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現代数学解説
文献あり

Hirsch 微分トポロジーの問題1.4.10、1.4.11、1.4.12 凸角多様体の圏

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問題1.4.10

 $f:M\to N$が微分同相のとき、その境界も微分同相である。

 そうじゃなかったら困りますわよ()

 境界点では境界チャートしか取れない事から、$f(\partial M)=\partial N$は自明。よって、$f|_{\partial M}$$\partial M$から$\partial N$への微分同相写像になっている事を言えば良い。
 しかしこれもまた、任意に$p\in \partial M$をとって点$p,f(p)$周りの境界チャートを取った時、境界チャートを$x_1,…,x_{n-1}$座標へ射影する事で得られる境界上のチャートを使って$f|_{\partial M}$をみると、$f$の微分同相性からやはり微分同相になっていることがわかる。

問題1.4.11

 $C^1$級多様体$M$において、$M$が向き付け可能ならば$\partial M$も向き付け可能であるが、逆は成立しない。

 Möbiusの帯が明らかな反例になる事が見た瞬間に思いつくやつですね。まあ、それ以外の反例を出せと言われても、その、困るんですが…。

 $\partial M$のチャートとして、$M$の境界チャート$\phi$$x_1,…,x_{n-1}$までの座標への射影$\pi\circ \phi$をとることとし、これを$\tilde \phi$とする。
 いま、境界チャート$(U_\alpha,\phi_\alpha),(U_\beta,\phi_\beta)$をとる。
 このとき座標変換$F=\phi_\beta\circ\phi_\alpha^{-1}:U(\subset\mathbb H^n)\to V(\subset \mathbb H^n)$$C^1$級微分同相で、向き付けの仮定よりそのヤコビアンは各点$x\in U$で正である。
 特に、第$n$座標が$0$の点で、各$i(i=1,…,n-1)$について$\partial /\partial x_i F_n(x,0)=0$であるから、

$\det JF(x,0)= \det \begin{pmatrix} A(x) & b(x) \\ 0 & d(x) \end{pmatrix}=\det A(x)d(x)>0$

($A(x)$$(n-1)×(n-1)$の小行列)となる。
 特に$d(x)$について、$x_n>0$ならそれは$F$により内点に移るため、固定の$x$に対して$h(t)=F_n(x,t)$としたとき$h(0)=0,h(t)>0,(t>0)$である。すなわち、$h'(0)\geq 0$であり、その定め方から$d(x)=h'(0)\geq 0$
 ヤコビアンが正より、特に$d(x)>0$であり、これより$\det A(x)>0$を得る。

 ここで、この境界チャートにおける$\partial M$のチャートを考える。このとき、これによる座標変換$\tilde F$は、$F$$n-1$までの座標への制限であり、そのヤコビアンは$\det A(x)$に等しい。
 これは正だったので、ゆえにこの座標変換におけるヤコビアンは正である。
 最初、座標変換は任意にとっているので、よって$\partial M$は向き付け可能である。

 また、逆の反例としては境界付きMöbiusの帯がある。境界は$S^1$と微分同相で向き付け可能だが、全体は向き付け可能ではない。      

問題1.4.12

 凸角(orthant)多様体の圏を構成し、境界付き多様体、普通の多様体がその対象である事と、直積について閉じている事を確認せよ。

 ここで言う凸角とは以下のようなもののことです。

 線形同型写像$L:\mathbb R^n\to \mathbb R^{n_1}×…×\mathbb R^{n_k}$と半空間$H_i\subset \mathbb R^{n_i}$を用いて$L(Q)=H_1×…×H_k$で定義される$\mathbb R^n$の部分集合$Q$を凸角(orthant)という。

 $k=1$の時がいわゆる半空間というやつですね。$k=0$の時はもちろん、通常のEuclid空間です。

 各凸角$Q$は、適切に座標を入れ替える事で明らかに$\mathbb R^{n-k}×[0,\infty)^k$に微分同相である事に注意する。
 よって$C^r$級凸角多様体は、局所的にこの形の凸角の開部分集合と微分同相なもので、その座標変換が$C^r$級であるものとして良い。
 また、凸角多様体の間の写像が、各点において$C^r$級であることを、凸角チャートで引き戻して得られる凸角から凸角への写像が$C^r$級である事で定める。(基本的には、局所的な定義域の拡張による定義を採用すれば良い。)
 そして、凸角多様体の各点で$C^r$級であれば、その写像を$C^r$級であると言う。
 以上の設定から、$C^r$級凸角多様体を対象、その間の$C^r$級写像を射とする凸角の圏$\mathbf{Mfd}_c^r$が定まる。(合成で閉じていること、単位射があること、結合法則が成り立つことは通常の多様体の議論と同様で自明。)
 ここで、境界付き多様体と境界の無い多様体は、それぞれ$k\leq 1,k=0$の場合の凸角多様体のことである。
 また、これが直積に関して閉じている事は、k-凸角多様体(つまり、凸角チャートとして最大$[0,\infty)^k$の構造を持つということ)とl-凸角多様体の直積により生成される凸角チャートが、明らかに$k+l$以下の凸角チャートになっていることから分かる。

 ちなみに、$\mathbf{Mfd}_c^r$のcは、$C^r$ manifolds with convex cornersのcです。(covexとcornersのどっちのcなのか、その真相解明はお任せします。(多分cornersの方です。))

参考文献

[1]
M.W.Hirsch(松本堯生(訳)), 微分トポロジー, p38
投稿日:6日前
更新日:5日前
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