0

2026年 東京大学 理系数学 第4問

9
0
$$$$
2026年 東京大学 理系 第4問

$k$ を実数とし,座標平面上の曲線 $C$ を $y=x^3-kx$ で定める。$C$ 上の $2$ 点 $\mathrm{P},\mathrm{Q}$ に対する以下の条件 $(\ast)$ を考える。

条件 $(\ast)$ 原点 $\mathrm{O}$,点 $\mathrm{P}$,点 $\mathrm{Q}$ は相異なり,$C$ の $\mathrm{O},\mathrm{P},\mathrm{Q}$ における接線のうち,どの $2$ 本も交わり,そのなす角はすべて $\dfrac{\pi}{3}$ となる。

ただし,$2$ 直線のなす角は $0$ 以上 $\dfrac{\pi}{2}$ 以下の範囲で考えるものとする。
(1) 条件 $(\ast)$ を満たす $\mathrm{P},\mathrm{Q}$ が存在するような $k$ の範囲を求めよ。
(2) $k$ が (1) で定まる範囲にあるとする。$\mathrm{P},\mathrm{Q}$ が条件 $(\ast)$ を満たすように動くとき,$C$ の $\mathrm{O},\mathrm{P},\mathrm{Q}$ における接線によって囲まれる三角形の面積 $S$ の最大値を $M$,最小値を $m$ とおく。ただし,$3$ 本の接線が $1$ 点で交わるときは $S=0$ とする。$M=4m$ となる $k$ の値を求めよ。


1. 問題の構造

1.1 記法

$f(x)=x^3-kx$ とし,$C$ 上の $x$ 座標が $t$ である点における接線を $\ell_t$ とする。$f'(t)=3t^2-k$,$f(t)-tf'(t)=-2t^3$ より
$$ \ell_t:\ y=(3t^2-k)x-2t^3,\qquad \ell_0:\ y=-kx $$
である。以下の記号を用いる。

  • 傾き $s$ の直線の方向角を $\arctan s\in\left(-\frac{\pi}{2},\frac{\pi}{2}\right)$ とする。$\theta(t)=\arctan(3t^2-k)$,$\theta_0=\theta(0)=-\arctan k$,$\phi(t)=\theta(t)-\theta_0$,$\theta_j=\theta_0+\frac{j\pi}{3}$($j=1,2$)とおく。
  • 2直線 $L,L'$ のなす角を $\angle(L,L')\in\left[0,\frac{\pi}{2}\right]$ と書く。方向角が $\alpha,\beta$($|\alpha-\beta| < \pi$)の2直線については $\angle(L,L')=\min\lbrace|\alpha-\beta|,\ \pi-|\alpha-\beta|\rbrace$ である。
  • $\mathrm{P},\mathrm{Q}$ の $x$ 座標を $p,q$ とする。条件 $(\ast)$ は $p\neq0$,$q\neq0$,$p\neq q$ を含む。
  • $t\neq0$ に対し $\mathrm{A}_t=\ell_t\cap\ell_0$ とする( 補題3 で一意に定まることを示す)。
  • 図形 $F$ の面積を $[F]$ と書く。
    1. では,$k > \frac{1}{\sqrt3}$ のもとで $\theta(a)=\theta_1$,$\theta(b)=\theta_2$ を満たす正の数を $a,b$ とする( 補題1 により一意で,$0 < a < b$)。

1.2 方向と位置の分離

接線の一般形 $y=f'(t)x+\lbrace f(t)-tf'(t)\rbrace$ において,傾き(方向)$3t^2-k$ は $t$ の偶関数,切片(位置)$-2t^3$ は $t$ の奇関数である。したがって $\ell_{-t}$ は $\ell_t$ を原点に関して点対称移動した直線であり,$t\neq0$ ならば $\ell_t\parallel\ell_{-t}$,$\ell_t\neq\ell_{-t}$ である。

方向角の単調性と到達範囲

関数 $z\mapsto\arctan(3z-k)$ は区間 $(0,\infty)$ から区間 $\left(\theta_0,\dfrac{\pi}{2}\right)$ への連続な狭義単調増加の全単射である。$\theta(t)$ はこれに $z=t^2$ を代入したものであり,特に $t\neq0$ ならば $\theta_0 < \theta(t) < \dfrac{\pi}{2}$ である。

$z\mapsto3z-k$ は $(0,\infty)$ から $(-k,\infty)$ への,$\arctan$ は $(-k,\infty)$ から $\left(-\arctan k,\frac{\pi}{2}\right)=\left(\theta_0,\frac{\pi}{2}\right)$ への,それぞれ連続な狭義単調増加の全単射である。両者の合成として主張を得る。

原点 $\mathrm{O}$ は $C$ の変曲点であり,$\ell_0$ の傾き $-k$ は $f'$ の最小値,すなわちすべての接線の傾きの最小値である。 補題1 は,原点以外の接線の方向が $\ell_0$ の方向から正の向きにのみ回転し,その回転量が $\frac{\pi}{2}-\theta_0$ 未満に限られることを述べている。

1.3 等角配置の剛性

三直線の等角配置

どの2本も平行でない3直線 $L_0,L_1,L_2$ について,次の (i)(ii)(iii) は同値である。
(i) どの2本のなす角も等しい。
(ii) どの2本のなす角も $\dfrac{\pi}{3}$ である。
(iii) $L_0$ の方向角を $\alpha$ とすると,$L_1,L_2$ の方向角は $\pi$ を法として $\alpha+\dfrac{\pi}{3},\ \alpha+\dfrac{2\pi}{3}$(順不同)に合同である。
さらにこのとき,3直線が1点で交わらなければ,それらが囲む三角形は正三角形である。

方向角を $\pi$ を法として考えると,3直線の方向は周長 $\pi$ の円 $\mathbb{R}/\pi\mathbb{Z}$ 上の相異なる3点である。2点 $L_i,L_j$ を結ぶ2つの弧のうち,第3の点を含まない方の長さを $\delta_{ij}$ とすると,$\delta_{01}+\delta_{12}+\delta_{20}=\pi$ であり,もう一方の弧の長さは $\pi-\delta_{ij}$ であるから
$$ \angle(L_i,L_j)=\min\lbrace\delta_{ij},\ \pi-\delta_{ij}\rbrace. $$
(i)$\Rightarrow$(iii):共通の角を $\gamma\in\left(0,\frac{\pi}{2}\right]$ とすると,各 $\delta_{ij}$ は $\gamma$ または $\pi-\gamma$ に等しい。$\pi-\gamma$ に等しいものの個数を $\nu$ とすると,弧の長さの和から $(3-\nu)\gamma+\nu(\pi-\gamma)=\pi$,すなわち $(3-2\nu)\gamma=(1-\nu)\pi$ である。$\nu=0,1,2,3$ に対してこれは $\gamma=\frac{\pi}{3},\,0,\,\pi,\,\frac{2\pi}{3}$ を与え,$\gamma\in\left(0,\frac{\pi}{2}\right]$ を満たすのは $\nu=0$,$\gamma=\frac{\pi}{3}$ のみである。よって3つの弧の長さはすべて $\frac{\pi}{3}$ であり,(iii) が成り立つ。
(iii)$\Rightarrow$(ii):3点が間隔 $\frac{\pi}{3}$ で並ぶから $\delta_{ij}=\frac{\pi}{3}$,ゆえになす角はすべて $\frac{\pi}{3}$ である。(ii)$\Rightarrow$(i) は定義から従う。
最後に,3直線が1点で交わらなければ,2本ずつの交点は相異なり三角形をなす。各頂点の内角は,そこで交わる2直線のなす角 $\frac{\pi}{3}$ またはその補角 $\frac{2\pi}{3}$ である。内角の和は $\pi$ であるから,一つでも $\frac{2\pi}{3}$ があれば残り2角の和が $\frac{\pi}{3}$ となって矛盾する。よって内角はすべて $\frac{\pi}{3}$ である。

本問に適用する。条件 $(\ast)$ の下で $p,q\neq0$ だから, 補題1 より $\theta(p),\theta(q)\in\left(\theta_0,\frac{\pi}{2}\right)\subset[\theta_0,\theta_0+\pi)$ である。区間 $[\theta_0,\theta_0+\pi)$ は $\mathbb{R}/\pi\mathbb{Z}$ の代表系であり,$\theta_1,\theta_2$ もこの区間に属するから, 補題2 (iii) の合同は等号となる。
$$ (\ast)\ \Longrightarrow\ \lbrace\theta(p),\theta(q)\rbrace=\lbrace\theta_1,\theta_2\rbrace=\left\lbrace\theta_0+\frac{\pi}{3},\ \theta_0+\frac{2\pi}{3}\right\rbrace. $$
すなわち $\ell_0$ は3方向のうち最小の方向角をもち,残る2方向は確定する。(1) は $\theta_2$ が到達範囲 $\left(\theta_0,\frac{\pi}{2}\right)$ に入るかという一点に帰着する。また 補題2 は,3直線のなす角が「すべて等しい」というだけでその値が $\frac{\pi}{3}$ に限られることを示している。

1.4 原点の接線との関係

原点の接線との交点と方向角の増分

$t\neq0$ とする。
(a) $\ell_t$ と $\ell_0$ はただ1点で交わり,$\mathrm{A}_t=\left(\dfrac{2t}{3},\ -\dfrac{2kt}{3}\right)$ である。
(b) $0 < \phi(t) < \pi$ であり,$\cot\phi(t)=\dfrac{1+k^2}{3t^2}-k$ である。
(c) $3t^2\cos\theta(t)\cos\theta_0=\sin\phi(t)$ である。

(a) 2直線の傾きの差は $3t^2\neq0$ である。連立すると $3t^2x=2t^3$ より $x=\frac{2t}{3}$。
(b) 補題1 と $\theta_0 > -\frac{\pi}{2}$ より $0 < \phi(t) < \pi$。$\tan\theta(t)=3t^2-k$,$\tan\theta_0=-k$ は相異なるから
$$ \cot\phi(t)=\frac{1+\tan\theta(t)\tan\theta_0}{\tan\theta(t)-\tan\theta_0}=\frac{1-k(3t^2-k)}{3t^2}=\frac{1+k^2}{3t^2}-k. $$
(c) 恒等式 $\tan\theta(t)-\tan\theta_0=\dfrac{\sin(\theta(t)-\theta_0)}{\cos\theta(t)\cos\theta_0}$ の左辺は $3t^2$ に等しい。

(a) は,$\ell_0$ 上の交点が接点の $x$ 座標に比例すること(比例定数 $\frac23$)を示す。これは $f$ が単項式 $x^3$ と一次式の和であることによる同次性の帰結である( 5.7 節 )。(b) は角度条件を $\frac{1}{t^2}$ の一次式に翻訳する。(c) は角度条件を正弦の条件に翻訳し,$\sin\frac{\pi}{3}=\sin\frac{2\pi}{3}$ であるから,方向角 $\theta_1,\theta_2$ をもつ二つの接線の接点について $t^2\cos\theta(t)$ の値が一致することを導く( 3.1 節 , 3.8 節 )。

