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加群の拡大1~準備編~

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$$\newcommand{bm}[1]{\boldsymbol{#1}} $$

 こんにちは,五月に自治医大でIQ検査したら総合が90だったえだまめです.ワーキングメモリに至っては60台っていうね.いやぁ,脳梗塞って怖いね!今の病院の先生からはたぶん発露ができなかっただけじゃないかって言われました.まあ今ノートもかけないし正常に会話できないもんね.僕の脳内テーブルぶっ壊れて無いといいんだけど…
 さて,今回は加群の拡大についてまとめようと思います.前,ゼミで準備したら死ぬほど大変だったのに一回しか話さないの悲しくないですか?たぶんそのまま$k$次拡大まで話せたら話すんですけど,圏論使った記事は多いのにホモロジー代数だけの記事は無かった覚えなんで,誰かの役に立つと嬉しいです.
 今絶賛構成考えてリングなうなんですが,$k$次拡大までで三部構成にしようかなぁ.このページでは準備をしていく感じにしようと思います.

どんどん準同型を持ち上げる

 メインの命題を示す前に言葉を準備しよう.

自由加群

$R$自身は$R$自身の積演算で左$R$加群になる.より一般に$R^{\oplus n}$は,和は成分ごとの和,$R$による作用$R\times R^{\oplus n}\rightarrow R^{\oplus n}$
$$(s,(r_1,\dots,r_n))\mapsto (sr_1,\dots,sr_n)$$
とすれば,左$R$加群になる.この$R^{\oplus n}$自由加群という.

 要は基底があるんだなぁ~程度で僕は理解している.世の中には$\mathbb{Z}/2\mathbb{Z}$という基底が取れない加群もいるのだから.ちなみに自由加群ならばねじれ元を持たないという主張もあるが大変なので立ち入らないことにする.
 さらにちなむと僕の先生はこのような定義をしていた.
$S\not=\phi$として$S$の元の間に何も関係式がないとする.このとき,$\{\sum_{\text{有限和}}r_is_i\ | \ r_i\in R,s_i \in S\}$を自由$R$加群という.ちなみに$S$が有限集合という制約はないのでこちらの方が広い定義になってるし,実際有限ではないものをよく考える.
 基底があるんだなぁ~感が増しただろうか.

自由分解

$R$を環として,$A$$R$-加群とする.自由加群ら$F_k$が次を満たすとき$F_\bullet\xrightarrow{\varphi_\bullet} A$と書いて,自由分解という;
$\cdots \rightarrow F_1 \xrightarrow{\varphi_1} F_0 \rightarrow A$が完全列

こいつ,自由分解というやつが大活躍する.

自由分解の存在

任意の$R$加群は自由分解を持つ.

・任意に$R$加群$M$を取る.このとき自由加群からの準同型が必ず存在する.(なぜなら$R^M=\prod_{\lambda\in M}R$は自由加群になるが$R^M\ni (\cdots, a_{m_\lambda}, \cdots)_{m_\lambda\in M}\mapsto \sum a_{m_\lambda}m_\lambda$を考えればこれは全射準同型である.)すなわち自由加群$F_0$と全射な準同型$\varepsilon:F_0\rightarrow M$が取れる.
・さらに同様のトリックで自由加群$F_1$と全射準同型$e_1:F_1\rightarrow\ker\varepsilon$が存在する.
・これを包含写像$\iota:\ker\varepsilon\hookrightarrow F_0$でつなぎ合わせた系列は完全列になる.
$$\begin{xy} \xymatrix{ F_1 \ar[r]^{d_1=\iota \circ e_1} & F_0 \ar[r]^{\varepsilon} & M \ar[r] & 0 } \end{xy}$$
$\because$$\ker$$\Im$を書き出してみると,
$$_{\Im}^{\ker}\ F_1\xrightarrow[\ker\varepsilon]{}F_0\xrightarrow[M]{\ker\varepsilon}M\xrightarrow{M}0$$
となるから完全列.全射性に注意.)
$F_n$がすべて自由加群であるような完全列
$$F_m\xrightarrow{d_m} F_{m-1}\xrightarrow{d_{m-1}} \cdots \xrightarrow{d_2} F_1 \xrightarrow{d_1} F_0 \xrightarrow{\varepsilon} M \rightarrow 0$$
があったとき,自由加群からの全射準同型$F_{m+1}\rightarrow\ker d_m$を継ぎ足せば,同じトリックで自由加群らが構成する完全列が得られる.

