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オイラーもドモワブルも知らない高校生が 2^i を定義する話

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まずはお約束(ディスクレーマー)

未知または新しい結果を主張する記事ではありません。
定義を発見的に試みる思考の過程を記述することを記録したノートです。

面白そうな問題を見つけました


問い 問い
$2^i$計算せよ、ではなく、定義せよ、という問いです。

前提にできないことを暗に示唆しているもの

  • 複素数を指数とする指数関数および対数関数
    • これを前提にするなら$2^i$定義する必要がありません。
  • オイラーの公式$e^{i\theta}=\cos\theta + i\sin\theta$
    • これも左辺が複素数乗ですので使えません。
  • 常微分方程式論やテイラー展開、多変数関数論
    • 問いが大学入試問題風なので(笑)、大学以降で主に取り扱うような解析学の道具も前提にしません。

前提にしてよさそうなもの

  • 実数を指数とする指数関数や対数関数
  • 一変数関数の微分積分
  • 初等的な複素平面論
    • ド・モアブルの公式$(\cos\theta + i\sin\theta)^n=\cos{n\theta}+i\sin{n\theta}$は高校でも取り扱うようですが、オイラーの公式と親和性が高いのでなるべく使いたくありませんね。

試行1.指数法則を複素数に拡張する

最初に思いつくのはこのあたりかと思います。
すなわち、実数$a, b\in\mathbb{R}$と任意の複素数$z, w\in\mathbb{C}$について、

  1. $a^z\in\mathbb{C}$
  2. $a^z a^w = a^{z+w}$
  3. $(a^z)^w = a^{zw}$
  4. $(ab)^z = a^z b^z$

以上の1.から4.が成り立つような計算規則を複素数乗と定義する、という考え方です。

そんな数があるのかという疑問が当然立ちますが、これは
$x^2=-1$が成り立つような数$x$を虚数$i$と定義する
のと同じことです。
それがwell-definedであるかを検証すれば良いわけですね。

さて、このように定義した$2^i$について、定義からどこまでのことがわかるでしょうか。
言い換えれば、
$2^i=a+bi$$a, b$または、
$2^i=r(\cos\theta+i\sin\theta)$$r, \theta$をどこまで限定できるでしょうか。
どちらの形式でもいいのですが、今回は極形式で半径$r$と位相$\theta$を求めることを考えます。

半径$r$

$2^i$の複素共役$\overline{2^i}=r(\cos\theta-i\sin\theta)$を用いて、
$$2^i\overline{2^i}=|2^i|^2=r^2$$
他方、定義のために拡張した指数法則により、
$$2^i 2^{-i}=2^{i+(-i)}=2^0=1$$
ここで、以下の追加の要請を考えます。
複素数乗について、複素共役と指数は交換可能である:$\overline{2^i}=2^\overline{i}=2^{-i}$.
このとき、$r^2=1 \Rightarrow r=1$が成り立ちます。
しかし、複素共役は実数に存在しない概念のため、この追加要請は実数の累乗の自然なアナロジーを逸脱しており、自然と考えてよいかどうかは議論の余地の分かれるところです。

位相$\theta$

$x\in\mathbb{R}$に関する2つの関数$f(x)=2^x$$g(x)=2^{ix}$を考えます。
まず$g(x)=2^{ix}$を考えてよいのかという疑問が立ちますが、$2^x\in\mathbb{R}$であることから拡張した指数法則が適用できて$2^{ix}=(2^x)^i\in\mathbb{C}$であり、最初に定義した複素数乗を逸脱するものではありません。
ここで更に、以下の追加の要請を考えます。
関数$g(x)=2^{ix}$の原点$x=0$における微分係数は$f(x)=2^x$の微分係数と絶対値が一致する純虚数である:$g'(0)=if'(0)=i\log2$.
このとき、任意の実数$h\in\mathbb{R}$に対して、拡張された指数法則により $$g(x+h)=2^{i(x+h)}=2^{ix}2^{ih}=g(x)g(h)$$
が成り立つことに注意すると、

\begin{eqnarray} g'(x) &=& \lim_{h \rightarrow 0} \frac{g(x+h) - g(x)}{h} \\ &=& g(x)\lim_{h \rightarrow 0} \frac{g(h) - 1}{h} \\ &=& cg(x) ~~~ \Big( c:=\lim_{h \rightarrow 0}\frac{g(h)-1}{h} \Big) \\ \therefore g'(0) &=& c(\cos0+i\sin0) \\ &=& if'(0) \\ \therefore c &=& i\log2 \end{eqnarray}

他方、$2^{ix}$$2^i$と全く同様の議論で半径が1である($|2^{ix}|=1$)であることから、極座標表示によって

\begin{eqnarray} g'(x) &=& (\cos\theta(x)+i\sin\theta(x))' \\ &=& \theta'(x)(-\sin\theta(x)+i\cos\theta(x)) \\ &=& \theta'(x)ig(x)\\ &=& cg(x) \\ \therefore \theta'(x) &=& \log2 \Rightarrow \theta(x) = x\log2 \end{eqnarray}

以上より$\theta=\theta(1)=\log2$が導かれます。
ただし、この追加要請は多変数関数論に片足突っ込んでいるので、正直言って高校生には辛い領域になるかと思います。

続きます

!FORMULA[46][1627013007][0] $x^i \perp (x^i)' $

投稿日:3日前
更新日:2日前
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投稿者

Arithmetic Quant & Fluffy Data Scientist & Weekend Mathematician

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