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現代数学解説
文献あり

上野健爾著『代数幾何入門』正誤表

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この記事は上野健爾著『代数幾何入門』(オンデマンド版)1に対する正誤表です.一読者である私(ことり)が作成したものですので,ミスがあるかもしれません.

l.-nとは,下からn行目であることを意味します.
「(注意)」として誤りではないが注意が必要な箇所について記述しました.

正誤表

p.40, l.-4

式(1.46)は$a_0$$a_1$が逆.

p.44, l.7

$\lambda^{m-2}\mu^2\Delta_b^{(2)}F(a)$という項は$1/2$倍する必要がある.p.44, l.-10およびp.45, l.2も同様.

p.46, l.-11

誤:$(2a_0+3a_1)x_1^2$
正:$(2a_0+6a_1)x_1^2$

p.76, l.-4

誤:$\alpha b_1 + \beta b_3 = a_3$
正:$\alpha b_1 + \beta b_3 = b_2$

p.91, l.4

誤:$P^2(\mathbf{C}^2)$
正:$P^2(\mathbf{C})$

p.126, l.13

誤:$g_2^3 - 27g_3^2$
正:$g_2^3 + 27g_3^2$

p.129, l.-7

誤:$b_{ij}, 1 \leq i,j \leq n$
正:$b_{ij}, 1 \leq i \leq n, 0 \leq j \leq n$

p.149, l.1

誤:$\dfrac{(u-v)i}{1+uv}$

正:$\dfrac{u-v}{1+uv}$

p.149, l.-2

誤:$F(x_0, x_1, \ldots, x_n)$
正:$F_j(x_0, x_1, \ldots, x_n)$

p.169, l.10

誤:$i=1,2,3$
正:$i=0,1,2$

p.187, l.-2

誤:$\mathbf{A}^1 - \{(0,0)\}$
正:$\mathbf{A}^1 - \{0\}$

p.194, l.10

$n$が偶数の場合の議論は本の通りにはいかない気がします.$\tilde{h}$の定め方やp.195, l.1の局所パラメータ表示に対して疑問があります.符号とかがおかしい気がします.

例えば,$-g(u,v)=(v+3u)(v+u)(v-u)(v-3u)-u^2=v^4-10u^2v^2+9u^4-u^2$
の場合.

$h_+(z):=z^{-1}+(5/2)t+(7/8)t^3+\cdots$

$h_-(z):=h_+(iz)$

と定めると,

\begin{aligned} -g(u,v)&=(v-uh_+(u^{1/2}))(v-uh_+(-u^{1/2}))(v+uh_-(u^{1/2}))(v+uh_+(-u^{1/2}))\\ &=(v^2-(u+5u^2+8u^3+\cdots))(v^2+(u-5u^2+8u^3+\cdots)) \end{aligned}
という形に分解され,次の2つの局所パラメータ表示として表されます:

\begin{equation} \begin{cases} u=t^2\\ v=t^2h_+(t) \end{cases} \end{equation}

および
\begin{equation} \begin{cases} u=t^2\\ v=-t^2h_-(t). \end{cases} \end{equation}

後者の局所パラメータ表示で$t$$-it$に置き換えることで次の形にもなります:
\begin{equation} \begin{cases} u=t^2\\ v=t^2h_+(t) \end{cases} \end{equation}
および
\begin{equation} \begin{cases} u=-t^2\\ v=t^2h_+(t). \end{cases} \end{equation}

ここでの$h_-$の定め方は本の定め方と整合しません.

p.192

有理関数$f$に対する主因子$(f)$について.$f\equiv0$の場合は主因子$(0)$は定義されない,とするのが良いと思います.以降のいくつかの定義や命題では必要なら$f\equiv0$の場合を除外するのが良いと思います.(ゼロ微分型式に対する標準因子についても同様.)

p.197, l.4

(注意)以降の議論のために,$D=0$の場合も正因子に含めると解釈するのが良いと思います.また,あとで出てくる記法ですが,2つの因子$D_1,D_2$に対して,「$D_1\geq D_2$」とは「$D_1-D_2\geq 0$」という意味だと解釈するといいと思います.