 なんで無限に続けるかというと,そもそも自由分解自体が無限に続くからだそだ.圏論から見たら素性がいいらしい.たぶん後輩のしえろさん(Twitterは@4_____el)から聞いた.僕は有限で止まってくれた方がいい性質だと思ってたので先入観を感じた.やっぱいろいろ勉強しないとなぁ~
 このようにどの加群でも自由分解は存在する.ただその取り方は唯一ではない.そのため同じような分解の仕方があれば分類しときたいのが幾何学だ.同じということを定義しておこう.

鎖ホモトープ

$R$加群の複体$(C_\bullet,d_\bullet^C),(D_\bullet,d_\bullet^D)$の間に二つの準同型写像$f_\bullet,g_\bullet$が存在して次を満たすとき,鎖ホモトープという;
$R$加群の準同型$s_n:C_n\rightarrow D_{n+1}$の集まりがあって,$f_n-g_n=s_{n-1}\circ d_n^C+d^D_{n+1}\circ s_n$が任意の$n$で成り立つときに言う.
この$s_n$鎖ホモトピーという.

 可換図式を書いてみれば幾分わかりやすくなるだろう.要はこういう状態のときだ.
$$\begin{xy} \xymatrix{ \cdots \ar[r]^{} & C_{n+1} \ar[dl] \ar[d]_{f_{n+1}}^{g_{n+1}} \ar[r]^{d_{n+1}^C} & C_n \ar[dl]_{\color{blue} s_n} \ar[d]_{\color{red} f_n}^{\color{red} g_n} \ar[r]^{\color{blue} d_{n}^C} & C_{n-1} \ar[dl]_{\color{blue} s_{n-1}} \ar[d]_{f_{n-1}}^{g_{n-1}} \ar[r] & \cdots\\ \cdots \ar[r] & D_{n+1} \ar[r]_{\color{blue}d_{n+1}^D} & D_n \ar[r]_{d_{n}^D} & D_{n-1} \ar[r] & \cdots } \end{xy}$$
 任意の$n$で,赤の準同型の差が,青で描かれた準同型の上で行ったルートと下で行ったルートの和が同じになるときということである.お気持ちが分かりにくいが,赤の準同型の違いが青の図式を回せばクッション出来る程度であると僕は解釈してる.わからなければそういうもんかぁで流してしまっても構わない.証明を追って定義をつかんでほしい.
 次にメインの命題を示すのに必要な補題を用意しておこう.

$F$を自由$R$加群とし,$\phi:F\rightarrow N$を準同型,$\varphi:M\twoheadrightarrow N$全射準同型とする.このとき,ある準同型$\bar{\varphi}:F\rightarrow M$が存在して$\varphi=\phi\ \circ\bar{\varphi}$を満たす.

つまりは次の図式が書ける.
$$\begin{xy} \xymatrix{ & F \ar[d]^{\varphi} \ar@{.>}[dl]_{\bar{\varphi}} \\ M \ar@{->>}[r]_{\phi} & N } \end{xy}$$
$\varphi:F\rightarrow M$の準同型が全射準同型$\phi$によって持ち上げられて(定義域への準同型になれて)$\bar{\varphi}$になったということだ.こういう準同型$\bar{\varphi}$持ち上げ(lift)という.可換図式をたびたび回してるとよく見かける用語なので押さえておきたい.

$F$が自由加群より基底が取れて,$F=\langle s_1,\dots s_n\rangle_R$とする.($\langle s_1,\dots s_n\rangle_R$$R$係数の$s_1,\dots s_n$の一次結合全体を表す.)
$\phi$が全射であるから
$$^\exists m_i\in M\text{ s.t }\phi(m_i)=\varphi(s_i)$$
となるため,$\bar{\varphi}:F\rightarrow M$$s_i\mapsto \bar{\varphi}(s_i)=m_i$で定義する.
・こうして定義された$\bar{\varphi}$が持ち上げの定義を満たしているか確認しよう.$s\in F$すなわち$s=a_1s_1+\cdots a_ns_n$をとる.このとき
$$\begin{array}{rcl} \varphi(s) &=& \varphi(a_1s_1+\cdots a_ns_n)\\ &=& \sum a_i\varphi(s_i)\\ &=& \sum a_i\phi(m_i)\\ \phi\circ\bar{\varphi}(s) &=& \phi(\bar{\varphi}(a_1s_1+\cdots a_ns_n))\\ &=& \phi(\sum a_i \bar{\varphi}(s_i))\\ &=& \phi(\sum a_i m_i)\\ &=& \sum a_i \phi(m_i)\\ \end{array}$$
より一致することが確かめられる.