1.5 自由度の離散化と二つの比

$k > \frac{1}{\sqrt3}$ のとき, 1.3 節 と 補題1 により,$\mathrm{P},\mathrm{Q}$ を適当に入れ替えれば
$$ (\ast)\iff p\in\lbrace a,-a\rbrace,\ \ q\in\lbrace b,-b\rbrace $$
である(逆向きの証明は 2.2 節 )。角度条件は,固定された $k$ に対して自由度を「二つの符号」まで減らす。点対称移動 $(p,q)\mapsto(-p,-q)$ は面積を保つから,$S$ のとる値は「$p,q$ が同符号」と「異符号」の高々2つであり,$M,m$ の決定は2値の比較である。微分は不要である。
答は次の二つの関係(証明は 2.2 節 )を結ぶことで得られる。
$$ \frac{b^2}{a^2}=\frac{\sqrt3\,k+1}{\sqrt3\,k-1} \tag{K} $$
$$ \frac{M}{m}=\left(\frac{a+b}{b-a}\right)^2 \tag{R} $$
(K) は角度条件(計量的条件)から,(R) は面積比(アフィン不変量)から生じる。(R) は角度 $\frac{\pi}{3}$ を用いず,平行線 $\ell_b\parallel\ell_{-b}$ による相似だけからも導かれる( 3.2 節 , 3.4 節 )。$k\in\left(\frac{1}{\sqrt3},\infty\right)$ と $\frac ba\in(1,\infty)$,$\frac ba\in(1,\infty)$ と $\frac{M}{m}\in(1,\infty)$ は,(K)(R) によりそれぞれ一対一に対応する。本問は二つの一対一対応の合成
$$ k\ \overset{\text{(K)}}{\longleftrightarrow}\ \frac{b}{a}\ \overset{\text{(R)}}{\longleftrightarrow}\ \frac{M}{m} $$
であり,$M=4m$ は (R) により $b=3a$ に,(K) により $\sqrt3\,k=\frac{9+1}{9-1}=\frac54$ に翻訳される。

1.6 非退化性と $S=0$ の規定

条件 $(\ast)$ の下では $p\neq q$ であるから, 補題3 (a) より $\mathrm{A}_p\neq\mathrm{A}_q$ である。3本の接線が1点 $\mathrm{X}$ で交われば $\mathrm{X}\in\ell_0\cap\ell_p=\lbrace\mathrm{A}_p\rbrace$ かつ $\mathrm{X}\in\ell_0\cap\ell_q=\lbrace\mathrm{A}_q\rbrace$ となるから,3本は1点で交わらない。したがって 補題2 より3本の接線は常に正三角形を囲み,$S > 0$ である。問題文の「$S=0$ とする」という規定は本問では適用されない。ただし,共点配置が起こりうるなら $m=0$ となり,$M=4m$ は $M=0$ を要求することになる。非退化性 $m > 0$ の確認は (2) の論証に不可欠である。

1.7 作問の設計

以下は数値設定からの分析であり,出題意図についての推定を含む。

  • 原点を変曲点とする三次関数:$\ell_0$ の傾き $-k$ が傾きの最小値であるため,3方向の順序が $\theta_0 < \theta_1 < \theta_2$ に固定される( 補題1 )。(1) は到達範囲の判定 $\theta_0+\frac{2\pi}{3} < \frac{\pi}{2}$ に帰着し,境界 $k=\frac{1}{\sqrt3}$ では必要な方向が鉛直になって有限の点の接線では実現しないので,不等号は厳密である。
  • 奇関数:傾きは偶関数,切片は奇関数である。角度条件で $|p|,|q|$ が確定した後に残る自由度は符号のみであり,「最大値・最小値」は2値の比較になる。連続的な最適化問題の外見と離散的な実体との差が,本問の第一の関門である。
  • 角 $\frac{\pi}{3}$:等角条件から必然的に定まる値であり( 1.3 節 ),三角形の形を正三角形に固定する。形が固定されるので面積は一辺の長さの2乗に比例する。さらに $\cot\frac{\pi}{3}=-\cot\frac{2\pi}{3}$,$\sin\frac{\pi}{3}=\sin\frac{2\pi}{3}$ という対称性が (K) を簡潔にする。
  • 単項式の同次性:交点 $\mathrm{A}_t$ の $x$ 座標が $\frac23t$ と $t$ に比例するため,一辺の長さは $|p-q|$ に比例し,(R) は $k$ を陽に含まない。
  • 数値 $4$:$M:m=4:1$ から,辺の比 $2:1$,接点の比 $b:a=3:1$,$b^2:a^2=9:1$,$\sqrt3\,k=\frac{9+1}{9-1}=\frac54$ と,各段階が整数比で進む。$\frac54$ は $4$ と $1$ の相加平均と相乗平均の比に等しい( 3.3 節 )。
  • $S=0$ の規定:定義を完全にするための規定であるが,本問では生じない。そのことの証明が答案に求められる( 1.6 節 )。一般の奇関数では共点配置が起こりうる( 5.7 節 )。
  • 「どの2本も交わり」:なす角が $\frac{\pi}{3}\neq0$ であることから従う確認的な条件である。

1.8 構造から導かれる解法

着目する構造数学的翻訳対応する解法
傾きの最小性と単調性方向角の到達範囲本解 (1)
正三角形$\ell_0$ 上の一辺本解 (2)
正接の差$\tan\theta-\tan\theta_0=\frac{\sin(\theta-\theta_0)}{\cos\theta\cos\theta_0}$3.1 節
原点対称な平行線の2組平行四辺形の正方形化3.2 節
(K)(R) の一次分数構造$r+\frac1r=2\sqrt3\,k$3.3 節
$\ell_t\parallel\ell_{-t}$,余接の一次性中心相似,$\frac{1}{t^2}$ の一次関数別解1
角度条件の代数化,$\ell_0$ を軸とするせん断$t^2$ の二次方程式,面積保存変換別解2
3方向の等間隔性$\tan3\theta$ の周期性参考解1
接線の集合双対曲線と行列式参考解2
単位法線の和が $\boldsymbol 0$有向支持数,Viviani の定理参考解3

2. 本解:方向角の単調性と正三角形の辺長

2.1 方針

  1. は 補題1 ・ 補題2 により3本の接線の方向を $\theta_0,\theta_1,\theta_2$ に固定し,$\theta_2$ の到達可能性を調べる。(2) は 補題3 (b) から (K) を導き,$\ell_0$ 上の2交点 $\mathrm{A}_p,\mathrm{A}_q$ の距離を正三角形の一辺として $S$ を $p,q$ で表す。$M,m$ は符号の選択で決まり,$M=4m$ を $b=3a$ に翻訳して (K) に代入する。

2.2 解答

(1)

条件 $(\ast)$ が成り立つとする。 1.3 節 より $\lbrace\theta(p),\theta(q)\rbrace=\lbrace\theta_1,\theta_2\rbrace$ であり, 補題1 より $\theta_2=\theta_0+\frac{2\pi}{3} < \frac{\pi}{2}$,すなわち $-\arctan k < -\frac{\pi}{6}$ である。よって $k > \frac{1}{\sqrt3}$。
逆に $k > \frac{1}{\sqrt3}$ とすると $\theta_0 < \theta_1 < \theta_2 < \frac{\pi}{2}$ であり, 補題1 より $\theta(a)=\theta_1$,$\theta(b)=\theta_2$ を満たす $0 < a < b$ が存在する。$p=a$,$q=b$ とすれば $\mathrm{O},\mathrm{P},\mathrm{Q}$ は相異なる。3本の接線の方向角 $\theta_0,\theta_1,\theta_2$ の差は $\frac{\pi}{3}$ または $\frac{2\pi}{3}$ であるから,どの2本も平行でなく,なす角はすべて $\frac{\pi}{3}$ である。
$$ \text{(1) の答:}\quad k > \frac{1}{\sqrt3}\ \left(=\frac{\sqrt3}{3}\right). $$

(2)

$k > \frac{1}{\sqrt3}$ とする。 補題1 より $\theta(t)=\theta_1\iff|t|=a$,$\theta(t)=\theta_2\iff|t|=b$ である。したがって (1) の議論と合わせて,$\mathrm{P},\mathrm{Q}$ を適当に入れ替えれば
$$ (\ast)\iff p\in\lbrace a,-a\rbrace,\ \ q\in\lbrace b,-b\rbrace $$
が成り立つ($\Leftarrow$ は,方向角が $|t|$ のみで決まるので (1) の後半の議論がそのまま適用できることによる)。

角度の関係

$\phi(a)=\frac{\pi}{3}$,$\phi(b)=\frac{2\pi}{3}$ を 補題3 (b) に代入すると
$$ \frac{1+k^2}{3a^2}-k=\frac{1}{\sqrt3},\qquad \frac{1+k^2}{3b^2}-k=-\frac{1}{\sqrt3}, $$
すなわち
$$ (3k+\sqrt3)\,a^2=(3k-\sqrt3)\,b^2=1+k^2. $$
$3k-\sqrt3 > 0$ であるから,両辺の比をとって (K) を得る。

面積

補題3 (a) より $\mathrm{A}_p=\left(\frac{2p}{3},-\frac{2kp}{3}\right)$,$\mathrm{A}_q=\left(\frac{2q}{3},-\frac{2kq}{3}\right)$ である。 1.6 節 より3本の接線は1点で交わらず, 補題2 よりそれらは正三角形を囲む。その一辺は $\ell_0$ 上の線分 $\mathrm{A}_p\mathrm{A}_q$ であり
$$ \mathrm{A}_p\mathrm{A}_q=\sqrt{\left(\frac{2(p-q)}{3}\right)^2+\left(\frac{2k(p-q)}{3}\right)^2}=\frac23\sqrt{1+k^2}\,|p-q|. $$
よって
$$ S=\frac{\sqrt3}{4}\,\mathrm{A}_p\mathrm{A}_q^{\,2}=\frac{\sqrt3}{9}(1+k^2)(p-q)^2. $$
$|p-q|$ は,$p,q$ が同符号のとき $b-a$,異符号のとき $a+b$ であり,いずれの場合も実現する。$0 < b-a < a+b$ であるから
$$ m=\frac{\sqrt3}{9}(1+k^2)(b-a)^2 > 0,\qquad M=\frac{\sqrt3}{9}(1+k^2)(a+b)^2 $$
であり,(R) が成り立つ。

$k$ の決定

$a+b > 0$,$b-a > 0$ であるから
$$ M=4m\iff(a+b)^2=4(b-a)^2\iff a+b=2(b-a)\iff b=3a. $$
$a,b > 0$ より $b=3a\iff\frac{b^2}{a^2}=9$ であり,(K) と $\sqrt3\,k-1 > 0$ より
$$ \frac{\sqrt3\,k+1}{\sqrt3\,k-1}=9\iff 8\sqrt3\,k=10\iff k=\frac{5}{4\sqrt3}=\frac{5\sqrt3}{12}. $$
$\frac{5\sqrt3}{12} > \frac{4\sqrt3}{12}=\frac{1}{\sqrt3}$ であり,この値は (1) の範囲にある。以上はすべて同値変形であるから,$M=4m$ となる $k$ はこの値ただ一つである。
$$ \text{(2) の答:}\quad k=\frac{5\sqrt3}{12}. $$

