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高校数学解説
文献あり

ピックの定理(その1)

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ピックの定理の紹介

多角形と書いたら, その境界(周)及び内部からなる図形とします。

格子多角形・格子n角形

平面R2上の多角形の中で, すべての頂点が格子点である多角形を格子多角形と言います。といっても後で色々な図形を呼びやすいようにn角形なら, 格子n角形と呼ぶことする。

R2がわからない人はxy平面だと思ってください。そして格子点とはその平面上の点のなかでx座標とy座標がともに整数である点です。たとえば, (2,3)とか(67,100)とか。(12,3)12が整数ではないので格子点ではありません。

格子多角形には, 面白い定理があります。

ピックの定理

Pを格子多角形, I(P)を格子多角形Pの内部の格子点全体, B(P)を格子多角形Pの境界(周)上の格子点全体とする。多角形Xに対し, その面積をArea(X)と書き, 集合Aの要素の個数を|A|と書けば
Area(P)=|I(P)|+12|B(P)|1
が成り立つ。

以下の図の格子多角形Pでは成り立つのか確認してみます。

格子多角形!FORMULA[23][37112][0]の1つ 格子多角形Pの1つ

まず右のようにPを赤い三角形と黄色の六角形に分割しましょう。そして真ん中の図のように変形し, 右側のように一部を境界が紫の正方形で囲みます。
上手に計算しよう 上手に計算しよう
{Area()=25Area()=32Area()=4
Area(P)=2532+4=552.

格子点を数え上げよう 格子点を数え上げよう

そして, |I(P)|=24,|B(P)|=9なので
|I(P)|+12|B(P)|1=552.
この場合はピックの定理が成り立ちます。

ピックの定理の証明

発想は簡単。格子多角形を三角形分割し, その三角形を調べていきます。ここで格子多角形の頂点はすべて格子点なので, 三角形分割で現れる三角形は格子三角形です。

Pを格子多角形とする。そしてS(P)Pの格子点全体, つまりS(P)=I(P)B(P)とします。各qS(P)に対し, w(P;q)
w(P;q)={1(qI(P))q2π(qB(P)P)12
その他というのは, Pの境界上の点で頂点でない点ですね。そして, W(P)
W(P)=qS(P)w(P;q)
で定めます。

図を見てもらうとすぐにわかる。

定義2の例 定義2の例

最初に例として挙げたPを見てみましょう。そして, qI(P)の中で頂点であるものの全体をC(P)とします。すなわちC(P)Pの頂点全体の集合。これに対し, qI(P)だが, qC(P)であるもの全体をD(P)とする。
qI(P)w(P;q)=1|I(P)|=|I(P)|=24
であり
qB(P)w(P;q)=qC(P)w(P;q)+qD(P)w(P;q)=(|C(P)|2)π2π+12|D(P)|=12(|C(P)|+|D(P)|)1=12|B(P)|1=921=72
である。

n角形の内角の大きさの和は(n2)πである。

これは凹多角形の場合は中学校で示したことはありませんが認めます。この定理から
qC(P)w(P;q)=(|C(P)|2)π2π
を得ます。

以上から
W(P)=24+72=552
である。

今, 具体例を計算してみたが実は一般論として
qI(P)w(P;q)=|I(P)|
であること, そして
qB(P)w(P;q)=12|B(P)|1
を導出している。よって

格子多角形Pに対し
W(P)=|I(P)|+12|B(P)|1

を得ます。

W(P)の加法性

Pを格子多角形とし, Pを2つの格子多角形P1,P2に分割したとき
W(P)=W(P1)+W(P2)
多角形分割の例2つ 多角形分割の例2つ

これは下図を見てもらえれば明らかに成り立つ定理なので省略します。といっても以下の事実には注意です。

命題3の例 命題3の例

n角形はn3本の対角線でn2個の三角形に分割可能。

n角形はn3本の対角線でn2個の三角形に分割可能です。それゆえ, それを少し弱めた主張で多角形が2つの多角形で分割できることも可能です。これも非自明ですが認めることにしましょう。

任意の格子多角形Pに対し
W(P)=Area(P)

