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現代数学解説
文献あり

環のスペクトラムの構造層とその具体例

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$$\newcommand{id}[0]{\mathrm{id}} \newcommand{ilim}[1]{\displaystyle \lim_{\stackrel{\longrightarrow}{#1}}} \newcommand{spec}[0]{\mathrm{Spec}} $$

環のスペクトラムの構造層とその具体例について書いていく.よく具体例は証明が省かれるので,そこら辺を詳しく書いた.
以下,$R$を可換環,$\spec(R)$$R$の素イデアル全体とする.イデアル$I\subset R$に対し$V(I)$$I$を含む素イデアル全体とする.

環のスペクトラムの構造層

$\spec(R)$$\{ V(I) \mid I $$R$のイデアル$\}$を閉集合系とする位相を入れる.
開集合$U\subset \spec(R)$に対し,$s:U \rightarrow \bigsqcup_{ \mathfrak{p} \in U} R_\mathfrak{p}$は次の条件(※)を満たすようにとる.
(※) 各$\mathfrak{p}\in U$に対し,$U$に含まれる$\mathfrak{p}$の開近傍$V$$a,f\in R$が存在して,任意の$\mathfrak{q}\in V$について$f\not \in \mathfrak{q}$かつ$s(\mathfrak{q})=a/f\in R_\mathfrak{q}$を満たす.
そのような写像$s$を集めた集合を$\mathcal{O} (U)$おき,開集合$U\subset V$に対し制限写像を$\rho_{VU}:\mathcal{O} (V)\rightarrow \mathcal{O} (U);s \mapsto s|_U$と定める.
$\mathcal{O} (U)$に演算を$(s+v)(\mathfrak{p}):=s(\mathfrak{p})+v(\mathfrak{p}) , \ (sv)(\mathfrak{p}):=s(\mathfrak{p})v(\mathfrak{p}) $ただし$s,v\in \mathcal{O} (U),\ \mathfrak{p}\in U$として定める.
$\mathcal{O} (U)$の零元は$0;\mathfrak{p}\mapsto 0/1 \in R_\mathfrak{p}$であり,単位元は$1;\mathfrak{p}\mapsto 1/1 \in R_\mathfrak{p}$である.

$\mathcal{O}$は可換環の層になる.

前層になることを示すのは簡単なため省略する.$U\subset \spec(R)$を開集合,$U= \bigcup_{i\in \varLambda } V_i $$U$の開被覆とする.
$s \in \mathcal{O} (U)$は任意の$i\in \varLambda$$\rho_{UV_i}(s)=s|_{V_i}=0$とするとき,任意の$\mathfrak{p}\in U$に対し$\mathfrak{p}\in V_{i_0}$となる$i_0\in \varLambda$が存在するので$s(\mathfrak{p})=(s|_{V_{i_0}})(\mathfrak{p})=0$よって$s=0$
$i\in \varLambda$に対し$s_i \in \mathcal{O} (V_i)$は,$s_i|_{V_i \cap V_j}=s_j|_{V_i \cap V_j}$$j,i\in \varLambda$を満たすとする.ここで$s \in \mathcal{O} (U)$を,各$ \mathfrak{p}\in U$に対し$\mathfrak{p}\in V_{i}$となる$i\in \varLambda$をとり,$s(\mathfrak{p})=s_i(\mathfrak{p})$と定める.$V_i \cap V_j$上では$s_i,s_j$の値は一致するので$s$はwell-defindeである.そして任意の$i\in \varLambda$に対して$s|_{V_i}=s_i$であることは定め方から分かる.
以上より$\mathcal{O}$は可換環の層になることが確かめられた.

具体例 of $ \mathbb{Z} $

具体例を見ていこう.環$ \mathbb{Z} $のスペクトラムは$\spec( \mathbb{Z} )=\{(p)\subset \mathbb{Z} \mid p は素数 \}$と書ける.
$\spec( \mathbb{Z} )$の開集合を$V((6))^c=:U $としたとき,$\mathcal{O} (U)$の構造について考えてみよう.単項イデアル$(6)$を含む素イデアルは$(2),(3)$のみである.ゆえに$U=\spec( \mathbb{Z} ) \setminus \{(2),(3)\}$となる.
さて$\spec( \mathbb{Z} )$の閉集合$W$$ \mathbb{Z} $は単項イデアル整域であることに注意すると,$W$は有限集合であることが分かる.なので,$U$に含まれる開集合$V$$(2),(3)$と有限個の素イデアルを除いた素イデアル全体であることが分かる.
なので開集合$V((30))^c=:V\subset U$に対し,例えば$6\in \mathbb{Z}$は任意の$\mathfrak{q}\in V$に対して$6\not \in \mathfrak{q}$である.$15\in\mathbb{Z}$$15\not \in \mathfrak{q}$であるが,分母が$15$に割り当てる写像$s':U \rightarrow \bigsqcup_{ \mathfrak{p} \in U} \mathbb{Z}_\mathfrak{p}$$\mathcal{O} (U)$に属さない.なぜなら開集合は必ず交わるからだ.
以上の考察から次が分かる.