 全射じゃなければ持ち上げが存在するかはわからないことが証明からわかるだろう.またこの持ち上げに唯一性は担保されない.全射だからと存在するはずの$m_i$が一つとは限らないからだ.
 さて,やっとメインの命題に来た.

A

$B$$R$加群,$G_\bullet\xrightarrow{\phi_\bullet} B$を自由分解として複体$\cdots\rightarrow F_1 \xrightarrow{\varphi_!} F_0 \rightarrow 0$があったとする.このとき,任意の準同型$f:\\\text{coker}\varphi_1\rightarrow B$に対して,準同型$f_\bullet:F_\bullet \rightarrow G_\bullet$が存在して以下の図式を可換にする.
$$\begin{xy} \xymatrix{ \cdots \ar[r] & F_1 \ar[d]^{f_2} \ar[r] & F_0 \ar[d]^{f_1} \ar[r] & \text{coker} \varphi_1 \ar[d]^{f} \ar[r] & 0\\ \cdots \ar[r] & G_1 \ar[r] & G_0 \ar[r] & B \ar[r] & 0 } \end{xy}$$
またこのような準同型ら$f_\bullet:F_\bullet\rightarrow G_\bullet$は鎖ホモトープを除いて一意.

 証明する前に言葉を復習しておこう.
 余核$\text{coker}f$とは,準同型$f:A\rightarrow B$に対し$B/\Im f$と定められる.よく知られている完全列として加群$M,N$と準同型$\varphi:M\rightarrow N$に対して
$$0\rightarrow \ker\varphi\hookrightarrow M\xrightarrow{\varphi}N\twoheadrightarrow\text{coker}\varphi\rightarrow 0$$
これが完全列になってるかは自分で確かめてみてほしい.

$F_0$が自由加群より$\text{coker}\varphi_1=F_0/\Im\varphi_1$も自由加群である.($\Im\varphi$$F_0$部分加群なので生成元を持つため,$\text{coker}\varphi_1$$\langle s_1,\cdots,s_n\rangle/\langle s_{i_1},\cdots,s_{i_k}\rangle$と書けるため自由加群となる.)

$G_\bullet\xrightarrow{\phi_\bullet}B$は完全列より$g_0\xrightarrow{\phi_0}B$は全射であるため($\Im\phi_0=\ker 0=B$より全射になる.),リフト$\tilde{f}:\text{coker}\phi_0\rightarrow G_0$が存在する.よって$f_0$$\tilde{f}\circ(F_0\twoheadrightarrow \text{coker}\varphi_1)$で定義しておく.
$$\begin{xy} \xymatrix{ \cdots \ar[r] & F_0 \ar@{.>}[d]_{f_0}\ar[r] & \text{coker}\varphi_1 \ar@{.>}[dl]^{\tilde{f}} \ar[r] & 0\\ \cdots \ar[r] & G_0 \ar@{->>}[r]_{\phi_0} & B } \end{xy}$$
目標はこの$f_0$をずっと$F_n\rightarrow G_n$と持ち上げて定義し続けることだ.これには帰納法を使う.

$f_{k-1}:F_{k-1}\rightarrow G_{k-1}$まで定められたとする.
$$\begin{xy} \xymatrix{ \cdots \ar[r] & F_k \ar@{.>}[d]_{?} \ar@{->>}[r]^{\varphi_k} & \Im \varphi_k\subset F_{k-1} \ar[d]_{f_{k-1}|_{\Im \varphi_k}} \ar[r]^{\varphi_{k-1}} & F_{k-2} \ar[d]_{f_{k-2}}\ar[r] & \cdots \\ \cdots \ar[r] & G_k \ar@{->>}[r]_{\phi_k} & \Im \phi_k\subset G_{k-1} \ar[r]_{\phi_{k-1}} & G_{k-2} \ar[r] & \cdots \\ } \end{xy}$$
このとき$f_{k-1}(\ker\varphi_{k-1})\subset\ker\phi_{k-1}$が成立する.なぜなら,以下の可換図式より($\Im\varphi_{k}\subset\ker\varphi_{k-1}\subset F_{k-1}$に注意.)
$$\begin{xy} \xymatrix{ \ker\varphi_{k-1} \ar[d]_{f_{k-1}} \ar[r]^{\varphi_{k-1}} & F_{k-2} \ar[d]_{f_{k-2}}\\ G_{k-1} \ar[r]_{\phi_{k-1}} & G_{k-2} } \end{xy}$$
$f_{k-2}\circ\varphi_{k-1}=\phi_{k-1}\circ f_{k-1}$が成り立ち,$x\in\ker\varphi_{k-1}$とすると
$$f_{k-2}\circ\varphi_{k-1}(x)= f_{k-2}(0)=0$$
であるから$\phi_{k-1}\circ f_{k-1}(x)=0$となり$f_{k-1}(x)\in\ker\phi_{k-1}$となる.