2.3 検証・検算

  • 具体値:$k=\frac{5\sqrt3}{12}$ のとき $\sqrt3\,k=\frac54$,$1+k^2=\frac{73}{48}$,$3k+\sqrt3=\frac{9\sqrt3}{4}$,$3k-\sqrt3=\frac{\sqrt3}{4}$ であり,$a^2=\frac{73\sqrt3}{324}$,$b^2=\frac{73\sqrt3}{36}=9a^2$ となる。
  • 傾きの照合:3本の接線の傾きは $-k=-\frac{5\sqrt3}{12}$,$3a^2-k=\frac{7\sqrt3}{27}$,$3b^2-k=\frac{17\sqrt3}{3}$ である。加法定理による $\tan\theta_1=\frac{\sqrt3-k}{1+\sqrt3\,k}=\frac{7\sqrt3}{27}$,$\tan\theta_2=\frac{-\sqrt3-k}{1-\sqrt3\,k}=\frac{17\sqrt3}{3}$ と一致する。数値では $\theta_0\approx-35.82^\circ$,$\theta_1\approx24.18^\circ$,$\theta_2\approx84.18^\circ$ である。
  • 面積の値:$m=\frac{\sqrt3}{9}\cdot\frac{73}{48}\cdot4a^2=\frac{5329}{11664}$,$M=4m=\frac{5329}{2916}$。せん断変換による独立な公式( 3.5 節 )でも $m=\frac23a^2b^2\cdot\frac{b-a}{b+a}=3a^4=\frac{5329}{11664}$ となる。
  • 境界の挙動:$k\downarrow\frac{1}{\sqrt3}$ のとき $\theta_2\uparrow\frac{\pi}{2}$,$b\to\infty$ で $\frac{M}{m}\to1$。$k\to\infty$ のとき (K) より $\frac{b^2}{a^2}\to1$ で $\frac{M}{m}\to\infty$。$\frac{M}{m}$ は $k$ について狭義単調増加であり( 3.3 節 ),解の一意性と整合する。
  • 交点の位置:$\ell_0$ 上の交点の $x$ 座標は $t$ ではなく $\frac{2t}{3}$ である。係数 $\frac23$ は $\frac{M}{m}$ に影響しないが,$M,m$ の値には影響する。
  • 恒等式による照合:$\frac{M+m}{2\sqrt{Mm}}=\frac{5m}{4m}=\frac54=\sqrt3\,k$ となり, 3.3 節 の関係式と一致する。

3. 別解と参考解

3.1〜3.3 節は特定の段階に対する別証,3.4〜3.5 節は高校数学の範囲で完結する別解,3.6〜3.8 節は発展的な視点に立つ参考解である。

3.1 角度条件の別処理:正接の差の公式

着想・方針

補題2 より,$\ell_p,\ell_q$ の方向は $\pi$ を法として $\theta_1,\theta_2$ である。傾き $s$ の直線と平行な接線 $\ell_t$($t\neq0$)が存在する条件は $s+k=3t^2 > 0$ であり,$s+k$ は正接の差の公式により余弦の符号に翻訳される。方向角の単調性( 補題1 )を用いずに (1) を解き,あわせて (K) を余弦の比として導く。

解答

(1)

方向角 $\psi$ をもつ直線に平行な接線 $\ell_t$($t\neq0$)が存在するための必要十分条件は,$\cos\psi\neq0$ かつ $\tan\psi+k > 0$ である。$\cos\psi\neq0$ のとき
$$ \tan\psi+k=\tan\psi-\tan\theta_0=\frac{\sin(\psi-\theta_0)}{\cos\psi\cos\theta_0}. $$
$\psi=\theta_j$($j=1,2$)では $\sin(\theta_j-\theta_0)=\sin\frac{j\pi}{3}=\frac{\sqrt3}{2} > 0$,$\cos\theta_0 > 0$ であるから,必要な2方向がともに接線として実現する条件は
$$ \cos\theta_1 > 0\quad\text{かつ}\quad\cos\theta_2 > 0 $$
である。$\theta_0\in\left(-\frac{\pi}{2},\frac{\pi}{2}\right)$ より $\theta_1\in\left(-\frac{\pi}{6},\frac{5\pi}{6}\right)$,$\theta_2\in\left(\frac{\pi}{6},\frac{7\pi}{6}\right)$ であり,$\cos\theta_1 > 0\iff\theta_0 < \frac{\pi}{6}$,$\cos\theta_2 > 0\iff\theta_0 < -\frac{\pi}{6}$。よって条件は $\theta_0 < -\frac{\pi}{6}$,すなわち $k > \frac{1}{\sqrt3}$ である。このとき $t_j=\sqrt{(\tan\theta_j+k)/3}$ とおけば $\ell_{t_1},\ell_{t_2}$ の方向は $\theta_1,\theta_2$ であり, 補題2 (iii)$\Rightarrow$(ii) より条件 $(\ast)$ が成り立つ。

(K) の導出と $k$ の決定

$\psi=\theta_1,\theta_2$ に対応する接点の $|t|$ が $a,b$ であるから,$\tan\theta_j+k=3t^2$ より
$$ 3a^2\cos\theta_1\cos\theta_0=3b^2\cos\theta_2\cos\theta_0=\frac{\sqrt3}{2},\qquad\text{よって}\qquad \frac{b^2}{a^2}=\frac{\cos\theta_1}{\cos\theta_2}. $$
和積公式 $\cos\theta_0+\cos\theta_2=2\cos\theta_1\cos\frac{\pi}{3}=\cos\theta_1$ を用いると $\frac{b^2}{a^2}=1+\frac{\cos\theta_0}{\cos\theta_2}$ である。$b=3a$ のとき
$$ \cos\theta_0=8\cos\left(\theta_0+\frac{2\pi}{3}\right)=-4\cos\theta_0-4\sqrt3\sin\theta_0\iff5\cos\theta_0=-4\sqrt3\sin\theta_0 $$
であり,$k=-\tan\theta_0=\frac{5}{4\sqrt3}$ を得る。

検証・検算

$\cos\theta_0=\frac{1}{\sqrt{1+k^2}}$,$\sin\theta_0=-\frac{k}{\sqrt{1+k^2}}$ より
$$ \cos\theta_1=\frac{1+\sqrt3\,k}{2\sqrt{1+k^2}},\qquad\cos\theta_2=\frac{\sqrt3\,k-1}{2\sqrt{1+k^2}} $$
であり,$\frac{\cos\theta_1}{\cos\theta_2}$ は (K) の右辺に一致する。$\cos\theta_2 > 0\iff\sqrt3\,k > 1$ は (1) の答と一致する。恒等式 $\cos\theta_1=\cos\theta_0+\cos\theta_2$ は,単位ベクトル $\boldsymbol e(\theta)=(\cos\theta,\sin\theta)$ の関係 $\boldsymbol e(\theta_0)+\boldsymbol e(\theta_0+\frac{2\pi}{3})=\boldsymbol e(\theta_0+\frac{\pi}{3})$(単位円に内接する正六角形の辺ベクトルの関係)の第1成分である。

3.2 (R) の他の導出:四接線の正方形化

着想・方針

4本の接線 $\ell_{\pm a},\ell_{\pm b}$ は原点を中心とする平行四辺形 $\mathcal{P}$ を囲む。これを可逆な一次変換で正方形に移すと,面積比の計算は「正方形を中心を通る直線で切る」問題になる。一次変換は面積比を保つ(角は保たない)から,角度条件は変換前に処理し,変換後は面積比のみを扱う。

解答

$$ U=\frac{y-(3a^2-k)x}{2a^3},\qquad V=\frac{y-(3b^2-k)x}{2b^3} $$
とおく。$(x,y)\mapsto(U,V)$ は線形で,そのヤコビアンは
$$ J=\det\begin{pmatrix}-\dfrac{3a^2-k}{2a^3}&\dfrac{1}{2a^3}\\[2mm]-\dfrac{3b^2-k}{2b^3}&\dfrac{1}{2b^3}\end{pmatrix}=\frac{3(b^2-a^2)}{4a^3b^3} > 0 $$
である。$\ell_{\pm a}:\ U=\mp1$,$\ell_{\pm b}:\ V=\mp1$ となり,$\mathcal{P}$ は正方形 $\lbrace|U|\leqq1,\ |V|\leqq1\rbrace$ に移る。$\ell_0$ 上では $U=-\frac{3x}{2a}$,$V=-\frac{3x}{2b}$ であるから,$\rho=\frac ab\in(0,1)$ として $\ell_0:\ V=\rho U$ である。
$\ell_0,\ell_a,\ell_b$ は $V=\rho U$,$U=-1$,$V=-1$ に移り,頂点 $(-1,-1)$,$(-1,-\rho)$,$\left(-\frac1\rho,-1\right)$ の直角三角形を囲む。その面積は $\frac12(1-\rho)\cdot\frac{1-\rho}{\rho}=\frac{(1-\rho)^2}{2\rho}$ である。$\ell_0,\ell_a,\ell_{-b}$ は $V=\rho U$,$U=-1$,$V=1$ に移り,頂点 $(-1,1)$,$(-1,-\rho)$,$\left(\frac1\rho,1\right)$,面積 $\frac{(1+\rho)^2}{2\rho}$ の直角三角形を囲む。残る2配置はこれらの点対称移動である。元の平面の面積はこれらの $\frac1J$ 倍であるから
$$ \frac{M}{m}=\left(\frac{1+\rho}{1-\rho}\right)^2=\left(\frac{b+a}{b-a}\right)^2. $$

検証・検算

  • $M-m=\frac1J\cdot\frac{(1+\rho)^2-(1-\rho)^2}{2\rho}=\frac2J$。$[\mathcal{P}]=\frac4J$ であるから $M-m=\frac12[\mathcal{P}]$ となり,これは $\rho$ によらない( 5.4 節 )。
  • $\sqrt{Mm}=\frac1J\cdot\frac{1-\rho^2}{2\rho}=\frac23a^2b^2$。別解2 の公式( 3.5 節 )から得られる値と一致する。
  • $\ell_0$ と $\ell_{\pm a},\ell_{\pm b}$ の交点の $x$ 座標 $\pm\frac{2a}{3},\pm\frac{2b}{3}$ が等間隔に並ぶ条件は $\frac23(b-a)=\frac43a$,すなわち $b=3a$ である。したがって $M=4m$ は「$\ell_0$ 上の4交点が等間隔に並ぶこと」と同値である。正方形の上では,交点 $U=\pm1,\pm\frac1\rho$ の等間隔性 $\rho=\frac13$ に当たる。
  • この導出は角度条件を用いない。4本の平行線 $\ell_{\pm a},\ell_{\pm b}$ と $\ell_0$ が作る2種類の三角形の面積比として,(R) は任意の $0 < a < b$ について成り立つ。

3.3 $k$ の他の導出:面積比の逆数対称性

着想・方針

(K)(R) はともに $\frac ba$ の一次分数式で表される。$\frac ba$ を消去すれば $k$ と $\frac{M}{m}$ の直接の関係が得られ,$a,b$ を経由せずに $M=4m$ を代入できる。

解答

$r=\sqrt{\frac{M}{m}}=\frac{a+b}{b-a} > 1$ とおく。(K) より $\frac{a^2+b^2}{b^2-a^2}=\frac{b^2/a^2+1}{b^2/a^2-1}=\sqrt3\,k$ であるから
$$ r+\frac1r=\frac{(a+b)^2+(b-a)^2}{b^2-a^2}=\frac{2(a^2+b^2)}{b^2-a^2}=2\sqrt3\,k, $$
すなわち
$$ \sqrt3\,k=\frac{M+m}{2\sqrt{Mm}}. $$
$M=4m$ ならば $r=2$ であり,$\sqrt3\,k=\frac12\left(2+\frac12\right)=\frac54$,$k=\frac{5\sqrt3}{12}$ を得る。

