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三次方程式を解こう

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 お久しぶりです. 12匁です. 普段はYouTube, niconicoにてボカロPとして活動を行っております.

 ところで, 最近急に三次方程式の解の公式の話がしたくなったのでその欲求をこの場で発散させたいと思います. では, もったいぶらないで始めます.

考える問題

特殊な三次方程式の解の公式

三次方程式$x^3+px+q=0$の解の公式を導出せよ

 おい待てよ, と言いたくなる気持ちもわかります.
 5秒黙れ(ヨビノリリスペクト)

 みなさんがやりたいのはきっと「三次方程式$ax^3+bx^2+cx+d=0$の解の公式を導出せよ」という, 一般三次方程式の解の公式の導出だと思います. しかし, この方程式の両辺を$a$で割って$x=t-\frac{b}{3a}$と変数変換してあげるとこの形になってくれます. 計算が重いですが実際にやってみましょう.

立方完成

  $ax^3+bx^2+cx+d=0$

$a\neq0$より両辺を$\frac{1}{a}$倍する

  $x^3+\frac{b}{a}x^2+\frac{c}{a}x+\frac{d}{a}=0$

$x=t-\frac{b}{3a}$と変数変換する

  $(t-\frac{b}{3a})^3+\frac{b}{a}(t-\frac{b}{3a})^2+\frac{c}{a}(t-\frac{b}{3a})+\frac{d}{a}=0$

それぞれ展開する

  $(t^3-\frac{b}{a}t^2+\frac{b^2}{3a^2}t-\frac{b^3}{27a^3})+(\frac{b}{a}t^2-\frac{2b^2}{3a^2}t+\frac{b^3}{9a^3})+(\frac{c}{a}t-\frac{bc}{3a^2})+\frac{d}{a}=0$

項ごとにまとめる

  $t^3+(-\frac{b}{a}+\frac{b}{a})t^2+(\frac{b^2}{3a^2}-\frac{2b^2}{3a^2}+\frac{c}{a})t+(-\frac{b^3}{27a^3}+\frac{b^3}{9a^3}-\frac{bc}{3a^2}+\frac{d}{a})=0$

項ごとに計算する

  $t^3+\frac{-b^2+3ac}{3a^2}t+\frac{2b^3-9abc+27a^2d}{27a^3}=0$

$\frac{-b^2+3ac}{3a^2}=p,\ \frac{2b^3-9abc+27a^2d}{27a^3}=q$と置き直す

  $t^3+pt+q=0$

(証明終わり)

 $x=t-\frac{b}{3a}$という変換をしたので, $t^3+pt+q=0$の解が$t=\alpha,\ \beta,\ \gamma$であるとき, $ax^3+bx^2+cx+d=0$ の解は $x=t-\frac{b}{3a}$$t$ にそれらを代入して, $x=\alpha-\frac{b}{3a},\ \beta-\frac{b}{3a},\ \gamma-\frac{b}{3a}$ と求めることができます. つまり, 一般三次方程式の代わりにちょっと特殊な形をした三次方程式「$t^3+pt+q=0$」を考えてあげても一般性は失われないということです.
 ちなみに, 今回用いた$x=t-\frac{b}{3a}$という変数変換を「チルンハウス変換」, もっと正確に言うと「三次のチルンハウス変換」といいます. 一般に$n$次のチルンハウス変換は以下の式で与えられます.

チルンハウス変換

以下の変数変換を「$n$次のチルンハウス変換」という.
$${x=t-\frac{b}{na}}$$

このとき, $n$次方程式$ax^{n}+bx^{n-1}+\cdots=0$$n$次のチルンハウス変換を行うことで$n-1$乗の項を消すことができる.

(少し計算をすればこの性質が成り立つことは容易に証明できる.)

 三次方程式のみならず, 今となっては雑魚問と化した二次方程式の解の公式の導出をチルンハウス変換を用いて行ってみましょう.

二次のチルンハウス変換

$x=t-\frac{b}{2a}$とする.