・よって$\Im\varphi_{k}\subset\ker\varphi_{k-1}$$G_\bullet\xrightarrow{\phi_\bullet} B$の完全列から$\ker\phi_{k-1}=\Im\phi_k$を得て,$f_{k-1}(\Im\varphi_{k})\subset\Im\phi_{k}$となり,$\Im\varphi_k$が自由加群より$f_{k-1}|_{\Im\varphi_k}:\Im\varphi_k\rightarrow\Im\phi_k$$\phi_k:G_k\twoheadrightarrow\Im\phi_k$によるリフト$\tilde{f}_{k-1}:\Im\varphi_k\rightarrow G_k$が存在する.

・リフト$\tilde{f}_{k-1}$の定義域が$\Im\varphi_k$より$f_k:=\varphi_k\circ\tilde{f}_{k-1}:F_k\rightarrow G_k$とすれば,帰納的にすべて定められる.

$\underline{\text{・一意性について }}$
 何回もリフトを取っているため,このような準同型らはいくらでも存在することが分かる.それらがすべて鎖ホモトープであることを示そう.
$^\forall f_\bullet,g_\bullet:F_\bullet\rightarrow G_\bullet$を取る.また$\alpha_\bullet:=f_\bullet-g_\bullet$とし$\alpha_{-1}=f-f=0$となる.なぜなら,$f:\text{coker}\varphi_1\rightarrow B$から$f_\bullet,g_\bullet$は誘導されているからである.
・このとき,以下の可換図式が成り立つ.
$$\begin{xy} \xymatrix{ \cdots \ar[r] & F_1 \ar[r]^{\varphi_1} \ar[d]^{\alpha_1} & F_0 \ar[r]^{} \ar[d]^{\alpha_0} & \text{cokar} \varphi_1 \ar[r] \ar[d]^{\alpha_{-1}=0} & 0\\ \cdots \ar[r] & G_1 \ar[r]_{\phi_!} & G_0 \ar[r]_{\phi_0} & B \ar[r] & 0\\ } \end{xy}$$
よって可換性から$\varphi_0\circ\alpha_0 = 0$となり,$\Im\alpha_0 \subset \ker\varphi_0$を得て,$G_\bullet \rightarrow B$の完全性から$\Im\alpha_0 \subset \Im\phi_1$を得る.
$F_0$は自由分解よりリフト$h_0:F_0 \rightarrow G_1$が存在する.すなわち
$$\begin{xy} \xymatrix{ &F_0 \ar[d]^{\alpha_0} \ar@{.>}[dl]_{h_0}\\ G_1 \ar@{->>}[r]_{\phi_1} & \Im \varphi_1 } \end{xy}$$
という可換図式がある.($\Im\alpha_0 \subset \Im\phi_1$が成り立つから.)よって$h_{-1}:\text{coker}\varphi_1 \rightarrow G_0$を0‐写像とすれば,
$$\alpha_0 = \phi_1 \circ h_0 + h_{-1} \circ (F_0\rightarrow\text{coker}\varphi_1)$$
を得て,$\alpha_0$はホモトープとなる.
 同様に帰納法を用いて証明をする.
$h_{k-1}:F_{k-1} \rightarrow G_k$まで構成できたとする.以下の可換図から$F_k \rightarrow G_{k+1}$をうまく構成したい.
$$\begin{xy} \xymatrix{ \cdots \ar[r] & F_{k+1} \ar[d]_{\alpha_{k+1}} \ar[r]^{\varphi_{k+1}} & F_k \ar[d]_{\alpha_k} \ar[r]^{\varphi_k} \ar@{.>}[ld]_{?} & F_{k-1} \ar[ld]_{h_{k-1}} \ar[d]_{\alpha_{k-1}} \ar[r] & \cdots\\ \cdots \ar[r] & G_{k+1} \ar[r]_{\phi_{k+1}} & G_k \ar[r]_{\phi_k} & G_{k-1} \ar[r] & \cdots\\ } \end{xy}$$
このとき次のことが可換性より成立する.
$$\phi_k\circ h_{k-1}\circ\varphi_k = \phi_k\circ \alpha_k$$
$$\Leftrightarrow \phi_k(h_{k-1}\circ\varphi_k-\alpha_k)=0$$
よって完全性から$\Im h_{k-1}\circ\varphi_k-\alpha_k \subset \ker\phi_k = \Im \phi_{k+1}$となり,$F_k$が自由加群よりリフト$h_k:F_k\rightarrow G_{k+i}$が存在する.
$$\begin{xy} \xymatrix{ & F_k \ar@{.>}[dl]_{h_k} \ar[d]^{h_{k-1}\circ\varphi_k-\alpha_k}\\ G_{k+1} \ar@{->>}[r]_{\phi_{k+1}} & \Im \phi_{k+1} } \end{xy}$$
この可換性を書き下すと,
$$h_{k-1}\circ\varphi_k-\alpha_k = \phi_{k+1}\circ h_k$$
$$\Leftrightarrow \alpha_k = h_{k-1}\circ\varphi_k + \phi_{k+1}\circ (-h_k)$$
より改めて$-h_k$をホモトピーとして取れば,題意が示せる.