検証・検算

  • 一般に $\mu=\frac{M}{m} > 1$ とおくと $k=\frac{\mu+1}{2\sqrt{3\mu}}$ である。$x\mapsto x+\frac1x$ は $x > 1$ で狭義単調増加であるから,$\mu\in(1,\infty)$ と $k\in\left(\frac{1}{\sqrt3},\infty\right)$ は一対一に対応し,逆に $\frac{M}{m}=\left(\sqrt3\,k+\sqrt{3k^2-1}\right)^2$ である。$k\downarrow\frac{1}{\sqrt3}$ で $\mu\to1$,$k\to\infty$ で $\mu\to\infty$。
  • $\sqrt3\,k$ は $M,m$ の相加平均と相乗平均の比であり,$\sqrt3\,k > 1$ は相加・相乗平均の不等式($M > m$ より等号不成立)と整合する。ただし,この不等式は (1) の十分性を与えない。十分性は方向角の到達範囲による。
  • 同値な形として $\frac{M-m}{M+m}=\frac{r^2-1}{r^2+1}=\sqrt{1-\frac{1}{3k^2}}$,$\frac{M}{m}+\frac{m}{M}+2=12k^2$ がある。$M=4m$ のとき前者は $\frac35$ となり,$k^2=\frac{25}{48}$ を与える。

3.4 別解1:平行接線の相似と余接の一次関数化

着想・方針

$\ell_b\parallel\ell_{-b}$ を用いて,2種類の三角形の面積比を中心相似の相似比として求める。正三角形の性質も面積の値も用いない。角度条件は 補題3 (b) により $X=\frac{1}{t^2}$ の一次関数として扱い,$k$ を直線の切片として読み取る。$a,b$ の値は求めない。

解答

(1)

$X=\frac{1}{t^2}$,$Y=\cot\phi(t)$ とおくと, 補題3 (b) より
$$ Y=\frac{1+k^2}{3}X-k. $$
$t\neq0$ を動かすと $X$ は $(0,\infty)$ 全体を動き,傾き $\frac{1+k^2}{3}$ は正であるから,$Y$ の値域は $(-k,\infty)$ である。$\cot$ は $(0,\pi)$ で狭義単調減少であるから,$\phi$ が値 $\frac{\pi}{3},\frac{2\pi}{3}$ をとる条件は $\frac{1}{\sqrt3},\,-\frac{1}{\sqrt3}\in(-k,\infty)$,すなわち $k > \frac{1}{\sqrt3}$ である。 1.3 節 と 補題2 (iii)$\Rightarrow$(ii) より $(\ast)$ は $\lbrace\phi(p),\phi(q)\rbrace=\left\lbrace\frac{\pi}{3},\frac{2\pi}{3}\right\rbrace$ と同値であるから,これが (1) の答である。

(2)

$0 < a < b$ を $\phi(a)=\frac{\pi}{3}$,$\phi(b)=\frac{2\pi}{3}$ で定める。
面積比:$\ell_0,\ell_a,\ell_b$ が囲む三角形を $\mathcal{T}_1$,$\ell_0,\ell_a,\ell_{-b}$ が囲む三角形を $\mathcal{T}_2$ とする( 補題3 (a) と $\pm b\neq a$ より,いずれも1点で交わらない3直線が囲む三角形である)。$\ell_0$ 上の点 $\mathrm{A}_a$ を中心とし,$\mathrm{A}_b$ を $\mathrm{A}_{-b}$ に移す相似変換を $\Phi$ とする。3点の $x$ 座標は $\frac{2a}{3},\frac{2b}{3},-\frac{2b}{3}$ であるから,$\Phi$ の符号付き相似比は
$$ \lambda=\frac{-\frac{2b}{3}-\frac{2a}{3}}{\frac{2b}{3}-\frac{2a}{3}}=-\frac{a+b}{b-a}. $$
$\Phi$ は中心を通る直線 $\ell_0,\ell_a$ をそれぞれ自身に移し,$\ell_b$ を $\mathrm{A}_{-b}$ を通る平行線,すなわち $\ell_{-b}$ に移す。よって $\Phi(\mathcal{T}_1)=\mathcal{T}_2$ であり
$$ \frac{[\mathcal{T}_2]}{[\mathcal{T}_1]}=\lambda^2=\left(\frac{a+b}{b-a}\right)^2 > 1. $$
$(\ast)$ を満たす4配置のうち,$(p,q)=(a,b),(-a,-b)$ は互いに点対称で面積 $[\mathcal{T}_1]$,$(a,-b),(-a,b)$ は互いに点対称で面積 $[\mathcal{T}_2]$ である。よって $m=[\mathcal{T}_1] > 0$,$M=[\mathcal{T}_2]$ で (R) が成り立ち,$M=4m\iff\frac{a+b}{b-a}=2\iff b=3a$ である。
$k$ の決定:$\eta=\frac{1}{b^2}$ とおくと,$b=3a$ より $\frac{1}{a^2}=9\eta$ である。直線 $Y=\frac{1+k^2}{3}X-k$ は2点 $\left(\eta,-\frac{1}{\sqrt3}\right)$,$\left(9\eta,\frac{1}{\sqrt3}\right)$ を通る。$X$ が $8\eta$ 増すと $Y$ は $\frac{2}{\sqrt3}$ 増すから,$X$ が $\eta$ 減ると $Y$ は $\frac{1}{4\sqrt3}$ 減る。よって $Y$ 切片は
$$ -k=-\frac{1}{\sqrt3}-\frac{1}{4\sqrt3}=-\frac{5}{4\sqrt3},\qquad k=\frac{5}{4\sqrt3}=\frac{5\sqrt3}{12}. $$
逆にこの $k$ では,直線が $Y=\pm\frac{1}{\sqrt3}$ をとる $X$ の値の比が $\frac{k+1/\sqrt3}{k-1/\sqrt3}=9$ となり,$\frac{1/a^2}{1/b^2}=9$,すなわち $b=3a$ が成り立つ。

検証・検算

  • $\frac ba=\sigma$ が一般のとき,同じ計算で $Y$ 切片は $-\frac{1}{\sqrt3}\cdot\frac{\sigma^2+1}{\sigma^2-1}$ となる。これは (K) と同値である。$\sigma=3$ で $-\frac{1}{\sqrt3}\cdot\frac{10}{8}$ となり,上の結果と一致する。
  • 相似の議論は角度 $\frac{\pi}{3}$ を用いないから,(R) は角度条件と独立に成り立つ( 3.2 節 と整合)。
  • $\phi(b)=\frac{2\pi}{3}$ に対しては $\cot\phi(b)=-\frac{1}{\sqrt3} < 0$ である。$\phi$ を2直線のなす角(鋭角)と取り違えると符号を誤る。

3.5 別解2:角度の二次方程式とせん断変換

着想・方針

なす角の公式から $z=t^2$ の二次方程式を作り,(1) を相異なる2つの正の根の存在に,(2) の $k$ の決定を解と係数の関係に帰着させる。面積は,$\ell_0$ を横軸に移す面積保存のせん断変換のもとで交点を直接求めて計算する。正三角形の性質を用いない。

解答

(1)

$t\neq0$,$z=t^2 > 0$ とし,$D=1+k^2-3kz$ とおく。傾き $-k$ と $3z-k$ の2直線について,$D=0$ なら直交し,$D\neq0$ ならなす角の正接は $\frac{3z}{|D|}$ である。よってなす角が $\frac{\pi}{3}$ である条件は $3z=\sqrt3\,|D|$ であり(このとき $z > 0$ から $D\neq0$ が従う),両辺が非負であることから $9z^2=3D^2$ と同値である。整理して
$$ G(z):=3(3k^2-1)z^2-6k(1+k^2)z+(1+k^2)^2=0. $$
$(\ast)$ が成り立てば $p^2,q^2$ は $G$ の正の根であり,$\ell_p\not\parallel\ell_q$ より $p^2\neq q^2$ である。逆に $G$ が相異なる正の根 $u < v$ をもてば,$p=\sqrt u$,$q=\sqrt v$ に対して $\ell_p,\ell_q$ はともに $\ell_0$ と $\frac{\pi}{3}$ の角をなし, 補題3 (b) の $0 < \phi < \pi$ より $\phi(p),\phi(q)\in\left\lbrace\frac{\pi}{3},\frac{2\pi}{3}\right\rbrace$。 補題1 より $\phi$ は $t^2$ について単射であるから $\phi(p)\neq\phi(q)$ であり,両者の差は $\frac{\pi}{3}$ である。よって $(\ast)$ が成り立つ。ゆえに (1) の条件は「$G$ が相異なる2つの正の根をもつこと」である。
$3k^2=1$ のとき,$G$ は一次式 $-6k(1+k^2)z+(1+k^2)^2$ であり,正の根は高々1つである。$3k^2\neq1$ のとき,$G$ の判別式は $36k^2(1+k^2)^2-12(3k^2-1)(1+k^2)^2=12(1+k^2)^2 > 0$ であるから2根 $u,v$ は相異なる実数で
$$ u+v=\frac{2k(1+k^2)}{3k^2-1},\qquad uv=\frac{(1+k^2)^2}{3(3k^2-1)}. $$
$u,v > 0\iff u+v > 0,\ uv > 0\iff 3k^2-1 > 0,\ k > 0\iff k > \frac{1}{\sqrt3}$ である。

(2)

$k > \frac{1}{\sqrt3}$ とし,$0 < u < v$,$a=\sqrt u$,$b=\sqrt v$ とする。(1) の議論より,$\mathrm{P},\mathrm{Q}$ を適当に入れ替えれば $(\ast)\iff p\in\lbrace\pm a\rbrace,\ q\in\lbrace\pm b\rbrace$ である。
せん断変換 $(X,Y)=(x,\ y+kx)$ は行列式が $1$ であり,面積を保つ。3本の接線は
$$ \ell_0:\ Y=0,\qquad \ell_p:\ Y=3p^2X-2p^3,\qquad \ell_q:\ Y=3q^2X-2q^3 $$
に移る。$\ell_p,\ell_q$ と $Y=0$ の交点は $\mathrm{A}=\left(\frac{2p}{3},0\right)$,$\mathrm{B}=\left(\frac{2q}{3},0\right)$ である。$\ell_p,\ell_q$ の交点を $\mathrm{V}=(X_{\mathrm{V}},Y_{\mathrm{V}})$ とすると,$3(p^2-q^2)X_{\mathrm{V}}=2(p^3-q^3)$ を $p-q\ (\neq0)$ で割り,$p^2\neq q^2$ より $p+q\neq0$ に注意して
$$ X_{\mathrm{V}}=\frac{2(p^2+pq+q^2)}{3(p+q)},\qquad Y_{\mathrm{V}}=3p^2X_{\mathrm{V}}-2p^3=\frac{2p^2q^2}{p+q}. $$
よって
$$ S=\frac12\cdot\mathrm{AB}\cdot|Y_{\mathrm{V}}|=\frac12\cdot\frac{2|p-q|}{3}\cdot\frac{2p^2q^2}{|p+q|}=\frac23p^2q^2\left|\frac{p-q}{p+q}\right|. $$
$\left|\frac{p-q}{p+q}\right|$ は同符号のとき $\frac{b-a}{b+a}$,異符号のとき $\frac{b+a}{b-a}$ であるから
$$ m=\frac23uv\cdot\frac{b-a}{b+a} > 0,\qquad M=\frac23uv\cdot\frac{b+a}{b-a} $$
であり,(R) が成り立つ。$M=4m\iff b=3a\iff v=9u$ である。
一方,2根の差は(判別式)$^{1/2}$ を2次の係数で割ったものであるから $v-u=\frac{2\sqrt3(1+k^2)}{3(3k^2-1)}$ であり
$$ \frac{v-u}{v+u}=\frac{2\sqrt3(1+k^2)}{3(3k^2-1)}\cdot\frac{3k^2-1}{2k(1+k^2)}=\frac{1}{\sqrt3\,k}. $$
$v=9u$ ならば左辺は $\frac{8}{10}=\frac45$ であるから $\sqrt3\,k=\frac54$,$k=\frac{5\sqrt3}{12}$。逆にこの $k$ では $\frac{v-u}{v+u}=\frac45$ より $v=9u$ が成り立つ。

