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不定積分とは同値類である

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  こんにちは!徒花(あだばな)です!
今回は混乱を生みやすい不定積分の計算について扱っていこうと思います.

原始関数と不定積分について

$f(x)$ の原始関数」と「 $f(x)$ の不定積分」は厳密には別のものだとされることが多いですが,本記事では区別を行いません.また,不定積分という語を極めてラフに扱います.あらかじめご承知おきください.

導入

不定積分 $\int \sin 2x dx $ について考えます.この積分は
$$\int \sin 2x dx = -\dfrac{1}{2} \cos 2x + C \quad \text{($C$ は積分定数)}$$
という風に簡単に解くことができます.一方,例えば
\begin{align} \int \sin 2x dx &= \int 2\cos x \sin x dx \\ &= \int 2(\sin x)' \sin x dx \\ &= \int (\sin^2 x)' dx \\ &= \sin^2 x + C \quad \text{($C$ は積分定数)} \end{align}
と別の方法で解くと,一見異なった解が得られてしまいます.ですが,これらは実際には同一の解を与えているのです.実際
\begin{align} -\dfrac{1}{2} \cos 2x + C &= -\dfrac{1}{2} (2\cos^2 x - 1) + C \\ &= \dfrac{1}{2} - \cos^2 x + C \\ &= ( 1 - \cos^2 x ) + \bigg(C - \dfrac{1}{2}\bigg) \\ &= \sin^2 x + C' \quad \text{($C' = C - \dfrac{1}{2}$ と置いた)} \end{align}
という変形によって同一の解であることが確かめられます.

なんかスッキリしないな…

ここまでの説明は正しいものです.しかし,私的には一つ気に食わない点があります.前述の議論から
\begin{align} \int \sin 2x dx &= -\dfrac{1}{2} \cos 2x + C \tag{1} \\ \int \sin 2x dx &= \sin^2 x + C \tag{2} \end{align}
というふたつの等式を得たわけですが,この二式を安直に
$$ -\dfrac{1}{2} \cos 2x + C = \sin^2 x + C \tag{3}$$
と結んではいけない,という点です.わざわざ積分変数に別の文字 $C,C'$ を用意しなくてはならないというのが非本質的で面倒だからです.
ここで,次のように考えてみましょう.不定積分 $\int \sin 2x dx$ は「微分すると $\sin 2x$ になる関数」を表しているのではなく「微分すると $\sin 2x$ になる関数全体の集合」を表しているのだと.
すなわち,式(3)のような等号はこの考え方の基づくと
$$\left\{ -\dfrac{1}{2} \cos 2x + C \ \middle| \ C \text{は実数} \right\} = \left\{ \sin^2 x + C \mid C \text{は実数}\right\} \tag{4}$$
のように「集合としての等式」として書くことができます.これなら,数学的に全く問題のない表現となります.

同値関係

 前章のアイデアを同値関係という概念を用いてもう少し数学的に述べましょう.

同値関係

$X$ を集合,$\sim$$X$ 上の二項関係とする.任意の $a,b,c \in X$ に対して $\sim$ が以下の三つの条件を満たすとき,$\sim$$X$ 上の同値関係と呼ぶ.

  1. 反射律 $a \sim a$
  2. 対称律 $a \sim b \Rightarrow b \sim a$
  3. 推移律 $a \sim b \ , \ b \sim c \Rightarrow a \sim c$

「二項関係」というのは,$<$$\equiv$ のような「ある二つのものがどのような関係にあるかを述べるために用いる記号」だと思ってください.
(数学的に厳密な定義は別に存在しますが,ここでは扱いません)
「同値関係」はその中でも特に「ある二つのものが同種のものであると述べるための記号」です.前述の例でいうと $\equiv$ は同値関係ですが $<$ は同値関係ではありません.

同値類,代表元,商集合

$X$ を集合,$\sim$$X$ 上の同値関係とする.
このとき,$X$ の元 $a$に対して $[a]$
$$[a] = \{ x \in X \mid x \sim a \}$$
と定義する.これを $a$同値類と呼び,$a$$[a]$代表元と呼ぶ.また,$X/\sim$
$$X/\sim \ = \{ [x] \mid x \in X \}$$
と定義し,これを $X$$\sim$ による商集合と呼ぶ.

同値類,商集合のイメージ図(ChatGPTにより作成) 同値類,商集合のイメージ図(ChatGPTにより作成)

これを踏まえて不定積分の話に戻りましょう.

