ごきげんよう。
いきなりですが、次の数を見てみましょう。
$$
2^6-1=63=3^2\cdot 7
$$
この数には、素数 $3$ が 2個 含まれています。
では、指数を一気に大きくして、
$$
2^{600}-1
$$
には $3$ が何個含まれているでしょうか。
もちろん、$2^{600}-1$ を実際に計算してから素因数分解する必要はありません。巨大な整数そのものを知らなくても、そこに特定の素数が何個含まれているかだけを調べる方法があります。
この記事の最終目標は、その方法の一つである LTE(Lifting The Exponent)の補題 を、公式の暗記ではなく証明から理解することです。
「$p$ で割れるか」から「$p$ で何回割れるか」へ。
その見方を身につけると、巨大なべきの整除性が驚くほど小さな計算で分かるようになります。
この記事では、LTE をいきなり提示しません。次の順に道具を一つずつ作り、最後にそれらをつなげます。
整数 $a,b$ について、
$$
a=bc
$$
となる整数 $c$ が存在するとき、$b$ を $a$ の約数、$a$ を $b$ の倍数といいます。
これは「$a$ は $b$ で割り切れる」と同じ意味です。
例えば、
$$
72=8\cdot 9
$$
なので、$8$ は $72$ の約数であり、$72$ は $8$ の倍数です。
$72$ を $2$ のべきで割ってみると、
$$
72=2^3\cdot 3^2
$$
ですから、$2,2^2,2^3$ では割れますが、$2^4$ では割れません。
そこで、
$72$ の中には $2$ が3個含まれている
と考えることができます。
同様に、$72$ の中には $3$ が2個含まれています。LTE で数えるのは、まさにこの「素数の個数」です。
$2$ 以上の整数で、正の約数が $1$ とその数自身しかないものを素数といいます。
$2$ 以上の整数で、素数でないものを合成数といいます。
例えば、$2,3,5,7,11$ は素数です。一方、
$$
12=3\cdot 4
$$
のように $1$ と $12$ 以外の正の約数をもつので、$12$ は合成数です。
なお、$1$ は素数でも合成数でもありません。
正の整数を素数の積で表すことを、素因数分解といいます。
例えば、
$$
360=2^3\cdot 3^2\cdot 5
$$
です。この式を見るだけで、$360$ には、$2$ が3個、$3$ が2個、$5$ が1個含まれ、それ以外の素数は含まれていないことが分かります。
$2$ 以上の正の整数は、素数の積として表すことができ、その表し方は素数を並べる順序を除いて一通りです。
これは算術の基本定理とも呼ばれます。この記事では証明までは扱いませんが、この一意性があるからこそ、「ある素数が何個含まれているか」が曖昧なく決まります。
$p$ を素数とします。$p$ が積 $ab$ の約数なら、$p$ は $a$ の約数であるか、$b$ の約数であるかの少なくとも一方です。
素因数分解で考えると自然です。積 $ab$ の中に素数 $p$ が現れるなら、その $p$ は $a$ の素因数分解か $b$ の素因数分解のどちらかから来るしかありません。
これは $p$ が素数だから成り立つ性質です。合成数では成り立ちません。
例えば、
$$
6\text{ は }2\cdot 3\text{ の約数}
$$
ですが、$6$ は $2$ の約数でも $3$ の約数でもありません。
この「素数が積を割るなら、どちらか一方を割る」という性質は、LTE の条件確認でも証明でも何度も使います。
合同式の言葉では、素数を法とする零積性と呼ばれることもあります。
ここから、毎回「$p$ が何個含まれる」と文章で書く代わりに、一つの記号を使います。
$p$ を素数、$N$ を $0$ でない整数とします。
$p^k$ では $N$ を割り切れるが、$p^{k+1}$ では割り切れないとき、
$$
v_p(N)=k
$$
と定めます。この $v_p(N)$ を、$N$ の $p$-進付値といいます。
初めのうちは、
$$
v_p(N)=\text{「$N$ の中に含まれる素数 $p$ の個数」}
$$
と読めば十分です。
負の整数については、符号を無視して
$$
v_p(-N)=v_p(N)
$$
と考えます。
$0$ は $p,p^2,p^3,\ldots$ のすべてで割り切れてしまい、「最大の回数」がありません。
発展的には $v_p(0)=\infty$ と定めることもありますが、この記事では $v_p(0)$ を使いません。そのため、主定理では式の値が $0$ にならない条件を置きます。特に $p=2$ 型では、$a,b$ を相異なる正の奇数とします。
$$
360=2^3\cdot 3^2\cdot 5
$$
より、
$$
v_2(360)=3,\qquad
v_3(360)=2,\qquad
v_5(360)=1,\qquad
v_7(360)=0
$$
です。
また、どの素数 $p$ に対しても
$$
v_p(1)=0
$$
です。$1$ は $p$ では割れないからです。
次の値を求めてみましょう。
$$
\begin{array}{ll}
\text{(1)}&v_2(96)\\[3pt]
\text{(2)}&v_3(2025)\\[3pt]
\text{(3)}&v_7(686)
\end{array}
$$
$96=2^5\cdot3$ より (1) は $5$。$2025=3^4\cdot5^2$ より (2) は $4$。$686=2\cdot7^3$ より (3) は $3$ です。