いやぁ長かった.書くのもしんどいwこれとかを一つの記事にまとめてたら大変である.

$\text{Ext}$加群

 Extension加群というらしい.準同型全体を使って定義していく.

Hom

$A,B$を加群とする.
$\text{Hom}_R(A,B)$$:=\{ A\rightarrow B\text{となる$R$準同型} \}$

 Homを考えたときにpull-backというものが考えられる.僕は多様体の余接ベクトルらへんでこれに詰まった.とにかくいろんなところに出てくるので出会ったら修得チャンスだ.
 例えば加群$A,B,C$その間に準同型があって$A\xrightarrow{f}B\xrightarrow{g}C$が成り立ってるとき,ほかの加群$M$との$\text{Hom}_R(-.M)$を見てみよう.$\varphi \in \text{Hom}_R(A,M)$, $ \phi \in \text{Hom}_R(B,M)$, $\psi \in \text{Hom}_R(C,M)$とする.このとき以下の図式が作れる.
$$\begin{xy} \xymatrix{ A \ar[r]^{f} \ar[rd]_{\varphi} & B \ar[r]^{g} \ar[d]_{\phi} & C \ar[ld]_{\psi}\\ & M &\\ } \end{xy}$$
もしこれがそれぞれで可換であれば$\varphi = \phi\circ f$$\phi = \psi\circ g$となるが,$\phi$とか$\psi$を変数にすることがあるためこれを$f^*\phi$とか$g^*\psi$とか表記して$f$とか$g$による引き戻し(pull-buck)と言ったりする.もうお気づきの方がいるかもしれないが,この$A,B,C$の代わりに複体をかましてそのホモロジーを求めれば$\text{Ext}$加群になる.
 ついでに逆になったときも触れておこう.要は$\text{Hom}_R(M,-)$を考える.図式は次だ.
$$\begin{xy} \xymatrix{ A \ar[r]^{f} & B \ar[r]^{g} & C \\ & M \ar[lu]^{\varphi} \ar[u]^{\phi} \ar[ru]^{\psi} &\\ } \end{xy}$$
としたとき,もしそれぞれで可換であれば$\phi = f \circ\varphi$$\psi = g\circ\phi$が成り立つが,これを$f_*\varphi$とか$g_*\psi$とか表記し,押し出し(push-foward)と言ったりする.使い方はド忘れしてしまったが,確か計量とかを押し出して気がする.
 閑話休題.$\text{Ext}$加群に入ろう.

$\text{Ext}$加群

$M,N$を左$R$加群とする.$F_\bullet \xrightarrow{\phi_\bullet} M$を自由分解としたとき,次の複体が考えられる.
$$0\rightarrow \text{Hom}_R(F_0,N) \xrightarrow{\phi_0^*} \text{Hom}_R(F_1,N) \xrightarrow{\phi_1^*} \text{Hom}_R(F_2,N)\rightarrow\cdots$$
このとき$\text{Ext}^k(M,N)$ $= H_k(\text{Hom}_R(F_\bullet,M))$で定義する.