検証・検算

  • 本解の公式との一致:(K) を導く等式 $(3k+\sqrt3)a^2=(3k-\sqrt3)b^2=1+k^2$ から $\frac{1}{a^2}-\frac{1}{b^2}=\frac{2\sqrt3}{1+k^2}$,すなわち $1+k^2=\frac{2\sqrt3\,a^2b^2}{b^2-a^2}$ である。$|p|=a$,$|q|=b$ のとき $b^2-a^2=|p-q|\,|p+q|$ であるから,本解の $S=\frac{\sqrt3}{9}(1+k^2)(p-q)^2$ は $\frac23a^2b^2\left|\frac{p-q}{p+q}\right|$ に一致する。
  • せん断変換の後の面積公式に $k$ が現れないのは,$-kx$ の項が消えるからである。$k$ は $u,v$(角度条件)を通じてのみ $S$ に入る。
  • 判別式の正値性と2根の正値性は別条件である。実際 $3k^2 > 1$,$k < 0$ では2根はともに負である。
  • $\sqrt{Mm}=\frac23uv=\frac23a^2b^2$ であり, 3.2 節 の値と一致する。

3.6 参考解1:三倍角の周期性と三次方程式

着想・方針

方向角が $\pi$ を法として $\frac{\pi}{3}$ ずつ異なる3方向は,$\tan3\theta$ の値が等しい3方向である。3本の傾きを1つの三次方程式の3根として同時に扱い,解と係数の関係で処理する。$\pi$ を法とする合同は方程式が自動的に処理するから,方向角の順序( 補題1 )を用いない。

解答

(1)

$k=\pm\frac{1}{\sqrt3}$ のとき,$\theta_0=\mp\frac{\pi}{6}$ であり, 補題2 (iii) の2方向の一方($k=\frac{1}{\sqrt3}$ なら $\theta_0+\frac{2\pi}{3}$,$k=-\frac{1}{\sqrt3}$ なら $\theta_0+\frac{\pi}{3}$)は $\frac{\pi}{2}$ に等しく鉛直である。よって $(\ast)$ は成り立たない。
以下 $3k^2\neq1$ とする。このとき $\theta_0\in\left(-\frac{\pi}{2},\frac{\pi}{2}\right)$ は $\pm\frac{\pi}{6}$ と異なるから $\theta_0\not\equiv\frac{\pi}{6}\pmod{\frac{\pi}{3}}$,すなわち $\cos3\theta_0\neq0$ であり
$$ T=\tan3\theta_0=\frac{k^3-3k}{1-3k^2} $$
が定まる。$F(s)=s^3-3Ts^2-3s+T$ とおく。$3s^2=1$ ならば $F(s)=s(s^2-3)-T(3s^2-1)=-\frac83s\neq0$ であるから,$F$ の根 $s$ はすべて $1-3s^2\neq0$ を満たし,$s=\tan\theta$ に対して
$$ F(s)=0\iff\frac{3s-s^3}{1-3s^2}=T\iff\tan3\theta=\tan3\theta_0\iff\theta\equiv\theta_0+\frac{j\pi}{3}\pmod{\pi}\ (j\in\lbrace0,1,2\rbrace). $$
右辺の3方向はいずれも鉛直でない(鉛直なら $\cos3\theta=0$ となる)から,$F$ の3根は $s_j=\tan\left(\theta_0+\frac{j\pi}{3}\right)$($j=0,1,2$)であり,相異なる実数で $s_0=-k$ である。 補題2 より
$$ (\ast)\iff\lbrace3p^2-k,\ 3q^2-k\rbrace=\lbrace s_1,s_2\rbrace\quad(p,q\neq0) $$
であるから,(1) の条件は $u=\frac{s_1+k}{3} > 0$ かつ $v=\frac{s_2+k}{3} > 0$ である。解と係数の関係より $s_0+s_1+s_2=3T$,$s_0s_1+s_1s_2+s_2s_0=-3$ であり,$s_1+s_2=3T+k$,$s_1s_2=-3+k(s_1+s_2)=k^2+3kT-3$。よって
$$ u+v=\frac{s_1+s_2+2k}{3}=T+k=\frac{2k(1+k^2)}{3k^2-1}, $$
$$ uv=\frac{s_1s_2+k(s_1+s_2)+k^2}{9}=\frac{k^2+2kT-1}{3}=\frac{(1+k^2)^2}{3(3k^2-1)}. $$
$u,v > 0\iff u+v > 0,\ uv > 0\iff k > \frac{1}{\sqrt3}$ である。

(2)

$s_1\neq s_2$ より $u\neq v$ であり,$u < v$ となるよう番号を付けて $a=\sqrt u$,$b=\sqrt v$ とする。面積比は (R)(本解または別解1)による。$M=4m\iff b=3a\iff\frac vu=9$ である。$\frac vu > 1$ のもとで $\frac{(u+v)^2}{uv}=\frac vu+2+\frac uv$ は $\frac vu$ の狭義増加関数であるから,$\frac vu=9\iff\frac{(u+v)^2}{uv}=\frac{100}{9}$。一方
$$ \frac{(u+v)^2}{uv}=\frac{4k^2(1+k^2)^2}{(3k^2-1)^2}\cdot\frac{3(3k^2-1)}{(1+k^2)^2}=\frac{12k^2}{3k^2-1} $$
であるから $108k^2=300k^2-100$,$k^2=\frac{25}{48}$。$k > \frac{1}{\sqrt3}$ より $k=\frac{5\sqrt3}{12}$。

検証・検算

  • $u,v$ は別解2 の二次方程式 $G(z)=0$ の2根に一致する($u+v$,$uv$ が一致)。二直線の条件を個別に代数化した方程式と,3方向を一括した方程式が同じ二次式に到達する。
  • $k=\frac{5\sqrt3}{12}$ では $T=\frac{595\sqrt3}{324}$ であり,$F$ の3根は $-\frac{5\sqrt3}{12}$,$\frac{7\sqrt3}{27}$,$\frac{17\sqrt3}{3}$ である。和は $\frac{595\sqrt3}{108}=3T$,積は $-\frac{595\sqrt3}{324}=-T$ となり, 2.3 節 の傾きと一致する。
  • 例外 $3k^2=1$ は $T$ が定義されない場合であり,三次方程式とは別に処理する必要がある。また,$F$ が3実根をもつことと,$s_1,s_2$ が実際に接線の傾き($s+k > 0$)であることは別条件である。

3.7 参考解2:双対曲線と行列式による面積

着想・方針

直線 $y=sx+c$ を $(s,c)$ 平面の点と同一視する。接線全体は $(s,c)$ 平面上の曲線(双対曲線)をなし,3直線が囲む三角形の面積は対応する3点の行列式で表される。交点を経由しない面積公式を一般的に導いて本問に適用する。

解答

$\ell_t$ は点 $(s,c)=(3t^2-k,\ -2t^3)$ に対応する。$(s+k)^3=27t^6$,$c^2=4t^6$ から $t$ を消去すると
$$ 27c^2=4(s+k)^3. $$
これは「$x^3-(s+k)x-c=0$ が重根をもつ」という接触条件(判別式 $=0$)にほかならない。同じ $s > -k$ に対して $c$ は符号の異なる2値をとり,これが $\ell_t,\ell_{-t}$ に対応する。

三直線が囲む三角形の面積

傾きが相異なる3直線 $L_i:\ y=s_ix+c_i$($i=0,1,2$)に対し
$$ \Delta=\det\begin{pmatrix}s_0&c_0&1\\ s_1&c_1&1\\ s_2&c_2&1\end{pmatrix} $$
とおく。3直線が1点で交わることは $\Delta=0$ と同値であり,$\Delta\neq0$ のとき3直線が囲む三角形の面積は
$$ S=\frac{\Delta^2}{2\,|(s_0-s_1)(s_1-s_2)(s_2-s_0)|} $$
である。

$L_i,L_j$ の交点の $x$ 座標は $x_{ij}=\frac{c_j-c_i}{s_i-s_j}$ である。通分すると分子は $(c_1-c_0)(s_0-s_2)-(c_2-c_0)(s_0-s_1)$ となり,展開すると $\Delta$ の第3列による余因子展開 $s_0(c_1-c_2)-c_0(s_1-s_2)+(s_1c_2-s_2c_1)$ に一致する。よって
$$ x_{01}-x_{02}=\frac{\Delta}{(s_0-s_1)(s_0-s_2)} $$
であり,$L_0$ 上の辺の長さは $\sqrt{1+s_0^2}\,\dfrac{|\Delta|}{|(s_0-s_1)(s_0-s_2)|}$ である。同様の展開により $(s_0-s_1)x_{12}+c_0-c_1=\dfrac{-\Delta}{s_1-s_2}$ であるから,点 $L_1\cap L_2=(x_{12},\,s_1x_{12}+c_1)$ と $L_0$ の距離は
$$ \frac{|s_0x_{12}-(s_1x_{12}+c_1)+c_0|}{\sqrt{1+s_0^2}}=\frac{|\Delta|}{|s_1-s_2|\sqrt{1+s_0^2}} $$
である。3直線が1点で交わることは $L_1\cap L_2\in L_0$,すなわち $\Delta=0$ と同値である。$\Delta\neq0$ のとき,面積は底辺と高さの積の半分として主張の値になる。

本問の3接線は $(s_0,c_0)=(-k,0)$,$(s_1,c_1)=(3p^2-k,\,-2p^3)$,$(s_2,c_2)=(3q^2-k,\,-2q^3)$ に対応する。$(\ast)$ の下で $p,q\neq0$,$p^2\neq q^2$ であるから傾きは相異なる。第1行を第2・3行から引くと
$$ \Delta=\det\begin{pmatrix}3p^2&-2p^3\\ 3q^2&-2q^3\end{pmatrix}=6p^2q^2(p-q)\neq0, $$
$$ \lvert(s_0-s_1)(s_1-s_2)(s_2-s_0)\rvert=\lvert(-3p^2)\cdot3(p^2-q^2)\cdot3q^2\rvert=27p^2q^2\lvert p-q\rvert\,\lvert p+q\rvert. $$
補題4 より
$$ S=\frac{36p^4q^4(p-q)^2}{54p^2q^2|p-q|\,|p+q|}=\frac23p^2q^2\left|\frac{p-q}{p+q}\right| $$
であり,以下別解2 と同様に (R) と $M=4m\iff b=3a$ を得る。
角度条件も傾きの言葉で処理する。 補題2 より $\ell_{\pm a},\ell_{\pm b}$ の傾きは $s_1=\tan\theta_1$,$s_2=\tan\theta_2$ であり,加法定理より
$$ s_1+k=\frac{\sqrt3-k}{1+\sqrt3\,k}+k=\frac{\sqrt3(1+k^2)}{1+\sqrt3\,k},\qquad s_2+k=\frac{-\sqrt3-k}{1-\sqrt3\,k}+k=\frac{\sqrt3(1+k^2)}{\sqrt3\,k-1}. $$
$s+k=3t^2$ であるから $\frac{b^2}{a^2}=\frac{s_2+k}{s_1+k}=\frac{\sqrt3\,k+1}{\sqrt3\,k-1}$ となり,(K) を得る。$b=3a$ を代入して $k=\frac{5\sqrt3}{12}$。((1) は本解または 3.1 節による。)