$a,b$ を $0$ でない整数とすると、
$$
\boxed{v_p(ab)=v_p(a)+v_p(b)}
$$
が成り立ちます。
$$
a=p^rA,\qquad b=p^sB
$$
とします。ただし、$A,B$ は $p$ で割れない整数です。このとき、
$$
ab=p^{r+s}AB
$$
です。
$A$ も $B$ も $p$ で割れないので、素数の積に対する性質から $AB$ も $p$ で割れません。したがって、$ab$ に含まれる $p$ の個数は $r+s$ 個です。
よって、
$$
v_p(ab)=r+s=v_p(a)+v_p(b)
$$
となります。
$a^n$ は $a$ を $n$ 個掛けたものなので、積の性質を繰り返すと、
$$
\boxed{v_p(a^n)=n\,v_p(a)}
$$
を得ます。
例えば、$12=2^2\cdot 3$ なので、
$$
v_2(12^{100})=100\,v_2(12)=200
$$
です。
$a,b$ を $0$ でない整数とします。$b$ が $a$ の約数で、$a/b$ が整数であるとします。
$$
a=b\cdot\frac ab
$$
に積の性質を使うと、
$$
v_p(a)=v_p(b)+v_p\left(\frac ab\right)
$$
です。したがって、
$$
\boxed{
v_p\left(\frac ab\right)=v_p(a)-v_p(b)
}
$$
となります。
$$
v_p(N)=k
$$
であることは、
$$
N=p^kR
$$
と書けて、しかも $R$ が $p$ で割れないことと同じです。
特に、
$$
\boxed{
N=p^{v_p(N)}R
\qquad
\text{($R$ は $p$ で割れない)}
}
$$
と書けます。
「含まれる $p$ を全部外へ出し、残りは $p$ で割れないようにする」という分解です。LTE の証明では、指数 $n$ に対してこの分解を行います。
積ほど単純ではありませんが、和にも非常に重要な性質があります。
$\min\{x,y\}$ は、$x,y$ のうち小さい方の値を表す記号です。例えば、
$$
\min\{2,5\}=2,
\qquad
\min\{7,3\}=3
$$
です。
この $\min$ は高校数学の教科書で一般的に扱われる記号ではないため、ここで意味を定めました。
したがって、
$$
\min\{v_p(A),v_p(B)\}
$$
は「$v_p(A)$ と $v_p(B)$ のうち小さい方」を表します。
$A,B$ を $0$ でない整数とし、
$$
v_p(A)\neq v_p(B)
$$
とします。このとき、
$$
\boxed{
v_p(A+B)=\min\{v_p(A),v_p(B)\}
}
$$
が成り立ちます。
例えば、
$$
v_p(A)=r< s=v_p(B)
$$
とします。$p$ で割れない整数 $C,D$ を用いて、
$$
A=p^rC,\qquad B=p^sD
$$
と書くと、
$$
A+B=p^r\left(C+p^{s-r}D\right)
$$
です。
$s-r\geqq1$ なので、$p^{s-r}D$ は $p$ の倍数です。一方、$C$ は $p$ で割れません。したがって、括弧内は $p$ で割れません。
よって、
$$
v_p(A+B)=r
$$
です。
例えば、$v_3(1)=v_3(2)=0$ ですが、
$$
v_3(1+2)=v_3(3)=1
$$
です。同じ付値をもつ項どうしでは、足したときに新しい $p$ が現れることがあります。
第9部では「ただ一つの項だけ付値が最小」であることを示し、その一項が和全体の付値を決めると考えます。
合同式を初めて学ぶ方のために、LTE に必要な部分だけを確認します。
整数 $a,b$ と正の整数 $m$ について、$a-b$ が $m$ の倍数であるとき、
$$
a\equiv b\pmod m
$$
と書きます。
これは「$a$ と $b$ を $m$ で割った余りが同じ」という意味です。
例えば、$17-2=15$ は $5$ の倍数なので、
$$
17\equiv2\pmod5
$$
です。
$$
a\equiv b\pmod m,\qquad c\equiv d\pmod m
$$
なら、
$$
\begin{aligned}
a+c&\equiv b+d\pmod m,\\
a-c&\equiv b-d\pmod m,\\
ac&\equiv bd\pmod m
\end{aligned}
$$
が成り立ちます。
特に、同じ合同式を何度も掛けることで、
$$
a\equiv b\pmod p
\quad\Longrightarrow\quad
a^n\equiv b^n\pmod p
$$
です。
$p$ が $a$ の約数でないことは、
$$
a\not\equiv0\pmod p
$$
と表せます。
この記事では、
$$
a\equiv b\pmod p
$$
から各項を $b$ に置き換えたり、「ある整数が $p$ の倍数ではない」ことを確かめたりするために合同式を使います。
通常の等式のように、合同式の両辺をいつでも同じ数で割れるわけではありません。
例えば、
$$
2\equiv4\pmod2
$$
は正しいですが、両辺を $2$ で割って得られそうな
$$
1\equiv2\pmod2
$$
は誤りです。
ただし、法が素数 $p$ で、割ろうとする数 $c$ が $p$ で割れないなら、
$$
ac\equiv bc\pmod p
\quad\Longrightarrow\quad
