であることを示す.をとる.各に対しの条件(※)を満たすの開近傍とをとる.任意の二点に対し,それぞれの近傍の共通部分は空集合でないことから,任意の点で
を満たす.すなわち.さらにすべてのでである.これはであることを意味する.よって,となる.とおく.
さて,なのでで,
である.よってとなる.
さらにこのことを一般化できる.それが次の定理である.
証明は難しい.の場合,は整域であることと,任意の二点に対し,それぞれの近傍の共通部分は空集合でないという性質があるが,もちろん一般の環にそのような性質は持っていない.ゆえに証明は難しくなる.