 $ax^2+bx+c=0$
$x^2+\frac{b}{a}x+\frac{c}{a}=0$
$(t^2-\frac{b}{a}t+\frac{b^2}{4a^2})+(\frac{b}{a}t-\frac{b^2}{2a^2})+\frac{c}{a}$ ($x$$t$に変換)
$t^2+\frac{-b^2+4ac}{4a^2}=0$
$t^2=\frac{b^2-4ac}{4a^2}$
$t=\pm \frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}$
$x=\pm \frac{\sqrt{b^2-4ac}}{2a}-\frac{b}{2a}$ ($t$から$x$に復元)
$x=\frac{-b\pm \sqrt{b^2-4ac}}{2a}$

 三次方程式も最初に$x$$t$に変換してより簡単な方程式にし, 最後に$t$から$x$に復元して$x$についての解を得るわけです.

 前座にしては長々と喋りましたが, つまりは「方程式$x^3+px+q=0$を解く」と宣言しているだけです. ここからがスタートなので気を引き締めて聞いてほしいです. では行きましょう.


休憩タイム

【ソシャゲに1000円費やしたヒカキン】
ビカキン

休憩終わり


ラグランジュ・リゾルベント

$x^3+px+q=0$の解を$\alpha,\ \beta,\ \gamma$としたとき, 数$L,\ R$を以下のように定義します.

ラグランジュ・リゾルベント

$${L=\omega\alpha+\omega^2\beta+\gamma}$$
$${R=\omega^2\alpha+\omega\beta+\gamma}$$

とする. ただし, $\omega=\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}$とする(つまり$\omega^3=1$かつ$\omega^2+\omega+1=0$).

 この$L$$R$が, 三次方程式のキーパーソンです. 具体的には, $L,\ R$はともに方程式の係数$p,\ q$を用いて表すことができ, さらに$L,\ R$を用いて$\alpha,\ \beta,\ \gamma$を復元することができるのです. 先に復元の方からやっちゃいましょう.

ラグランジュ・リゾルベント→解

$\alpha,\ \beta,\ \gamma$$L,\ R$を用いて表せ

三元一次連立方程式を解く

解と係数の関係より$\alpha+\beta+\gamma=0$であることを用いると,
$\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} L=\omega\alpha+\omega^2\beta+\gamma \\ R=\omega^2\alpha+\omega\beta+\gamma \\ 0=\alpha+\beta+\gamma \end{array} \right. \end{eqnarray}$
であり, 上から順番に式番号①, ②, ③とする.

$\times\omega^2+$$\times\omega+$③より
$\omega^2L+\omega R=3\alpha$  ($\omega^3=1,\ \omega^2+\omega+1=0$に注意せよ)

よって$\alpha=\frac{\omega^2L+\omega R}{3}$.

$\times\omega+$$\times\omega^2+$③より
$\omega L+\omega^2 R=3\beta$

よって$\beta=\frac{\omega L+\omega^2 R}{3}$.

$+$$+$③より
$L+R=3\gamma$

よって$\gamma=\frac{L+R}{3}$.

まとめると,
$\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} \alpha=\frac{\omega^2L+\omega R}{3} \\ \beta=\frac{\omega L+\omega^2 R}{3} \\ \gamma=\frac{L+R}{3} \end{array} \right. \end{eqnarray}$
である.

$L,\ R$を用いて$\alpha,\ \beta,\ \gamma$を表すことができました. ところで, この$L,\ R$が方程式の係数である$p,\ q$を用いて表すことができるなら$\alpha,\ \beta,\,\gamma$$p,\ q$を用いて表せる, つまり解の公式を作ることができるわけですね. そして, 先述のとおり実は$L,\ R$$p,\ q$を用いて表すことができます. $L,\ R$を媒介して公式を作っていくんですね. おもしろいです.
 では, 休憩後に最大の山場, $L,\ R$$p,\ q$で表すパートをやっていきましょう.


休憩タイム

「長泉なめり駅(静岡県)」の, 撥音便無表記感

休憩終わり


方程式の係数で表せる, とは

 突然ですが, $L^3+R^3$および$L^3R^3$という数は, 方程式の係数$p,\ q$の多項式で表せます. そして, その証明を今から行います.

 実際に表す前に, あえて「実際にどう表すかはわからないけれどもなんか表すことができる」ということを証明してみようと思います.
 最速で公式を導出したい人は「問題3」まで読み飛ばしてもいいですが, ここでの議論が一般の方程式に解の公式が存在するかどうかを決定づける本質へとつながります. 「群とか体とかよくわからないけど五次方程式の解の公式が存在しない理由をそこそこちゃんと理解したい」という人はぜひ読み飛ばさずに見てください.