a\equiv b\pmod p
$$
と約して構いません。
実際、左の合同式は $c(a-b)$ が $p$ の倍数であることを意味します。$p$ は素数で、$c$ は $p$ で割れないので、$a-b$ が $p$ の倍数でなければなりません。
正整数 $n$ について、
$$
\boxed{
a^n-b^n
=(a-b)\left(
a^{n-1}+a^{n-2}b+\cdots+ab^{n-2}+b^{n-1}
\right)
}
$$
が成り立ちます。
右辺を展開すると、途中の項が打ち消し合い、$a^n-b^n$ だけが残ります。
この公式から、$a-b$ は必ず $a^n-b^n$ の約数です。したがって、素数 $p$ が $a-b$ の約数なら、$p$ は $a^n-b^n$ の約数でもあります。
しかし、LTE が知りたいのは、単に
$p$ で割れるか
ではありません。
何回 $p$ で割れるのか
を知りたいのです。
そこで、
$$ a^n-b^n=(a-b)S $$
としたとき、もう一方の因子 $S$ から新しい $p$ が何個現れるかを調べます。
$p$ を素数、$a,b$ を相異なる $0$ でない整数、$n$ を正整数とします。
さらに、$p$ は $a-b$ の約数であり、$p$ は $ab$ の約数でなく、$p$ は $n$ の約数でもないとします。このとき、
$$
\boxed{
v_p(a^n-b^n)=v_p(a-b)
}
$$
が成り立ちます。
ここでは $p$ が奇素数である必要はなく、$p=2$ でも成り立ちます。
べきの差を因数分解して、
$$
a^n-b^n=(a-b)S
$$
とおきます。ただし、
$$
S=a^{n-1}+a^{n-2}b+\cdots+ab^{n-2}+b^{n-1}
$$
です。
$p$ が $a-b$ の約数なので、
$$
a\equiv b\pmod p
$$
です。したがって、$S$ の各項はすべて $b^{n-1}$ と合同になります。
$S$ には全部で $n$ 個の項があるので、
$$
S\equiv nb^{n-1}\pmod p
$$
です。
また、$p$ が $ab$ の約数でないので、$p$ は $b$ の約数ではありません。さらに、仮定より $p$ は $n$ の約数でもありません。
よって、素数の積に対する性質から、$nb^{n-1}$ は $p$ の倍数ではありません。したがって、
$$
S\not\equiv0\pmod p
$$
です。つまり、$S$ からは新しい $p$ が一つも増えません。
積の付値の性質から、
$$
\begin{aligned}
v_p(a^n-b^n)
&=v_p(a-b)+v_p(S)\\
&=v_p(a-b)
\end{aligned}
$$
となります。
指数 $n$ の中に素数 $p$ が含まれていなければ、$a-b$ から $a^n-b^n$ へ進んでも、含まれる $p$ の個数は増えません。
では、指数の中に $p$ が一つ含まれていたらどうなるのでしょうか。これが次の核心です。
$n$ を正整数、$0\leqq k\leqq n$ とするとき、二項係数を
$$
{}_nC_k=\frac{n!}{k!(n-k)!}
$$
と書きます。ここで、
$$
n!=n(n-1)\cdots2\cdot1
$$
であり、$0!=1$ と定めます。
${}_nC_k$ は「$n$ 個のものから $k$ 個を選ぶ方法の数」なので、上の分数は必ず整数になります。
$$ \boxed{ (x+y)^n =x^n+{}_nC_1x^{n-1}y+{}_nC_2x^{n-2}y^2 +\cdots+y^n } $$
$p$ を素数とし、
$$
1\leqq k\leqq p-1
$$
とします。このとき、${}_pC_k$ は $p$ の倍数です。
$$
{}_pC_k
=\frac{p(p-1)(p-2)\cdots(p-k+1)}{k!}
$$
なので、
$$
k!\,{}_pC_k
=p(p-1)(p-2)\cdots(p-k+1)
$$
です。右辺は明らかに $p$ の倍数です。
一方、$1\leqq k\leqq p-1$ なので、$1,2,\ldots,k$ のどれも $p$ の倍数ではありません。したがって、$k!$ も $p$ の倍数ではありません。
$k!\,{}_pC_k$ が $p$ の倍数で、$k!$ は $p$ の倍数ではないので、素数の積に対する性質から、${}_pC_k$ が $p$ の倍数でなければなりません。
$$
{}_5C_1=5,\qquad
{}_5C_2=10,\qquad
{}_5C_3=10,\qquad
{}_5C_4=5
$$
であり、途中の二項係数はすべて $5$ の倍数です。
一方、上の数が合成数の $4$ なら、${}_4C_2=6$ は $4$ の倍数ではありません。ここでも「素数であること」が本質です。
$p$ を奇素数、$x,y$ を相異なる $0$ でない整数とします。
さらに、$p$ は $x-y$ の約数であり、$p$ は $xy$ の約数でないとします。このとき、
$$
\boxed{
v_p(x^p-y^p)=v_p(x-y)+1
}
$$
が成り立ちます。
ここが LTE の証明で最も重要な部分です。一項ずつ、含まれる $p$ の個数を数えます。
$$
x=y+(x-y)
$$
と書くと、
$$
\begin{aligned}
x^p-y^p
&=\{y+(x-y)\}^p-y^p\\
&=py^{p-1}(x-y)
+{}_pC_2y^{p-2}(x-y)^2\\
