0. はじめに
高校数学でお馴染みの二項係数 は,授業等では何となく順列と比較されて(順列から順序をなくした場合の数であるとかなんとか)説明され,また確かに何度計算しても自然数の値しか出てこないことから,二項係数が自然数であることをほとんどの人は自然に受け入れていると思います。(だいたい『組合せ』という名前のせい。意図的。)
さらに悪いことに,二項係数そのものが自然数(正の整数)であることの厳密な証明は,一般的な教科書や参考書ではなかなかお目にかかれないという現実があります。(でもネット上にはそれなりに情報が落ちてるかもしれません。証明が正確かは不明ですが。。。)
ということで今回は,『高校方式の二項係数は自然数である』ということを,高校数学の範囲内で厳密に証明していこうと思います。
1. 二項係数の定義
まず,自然数であることを仮定しないタイプの二項係数の定義からです。
二項係数(自然数であることは仮定していない)
を自然数とする。このとき, 以上 以下のすべての整数 に対して,有理数 を,
と定め,これを 二項係数 と呼ぶ。(ここで, である。)
特に, と定める。
2. 二項係数の性質
上記の定義を用いて,二項係数の基本的な性質を証明していきます。
を 以上の整数とする。このとき, 以下のすべての自然数 に対して,
が成り立つ。
を 以上の整数とする。このとき, 以上のすべての整数 に対して,
が成り立つ。
数学的帰納法により示す。
- まず,
となるので, は のとき成立する。
- 次に, 以上のある整数 について, が のとき成立すると仮定する。このとき,
であるので,公式 1 より,
ゆえに, は のときもまた成立する。
よって,以上のことから, 以上のすべての整数 に対して が成り立つ。
3. 連続自然数の積の性質
続いて,連続する自然数の積の性質を証明していきます。
すべての自然数 と, 以上のすべての整数 に対して,
が成り立つ。
公式 2 を用いると,すべての自然数 と, 以上のすべての整数 に対して,
数学的帰納法により示す。
- 公式 3 を用いると,すべての自然数 に対して,
となるので,
ゆえに,すべての自然数 に対して が自然数であることに注意すると,命題 は の場合に成立する。
- 次に, 以上のある整数 について,命題 が のとき成立すると仮定する。このとき,すべての自然数 に対して,
と表される。ゆえに,すべての自然数 に対して,公式 3 および (1) を用いると,
となるので,
よって,すべての自然数 に対して が自然数であることに注意すると,命題 は の場合もまた成立する。
したがって,以上のことから, 以上のすべての整数 に対して命題 が成り立つ。
4. 結論
自然数 が与えられたとする。
- となるので, は自然数である。
- 以下のすべての自然数 に対して,定理 1 より,
と表されるので,
ゆえに, 以下のすべての自然数 に対して は自然数である。
よって,以上のことから, 以上 以下のすべての整数 に対して は自然数である。
5. おわりに
二項係数 が自然数であることの証明が書かれた文献が,どうやらある(らしい)という情報までは掴んだものの,探しても発見できませんでした。残念です。。。