 「方程式の係数$p,\ q$の多項式で表せる」という事象を言い換えてみましょう.
 方程式の係数は, どのような性質があったでしょうか.

 解と係数の関係より, 係数は解の基本対称式になっていることがわかります.

解と係数の関係および基本対称式

$\alpha,\ \beta$の二解を解に持つ二次方程式$x^2+ax+b=0$について,
$-a=\alpha+\beta,\ b=\alpha\beta$が成り立ち, これらは$\alpha,\ \beta$についての基本対称式である.

$\alpha,\ \beta,\ \gamma$の三解を解に持つ三次方程式$x^3+ax^2+bx+c=0$について,
$-a=\alpha+\beta+\gamma,\ b=\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha,\ -c=\alpha\beta\gamma$が成り立ち,
これらは$\alpha,\ \beta,\ \gamma$についての基本対称式である.

 つまり, 「方程式の係数$p,\ q$の多項式で表せる」というのは, 「解の基本対称式の多項式で表せる」と言い換えることができます.
 もっと言うと, 「解についての対称式である」ということです.

 故に, $L^3+R^3,\ L^3R^3$が解についての対称式であることを証明すれば, これらは解の基本対称式の多項式で表すことができ, つまりは方程式の係数$p,\ q$の多項式で表すことができるわけです.

 (今は, $L,\ R$を直接求める代わりに$L^3+R^3$$L^3R^3$を求めようとしています.)

 ところで, これらはほんとうに解についての対称式なのでしょうか.
 対称式ってなんだっけ.

 対称式とは, 文字を入れ替えても値が変わらない式のことでした.
 つまり, 文字の入れ替え方を全通り試して値が変わらないのであればそれは対称式だと言えるわけです.

 おもしろいですけど論理が複雑なのでまとめますね.

 1. $L,\ R$の代わりに$L^3+R^3,\ L^3R^3$を求めたい.
→2. $L^3+R^3,\ L^3R^3$は文字($\alpha,\ \beta,\ \gamma$)の入れ替えによって値が変わらない.
→3. $L^3+R^3,\ L^3R^3$は解の対称式である.
→4. $L^3+R^3,\ L^3R^3$は解の基本対称式の多項式で表せる.
→5. $L^3+R^3,\ L^3R^3$$p,\ q$を用いて表せる.

 という流れです. では, ほんとうに$L^3+R^3,\ L^3R^3$が文字の入れ替えによって値が変わらないことを確かめていきましょう.

 文字の入れ替え方は次の$3!=6$通りです.

文字の入れ替え方

$e:(\alpha,\ \beta,\ \gamma)\rightarrow (\alpha,\ \beta,\ \gamma)$ (入れ替えなし)
$\sigma:(\alpha,\ \beta,\ \gamma)\rightarrow (\beta,\ \gamma,\ \alpha)$ (スロットみたいに入れ替え)
$\sigma^2:(\alpha,\ \beta,\ \gamma)\rightarrow (\gamma,\ \alpha,\ \beta)$ (スロット2回)
$\tau:(\alpha,\ \beta,\ \gamma)\rightarrow (\beta,\ \alpha,\ \gamma)$ ($\alpha,\ \beta$の入れ替え)
$\sigma\tau:(\alpha,\ \beta,\ \gamma)\rightarrow (\alpha,\ \gamma,\ \beta)$ ($\alpha,\ \beta$入れ替え→スロット)
$\sigma^2\tau:(\alpha,\ \beta,\ \gamma)\rightarrow (\gamma,\ \beta,\ \alpha)$ ($\alpha,\ \beta$入れ替え→スロット2回)

 なお, $\sigma,\ \sigma^2\tau$などは置換の略記とする. たとえば, $(\alpha,\ \beta,\ \gamma)$に置換$\tau$を作用させた結果は$(\beta,\ \alpha,\ \gamma)$である.
 このとき, 「$\sigma^2\tau$」というネーミングが「$\tau$を作用させたあとに$\sigma$$2$回作用させる」という操作を示唆していることに注意する.

 では, $L,\ R$に各置換を作用させたときの挙動をもとに$L^3+R^3,\ L^3R^3$が対称式であることを確かめていきます.

 $L=\omega\alpha+\omega^2\beta+\gamma$及び$R=\omega^2\alpha+\omega\beta+\gamma$$e,\ \sigma,\ \sigma^2$を作用させる.