 いろいろな疑問がでくるだろう.この定義は何なんだとか,いつもの複体と順番が違うぞとか,自由分解は複数取れるのにこの意義はwell-definedなのかとか.
 逆から答えていこう.まずこの定義は自由加群の取り方に依らないことが分かっている.証明は気が向いたらどっかに載せよう.一回分のゼミがかかったので相当に大変だ.一つ定理の証明省略したのに…
 このような順番が逆になってるような複体を余複体と言って,それのホモジーはコホモロジーと言う.大抵双対を取ったときの複体を考えると向きが逆になる.
 最後にこの定義は何なのか,可換図式を見てみよう.
$$\begin{xy} \xymatrix{ \cdots \ar[r] & F_{k+1} \ar[r]^{\phi_{k+1}} \ar[d]_{\varphi_{k+1}} & F_k \ar[r]^{\phi_k} \ar[d]_{\varphi_{k}} & F_{k-1} \ar[r] \ar[d]_{\varphi_{k-1}} &\cdots\\ \cdots \ar@{=}[r] & N \ar@{=}[r] & N \ar@{=}[r] & N \ar@{=}[r] & \cdots } \end{xy}$$
このとき$\varphi_{k+1}\in\text{Hom}_R(F_{k+1},N)$$\varphi_{k}\in\text{Hom}_R(F_{k},N)$$\varphi_{k-1}\in\text{Hom}_R(F_{k-1},N)$となっている.また,$\phi_{k+1}^*\varphi_k = \varphi_k\circ\phi_{k+1} \in \text{Hom}_R(F_{k+1},N)$$\phi_{k}^*\varphi_{k-1} = \varphi_{k-1}\circ\phi_{k} \in \text{Hom}_R(F_{k},N)$となっていることもわかるので,準同型として$\text{Hom}_R(F_{k},N)\ni\varphi_{k}\mapsto \phi_{k+1}^*\varphi_{k}\in\text{Hom}_R(F_{k+1},N)$を取れることが納得できるだろうか.

射影加群

特に準備するものもないのでいきなり定義から入ろう.

射影加群

$P$$R$加群とする.
$P$射影的/射影$R$加群とは$^\forall M,N,\ M\xtwoheadrightarrow{\pi} N$, 全射に対して
$$\text{Hom}_R(P,M)\xtwoheadrightarrow{\pi^*} \text{Hom}_R(P,N),\ \text{全射}$$
が成り立つときに言う.

 つまり全射であるから任意に$\psi\in\text{Hom}_R(P,N)$を取ったときに,必ずリフトが存在して$\pi$の引き戻しで書けるということだ.可換図式を書いてみよう.
$$\begin{xy} \xymatrix{ & P \ar@{.>}[dl]_{^\exists\varphi} \ar[d]^{^\forall\psi=\pi^*\varphi}\\ M \ar@{->>}[r]_{\pi} & N } \end{xy}$$
ということが言えるのだ.

自由加群と射影加群

$P$が自由$R$加群なら射影$R$加群

自由加群にリフトがあることと同じトリックを使う.
$P$が自由加群であることから基底があり,$P=\langle m_1,\cdots m_n\rangle_R$と書ける.また任意に加群$M,N$であって$M\twoheadrightarrow N$,全射とできるものを取り,任意に$\psi\in\text{Hom}_R(P,N)$を取る
・このとき全射性から$P\ni m_i \mapsto \psi(m_i)\in N$なる$\psi(m_i)$$M\ni ^\exists b\mapsto\psi(m_i)\in N$というものがある.
・よって$P\ni m_i \mapsto b$という準同型を考えればいい,

射影分解

自由分解のように任意の加群を分解する自由加群が射影加群になっているものを射影分解という
任意の左$R$加群は射影分解が存在する.

任意の加群に自由分解が存在し,自由加群は射影加群であることから従う.

準備だけでもかなりの量になってしまった.これをつかって加群の拡大を説明していく.要は$\text{Ext}$加群との関係についてだ.

参考
・福井敏純,”幾何学C"( https://www.rimath.saitama-u.ac.jp/lab.jp/Fukui/lectures/GeometryC.pdf )
・永井保成,”代数幾何学入門”

投稿日:819
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たぶん微分幾何をやってるねこです

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