2
現代数学解説
文献あり

交代順列とEuler数

93
0

n次対称群Snの元σ[n]:={1,2,,n}の順列σ(1)σ(2)σ(n)と同一視する.

順列a1anが交代順列であるとは, 1in1が奇数のときai<ai+1を満たし, 偶数のとき, ai>ai+1を満たすもののことをいう. また, 1in1が奇数のときai>ai+1を満たし, 偶数のときai<ai+1を満たすものを反転交代順列という.[n]の交代順列の個数をEnと表し, Euler数という.

[n]の交代順列全体と反転交代順列全体はain+1aiによって一対一に対応する. よって, Euler数は[n]の反転交代順列の個数でもある.

以下は, Euler数の母関数を与えている.

0nEnn!xn=secx+tanx
が成り立つ.

2nとする. [n]の位数kの部分集合Sの選び方は(nk)通りである. S:=[n]Sとする. Sの元からなる交代順列u1ukSの元からなる交代順列v1vnkに対して, uku1(n+1)v1vnk[n+1]交代順列または反転交代順列である. また, [n+1]の反転交代順列が与えられたとき, 上の操作の逆によって, 部分集合SSの元からなる交代順列とSの元からなる交代順列の組が定まる. この全単射によって,
2En+1=k=0n(nk)EkEnk,(2n)
を得る. よって, E0=E1=1より
y=0nEnn!xn
とすれば, yは微分方程式
2y=y2+1,y(0)=1
を満たす. この微分方程式は一意的な解
y=secx+tanx
を持つ. よって, 定理が示された.

母関数を偶奇に分けると,
0nE2n(2n)!x2n=secx0nE2n+1(2n+1)!x2n+1=tanx
が得られる. E2nをセカント数, E2n+1をタンジェント数という.

Euler数は以下のような無限級数による表示も持つ.

En=n!πn+1kZ(1)k(n+1)(k+12)n+1

三角関数の部分分数展開より,
0nE2n(2n)!x2n=secx=nZ(1)n(n+12)(n+12)2x2π20nE2n+1(2n+1)!x2n+1=tanx=1πnZx(n+12)2x2π2
であるから, 両辺の係数を比較して定理を得る.

このように, 交代順列の個数であるEuler数が無限級数の値としても綺麗に現れるというのはかなり興味深いと思う.

参考文献

[1]
Richard P. Stanley, A Survey of Alternating Permutations, Comtemp. Math., 2010, 165-196
投稿日:29日前
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。
バッチを贈って投稿者を応援しよう

バッチを贈ると投稿者に現金やAmazonのギフトカードが還元されます。

投稿者

Wataru
Wataru
639
44847
超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中