不定積分とは同値類である

一回微分可能かつ導関数が連続な実関数全体の集合を $C^1(\mathbb{R})$ と書くことにし,$C^1(\mathbb{R})$ 上に次のような同値関係 $\sim$ を与えます.
$$f(x) \sim g(x) \xLeftrightarrow[]{\mathrm{dif}} {(f(x))}' = {(g(x))}' \quad (f(x),g(x) \in C^1(\mathbb{R}))$$
(これが同値関係となることを実際に確かめてみてください)

不定積分 $\int f(x) dx$ を「 $f(x)$ の原始関数全体の集合」だとする考えは,この同値関係 $\sim$ によって次のように言い表せます.
『不定積分 $\int f(x) dx$ とは $\sim$ による $C^1(\mathbb{R})$ 上の同値類である.』

この記事の一番最初の例に戻ると
\begin{align} \int \sin 2x dx &= -\dfrac{1}{2} \cos 2x + C \tag{1} \\ \int \sin 2x dx &= \sin^2 x + C \tag{2} \end{align}
という数式は
\begin{align} \int \sin 2x dx &= \left[-\dfrac{1}{2} \cos 2x\right] \tag{1'} \\ \int \sin 2x dx &= \left[\sin^2 x \right] \tag{2'} \end{align}
という意味だったのだと解釈できます.この二つの同値類は
\begin{align} \left[ -\dfrac{1}{2} \cos 2x \right] &=\left\{ -\dfrac{1}{2} \cos 2x + C \middle| C \text{は実数} \right\} \\ \left[ \sin^2 x \right] &= \left\{ \sin^2 x + C \mid C \text{は実数}\right\} \end{align}
と具体的に書き表せます.これが集合として等しいことは先ほどの計算で確かめていますので
$$ \left[ -\dfrac{1}{2} \cos 2x \right] = \left[ \sin^2 x \right] \tag{4'}$$
という式はなんら矛盾していません.
このように,不定積分を同値類として扱うことで,積分定数の扱いという非本質的な部分に頭を悩ませなくてよくなります.

解決…?

これで不定積分の計算をうまく説明できたように見えますが,実はまだ問題が残されています.
不定積分は
$$\int af(x) + bg(x) dx = a\int f(x) dx + b\int g(x) dx$$
といった計算ができなくてはなりませんから,同値類に演算規則が定義されている必要があります.その中でも特に「実数×不定積分」を次のように定義しましょう.

実数×不定積分

不定積分 $\int f(x) dx = \{ F(x) \in C^1(\mathbb{R}) \mid F'(x) = f(x) \}$ に対し,$a\int f(x) dx \text{($a \in \mathbb{R}$)}$ を次のように定義する.
\begin{align} a\int f(x) dx = \left\{ aF(x) \middle| F(x) \in \int f(x) dx \right\} \end{align}

この定義はとても自然であり,基本的な式変形
$$a\int f(x) dx = \int a f(x) dx \quad (a \neq 0) \tag{5}$$
が成立します.しかし,
$$\int 0dx = 0\int dx \tag{6}$$
という等号は成立しません.なぜなら,左辺は定数関数全体の集合 $\{ C \mid C \in \mathbb{R} \}$ ですが,右辺は定義3に従うと $\{ 0 \}$ となり一致しないからです.
この事実の受け止め方は二通りあります.
一つ目は,式(6)は成立しないのだと受け入れてしまうというものです.この程度の不整合を加味しても,不定積分を同値類として扱うという考えは優れている,と思えばこの立場を採用しましょう.
二つ目は,不定積分を同値類ではなく同値類の代表元だと定義するというものです.この定義に基づけば,普段 $\int f(x) dx = F(x) + C$ と書いている式は
$$\int f(x) dx \sim F(x) + C$$
と表され,式(6)は
$$ \int 0 dx \sim 0 \int dx \tag{6'}$$
となって成立します.不定積分における等号は実は $\sim$ だと考えるのです.おそらく,社会一般ではこちらの考え方が暗に採用されているのだと思います.

終わりに

 この記事を書くきっかけとなったのは次のツイートです.
https://x.com/izayoi96500/status/2050321643067887668
最後に述べたように,本来は「不定積分とは同値類の代表元である」と題した記事を書いたほうがよいのだと思いますが,キャッチーになるように「不定積分とは同値類である」というタイトルで書かせていただきました.お許しください(^_^).
 最後まで読んでいただきありがとうございました!

投稿日:13日前
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徒花
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