&\quad+{}_pC_3y^{p-3}(x-y)^3
+\cdots+(x-y)^p
\end{aligned}
$$
です。
ここで、
$$
t=v_p(x-y)
$$
とおきます。$p$ が $x-y$ の約数なので、$t\geqq1$ です。
第一項は
$$
py^{p-1}(x-y)
$$
です。
$p$ は $xy$ の約数でないので、$y$ は $p$ で割れません。したがって、
$$
\begin{aligned}
v_p\left(py^{p-1}(x-y)\right)
&=v_p(p)+(p-1)v_p(y)+v_p(x-y)\\
&=1+0+t\\
&=t+1
\end{aligned}
$$
です。
$2\leqq k\leqq p-1$ に対する項
$$
{}_pC_k y^{p-k}(x-y)^k
$$
を考えます。
第8部より ${}_pC_k$ は $p$ の倍数なので、そこから少なくとも1個の $p$ が現れます。また、$(x-y)^k$ からは $kt$ 個の $p$ が現れます。
よって、この項の付値は
$$
1+kt\geqq1+2t\geqq t+2
$$
以上です。第一項の $t+1$ より必ず大きくなります。
最後の項 $(x-y)^p$ の付値は
$$
pt
$$
です。
$p$ は奇素数なので $p\geqq3$、また $t\geqq1$ です。したがって、
$$
pt\geqq3t\geqq t+2
$$
です。これも第一項の $t+1$ より大きくなります。
以上より、第一項だけが $p^{t+1}$ で割れ、ほかのすべての項は $p^{t+2}$ で割れます。
$p$ で割れない整数 $U$ と、ある整数 $M$ を用いて、全体を
$$
x^p-y^p=p^{t+1}(U+pM)
$$
と書けます。
$U$ は $p$ で割れず、$pM$ は $p$ の倍数なので、$U+pM$ は $p$ で割れません。
したがって、
$$
v_p(x^p-y^p)=t+1=v_p(x-y)+1
$$
です。
$p=2$ かつ $t=1$ なら、最後の項の付値は $pt=2$、第一項の付値も $t+1=2$ です。
つまり、付値が最小の項が一つに決まらず、二つの項の間でさらに2の因子が生まれる可能性があります。これが、$p=2$ だけ別の公式になる理由の一つです。
準備がすべて整いました。ここで初めて完成形を示します。
$p$ を奇素数、$a,b$ を相異なる正整数、$n$ を正整数とします。
さらに、$p$ は $a-b$ の約数であり、$p$ は $ab$ の約数でないとします。このとき、
$$
\boxed{
v_p(a^n-b^n)=v_p(a-b)+v_p(n)
}
$$
が成り立ちます。
$$
k=v_p(n)
$$
とおきます。第4部の分解により、$p$ で割れない正整数 $r$ を用いて、
$$
n=p^kr
$$
と書けます。
ここで、第7部の補題を指数 $r$ に使うと、
$$
v_p(a^r-b^r)=v_p(a-b)
$$
です。指数 $r$ には $p$ が含まれていないので、この段階では付値が増えません。
$$
A_j=a^{rp^j},\qquad B_j=b^{rp^j}
$$
とおきます。すると、
$$
A_{j+1}=A_j^p,\qquad B_{j+1}=B_j^p
$$
です。
第9部の補題により、指数を $p$ 倍するたびに、
$$
v_p(A_{j+1}-B_{j+1})
=v_p(A_j-B_j)+1
$$
となります。
これを $j=0,1,\ldots,k-1$ について繰り返すと、全部で $k$ 増えるので、
$$
v_p(a^{rp^k}-b^{rp^k})
=v_p(a^r-b^r)+k
$$
です。
この「$k$ 回繰り返せば $k$ 増える」という部分は、厳密には $k$ に関する数学的帰納法で表せます。
$rp^k=n$、$k=v_p(n)$ なので、
$$
\begin{aligned}
v_p(a^n-b^n)
&=v_p(a^r-b^r)+k\\
&=v_p(a-b)+v_p(n)
\end{aligned}
$$
となります。
これが LTE、すなわち Lifting The Exponent の補題です。
指数 $n$ に含まれる $p$ の個数が、$a^n-b^n$ の付値へそのまま持ち上がる。
そのため、
$$ v_p(a^n-b^n)=v_p(a-b)+v_p(n) $$
という形になるのです。
証明を理解したところで、実際に使ってみましょう。
次の順に条件を確認します。
まず、$p=3$ は奇素数です。
次に、底の差は $4-1=3$ なので、$p$ は底の差の約数です。
さらに、$3$ は底の積 $4\cdot1$ の約数ではありません。
よって LTE が使えます。
$$
\begin{aligned}
v_3(4^{100}-1)
&=v_3(4-1)+v_3(100)\\
&=1+0\\
&=1
\end{aligned}
$$
したがって、$4^{100}-1$ は $3$ では割れますが、$3^2$ では割れません。
$3$ は $10-1=9$ の約数で、$10\cdot1$ の約数ではありません。よって、
$$
\begin{aligned}
v_3(10^{81}-1)
&=v_3(10-1)+v_3(81)\\
&=v_3(9)+v_3(3^4)\\
&=2+4\\
&=6
\end{aligned}
$$
です。
つまり、$10^{81}-1$ は $3^6$ では割れますが、$3^7$ では割れません。
初めに見た
$$
v_3(2^{600}-1)