検証・検算

  • せん断変換 $(x,y)\mapsto(x,y+kx)$ は直線 $y=sx+c$ を $Y=(s+k)X+c$ に移すから,双対平面では平行移動 $(s,c)\mapsto(s+k,c)$ に当たる。これは $\Delta$ も傾きの差も変えないので, 補題4 の値が別解2 の結果と一致することと整合する。
  • $\frac12|\Delta|$ は双対平面の3点が作る三角形の面積 $\Delta^{\ast}$ であり, 補題4 は $S=\frac{2(\Delta^{\ast})^2}{|(s_0-s_1)(s_1-s_2)(s_2-s_0)|}$ とも書ける。元の平面の面積は双対平面の面積の2乗に比例する。
  • 双対曲線の尖点 $(s,c)=(-k,0)$ は変曲点 $\mathrm{O}$ における接線 $\ell_0$ に対応する( 5.3 節 )。
  • 逆構成:$\ell_0$ 上の点 $(\xi,-k\xi)$ を通る傾き $s$ の直線 $y=sx-(s+k)\xi$ と $C$ の共有点の $x$ 座標は $x^3-(s+k)x+(s+k)\xi=0$ を満たし,その判別式は $(s+k)^2\lbrace4(s+k)-27\xi^2\rbrace$ である。$s+k\neq0$ のもとで接する条件は $s+k=\frac{27}{4}\xi^2$ であり,$\xi=\frac{2t}{3}$,$s+k=3t^2$ と一致して 補題3 (a) を再導出する。

3.8 参考解3:有向支持数と Viviani の定理

着想・方針

直線を単位法線ベクトル $\boldsymbol n$ と原点からの符号付き距離 $h$(支持数)によって $\boldsymbol n\cdot\boldsymbol x=h$ と表す。方向が $\frac{\pi}{3}$ 間隔の3直線では,法線の向きを選べば $\boldsymbol n_0+\boldsymbol n_1+\boldsymbol n_2=\boldsymbol 0$ となり,囲む正三角形の面積は $h_0+h_1+h_2$ だけで決まる。交点も接点の値も求めない。

有向支持数による正三角形の面積

単位ベクトル $\boldsymbol n_0,\boldsymbol n_1,\boldsymbol n_2$ が $\boldsymbol n_0+\boldsymbol n_1+\boldsymbol n_2=\boldsymbol 0$ を満たすとし,実数 $h_0,h_1,h_2$ に対して直線 $L_i:\ \boldsymbol n_i\cdot\boldsymbol x=h_i$($i=0,1,2$)を考える。$H=h_0+h_1+h_2$ とおくと,$H=0$ ならば3直線は1点で交わり,$H\neq0$ ならば3直線は面積
$$ S=\frac{H^2}{\sqrt3} $$
の正三角形を囲む。

$i,j,l$ を $0,1,2$ の並べ替えとすると $|\boldsymbol n_i+\boldsymbol n_j|=|\boldsymbol n_l|=1$ より $\boldsymbol n_i\cdot\boldsymbol n_j=-\frac12$ であり,$\boldsymbol n_0,\boldsymbol n_1$ は一次独立である。よって $\boldsymbol n_0\cdot\mathrm{I}=h_0-\frac H3$,$\boldsymbol n_1\cdot\mathrm{I}=h_1-\frac H3$ を満たす点 $\mathrm{I}$ が一意に存在し,$\boldsymbol n_2\cdot\mathrm{I}=-(\boldsymbol n_0+\boldsymbol n_1)\cdot\mathrm{I}=h_2-\frac H3$ も成り立つ。したがって
$$ L_i:\ \boldsymbol n_i\cdot(\boldsymbol x-\mathrm{I})=\frac H3\qquad(i=0,1,2) $$
と書ける。$H=0$ ならば3直線はすべて $\mathrm{I}$ を通る。$H\neq0$ ならば,各 $L_i$ は中心 $\mathrm{I}$,半径 $\frac{|H|}{3}$ の円に,$\mathrm{I}$ から見て $\operatorname{sgn}(H)\,\boldsymbol n_i$ の向きにある点で接する。3つの接点の方向は互いに $\frac{2\pi}{3}$ の角をなすから,3直線はこの円に外接する正三角形を囲む。内接円の半径が $\varrho$ の正三角形の面積は $3\sqrt3\,\varrho^2$ であるから,$S=3\sqrt3\cdot\frac{H^2}{9}=\frac{H^2}{\sqrt3}$。

$\sum\boldsymbol n_i=\boldsymbol 0$ より,原点を任意の点に取り替えても $H$ は変わらない。$H$ は「点から3辺への符号付き距離の和」であり,$|H|$ は正三角形の高さ $3\varrho$ に等しい。これは Viviani の定理(正三角形の内部の点から3辺への距離の和は高さに等しい)を符号付きに拡張したものである。

解答

  1. は本解による。$k > \frac{1}{\sqrt3}$ とし,方向角 $\theta$ の直線の単位法線 $\boldsymbol w(\theta)=(-\sin\theta,\cos\theta)$ を用いて
    $$ \boldsymbol n_0=\boldsymbol w(\theta_0),\qquad \boldsymbol n_1=-\boldsymbol w(\theta_1),\qquad \boldsymbol n_2=\boldsymbol w(\theta_2) $$
    とおく。これらは偏角 $\theta_0+\frac{\pi}{2}$,$\theta_0+\frac{\pi}{2}+\frac{4\pi}{3}$,$\theta_0+\frac{\pi}{2}+\frac{2\pi}{3}$ の単位ベクトルであるから,和は $\boldsymbol 0$ である。
    $\ell_0$ は原点を通るから $h_0=0$ である。方向角 $\theta_j$($j=1,2$)の接線は $\ell_{t_j}$ と $\ell_{-t_j}$($t_1=a$,$t_2=b$)の2本で,互いに原点に関して点対称であるから,固定した法線 $\boldsymbol n_j$ に関する支持数は $d_j$,$-d_j$ である。ここで $d_j > 0$ は原点と $\ell_{t_j}$ の距離である。4配置はちょうど $(h_1,h_2)=(\pm d_1,\pm d_2)$ の4通りの符号に対応するから,$H=h_1+h_2$ は $\pm(d_2+d_1)$,$\pm(d_2-d_1)$ の値をとる。
    $d_j$ を求める。傾き $s_j=\tan\theta_j$ の接線の切片 $c$ は $27c^2=4(s_j+k)^3$( 3.7 節 )を満たし,$\cos\theta_j > 0$ であるから
    $$ d_j=\frac{|c|}{\sqrt{1+s_j^2}}=|c|\cos\theta_j=\frac{2}{3\sqrt3}(s_j+k)^{3/2}\cos\theta_j. $$
    補題3 (c) より $(s_j+k)\cos\theta_j=3t_j^2\cos\theta_j=\frac{\sqrt3}{2\cos\theta_0}$ であるから
    $$ d_j=\frac{\sqrt{s_j+k}}{3\cos\theta_0},\qquad \frac{d_2^2}{d_1^2}=\frac{s_2+k}{s_1+k}=\frac{\cos\theta_1}{\cos\theta_2}=\frac{\sqrt3\,k+1}{\sqrt3\,k-1} > 1 $$
    (最後の等号は 3.1 節 の余弦の値による)。よって $d_2 > d_1 > 0$ であり, 定理5 より
    $$ M=\frac{(d_2+d_1)^2}{\sqrt3},\qquad m=\frac{(d_2-d_1)^2}{\sqrt3} > 0. $$
    したがって,$\tau=\frac{d_2^2}{d_1^2}$ として
    $$ \frac{M+m}{2\sqrt{Mm}}=\frac{(d_2+d_1)^2+(d_2-d_1)^2}{2(d_2^2-d_1^2)}=\frac{\tau+1}{\tau-1}=\sqrt3\,k. $$
    $M=4m$ ならば左辺は $\frac{5m}{4m}=\frac54$ であり,$k=\frac{5\sqrt3}{12}$ を得る。

検証・検算

  • 支持数の具体形:$\ell_t$($y=x\tan\theta+c$ の形)は $\boldsymbol w(\theta)\cdot\boldsymbol x=c\cos\theta$ と書けるから,$h_1=2p^3\cos\theta_1=\frac{p}{\sqrt3\cos\theta_0}$,$h_2=-2q^3\cos\theta_2=-\frac{q}{\sqrt3\cos\theta_0}$ である。よって $H=\frac{\sqrt{1+k^2}}{\sqrt3}(p-q)$,$S=\frac{H^2}{\sqrt3}=\frac{\sqrt3}{9}(1+k^2)(p-q)^2$ となり,本解の公式に一致する。
  • 初等的な距離計算:$\mathrm{O},\mathrm{A}_t\in\ell_0$ で $\angle(\ell_0,\ell_t)=\frac{\pi}{3}$ であるから,$d(\mathrm{O},\ell_t)=\mathrm{OA}_t\sin\frac{\pi}{3}=\frac23|t|\sqrt{1+k^2}\cdot\frac{\sqrt3}{2}=\frac{|t|\sqrt{1+k^2}}{\sqrt3}$。$\frac{d_2}{d_1}=\frac ba$ と整合する。
  • $H=0$(共点)は $p=q$ を要し,$(\ast)$ の下では起こらない。これは $m > 0$ と整合する。
  • 法線を同じ規則 $\boldsymbol w(\theta_j)$ で取ると $\boldsymbol w(\theta_0)-\boldsymbol w(\theta_1)+\boldsymbol w(\theta_2)=\boldsymbol 0$ となり,和は $\boldsymbol 0$ にならない。向きの調整は省略できない。