$\mathcal{O} (U)\cong \mathbb{Z}[ \frac{1}{6} ]= \mathbb{Z}[ \frac{1}{2}, \frac{1}{3}]$である.

一般化すると次が成り立つ.

開集合$U\subset\spec( \mathbb{Z} )$$U=V((f))^c$$f\in \mathbb{Z} $と書ける.このとき$\mathcal{O} (U)\cong \mathbb{Z}[ \frac{1}{f} ]$である.

写像$\varphi: \mathbb{Z}[ \frac{1}{f} ]\rightarrow\mathcal{O} (U); \frac{a}{f^n} \mapsto \varphi(\frac{a}{f^n} )$$\varphi(\frac{a}{f^n} ):\mathfrak{p}\mapsto a/f^n\in \mathbb{Z}_\mathfrak{p}$として定める.すると$\varphi$はwell-defindeな準同型写像である.
初めに$\varphi$は単射であることを示す.各$\mathfrak{p}\in U$に対し$\varphi(\frac{a}{f^n})(\mathfrak{p})=0(\mathfrak{p})$とするとき,$\mathbb{Z}_\mathfrak{p}$$a/f^n=0/1$である.$\mathbb{Z}$は整域なため$a=0$である.ゆえに$\mathbb{Z}[ \frac{1}{f} ]$$\frac{a}{f^n}=\frac{0}{f^n}=0$である.
次に$\varphi$は全射であることを示す.$s\in\mathcal{O} (U)$をとる.各$\mathfrak{p}\in U$に対し$s$の条件(※)を満たす$\mathfrak{p}$の開近傍$V_\mathfrak{p}$$a_\mathfrak{p},f_\mathfrak{p}\in \mathbb{Z} $をとる.任意の二点$\mathfrak{p},\mathfrak{p}'\in U$に対し,それぞれの近傍$V_\mathfrak{p},V_{\mathfrak{p}'}$の共通部分は空集合でないことから,任意の点$\mathfrak{q}\in U= \bigcup_{\mathfrak{q}\in U} V_\mathfrak{q}$
$$s(\mathfrak{q})=a_\mathfrak{p}/f_\mathfrak{p}=a_\mathfrak{p'}/f_\mathfrak{p'}\in \mathbb{Z}_\mathfrak{q} \qquad \mathfrak{p},\mathfrak{p}'\in U $$
を満たす.すなわち$a_\mathfrak{p} f_\mathfrak{p'}-a_\mathfrak{p'} f_\mathfrak{p}=0$.さらにすべての$\mathfrak{p},\mathfrak{q}\in U$$f_\mathfrak{p}\not \in \mathfrak{q}$である.これは$f_\mathfrak{p}\in(f)$であることを意味する.よって$0=a_\mathfrak{p} f_\mathfrak{p'}-a_\mathfrak{p'} f_\mathfrak{p}=a_\mathfrak{p} b'f^m-a_\mathfrak{p'} bf^n$$b,b'\in \mathbb{Z} ,n,m \geq 0$となる.$h=a_\mathfrak{p} b',h'=a_\mathfrak{p'} b$とおく.
さて,$hf^m-h'f^n=0$なので$\mathbb{Z}[ \frac{1}{f} ]$で,
$$\frac{h'}{f^m}=\frac{h}{f^n}$$
である.よって$\varphi(\frac{h}{f^n} )=s$となる.

さらにこのことを一般化できる.それが次の定理である.

$f\in R $に対し開集合$U\subset\spec( R )$$U=V((f))^c$とおく.このとき$\mathcal{O} (U)\cong R_f(=R_{(f)})$である.

証明は難しい.$R= \mathbb{Z} $の場合,$\mathbb{Z}$は整域であることと,任意の二点$\mathfrak{p},\mathfrak{p}'\in U$に対し,それぞれの近傍$V_\mathfrak{p},V_{\mathfrak{p}'}$の共通部分は空集合でないという性質があるが,もちろん一般の環にそのような性質は持っていない.ゆえに証明は難しくなる.

参考文献

[1]
R. Hartshorne, Algebraic Geometry, Springer-Verlag
投稿日:22日前
OptHub AI Competition

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「ツクツクボーシ、ツクツクボーシ」 ほら、カエルが鳴いてるよ 春の訪れを感じながら 落ち葉で黄色くなった道を歩いてく

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