$$
を求めます。そのままでは $3$ が $2-1$ の約数ではないため、LTE を使えません。
しかし、
$$
2^{600}-1=4^{300}-1
$$
と見れば、$3$ は $4-1$ の約数です。したがって、
$$
\begin{aligned}
v_3(2^{600}-1)
&=v_3(4^{300}-1)\\
&=v_3(4-1)+v_3(300)\\
&=1+1\\
&=2
\end{aligned}
$$
です。
巨大な数を計算せず、導入と同じく「$3$ が2個」と分かりました。
和型を新しい公式として暗記する必要はありません。差型へ直します。
$n$ が奇数なら、
$$
(-b)^n=-b^n
$$
なので、
$$
a^n+b^n=a^n-(-b)^n
$$
です。第10部の証明は、底が負でも、式の値が $0$ でない限り全く同じです。そこで差型 LTE の証明における $b$ を $-b$ に置き換えれば、そのまま使えます。
$p$ を奇素数、$a,b$ を $0$ でない整数、$n$ を正の奇数とします。
さらに、$p$ は $a+b$ の約数であり、$p$ は $ab$ の約数でなく、$a\neq-b$ とします。このとき、
$$
\boxed{
v_p(a^n+b^n)=v_p(a+b)+v_p(n)
}
$$
が成り立ちます。
$49$ は奇数で、$7$ は $13+1=14$ の約数です。したがって、
$$
\begin{aligned}
v_7(13^{49}+1)
&=v_7(13+1)+v_7(49)\\
&=1+2\\
&=3
\end{aligned}
$$
です。
$n$ が偶数なら $(-b)^n=b^n$ なので、
$$
a^n-(-b)^n=a^n-b^n
$$
となり、元の和にはなりません。
和型の奇数条件は、覚えるために付け足された条件ではなく、和を差へ変えるために必要な条件です。
$p$ を奇素数とし、$p$ が $a-b$ の約数であるとします。
もし $p$ が $a+b$ の約数でもあるなら、$p$ は
$$
(a+b)+(a-b)=2a
$$
と
$$
(a+b)-(a-b)=2b
$$
の両方の約数です。
$p$ は奇素数なので、$2$ の約数ではありません。素数の積に対する性質から、$p$ は $a$ と $b$ の両方の約数になってしまいます。
これは「$p$ が $ab$ の約数ではない」という LTE の仮定に反します。
したがって奇素数では、LTE の条件のもとで、$a-b$ と $a+b$ の両方から同じ $p$ が現れることはありません。
$a,b$ が奇数なら、
$$
a-b\quad\text{も}\quad a+b\quad\text{も偶数}
$$
です。
つまり $p=2$ では、$a-b$ だけでなく $a+b$ に含まれる2も同時に数えなければなりません。
これは、平方差
$$
a^{2m}-b^{2m}
=(a^m-b^m)(a^m+b^m)
$$
を見ると、さらに明確です。右辺の二つの因子がどちらも偶数になります。
第9部では、奇素数 $p$ なら、二項展開の第一項だけが最小の付値をもちました。
ところが $p=2$ では、
$$
x^2-y^2=2y(x-y)+(x-y)^2
$$
の二項が同じ付値をもつ場合があります。すると両者を足したとき、さらに2の因子が増える可能性があります。
したがって、$p=2$ は単なる暗記上の例外ではありません。構造上の違いは二つあります。一つは、$a-b$ と $a+b$ の両方が偶数になることです。もう一つは、二項展開で最小の付値をもつ項が一つに決まらないことです。
$a,b$ を相異なる正の奇数、$n$ を正の偶数とします。このとき、
$$
\boxed{
v_2(a^n-b^n)
=v_2(a-b)+v_2(a+b)+v_2(n)-1
}
$$
が成り立ちます。
$$
k=v_2(n)
$$
とおくと、$n$ は偶数なので $k\geqq1$ です。ある正の奇数 $r$ を用いて、
$$
n=2^kr
$$
と書けます。
ここで、
$$
X=a^r,\qquad Y=b^r
$$
とおきます。$a,b,r$ は奇数なので、$X,Y$ も奇数です。
平方差を繰り返し使うと、
$$
\begin{aligned}
X^{2^k}-Y^{2^k}
&=(X-Y)(X+Y)(X^2+Y^2)\\
&\quad\cdot(X^4+Y^4)\cdots
(X^{2^{k-1}}+Y^{2^{k-1}})
\end{aligned}
$$
となります。
$k=1$ のときは、$(X-Y)(X+Y)$ だけです。
奇数 $X$ について、
$$
X^2\equiv1\pmod8
$$
です。実際、$X=2q+1$ と書けば、
$$
X^2-1=4q(q+1)
$$
であり、連続する整数 $q,q+1$ の一方は偶数なので、右辺は $8$ の倍数です。
したがって、$j\geqq1$ なら、
$$
X^{2^j}\equiv1\pmod8,\qquad
Y^{2^j}\equiv1\pmod8
$$
です。よって、
$$
X^{2^j}+Y^{2^j}\equiv2\pmod8
$$
となります。
この因子は $2$ では割れますが $4$ では割れないので、
$$
v_2(X^{2^j}+Y^{2^j})=1
$$
です。このような因子は $k-1$ 個あります。
$r$ は奇数なので、
$$
\frac{a^r-b^r}{a-b}
=a^{r-1}+a^{r-2}b+\cdots+b^{r-1}
$$
