$n$次対称群$\mathfrak{S}_n$の元$\sigma$を $[n]:=\{1,2,\dots,n\}$の順列$\sigma(1)\sigma(2)\cdots\sigma(n)$と同一視する.
順列$a_1\cdots a_n$が交代順列であるとは, $1\leq i\leq n-1$が奇数のとき$a_i< a_{i+1}$を満たし, 偶数のとき, $a_i>a_{i+1}$を満たすもののことをいう. また, $1\leq i\leq n-1$が奇数のとき$a_i>a_{i+1}$を満たし, 偶数のとき$a_i< a_{i+1}$を満たすものを反転交代順列という.$[n]$の交代順列の個数を$E_n$と表し, Euler数という.
$[n]$の交代順列全体と反転交代順列全体は$a_i\mapsto n+1-a_i$によって一対一に対応する. よって, Euler数は$[n]$の反転交代順列の個数でもある.
以下は, Euler数の母関数を与えている.
\begin{align}
\sum_{0\leq n}\frac{E_n}{n!}x^n&=\sec x+\tan x
\end{align}
が成り立つ.
$2\leq n$とする. $[n]$の位数$k$の部分集合$S$の選び方は$\binom nk$通りである. $\overline S:=[n]-S$とする. $S$の元からなる交代順列$u_1\cdots u_k$と$\overline S$の元からなる交代順列$v_1\cdots v_{n-k}$に対して, $u_k\cdots u_1(n+1)v_1\cdots v_{n-k}$は$[n+1]$交代順列または反転交代順列である. また, $[n+1]$の反転交代順列が与えられたとき, 上の操作の逆によって, 部分集合$S$と$S$の元からなる交代順列と$\overline{S}$の元からなる交代順列の組が定まる. この全単射によって,
\begin{align}
2E_{n+1}&=\sum_{k=0}^n\binom nkE_kE_{n-k},\qquad(2\leq n)
\end{align}
を得る. よって, $E_0=E_1=1$より
\begin{align}
y=\sum_{0\leq n}\frac{E_n}{n!}x^n
\end{align}
とすれば, $y$は微分方程式
\begin{align}
2y'&=y^2+1,\qquad y(0)=1
\end{align}
を満たす. この微分方程式は一意的な解
\begin{align}
y=\sec x+\tan x
\end{align}
を持つ. よって, 定理が示された.
母関数を偶奇に分けると,
\begin{align}
\sum_{0\leq n}\frac{E_{2n}}{(2n)!}x^{2n}&=\sec x\\
\sum_{0\leq n}\frac{E_{2n+1}}{(2n+1)!}x^{2n+1}&=\tan x
\end{align}
が得られる. $E_{2n}$をセカント数, $E_{2n+1}$をタンジェント数という.
Euler数は以下のような無限級数による表示も持つ.
\begin{align} E_n&=\frac{n!}{\pi^{n+1}}\sum_{k\in\ZZ}\frac{(-1)^{k(n+1)}}{\left(k+\frac 12\right)^{n+1}} \end{align}
三角関数の部分分数展開より,
\begin{align}
\sum_{0\leq n}\frac{E_{2n}}{(2n)!}x^{2n}&=\sec x=\sum_{n\in\ZZ}\frac{(-1)^n\left(n+\frac 12\right)}{\left(n+\frac 12\right)^2-\frac{x^2}{\pi^2}}\\
\sum_{0\leq n}\frac{E_{2n+1}}{(2n+1)!}x^{2n+1}&=\tan x=\frac 1{\pi}\sum_{n\in\ZZ}\frac{x}{\left(n+\frac 12\right)^2-\frac{x^2}{\pi^2}}
\end{align}
であるから, 両辺の係数を比較して定理を得る.
このように, 交代順列の個数であるEuler数が無限級数の値としても綺麗に現れるというのはかなり興味深いと思う.