 $L=\omega\alpha+\omega^2\beta+\gamma \xrightarrow{e}\omega\alpha+\omega^2\beta+\gamma=L$
 $L=\omega\alpha+\omega^2\beta+\gamma\xrightarrow{\sigma}\omega\beta+\omega^2\gamma+\alpha=\omega^2L$
 $L=\omega\alpha+\omega^2\beta+\gamma \xrightarrow{\sigma^2}\omega\gamma+\omega^2\alpha+\beta=\omega L$
であるから, $L^3$$e,\ \sigma,\ \sigma^2$に対して不変.
 また, 同様に

 $R=\omega\beta+\omega^2\alpha+\gamma \xrightarrow{e}\omega\beta+\omega^2\alpha+\gamma=R$
 $R=\omega\beta+\omega^2\alpha+\gamma\xrightarrow{\sigma}\omega\gamma+\omega^2\beta+\alpha=\omega R$
 $R=\omega\beta+\omega^2\alpha+\gamma \xrightarrow{\sigma^2}\omega\alpha+\omega^2\gamma+\beta=\omega^2R$
であるから, $R^3$$e,\ \sigma,\ \sigma^2$に対して不変.

また, $L,\ R$$\tau$を作用させることを考える.

$L=\omega\alpha+\omega^2\beta+\gamma \xrightarrow{\tau}\omega\beta+\omega^2\alpha+\gamma=R$
$R=\omega\beta+\omega^2\alpha+\gamma \xrightarrow{\tau}\omega\alpha+\omega^2\beta+\gamma=L$

 したがって$\tau$$L$$R$を入れ替える置換となる.

 今, $L^3+R^3$は, $e,\ \sigma,\ \sigma^2$に対して不変であり, かつ$\tau$についても不変であるからもちろん「$\tau$を作用させてから$\sigma^2$を作用させる」みたいなことをしても不変. したがって$\tau,\ \sigma\tau,\ \sigma^2\tau$に対して不変である. つまり$L^3+R^3$$6$つの置換すべてについて不変であり, $\alpha,\ \beta,\ \gamma$についての対称式である.

 同様に,$L^3R^3$$\alpha,\ \beta,\ \gamma$についての対称式である.


※ここから下は方程式のガロア理論につながる話をしている独り言


 逆に, 上の議論から「対称式を人工的に作り出そうとしたら$L^3+R^3,\ L^3R^3$みたいな形がうまくいく」ということがわかる.

 ただの$L,\ R$はもちろん$\alpha,\ \beta,\ \gamma$についての対称式ではない.
 しかし, $L^3,\ R^3$にしたら「$e,\ \sigma,\ \sigma^2$」といった「$\sigma$だけの置換(スロットだけを何回か作用させたやつ)」を無視できるようになる. つまりは$\tau$のみを考えればよくなり, $\tau$$L$$R$を入れ替える置換であったため$L^3+R^3,\ L^3R^3$のようなものを考えればこれらが対称式になるといえる.
 公式を導出するという後先のことを考えずにただ対称式を作りたいだけだったら, 「$(L^3-R^3)^2$」みたいなものも人工的に作り出せる

 これは四次方程式にも応用でき, 四次方程式のラグランジュリゾルベントである$L_1,\ L_2,\ L_3$においてもそれぞれ$4$乗するとスロットを何回か作用させた置換を無視できるようになり, さっきからずっといじってきた$\tau$みたいな感じの「あとはこの置換たちのみを考えればいい」という置換たちによって不変な式をむりやり構成してあげればこれらは「解についての対称式」すなわち「係数で表せる量」であることが証明できる.

 すこし飛躍するが, これによって$n$次方程式の解の公式の存在性を「$n$個の文字の置換の仕方(全通りは$n!$通り)」を調べるだけで判定できるようになった. 三次方程式では実質的に「スロットの繰り返しと$\alpha,\ \beta$の入れ替え」つまり「$\sigma$$\tau$」のみが鍵となっている比較的かわいらしい置換システムを考えてきたが, $5$つの文字の置換システムは比較的複雑な置換システムになる. これがどう頑張っても解を係数で表せない証明, ひいては「どういうときに表せてどういうときに無理なのかを完璧に説明する条件」を考えることにつながる.