は奇数を $r$ 個足したものです。$r$ は奇数なので、この商は奇数です。
したがって、
$$
v_2(X-Y)=v_2(a^r-b^r)=v_2(a-b)
$$
です。
同様に、奇数乗の和を因数分解すると、
$$
\frac{a^r+b^r}{a+b}
=a^{r-1}-a^{r-2}b+\cdots-ab^{r-2}+b^{r-1}
$$
となります。$2$ を法とすれば符号の違いはなく、これも奇数を $r$ 個足したものなので奇数です。
よって、
$$
v_2(X+Y)=v_2(a^r+b^r)=v_2(a+b)
$$
です。
積では付値が足されるので、
$$
\begin{aligned}
v_2(a^n-b^n)
&=v_2(X^{2^k}-Y^{2^k})\\
&=v_2(X-Y)+v_2(X+Y)+(k-1)\\
&=v_2(a-b)+v_2(a+b)+v_2(n)-1
\end{aligned}
$$
となります。
$a,b$ を相異なる奇数、$n$ を正の奇数とすると、
$$
\boxed{
v_2(a^n-b^n)=v_2(a-b)
}
$$
です。
実際、$(a^n-b^n)/(a-b)$ は奇数を奇数個足したものなので奇数です。
次の順に見ると、条件の見落としが減ります。
① 求めたいのは、どの素数 $p$ に関する付値か。
② $p$ は奇素数か、$2$ か。
③ 式は差か、和か。
④ $p$ は底の差または和の約数か。
⑤ $p$ は二つの底の積の約数ではないか。
⑥ 和型なら指数は奇数か。$p=2$ 型なら指数は偶数か。
$a,b$ を相異なる正整数とします。$p$ が奇素数で、$p$ が $a-b$ の約数、$p$ が $ab$ の約数でないなら、
$$
\boxed{
v_p(a^n-b^n)=v_p(a-b)+v_p(n)
}
$$
$a,b$ を正整数とします。$p$ が奇素数で、$p$ が $a+b$ の約数、$p$ が $ab$ の約数でなく、$n$ が奇数なら、
$$
\boxed{
v_p(a^n+b^n)=v_p(a+b)+v_p(n)
}
$$
$a,b$ が相異なる正の奇数で、$n$ が正の偶数なら、
$$
\boxed{
v_2(a^n-b^n)
=v_2(a-b)+v_2(a+b)+v_2(n)-1
}
$$
なお、$a,b$ が相異なる奇数で、$n$ が正の奇数なら、
$$
v_2(a^n-b^n)=v_2(a-b)
$$
です。
例えば、
$$
v_3(2^n-1)
$$
に差型 LTE をそのまま使うことはできません。$3$ は $2-1=1$ の約数ではないからです。
ただし、指数が偶数なら底を作り直せます。これは第17部で扱います。
例えば $p=3,a=6,b=3,n=2$ では、$3$ は $a-b=3$ の約数ですが、底 $6,3$ も $3$ の倍数です。
実際、
$$
v_3(6^2-3^2)=v_3(27)=3
$$
であるのに、条件を無視して公式へ代入すると、
$$
v_3(6-3)+v_3(2)=1
$$
となってしまいます。
例えば $n=2$ のとき、誤って和型を使うと、
$$
v_3(2^2+1)=v_3(2+1)+v_3(2)=1
$$
となりそうですが、実際には $2^2+1=5$ なので左辺は $0$ です。
例えば、
$$
3^2-1=8
$$
なので、
$$
v_2(3^2-1)=3
$$
です。
奇素数版を誤って使うと、
$$
v_2(3-1)+v_2(2)=1+1=2
$$
となり、正しい値を得られません。足りない1個は $3+1$ から現れています。
差型では $a-b$、和型では $a+b$ を見ます。公式の見た目だけでなく、どちらが $p$ の倍数なのかを必ず先に確認しましょう。
$a=b$ なら $a^n-b^n=0$ です。また、負の底まで許して $n$ が偶数なら、$a=-b$ でも値は $0$ になります。この記事では $v_p(0)$ を定義していないので、式の値が $0$ でないことを確認します。
和の付値では、最小の付値をもつ項が複数あると、足し合わせたときに付値が増えることがあります。
第9部で第一項だけを見られたのは、第一項だけがただ一つ最小の付値をもつことまで示したからです。「全部 $p$ で割れる」だけでは証明として足りません。
LTE は、条件を満たす形に対して使う定理です。初めの形で使えなくても、式の見方を変えれば使えることがあります。
例えば、
$$
v_3(2^{2n}-1)
$$
では、$3$ は $2-1$ の約数ではありません。しかし、
$$
2^{2n}-1=4^n-1
$$
と見れば、$3$ は $4-1$ の約数です。よって、
$$
\boxed{
v_3(2^{2n}-1)=v_3(4-1)+v_3(n)=1+v_3(n)
}
$$
となります。
一般に、
$$
a^{mn}-b^{mn}=(a^m)^n-(b^m)^n
$$
と見ることで、$p$ が新しい底の差 $a^m-b^m$ を割るようにできることがあります。
$5$ は $2-1$ の約数ではありません。そこで、$500=4\cdot125$ を利用して、
$$
2^{500}-1=16^{125}-1
$$
と見ます。
$5$ は $16-1=15$ の約数なので、
$$
\begin{aligned}
v_5(2^{500}-1)
&=v_5(16^{125}-1)\\
&=v_5(16-1)+v_5(125)\\
&=1+3\\
&=4
\end{aligned}
$$
です。
$$
a^{2n}-b^{2n}=(a^n-b^n)(a^n+b^n)
$$