3.9 同じ系列に属する変形

以下は独立の解法とは数えず,既出の解法の表現違いまたは部分的な短縮として扱う。

  • 正接の加法定理で $\tan\left(\theta_0+\frac{\pi}{3}\right)$,$\tan\left(\theta_0+\frac{2\pi}{3}\right)$ を直接計算し,$3t^2-k$ と比較する方法:本解(方向角)と 3.1 節の計算と同一である。$k=\tan\psi$ とおく角度パラメータ化も 3.1 節に含まれる。
  • 方向ベクトル $(1,-k)$,$(1,3t^2-k)$ の内積 $1+k^2-3kt^2$ と外積 $3t^2$ の比として $\cot\phi(t)$ を求める方法: 補題3 (b) そのものである。
  • 速度ベクトル $(1,3t^2-k)$ の終点が直線 $x=1$ 上の半直線 $y > -k$ を動き,原点からの見込み角が $\left(\theta_0,\frac{\pi}{2}\right)$ を単調に掃くという描像: 補題1 の図形的な言い換えである。
  • 複素数の回転,Cayley 変換 $w(s)=\frac{1+is}{1-is}=e^{2i\theta}$ による処理:3方向が $\frac{\pi}{3}$ 間隔であることは $w(s_0)+w(s_1)+w(s_2)=0$,あるいは $w(s_j)^3$ がすべて等しいことと同値であり,参考解1 の三次方程式の言い換えである( 5.2 節 )。
  • 傾きの一次分数変換 $s\mapsto\frac{s+\sqrt3}{1-\sqrt3\,s}$(方向の $\frac{\pi}{3}$ 回転):加法定理と同値である。
  • 単位円上の関係 $\boldsymbol e(\theta)+\boldsymbol e\left(\theta+\frac{2\pi}{3}\right)=\boldsymbol e\left(\theta+\frac{\pi}{3}\right)$:3.1 節の余弦の恒等式の由来である。
  • 正三角形を先に置く逆構成($\ell_0$ 上の点から $C$ に接線を引く):双対曲線の別のパラメータ表示であり,参考解2 に属する(3.7 節の検証)。
  • せん断変換を用いず,3交点を元の座標で求めて面積を計算する方法:別解2 の計算を重くしたものである。
  • 正三角形の面積を内接円・外接円の半径で表す方法:本解の面積公式の書き換えである。
  • 対称式による簡約 $\frac{v-u}{v+u}=\frac{1}{\sqrt3\,k}$,$\frac{M-m}{M+m}=\sqrt{1-\frac{1}{3k^2}}$,$\frac{M}{m}+\frac{m}{M}+2=12k^2$:3.3 節の関係式の変形である。
  • 一方の斜辺を $\ell_0$ に関して鏡映し,他方の斜辺と平行にして2平行線の距離として高さを測る方法: 定理5 の初等的な説明であり,参考解3 に属する。
    次のものは独立の解法として採用しない。
  • 微分による $S$ の最適化:角度条件の下で配置は4通りに離散化されており,最適化すべき連続変数が残らない。
  • 射影幾何(無限遠直線,複比)による処理:なす角は射影変換で保たれない計量的条件であり,簡略化が生じない。
  • Hesse 曲線などの不変式論による処理:条件が計量的であるため,アフィン不変・射影不変な道具は直接には効かない。
  • 極座標による接線の表示:最終的に加法定理の計算に帰着する。

3.10 解法の比較

解法方向(角度)の処理位置(面積)の処理対象範囲長所注意点
本解方向角の単調性正三角形の一辺全設問高校発想が自然,計算が短い3方向の配置の論証
3.1 節正接の差の公式—(1),(K)高校単調性が不要$\cos\theta_j$ の符号
3.2 節—正方形化(R)高校〜大学等間隔性と $M-m=\frac12[\mathcal{P}]$ が見える一次変換は角を保たない
3.3 節(K)(R)$k$高校一般の $\frac{M}{m}$ に即答(K)(R) を先に要する
別解1余接の一次関数中心相似全設問高校$a,b$ も面積も求めない$\cot$ の符号,相似比の2乗
別解2二次方程式せん断変換全設問高校幾何的着想に依存しない正根条件と十分性
参考解1三倍角の三次方程式(本解・別解1)(1),$k$高校〜大学合同を自動的に処理$3k^2=1$ の例外
参考解2加法定理双対平面の行列式(2)大学三直線の面積の一般公式公式の証明が必要
参考解3正接の差の公式有向支持数(2)大学交点も $a,b$ も求めない法線の向きの調整

答案の第一選択は本解である。方向の処理(単調性)と面積の処理(正三角形)がいずれも問題文から直接に導かれ,各段階に検算点がある。計算量が最小なのは別解1 で,$a,b$ の値も面積の値も現れない。別解2 は幾何的着想に依存せず,本解と独立な検算を与える。参考解は答案としては過剰であるが,「3方向の一括処理(参考解1)」「直線の空間での面積公式(参考解2)」「位置の平行移動不変量(参考解3)」という,本問を超えて通用する原理を示す。

4. 汎用的な探索手順

本問から抽出される,「曲線の接線の配置(角度・位置)と,接線が作る図形の量」を問う問題に対する探索手順を述べる。

4.1 意思決定の流れ

  1. 支配式を書き,方向と位置を分ける。接線なら $y=f'(t)x+\lbrace f(t)-tf'(t)\rbrace$ であり,傾き $f'(t)$ と切片 $f(t)-tf'(t)$ の対称性(偶奇)と単調性を別々に調べる。両者の依存の違いが解法の入口になる。
  2. 制約を課した後の自由度を数える。本問では角度条件によって $|p|,|q|$ が確定し,残るのは符号という離散的な自由度だけである。離散なら比較,連続なら最適化と,問題の種類がここで決まる。
  3. 方向の条件は方向の円 $\mathbb{R}/\pi\mathbb{Z}$ の上で処理する。等角配置の剛性( 補題2 )と,極値をとる方向(変曲点での傾き最小など)による順序の固定を確かめ,配置を確定させてから計算に入る。
  4. 角度条件の表現を段階に応じて選ぶ( 4.2 節 )。存在の判定には到達範囲,比の決定には余接の一次性や対称式が適する。
  5. 面積は頂点を求める前に形を見る。特殊な形(正三角形)なら一辺,平行線があれば相似,一般の位置ならせん断変換や行列式,法線が固定なら支持数を用いる。
  6. 与えられた比は,より単純な比に戻す。面積比 $\to$ 辺の比 $\to$ 接点の比 $\to$ パラメータ,と一対一対応の合成として逆算し,中間の量の具体値は求めない。
  7. 検算する。境界での不等号(鉛直な接線),非退化性(共点にならないこと),二乗の同値性,正根条件,具体値による独立計算,別解との一致を確かめる。

4.2 症状と有効な表現

症状検討する表現・道具本問での例
傾きが単調に変化する方向角の到達範囲本解 (1)
角度条件の分数式が重い余接,$\frac{1}{t^2}$ による一次化別解1
角度条件が未知数の2乗を含む$z=t^2$ の二次方程式,解と係数の関係別解2
等間隔に並ぶ複数の方向$\tan3\theta$ の周期性,Cayley 変換参考解1
傾きの差が現れる$\tan A-\tan B=\frac{\sin(A-B)}{\cos A\cos B}$3.1 節,参考解3
原点対称な平行線の組中心相似,平行四辺形の正方形化別解1,3.2 節
基準直線が原点を通るせん断変換で基準直線を軸に移す別解2
多数の直線の位置関係双対平面と行列式参考解2
法線の方向が固定されている支持数,Viviani の定理参考解3
比だけが問われる比の対称式 $r+\frac1r$3.3 節

4.3 作問・類題設計への応用

本問の構造は類題の設計原理としても読める。奇関数で原点を変曲点とすれば,傾きの最小性から方向の順序が固定され,角度条件の後に残る自由度は符号になる。単項式の同次性は交点 $\mathrm{A}_t$ を $t$ に比例させ,面積比を接点の比だけの関数にする。角 $\frac{\pi}{3}$ は等角条件から必然的に定まり,三角形の形を固定する。面積比 $\mu=\frac{M}{m}$ を変えれば答は $k=\frac{\mu+1}{2\sqrt{3\mu}}$ であり,$\mu=4$ では辺の比 $2$,接点の比 $3$ がいずれも整数となる。次数を奇数 $n$ に変えれば答は $k=\frac{3^{n-1}+1}{\sqrt3\,(3^{n-1}-1)}$ となる( 定理6 )。


5. 発展事項

5.1 高校数学と一般理論の境界

事項高校数学での扱い一般理論
直線の方向となす角方向角,$\tan$ の単調性実射影直線 $\mathbb{RP}^1\cong\mathbb{R}/\pi\mathbb{Z}$ とその上の距離
$\frac{\pi}{3}$ 間隔の3方向加法定理,三倍角の公式1 の3乗根,Cayley 変換
接線の全体接線の方程式,三次方程式の重根双対曲線,Legendre 変換,Plücker の公式
3直線が囲む面積交点の計算,行列式双対平面の面積との関係( 補題4 )
面積比相似,せん断変換アフィン不変量,平行四辺形の正規化
位置と面積点と直線の距離支持関数,混合面積,Viviani の定理
比の逆算解と係数の関係,相加・相乗平均双曲線関数の倍角公式
次数の役割三次関数の計算単項式の同次性,奇関数への一般化

本解・別解1・別解2 と 3.1〜3.3 節は左欄の範囲で完結する。参考解1〜3 も高校の道具(三倍角の公式,行列式,内積)で記述できるが,その背景は右欄に属する。

5.2 方向の空間と Cayley 変換

直線の方向は $\pi$ を法とする角,すなわち $\mathbb{R}/\pi\mathbb{Z}$(実射影直線 $\mathbb{RP}^1$)の点であり,2直線のなす角は,この周長 $\pi$ の円の上で2点を結ぶ一方の弧の長さを $\delta$ とするときの距離 $\min\lbrace\delta,\pi-\delta\rbrace$ である。 補題2 の証明は,この円の上で互いに等距離な3点が正三角形の配置に限ることを示している。
写像 $\theta\mapsto e^{2i\theta}$ はこの円を単位円 $\lbrace w\in\mathbb{C}:|w|=1\rbrace$ と同一視し,傾き $s=\tan\theta$ で書けば Cayley 変換
$$ w(s)=\frac{1+is}{1-is}=\frac{\cos\theta+i\sin\theta}{\cos\theta-i\sin\theta}=e^{2i\theta} $$
となる。$\frac{\pi}{3}$ 間隔の3方向は単位円に内接する正三角形の3頂点に移るから,$w_0+w_1+w_2=0$ であり,また $w_j^3=e^{6i\theta_0}$ はすべて等しい。後者を $s$ で書き直したものが $\tan3\theta=\tan3\theta_0$ であり,参考解1 の三次方程式 $F(s)=0$ は「1 の3乗根」の構造を傾きの言葉に引き戻したものである。

5.3 双対曲線と Legendre 変換

直線 $y=sx+c$ を点 $(s,c)$ とみなすと,曲線 $y=f(x)$ の接線全体は $(s,c)=\bigl(f'(t),\ f(t)-tf'(t)\bigr)$ を描く。$f$ を凸な区間 $I$ に制限すると,$t\in I$,$s=f'(t)$ に対して $c=-f^{\ast}(s)$ である。ここで $f^{\ast}(s)=\sup_{x\in I}\lbrace sx-f(x)\rbrace$ は Legendre 変換であり,上限は $x=t$ で達成される。本問の $f$ は $x > 0$ で凸である。
本問の双対曲線 $27c^2=4(s+k)^3$ は半立方放物線(Neile の放物線)であり,尖点 $(-k,0)$ は $C$ の変曲点 $\mathrm{O}$ における接線 $\ell_0$ に対応する。平面代数曲線の変曲点が双対曲線の尖点に対応するという一般的な事実(Plücker の公式の背後にある双対性)の最も簡単な例である。また $c\mapsto-c$ の対称性は $t\mapsto-t$,すなわち $\ell_t\parallel\ell_{-t}$ に対応する。 補題4 は,元の平面の三角形の面積が双対平面の三角形の面積 $\Delta^{\ast}=\frac12|\Delta|$ の2乗に比例し,その係数が傾きの差積で与えられることを述べている。