 ここまでなんとなく理解したうえで 結城浩-「数学ガール/ガロア理論」 の最終章を読むとガロアが如何に三次方程式のラグランジュによる解法を参考にして方程式のガロア理論を完成させたのかをふんわりと理解することができるだろう(ちなみに私はテトラちゃん推しです).

 はい, これでようやく$L^3+R^3,\ L^3R^3$が解の対称式であることを言えました. ところで, どうしてこんなことがしたかったんでしたっけ. そうです. これで具体的な表し方はわからないけれども, $L^3+R^3,\ L^3R^3$$p,\ q$つまり方程式の係数の多項式として表すことができるということを証明できました.

 解の公式の存在だけを言うのであればこのまま進んでもいいのですが, 今回はあくまで解の公式の導出なので息抜きとして実際に$p,\ q$の多項式として表してみましょう.

$L^3+R^3,\ L^3R^3$$p,\ q$の多項式として表せ.

確認だが, $L$および$R$
$${L=\omega\alpha+\omega^2\beta+\gamma}$$
$${R=\omega\beta+\omega^2\alpha+\gamma}$$
という定義であり, $p,\ q$は解と係数の関係より
$${0=\alpha+\beta+\gamma}$$
$${p=\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha}$$
$${q=-\alpha\beta\gamma}$$
が成り立っていることに注意する.


  1. $L^3+R^3$の計算

 $L^3+R^3$
$=(\omega\alpha+\omega^2\beta+\gamma)^3+(\omega\beta+\omega^2\alpha+\gamma)^3$ (定義より)
$= \lbrace (\omega\alpha+\omega^2\beta)+\gamma \rbrace^3+\lbrace (\omega\beta+\omega^2\alpha)+\gamma \rbrace^3 $
$=\lbrace(\omega\alpha+\omega^2\beta)^3+3(\omega\alpha+\omega^2\beta)^2\gamma+3(\omega\alpha+\omega^2\beta)\gamma^2+\gamma^3\rbrace+\lbrace(\omega\beta+\omega^2\alpha)^3+3(\omega\beta+\omega^2\alpha)^2\gamma+3(\omega\beta+\omega^2\alpha)\gamma^2+\gamma^3\rbrace$
$=\lbrace(\omega\alpha+\omega^2\beta)^3+(\omega\beta+\omega^2\alpha)^3\rbrace+3\gamma\lbrace(\omega\alpha+\omega^2\beta)^2+(\omega\beta+\omega^2\alpha)^2\rbrace+3\gamma^2\lbrace(\omega\alpha+\omega^2\beta)+(\omega\beta+\omega^2\alpha)\rbrace+2\gamma^3$ ($\gamma$で昇べき)
$=(2\alpha^3-3\alpha^2\beta-3\alpha\beta^2+2\beta^3)+3\gamma(-\alpha^2+4\alpha\beta-\beta^2)+3\gamma^2(-\alpha-\beta)+2\gamma^2$ (係数計算, $\omega^2+\omega+1=0$つまり$\omega^2+\omega=-1$に注意)
$=2\alpha^3+2\beta^3+2\gamma^3-3(\alpha^2\beta+\alpha\beta^2+\alpha^2\gamma-4\alpha\beta\gamma+\beta^2\gamma+\alpha\gamma^2+\beta\gamma^2)$ (順番入れ替え)
$=2(\alpha^3+\beta^3+\gamma^3-3\alpha\beta\gamma)-3(\alpha^2\beta+\alpha\beta^2+\alpha^2\gamma+\beta^2\gamma+\alpha\gamma^2+\beta\gamma^2+3\alpha\beta\gamma)+27\alpha\beta\gamma$
$=2(\alpha+\beta+\gamma)(\alpha^2+\beta^2+\gamma^2-\alpha\beta-\beta\gamma-\gamma\alpha)-3(\alpha+\beta+\gamma)(\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha)+27\alpha\beta\gamma$ (因数分解)
$=-27q$ ($\alpha+\beta+\gamma=0$のおかげでバッサリ消える)

したがって$L^3+R^3=-27q$


  1. $L^3R^3$の計算

 $LR$
$=(\omega\alpha+\omega^2\beta+\gamma)(\omega\beta+\omega^2\alpha+\gamma)$
$=\alpha^2+\beta^2+\gamma^2-\alpha\beta-\beta\gamma-\gamma\alpha$ ($\omega^2+\omega+1=0$つまり$\omega^2+\omega=-1$に注意)
$=(\alpha+\beta+\gamma)^2-3(\alpha\beta+\beta\gamma+\gamma\alpha)$
$=-3p$

故に$L^3R^3=-27p^3$である


以上をまとめると,
$${ \begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} L^3+R^3=-27q \\ L^3R^3=-27p^3 \end{array} \right. \end{eqnarray} }$$
となり, これらはたしかに$p,\ q$の多項式である.