p.199

微分型式$\omega$に対する標準因子$(\omega)$について.$\omega=0$の場合は標準因子$(0)$は定義されないとするのが良いと思います.以降のいくつかの定義や命題では必要なら$\omega=0$の場合を除外するのが良いと思います.

p.210, l.-7

誤:$t=a+(s+b)^n$
正:$t=-a+(s+b)^n$

p.223, l.13

$\Delta=$ の右辺を$\Delta=-4a_4^3-27a_6^2+3a_2^2a_4^2-4a_2^3a_6+18a_2a_4a_6$に変更する.

p.235, l.-4

誤:非特異射影直線
正:非特異射影曲線

p.238, l.-9

$j\not\equiv0\pmod{m}$であれば,...ただ$1$つ定まるので」とあるが誤り.$m$が素数とは限らないため,定理A.2を適用できない.

実際,例えば$m=6$, $j=2$, $k=1$とすると,$lj\equiv k\pmod{m}$となる$l$は存在しない.
$\sum\varepsilon^{lj}=\cdots$の式自体は合っている.本の議論の代わりに,等比数列の和の公式を用いると示せる.

p.246, l.1

解が間違っている.
正しくは,$(x,y)=(1, \pm\alpha),(1+\alpha, \pm(1+\alpha)),(1+2\alpha, \pm(1+2\alpha))$

最後の2つは$(1+2\alpha, \pm(2+\alpha))$のままでも良い.($\pm(2+\alpha)=\mp(1+2\alpha)$

p.246

(注意)$N_m(\tilde{C})=3^m+1$を導く議論は誤りではないが,無駄がある.次のようにすると短くなる:

本の2つの写像
$a\mapsto a+1$

$b\mapsto b^5$
が全単射なので,$y \in k_m$を固定すると$a_y^5+1=y^2$を満たす$a_y \in k_m$はただ1つ.

ゆえに,
$(x^5+1=y^2\text{の解の個数})=(y\text{の選択肢の個数})=3^m$
無限遠点を加えて$N_m(\tilde{C})=3^m+1$となる.

p.247,l.-9

(注意)$E\geq Q$とは,$E-Q\geq 0$という意味だと解釈するとよいと思います.

p.249, l.2

誤:$\dfrac{1}{(1-qu)^2}$

正:$\dfrac{1}{(1-u)(1-qu)}$

また,標数が3の場合も除外する必要はなく同じ結果になる.

p.248, l.-15

誤:$\Delta=2^{-8}a^{2p}b^{2p}c^{2p}$
正:$\Delta=a^{2p}b^{2p}c^{2p}$
判別式の定義は文脈によって定数倍の違いがあるかもしれないが,右辺の3次式の根を$\alpha,\beta,\gamma$としたとき$\Delta=(\alpha-\beta)^2(\beta-\gamma)^2(\gamma-\alpha)^2$と定義する場合は,問題の楕円曲線の判別式はこの値が正しい.

p.248,l.-11

$j=$ の右辺の最初の係数 $2^8$$2^{12}$ にする.

p.256, l.6

(注意)定理 4.2 のステートメントは以下のように変更するのがより正確:

種数 $g$ の閉 Riemann 面上の正則微分形式全体は,$\mathbf{C}$$g$ 次元のベクトル空間をなす.

p.262, l.12

誤:$\psi_0(P)=0$
正:$\psi_0(P)\neq 0$

p.262, l.-6~l.-4

誤:\begin{aligned} l(D)&=N\\ l(D-P)&=N-1\\ l(D-2P)&=N-2 \end{aligned}
正:
\begin{aligned} l(D)&=N+1\\ l(D-P)&=N\\ l(D-2P)&=N-1 \end{aligned}

以上です.ミスなどあれば教えてください(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)”

参考文献

[1]
上野健爾, 代数幾何入門, 岩波書店, 1995
投稿日:11日前
更新日:11日前
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