5.4 アフィン幾何:面積比と正方形化

アフィン写像は平行性,同一直線上の線分の比,面積比を保ち,任意の平行四辺形を正方形に移す。(R) が角度条件と無関係に成り立つのは,それが平行な接線の組と中心 $\mathrm{O}$ だけで決まるアフィン不変量だからである( 3.2 節 )。
一般に,中心 $\mathrm{O}$ をもつ平行四辺形 $\mathcal{P}$ と,$\mathrm{O}$ を通り辺に平行でない直線 $\ell$ を考える。$\ell$ と2組の対辺(の延長)が作る2種類の三角形の面積を $M\geqq m$ とすると
$$ M-m=\frac12[\mathcal{P}] $$
が成り立つ。実際,正方形 $\lbrace|U|\leqq1,|V|\leqq1\rbrace$ に移して $\ell:\ V=\rho U$($0 < |\rho|\leqq1$ としてよい)とすれば,2種類の面積は $\frac{(1\pm|\rho|)^2}{2|\rho|}$ で,差は $2=\frac12\cdot4$ である。また「$\ell$ 上の4交点が等間隔 $\iff M=4m$」も同じ計算から従う。これに対し,本問の $\sqrt{Mm}=\frac23a^2b^2$ は三次曲線の接線配置に固有の量である。

5.5 支持関数・混合面積・Viviani の定理

凸図形 $K$ の支持関数 $h_K(\boldsymbol n)=\max_{\boldsymbol x\in K}\boldsymbol n\cdot\boldsymbol x$ は,各方向から $K$ に接する直線の位置を表す。凸多角形の辺の長さを $L_i$,外向き単位法線を $\boldsymbol n_i$,支持数を $h_i$ とすると,原点と各辺を結ぶ(符号付きの)三角形に分割して
$$ [K]=\frac12\sum_iL_ih_i $$
を得る。辺のベクトルの和が $\boldsymbol 0$ であることから $\sum_iL_i\boldsymbol n_i=\boldsymbol 0$ であり,$\sum_iL_ih_i$ は平行移動で変わらない。正三角形では $L_i$ がすべて等しいから,これは 定理5 の $H=h_0+h_1+h_2$ の不変性であり,点から3辺への距離の和が一定であるという Viviani の定理にほかならない。
外向き法線を固定した三角形の全体は互いに相似の位置(平行移動と中心相似)にあり,$\lambda_i > 0$ を $\sum\lambda_i\boldsymbol n_i=\boldsymbol 0$ で定めれば,面積は $\kappa\bigl(\sum\lambda_ih_i\bigr)^2$($\kappa$ は法線のみで決まる定数)と表される。法線を固定した凸多角形の面積が支持数の二次形式になることは Minkowski の混合面積の理論の出発点であり,三角形ではその二次形式が階数 $1$ の完全平方になる。参考解3 はこの最も簡単な場合を用いている。

5.6 双曲線関数による統一

$\omega=\log\frac ba > 0$ とおくと,(K) と (R) は
$$ \sqrt3\,k=\frac{b^2+a^2}{b^2-a^2}=\coth\omega,\qquad \sqrt{\frac{M}{m}}=\frac{b+a}{b-a}=\coth\frac{\omega}{2} $$
と書ける。したがって 3.3 節の関係 $\sqrt3\,k=\frac12\left(r+\frac1r\right)$ は $\coth$ の倍角公式 $\coth2x=\frac{1+\coth^2x}{2\coth x}$ にほかならない。$\omega$ が $(0,\infty)$ を動くとき $\coth\omega$ は $(1,\infty)$ を狭義単調に動くから,(1) の範囲 $\sqrt3\,k > 1$ は $\coth$ の値域として,(2) の解の一意性は $\coth$ の単調性として現れる。$M=4m$ は $\coth\frac{\omega}{2}=2$,すなわち $e^{\omega}=3$ であり,$\sqrt3\,k=\coth(\log3)=\frac{9+1}{9-1}=\frac54$ となる。

5.7 一般化:奇数次曲線と一般の奇関数

奇数次曲線への一般化

奇数 $n\geqq3$ と実数 $k$ に対し,曲線 $C_n:\ y=x^n-kx$ について条件 $(\ast)$ と $S,M,m$ を本問と同様に定める。
(1) 条件 $(\ast)$ を満たす $\mathrm{P},\mathrm{Q}$ が存在するための必要十分条件は $k > \dfrac{1}{\sqrt3}$ である。
(2) $k > \dfrac{1}{\sqrt3}$ のとき,2種類の接点の $x$ 座標の絶対値を $0 < a < b$ とすると
$$ \frac{M}{m}=\left(\frac{a+b}{b-a}\right)^2,\qquad \left(\frac ba\right)^{n-1}=\frac{\sqrt3\,k+1}{\sqrt3\,k-1} $$
であり,$M=4m$ となるのは $k=\dfrac{3^{n-1}+1}{\sqrt3\,(3^{n-1}-1)}$ のときに限る。

$x$ 座標 $t$ の点における接線は $y=(nt^{n-1}-k)x-(n-1)t^n$ である。$n-1$ は偶数であるから傾きは $|t|^{n-1}$ の狭義増加関数で値域は $(-k,\infty)$,切片は $t$ の奇関数である。よって 補題1 と 1.3 節 の議論は $t^2$ を $|t|^{n-1}$ に替えてそのまま成り立ち,(1) を得る。原点の接線との交点の $x$ 座標は $\frac{n-1}{n}t$ で $t$ に比例し, 1.6 節 と同様に共点は起こらないから,本解の面積計算で $\frac23$ を $\frac{n-1}{n}$ に替えて $M/m$ の式を得る。また $\cot\phi(t)=\frac{1+k^2}{n|t|^{n-1}}-k$ に $\phi(a)=\frac{\pi}{3}$,$\phi(b)=\frac{2\pi}{3}$ を代入して比をとれば第2式を得る。$M=4m\iff b=3a$ を代入すれば $3^{n-1}(\sqrt3\,k-1)=\sqrt3\,k+1$ となり,主張の値を得る。この値は $\frac{1}{\sqrt3}$ より大きい。

$n=3$ で $k=\frac{10}{8\sqrt3}=\frac{5\sqrt3}{12}$ を再現する。$n=5$ では $k=\frac{82}{80\sqrt3}=\frac{41\sqrt3}{120}$ であり,$n\to\infty$ で $k\to\frac{1}{\sqrt3}$ となる。
さらに一般に,$f$ を $C^1$ 級の奇関数で,$f'$ が $[0,\infty)$ で狭義単調増加かつ $\lim_{t\to\infty}f'(t)=\infty$ を満たすものとする。方向に関する議論はそのまま成り立ち,$(\ast)$ を満たす配置が存在する条件は $f'(0) < -\frac{1}{\sqrt3}$ であって,そのとき配置は4通り $(\pm a,\pm b)$ に帰着する。原点の接線との交点の $x$ 座標は
$$ g(t)=\frac{tf'(t)-f(t)}{f'(t)-f'(0)}=\frac{\int_0^t\lbrace f'(t)-f'(x)\rbrace\,dx}{f'(t)-f'(0)} $$
であり,$g$ は奇関数で $t > 0$ において $g(t) > 0$ である。正三角形の一辺は $\sqrt{1+f'(0)^2}\,|g(p)-g(q)|$ であるから,$g(a)\neq g(b)$ ならば $\frac{M}{m}=\left(\frac{g(a)+g(b)}{g(b)-g(a)}\right)^2$ となる。一方 $g(a)=g(b)$ となる場合には同符号の配置で3接線が共点となって $m=0$ であり,問題文の「$S=0$ とする」規定が実際に働く。本問の三次関数では $g(t)=\frac23t$ が単射であるから,この事態は起こらない。

5.8 歴史的背景

  • 正三角形の内部の点から3辺への距離の和が一定であることは,Viviani(17世紀)の名で呼ばれる。
  • 半立方放物線は,Neile が1657年に求長したことで知られる。
  • 双対曲線と特異点(尖点・変曲点)の数の関係は,Plücker(19世紀前半)の公式に体系化された。
  • Legendre 変換は Legendre(18世紀末)に遡り,凸解析・解析力学の基本的な道具となった。
  • Cayley 変換は Cayley(1846)に由来し,回転と交代行列の対応を与える。
  • 混合面積・混合体積の理論は Minkowski(19世紀末〜20世紀初頭)による。

6. 最終整理

6.1 全体の構造マップ

  • 接線 $\ell_t:\ y=(3t^2-k)x-2t^3$:方向は $t^2$,位置は $t^3$ に依存
    • 方向の処理( 補題1 , 補題2 )$\to$ 3方向は $\theta_0,\ \theta_0+\frac{\pi}{3},\ \theta_0+\frac{2\pi}{3}$
      • 到達範囲 $\to$ (1) $k > \frac{1}{\sqrt3}$(本解,3.1 節,別解1,別解2,参考解1)
      • 角度の関係 $\to$ (K) $\frac{b^2}{a^2}=\frac{\sqrt3k+1}{\sqrt3k-1}$(余接,正接の差,二次方程式,三次方程式,加法定理)
    • 位置の処理 $\to$ 4配置 $(\pm a,\pm b)$,面積は同符号・異符号の2値,非退化 $m > 0$
      • 正三角形の一辺(本解),中心相似(別解1),正方形化(3.2 節),せん断変換(別解2),双対行列式(参考解2),有向支持数(参考解3)
      • $\to$ (R) $\frac{M}{m}=\left(\frac{a+b}{b-a}\right)^2$
    • 合成 $\to$ $M=4m\iff b=3a\iff\sqrt3\,k=\frac54$(3.3 節:$\sqrt3\,k=\frac{M+m}{2\sqrt{Mm}}$,5.6 節:$\coth$ の倍角公式)
    • 結論 $k=\frac{5\sqrt3}{12}$

6.2 解答一覧

設問答付記
(1)$k > \dfrac{1}{\sqrt3}$境界では必要な接線が鉛直となり実現しない
(2)$k=\dfrac{5\sqrt3}{12}$$a^2=\frac{73\sqrt3}{324}$,$b^2=9a^2$,$m=\frac{5329}{11664}$,$M=\frac{5329}{2916}$

6.3 数学的教訓

  • 接線の式は方向(傾き)と位置(切片)に分けて読む。偶奇と単調性の違いが解法の入口になる。
  • 最大値・最小値を求める前に,制約を課した後の自由度を数える。本問では角度条件で連続的な自由度が消え,符号の選択だけが残る。
  • 直線の方向は $\pi$ を法とする量である。等角配置の剛性と,極値をとる方向による順序の固定によって,配置は一意に決まる。
  • 同じ角度条件でも,存在の判定には到達範囲,比の決定には余接の一次性や対称式と,段階に応じて表現を替える。
  • 三角形の面積は頂点をすべて求める前に形を見る。正三角形,平行線による相似,面積保存変換,双対平面の行列式,支持数のいずれが使えるかを検討する。
  • 計量的条件(角度)とアフィン的な量(面積比)を分離すると,問題は一対一対応の合成 $k\leftrightarrow\frac ba\leftrightarrow\frac{M}{m}$ として見通せる。
  • 比が与えられたら,より単純な比へ戻し,対称式 $r+\frac1r$ などで逆算する。中間の量の値は求めない。
  • 不等号の厳密性(鉛直な接線),非退化性($S > 0$),二乗による同値性,正根条件を一つずつ確かめる。
投稿日:10日前
更新日:10日前
数学の力で現場を変える アルゴリズムエンジニア募集 - Mathlog served by OptHub

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

医学部・難関大受験生の指導を行っています。

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中