と分け、それぞれの因子の付値を調べて足す方法もあります。
特に $p=2$ 型の証明は、この平方差を繰り返したものです。
LTE が使えないから終わり、ではありません。
LTE が使える底や因数を作れないかと考えることが大切です。
各問題では、計算を始める前に「どの型を、なぜ使えるか」を確認してください。
$$
v_5(6^{125}-1)
$$
を求めよ。
$5$ は $6-1$ の約数で、$6\cdot1$ の約数ではないので差型を使えます。したがって、$v_5(6^{125}-1)=v_5(5)+v_5(125)=1+3=4$ です。
$$
v_7(13^{49}+1)
$$
を求めよ。
$49$ は奇数で、$7$ は $13+1$ の約数です。よって和型から、$v_7(13^{49}+1)=v_7(14)+v_7(49)=1+2=3$ です。
$$
v_2(3^{100}-1)
$$
を求めよ。
$3,1$ は奇数で $100$ は偶数なので、$p=2$ 型を使えます。$v_2(3^{100}-1)=v_2(3-1)+v_2(3+1)+v_2(100)-1=1+2+2-1=4$ です。
$$
v_5(2^{500}-1)
$$
を求めよ。
$2^{500}-1=16^{125}-1$ と直します。$5$ は $16-1$ の約数なので、$v_5(2^{500}-1)=v_5(15)+v_5(125)=1+3=4$ です。
$3^k$ が
$$
2^{2\cdot3^{50}}-1
$$
の約数となるような、最大の整数 $k$ を求めよ。
$2^{2\cdot3^{50}}-1=4^{3^{50}}-1$ です。よって、$v_3(4^{3^{50}}-1)=v_3(4-1)+v_3(3^{50})=1+50=51$ です。したがって最大の $k$ は $51$ です。
$$
\frac{10^n-1}{3^n}
$$
が整数となるような正整数 $n$ をすべて求めよ。
LTE より $v_3(10^n-1)=v_3(9)+v_3(n)=2+v_3(n)$ です。したがって条件は $n\leqq2+v_3(n)$ です。$n=1,2,3$ はすべて条件を満たします。$n\geqq4$ とし、もし $v_3(n)\geqq n-2$ なら $n\geqq3^{n-2}$ ですが、二項定理より $3^{n-2}=(1+2)^{n-2}\geqq1+2(n-2)=2n-3>n$ となり矛盾します。よって $v_3(n)\leqq n-3$ で、$2+v_3(n)< n$ です。以上より $n=1,2,3$ です。
ここまでに使った考え方は、LTE 専用ではありません。今後の整数問題で再利用できる形にまとめます。
整数 $N$ に対して、
$$
v_p(N)
$$
を見る発想です。
「$p^k$ が $N$ の約数となる最大の $k$」を求める問題は、そのまま $v_p(N)$ を求める問題です。
複雑な整除条件を、
各素数が何個含まれているか
へ分けて考えられます。
$$
\boxed{
v_p(AB)=v_p(A)+v_p(B)
}
$$
したがって、式を因数分解できれば、各因子に含まれる $p$ の個数を別々に調べればよいことになります。
$$
v_p(A)\neq v_p(B)
$$
なら、
$$
\boxed{
v_p(A+B)=\min\{v_p(A),v_p(B)\}
}
$$
です。
さらに一般に、複数の項の中でただ一つの項だけ付値が最小なら、その項が和全体の付値を決めます。
これは二項展開や多項式の整除性で非常に強力です。
$p$ が素数で、
$$
1\leqq k\leqq p-1
$$
なら、
$$
\boxed{
{}_pC_k\text{ は }p\text{ の倍数}
}
$$
です。
LTE の証明だけでなく、「二項展開した途中の項をすべて消したい」という合同式の問題で頻出します。
$$
(a+b)^p
=a^p+{}_pC_1a^{p-1}b+\cdots+b^p
$$
の中間項はすべて $p$ の倍数です。したがって、
$$
\boxed{
(a+b)^p\equiv a^p+b^p\pmod p
}
$$
となります。
これを繰り返せば、
$$
\boxed{
(a_1+a_2+\cdots+a_m)^p
\equiv a_1^p+a_2^p+\cdots+a_m^p
\pmod p
}
$$
も得られます。
前項で $b=1$ とすると、
$$
(a+1)^p\equiv a^p+1\pmod p
$$
です。
$a=0$ では $a^p\equiv a\pmod p$ が成り立ちます。また、ある $a$ で $a^p\equiv a\pmod p$ が成り立つと仮定すれば、
$$
(a+1)^p\equiv a^p+1\equiv a+1\pmod p
$$
です。
数学的帰納法により、すべての $0$ 以上の整数 $a$ で成立します。任意の整数も $p$ で割った余りに置き換えられるので、
$$
\boxed{
a^p\equiv a\pmod p
}
$$
です。
さらに、$p$ が $a$ の約数でないとき、
$$
a^p-a=a(a^{p-1}-1)
$$
は $p$ の倍数です。$p$ は $a$ の約数ではないので、素数の積に対する性質から、$a^{p-1}-1$ が $p$ の倍数です。
よって、
$$
\boxed{
a^{p-1}\equiv1\pmod p
}
$$
となります。これがフェルマーの小定理です。
ここでは合同式を不注意に $a$ で割らず、素数が積を割るときの性質を使っている点にも注目してください。
