多次元空間において、すべての頂点が有理点となる正$n$角形が存在するのに必要な最低次元数を$n$ごとに求めよ。
有理点:座標の値が全て有理数な点
格子点:座標の値が全て整数な点
色んな大学の過去問で見ることがあります。
$xy$平面において、すべての頂点が有理点となる正三角形が存在しないことを示せ。
存在したとして背理法で解いていきます。
存在したその正三角形の頂点の$1$つの座標を$(x,y)=(0,0)$となるように平行移動し、
残りの二つの頂点の座標を有理数$a,b,c,d$を用いて$(a,b),(c,d)$とおいておきます。
すると、一辺の長さが$\sqrt{a^2+b^2}(\ne0)$となる。
点$(c,d)$は点$(a,b)$を原点中心に$\frac{\pi}3,-\frac{\pi}3$いずれか回転したものである
$(a+bi)(\frac12\pm\frac{\sqrt3}2 i )=(\frac12a\mp\frac{\sqrt3}2b)+(\frac12b\pm\frac{\sqrt3}2a)i$
座標は$(c,d)=(\frac12a\mp\frac{\sqrt3}2b,\frac12b\pm\frac{\sqrt3}2a)$となり、
$c,d$はどちらも有理数であるが、有理数にするには$(a,b)=(0,0)$とするしかなく、
そうすると辺の長さが$0$となり矛盾
三角形の面積はベクトルを用いたものと、間の角度を用いたものから
$\frac12 \left| ad -bc \right| $または$\frac12(a^2+b^2)\frac{\sqrt3}2$が与えられるが
前者は有理数で後者は無理数となり矛盾
正$3$角形の場合は$3$次元$(1,0,0),(0,1,0),(0,0,1)$で描けます!
次元が増えても、辺が増えても問題が解けるようにいくつか用意していきます。
「有理点頂点の正多角形が存在する」$\Longrightarrow$「連続する$3$つの頂点が有理点」
なので、「連続する$3$つの頂点が有理点」が必要条件です。
まず、連続する$3$つの頂点のみを調べます。
ベクトルの内積を用いて矛盾を示す
原点から$(x_1,y_1),(x_2,y_2)$へ伸びる辺の間の角度$θ$は
$\sqrt{x_1^2+y_1^2}\sqrt{x_2^2+y_2^2}cosθ=x_1x_2+y_1y_2$が成り立ちます。
左辺の$\sqrt{x_1^2+y_1^2}\sqrt{x_2^2+y_2^2}$はどちらも等しい正多角形の一辺なので有理数です。
右辺は有理数になりますが、左辺は$cosθ $の値によります。
これを用いれば簡単に多次元でも矛盾を示せます。
$θ$が既約分数$\frac{m}{n}×\pi$と書けるとき、$n$が$1,2,3$のとき$cosθ$は有理数
要は90度刻み、60度刻みなら有理数っていうことです。
(証明は長くなってしまうのでわかっていることして使わせてください。)
有理点は整数倍すれば、すべて整数となる点へ移すことができるので、
整数倍した格子点を$(a,b),(c,d)$とする。
$\sqrt{a^2+b^2}\sqrt{c^2+d^2}\frac12=ac+bd$
$(a^2+b^2)(c^2+d^2)=4(ac+bd)^2$
$(a^2+b^2)(c^2+d^2) $=$(ac+bd)^2+(ad-bc)^2$より
$(ac+bd)^2+(ad-bc)^2=4(ac+bd)^2$
$(ad-bc)^2=3(ac+bd)^2$
どちらも整数であるが、素因数分解したときの$3$の素因数の個数が違うため、
$ad-bc=0,ac+bd=0$である。
ところでこの二つは$(a+bi)(d+ci)$の実部と虚部である。
実部と虚部がともに0になるには$a+bi,d+ci$いずれか一方は必ず0である必要があるが
辺の長さが0になり矛盾
大きな$n$でも次元がたくさんあれば書けるのでしょうか?
$n=3$から順に調べていきましょう
正$3$角形は$2$次元では不可能で、$3$次元では可能。
例)$(1,0,0),(0,1,0),(0,0,1)$
よって最低$3$次元必要。
正方形は図形なので$1$次元では不可能で、$2$次元では可能。
例)$(0,0),(0,1),(1,0),(1,1)$
よって最低$2$次元必要。
隣接する$3$つの頂点をベクトルの内積を用いて考えると
正$5$角形の内角は$72°(=\frac25π)$で$cos\frac25π$は無理数なので
正$5$角形はどの次元でも不可能。
もし正$6$角形が$2$次元で有利点頂点におけるなら、正$6$角形の一部の点と重心から作ることができる正$3$角形もできるはずだが、できないので$2$次元では不可能。$3$次元では可能。
例)$(1,-1,0),(0,-1,1),(-1,0,1),(-1,1,0),(0,1,-1),(1,0,-1)$
よって最低$3$次元必要。
隣接する$3$つの頂点をベクトルの内積を用いて考えると
正$n$角形の内角は$\frac{n-2}nπ$で分子である$n$が$1,2,3$となることはないので、$cos\frac{n-2}nπ$は無理数なので
正$n$角形はどの次元でも不可能。
読んでいただきありがとうございました!
$3$次元なら正$3$角形が有利点頂点で書けると知って、書けない他の正多角形も次元が高ければ可能なのか?と思いました。(結果は違いました。)
ベクトルの内積を使えば調べられると気付いたので記事にしました!