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現代数学解説
文献あり

Dougallの2H2和公式

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2F1超幾何級数における単位引数における値は, Gaussの超幾何定理
2F1[a,bc;1]=Γ(c)Γ(cab)Γ(ca)Γ(cb)
によってガンマ関数で表すことができる. 以下, Pochhammar記号は(a1,,ar)n=(a1)n(ar)nのような略記を用いるとする. 2F1超幾何級数の定義
2F1[a,bc;x]:=0n(a,b)nn!(c)nxn
において, 分母のn!(d)nに置き換えて和の範囲を整数全体に拡張した
2H2[a,bc,d;x]:=nZ(a,b)n(c,d)nxn
を考える. ここで, 負の整数におけるPochhammer記号は, (a)n:=(1)n(1a)n,n0と定義されるものである. 1nに対して,
1(d)n=(1)n(1d)n
d=1のとき自然に0であると見なせるので,
2H2[a,bc,1;x]=2F1[a,bc;x]
となる. これより, 2H22F1の拡張になっていることが分かる. Gaussの超幾何定理を2H2に拡張したのがDougallの2H2和公式である.

Dougallの2H2和公式

Re(c+dab)>1のとき,
2H2[a,bc,d;1]=Γ(c)Γ(d)Γ(1a)Γ(1b)Γ(c+dab1)Γ(ca)Γ(da)Γ(cb)Γ(db)
が成り立つ.

これは, 次のCarlsonの定理を用いることによって簡潔に示すことができる.

Carlsonの定理

Re(z)0における正則関数fはある定数0<C,0k<πがあって, 常に|f(z)|Cek|z|を満たしており, 0以上の全ての整数nに対してf(n)=0を満たしているとき, 恒等的に0である.

(定理1の証明)

両辺に1Γ(d)を掛けた式
nZ(a,b)n(c)nΓ(d+n)=Γ(c)Γ(1a)Γ(1b)Γ(c+dab1)Γ(ca)Γ(da)Γ(cb)Γ(db)
を示せばよい. 左辺の級数はRe(c+dab)>1において絶対収束しており, 両辺はdにおいて0に収束する. 特にRe(c+dab)>1のとき, 両辺はdの関数として正則であり, 有界である. d=N+11を整数のとき, Gaussの超幾何定理より,
nZ(a,b)n(c)nΓ(d+n)=Nn(a,b)n(c)nΓ(N+n+1)=0n(a,b)nN(c)nNn!=(a,b)N(c)N2F1[aN,bNcN;1]=1(1a,1b)N(c)NΓ(cN)Γ(cab+N)Γ(ca)Γ(cb)=Γ(c)Γ(1a)Γ(1b)Γ(c+(N+1)ab1)Γ(ca)Γ(cb)Γ((N+1)a)Γ((N+1)b)=Γ(c)Γ(1a)Γ(1b)Γ(c+dab1)Γ(ca)Γ(cb)Γ(da)Γ(db)
となって示される. よって, 両辺の差に対してCarlsonの定理を適用することによって, 定理を得る.

参考文献

[1]
George E. Andrews, Richard Askey, Ranjan Roy, Special Functions
投稿日:117
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Wataru
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超幾何関数, 直交関数, 多重ゼータ値などに興味があります

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