べきの差の因数分解から、$a-b$ は $a^n-b^n$ の約数です。
さらに、正整数 $m$ が正整数 $n$ の約数なら、ある正整数 $q$ を用いて $n=mq$ と書けます。すると、
$$
a^n-b^n=(a^m)^q-(b^m)^q
$$
です。したがって、
$$
\boxed{
a^m-b^m
\text{ は }
a^n-b^n
\text{ の約数}
}
$$
となります。
$q$ が奇数なら、
$$
x^q+y^q
=(x+y)(x^{q-1}-x^{q-2}y+\cdots-xy^{q-2}+y^{q-1})
$$
です。
したがって、$m$ が $n$ の約数で、さらに $n/m$ が奇数なら、
$$
\boxed{
a^m+b^m
\text{ は }
a^n+b^n
\text{ の約数}
}
$$
となります。
$a>b$ を満たす正整数 $a,b$ の最大公約数が $1$、すなわち $a,b$ が互いに素であるとします。
$a-b$ と $a+b$ の共通約数は、その和 $2a$ と差 $2b$ の共通約数でもあります。
もし奇素数が $a-b$ と $a+b$ の両方の約数なら、その奇素数は $a,b$ の両方の約数となり、互いに素であることに反します。
したがって共通約数に現れ得る素数は $2$ だけです。さらに $4$ が両方の約数なら $4$ は $2a$ の約数となり、$a$ が偶数になってしまいます。同様に $b$ も偶数となり、やはり矛盾します。
よって、
$$
\boxed{
\gcd(a-b,a+b)\text{ は }1\text{ または }2
}
$$
です。
実際には、$a,b$ の一方だけが偶数なら最大公約数は $1$、両方が奇数なら $2$ です。
これは $p=2$ が特殊になる理由と直結しています。
$a>b$ を満たす互いに素な正整数 $a,b$ に対し、
$$
S=\frac{a^n-b^n}{a-b}
=a^{n-1}+a^{n-2}b+\cdots+b^{n-1}
$$
とします。
$a\equiv b\pmod{a-b}$ なので、
$$
S\equiv nb^{n-1}\pmod{a-b}
$$
です。
また、$a,b$ が互いに素なら、$a-b$ と $b$ も互いに素です。そのため、$a-b$ と $nb^{n-1}$ の共通因子は、$a-b$ と $n$ の共通因子と同じです。
よって、
$$
\boxed{
\gcd\left(
a-b,
\frac{a^n-b^n}{a-b}
\right)
=\gcd(a-b,n)
}
$$
が得られます。
第7部の補題は、この等比和が $p$ の倍数になるかどうかを、一つの素数 $p$ に注目して調べたものだと見ることもできます。
整数問題では、知っている定理をそのまま使えるかどうかだけでなく、
定理を使える形へ式を変形できるか
が重要です。
例えば、
$$ 2^{2n}-1=4^n-1 $$
と見ることで、底の差を $1$ から $3$ へ変え、$p=3$ の LTE を使えるようにしました。
合同式で「どの法を見るか」を選ぶのと同じように、LTE では「どのまとまりを底と見るか」を選びます。
今回の「素数 $p$ が何個含まれるか」という考え方は、LTE だけに終わりません。
$p$ を素数、$n$ を正整数とすると、
$$
\boxed{
v_p(n!)
=\left\lfloor\frac np\right\rfloor
+\left\lfloor\frac n{p^2}\right\rfloor
+\left\lfloor\frac n{p^3}\right\rfloor
+\cdots
}
$$
が成り立ちます。
$\lfloor x\rfloor$ は、$x$ 以下の最大の整数を表します。また、$p^j>n$ となった後の項はすべて $0$ なので、右辺は実質的には有限個の和です。
例えば、
$$
\begin{aligned}
v_2(10!)
&=\left\lfloor\frac{10}{2}\right\rfloor
+\left\lfloor\frac{10}{4}\right\rfloor
+\left\lfloor\frac{10}{8}\right\rfloor\\
&=5+2+1\\
&=8
\end{aligned}
$$
です。
$$
{}_nC_k=\frac{n!}{k!(n-k)!}
$$
なので、積と商の付値の性質から、
$$
\boxed{
v_p({}_nC_k)
=v_p(n!)-v_p(k!)-v_p((n-k)!)
}
$$
です。
ここにルジャンドルの公式を代入すれば、二項係数が $p$ で何回割れるかを調べられます。
今後は、
LTE の差型では、まず $p$ が $a-b$ の約数であるため、$a^n-b^n$ の中にも、もともと $a-b$ に含まれていた $p$ が存在します。
そして、指数 $n$ の中に $p$ が一つ含まれるたびに、指数を $p$ 倍する一段階によって、$a^n-b^n$ の中の $p$ も一つずつ増えます。
そのため、
$$ \boxed{ v_p(a^n-b^n) =\underbrace{v_p(a-b)}_{\text{底の差に初めからある分}} +\underbrace{v_p(n)}_{\text{指数から持ち上がる分}} } $$
となります。
公式だけを覚えるのではなく、
指数側にある $p$ の個数が、べきの差の側へ持ち上がる
という現象として理解しておけば、条件も公式の形も思い出せます。
この記事で本当に持ち帰ってほしいのは LTE 一つだけではありません。