本記事ではJMO2024予選の12番を解説します.
問題
JMO2024予選 12
次の条件をみたす以上以下の整数の組の個数を求めよ.
- 整数の組であって,任意の以上以下の整数に対して
となるものが存在する.
解答
はと同値であるため,が必要である.とおくと,問題文中の条件は
となるので,これがに関する方程式として整数解を持つようなの個数を求めればよい.をで割った余りがそれぞれであるときのように書くことにすると,中国剰余定理より上の方程式は
と表せる.この方程式が整数解を持つことは,以下の方程式が整数解を持つことと同値である.
よって問題は次のように言い換えられる.
次の条件をみたす以上以下の整数の組の個数を求めよ.
のように略記すると,条件をみたす組に対しては
が成り立つので,が必要である.同様に以下が必要であることがわかる.
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逆にこれらをみたせば十分であることを示そう.
(式(1)-(7)が十分条件であること)
組が上の(1)-(7)をみたすと仮定する.まず以下をみたす整数の組を構成する.
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これは次のような手順で構成できる(の直方体を想像するとわかりやすい).
- のうちがつ以下であればとする.
- に対し,のうち(iv)をみたす方を選ぶ.
- に対し,とする.
- に対し,のうち(vi)をみたす方を選ぶ.
- のうち(vii)をみたすものを選ぶ.
以上で(i)-(viii)をみたすが構成できた.条件(i)より,連立方程式
を解くとは整数となる.条件(iv),(ii)よりであるため,連立方程式
を解くとは整数となる.条件(vii),(vi)よりであり,条件(v),(iii)よりである.これらを合わせるとが得られるので,連立方程式
を解くとは整数となる.このとき
となるのでよい.
以上により,(1)-(7)をみたすを数える問題に帰着された.このような組は以下の手順で構成できる.
- に対するを自由に決める.
- に対するを,(1)をみたすように決める.
- に対するを,(2)をみたすように決める.
- に対するを,(3)をみたすように決める.
- に対するを,(4)をみたすように決める.
- に対するを,(5)をみたすように決める.
- に対するを,(6)をみたすように決める.
- を,(7)をみたすように決める.
各段階での選択肢の個数の総積を求めればよいので,答えは
感想
「と互いに素」という条件が中国剰余定理によって綺麗に言い換えられるのが要点である.(1)-(7)が必要十分であることが予想できればエスパーが可能だが,それを差し引いても12番にふさわしい難問だと感じた.