 数学ガールを読んだことがある人には伝わると思うんですけど, さすがテトラちゃん推しの腕力ですよね. たぶんもっときれいに求められるような気がするんですけれどもテトラちゃん推しの性としてはゴリゴリに計算したくなるものです.


休憩タイム

さっきの「ビカキン(微課金ヒカキン)」、新生代の示準化石にいそうだなあ

休憩終わり


$L,\ R$を係数で表す

 ここからはもうウイニングランです. 寝ながらでもできます. いや, 寝ながらは無理か.

 $L^3,\ R^3$$p,\ q$を用いて表します.
 $L^3,\ R^3$を解に持つ二次方程式は$t^2-(L^3+R^3)t+L^3R^3=0$です.
 さっき求めたやつを代入して$t^2+27qt-27p^3=0$なのでこの解は解の公式を用いて
$t=\frac{27}{2}(-q\pm\sqrt{q^2+\frac{4}{27}p^3})$です.
 $L$$R$はプラスマイナスがどっちがどっちでもいいので(※たとえば, $(x-1)(x-2)(x-3)=0$という三次方程式に対して, $(\alpha,\ \beta,\ \gamma)=(1,\ 2,\ 3)$とすると$L=\omega+2\omega^2+3,\ R=2\omega+\omega^2+3$だが, $(\alpha,\ \beta,\ \gamma)=(2,\ 1,\ 3)$とすると$L=2\omega+\omega^2+3,\ R=\omega+2\omega^2+3$になる. $L,\ R$というのは, $(\alpha,\ \beta,\ \gamma)$をどうとるかによってのみ定まるため方程式の時点ではどちらがどちらでもいい.), ここでは
 $L^3=\frac{27}{2}(-q+\sqrt{q^2+\frac{4}{27}p^3})$
 $R^3=\frac{27}{2}(-q-\sqrt{q^2+\frac{4}{27}p^3})$
とする. このとき両辺立方根をとって,

 $L= \sqrt[3]{\frac{27}{2}(-q+\sqrt{q^2+\frac{4}{27}p^3})}$
 $R= \sqrt[3]{\frac{27}{2}(-q-\sqrt{q^2+\frac{4}{27}p^3})}$

(ほんとうは$L^3$の立方根は$L,\ \omega L,\ \omega^2L$の三通り, $R^3$の立方根は$R,\ \omega R,\ \omega^2R$の三通りが考えられ, 立方根の取り方は合計$9$通り存在するが, 解を復元するときにかぶりが出るためこのようにとってよい.)

解の公式を作る

$${\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} \alpha=\frac{\omega^2L+\omega R}{3} \\ \beta=\frac{\omega L+\omega^2 R}{3} \\ \gamma=\frac{L+R}{3} \end{array} \right. \end{eqnarray}}$$

であった,書き換えると三次方程式の三解は
$${\begin{eqnarray} \left\{ \begin{array}{l} ・\frac{L}{3}+\frac{R}{3} \\ ・\omega\frac{L}{3}+\omega^2\frac{R}{3} \\ ・\omega^2\frac{L}{3}+\omega\frac{R}{3} \end{array} \right. \end{eqnarray}}$$
である.

 $\frac{L}{3}$
$=\frac{1}{3} \sqrt[3]{\frac{27}{2}(-q+\sqrt{q^2+\frac{4}{27}p^3})}$
$=\sqrt[3]{\frac{1}{2}(-q+\sqrt{q^2+\frac{4}{27}p^3})}$
$=\sqrt[3]{(-\frac{q}{2}+\sqrt{(\frac{q}{2})^2+(\frac{p}{3})^3})}$

 $\frac{R}{3}$
$=\frac{1}{3} \sqrt[3]{\frac{27}{2}(-q-\sqrt{q^2+\frac{4}{27}p^3})}$
$=\sqrt[3]{\frac{1}{2}(-q-\sqrt{q^2+\frac{4}{27}p^3})}$
$=\sqrt[3]{(-\frac{q}{2}-\sqrt{(\frac{q}{2})^2+(\frac{p}{3})^3})}$

であるから求まるものは以下の三つである.

$・\sqrt[3]{(-\frac{q}{2}+\sqrt{(\frac{q}{2})^2+(\frac{p}{3})^3})}+\sqrt[3]{(-\frac{q}{2}-\sqrt{(\frac{q}{2})^2+(\frac{p}{3})^3})}$
$・\omega\sqrt[3]{(-\frac{q}{2}+\sqrt{(\frac{q}{2})^2+(\frac{p}{3})^3})}+\omega^2\sqrt[3]{(-\frac{q}{2}-\sqrt{(\frac{q}{2})^2+(\frac{p}{3})^3})}$
$・\omega^2\sqrt[3]{(-\frac{q}{2}+\sqrt{(\frac{q}{2})^2+(\frac{p}{3})^3})}+\omega\sqrt[3]{(-\frac{q}{2}-\sqrt{(\frac{q}{2})^2+(\frac{p}{3})^3})}$

三次方程式の解の公式

三次方程式$x^2+px+q$の三解は以下のように表せる.

$・\sqrt[3]{(-\frac{q}{2}+\sqrt{(\frac{q}{2})^2+(\frac{p}{3})^3})}+\sqrt[3]{(-\frac{q}{2}-\sqrt{(\frac{q}{2})^2+(\frac{p}{3})^3})}$
$・\omega\sqrt[3]{(-\frac{q}{2}+\sqrt{(\frac{q}{2})^2+(\frac{p}{3})^3})}+\omega^2\sqrt[3]{(-\frac{q}{2}-\sqrt{(\frac{q}{2})^2+(\frac{p}{3})^3})}$
$・\omega^2\sqrt[3]{(-\frac{q}{2}+\sqrt{(\frac{q}{2})^2+(\frac{p}{3})^3})}+\omega\sqrt[3]{(-\frac{q}{2}-\sqrt{(\frac{q}{2})^2+(\frac{p}{3})^3})}$

ただし$\omega=\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}$である.

また, 一番最初に述べた通り, これらから$\frac{b}{3a}$を引いたものが一般の解の公式である.

一般三次方程式の解の公式

三次方程式$ax^3+bx^2+cx+d=0$の三解は以下のように表せる.

$・\sqrt[3]{(-\frac{q}{2}+\sqrt{(\frac{q}{2})^2+(\frac{p}{3})^3})}+\sqrt[3]{(-\frac{q}{2}-\sqrt{(\frac{q}{2})^2+(\frac{p}{3})^3})}-\frac{b}{3a}$
$・\omega\sqrt[3]{(-\frac{q}{2}+\sqrt{(\frac{q}{2})^2+(\frac{p}{3})^3})}+\omega^2\sqrt[3]{(-\frac{q}{2}-\sqrt{(\frac{q}{2})^2+(\frac{p}{3})^3})}-\frac{b}{3a}$
$・\omega^2\sqrt[3]{(-\frac{q}{2}+\sqrt{(\frac{q}{2})^2+(\frac{p}{3})^3})}+\omega\sqrt[3]{(-\frac{q}{2}-\sqrt{(\frac{q}{2})^2+(\frac{p}{3})^3})}-\frac{b}{3a}$

ただし, $p=\frac{-b^2+3ac}{3a^2},\ q=\frac{2b^3-9abc+27a^2d}{27a^3}$であり, $\omega=\frac{-1+\sqrt{3}i}{2}$である.

だれがこんな公式使うねん


さいごに

 二次方程式を解く、という簡単なことをいくらやっても方程式の本質-つまりはガロア理論は見えてきません. 私と一緒に苦しんで三次方程式の解の公式の導出を追っていったからこそ, 見える景色というのがあるはずです.
 あと, ほんとに最後に護身術をみなさんにお授けしたいと思います.

 解の公式の話をするときは, 「方程式のガロア理論」と言ったほうが身のためです. より広い世界を知っている数学ヤンキーたちに脅されないためにも...

投稿日:6日前
数学の力で現場を変える アルゴリズムエンジニア募集 - Mathlog served by OptHub

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直和の定義見て"集合として等しい"を知らずに背伸びしていたことに気づいたことがある。

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