これは示すのが少々面倒。補題をいくつか示します。

命題3を格子長方形と格子直角三角形に限定した主張

m,nは正の整数とする。頂点が4つの格子点(0,0),(m,0),(m,n),(0,n)である格子長方形Rに対し
W(R)=Area(R)(=(m+1)(n+1))
が成り立ち, そして3つの格子点(0,0),(m,0),(m,n)である格子直角三角形Δに対し
W(Δ)=Area(Δ)(=12(m+1)(n+1))
が成り立つ。
格子長方形と格子三角形 格子長方形と格子三角形

一辺が1の格子正方形Pに対し
W(P)=414=1=Area(P)
が成り立つのはすぐにわかる。一行目右辺は, Pの頂点qに対し, W(P;q)=14で頂点が4つあることとP内部とPには頂点以外には境界上に格子点がないことから得られる。このことから, 頂点が4つの格子点(0,0),(m,0),(m,n),(0,n)である格子長方形Rに対し
W(R)=W(P)(m+1)(n+1)=(m+1)(n+1)=Area(R)
が成り立つことがわかる。そして3つの格子点(0,0),(m,0),(m,n)である格子直角三角形Δに対し
W(Δ)=Area(Δ)(=12(m+1)(n+1))
が成り立つ。これは, 命題2を用いて得られるW(R)=2W(Δ)からわかる。

命題3を格子三角形に限定した主張

任意の格子三角形Tに対し
W(T)=Area(T)

Tを格子三角形としその頂点をA(x1,y1),B(x2,y2),C(x3,y3)とする。ここでy1y2y3としても一般性を失わない。

  1. y1=y2<y3の場合
  2. y1<y2<y3の場合
  3. y1<y2=y3の場合
  4. y1=y2=y3の場合

の4つの場合が考えられる。3.の場合で得られるTは合同変換を施すと, 1.の場合のTに帰着できる。4.はそもそもTは三角形を成さない。ゆえに1.と2.を調べればよい。

1.y1=y2<y3の場合。1.と同様にx1,x2,x3の大小関係で場合分けします。ただし, x1<x2としても一般性を失わないことを考慮してうまく場合分けします。
1.の場合で考える必要がある図 1.の場合で考える必要がある図

2.y1<y2<y3の場合。1.と同様にx1,x2,x3の大小関係で場合分けします。ただし, x1=x2またはx2=x3またはx3=x1の場合は考えなくてもよいです。なぜならこれは2つ以上の頂点がy軸と平行なので, 1.または4.に合同変換を用いて帰着できるからです。ゆえにx1,x2,x3の3つの大小関係を考えるにしても等号が成り立つ場合は考えなくてよいです。さらに, x1<x2を調べるだけでよいです。なぜならx1>x2の場合のTに合同変換を施してx1<x2の場合に帰着できるからです。

2.の場合で考える必要がある図 2.の場合で考える必要がある図

さて上図のように格子多角形Tは赤色の線で囲んだ格子長方形Pで覆われていると見ましょう。その格子長方形からTを除いて得られる図形をいくつかの格子直角三角形や格子長方形に分解し, 命題3と補題5を用いて計算すると
W(T)=W(P)W(PT)=Area(P)Area(PT)=Area(T)
を得る。

合同変換

本当は定理だけど, 合同変換とは

  • 平行移動
  • 回転移動
  • 鏡映(ある直線lに対して座標平面上の任意の点Xをそれぞれその対称な点Xに移す変換)
    の3つの変換を有限回(使わない変換があってもよい)だけうまく組み合わせて得られる変換のことである。
PTの意味

X,Yを集合とします。このとき, XY
XY={xxX,xY}
で定めます。これを差集合と言います。
高校生には形式張った表現だがP,TR2の部分集合です。そして冒頭で断ったようにP,Tは辺だけではなく内部も含めるとしているので, PTは格子長方形Pから格子三角形Tを除いた白い部分の図形を指します。

さて命題4を証明してみよう。

命題4の証明

Pを任意の格子n角形とします。格子n角形はn3本の対角線をうまく引いてn2個の格子三角形で三角形分割できます。それらをTi(i=1,2,,n2)と置いてみると
W(P)=i=1n2W(Ti)(3)=i=1n2Area(Ti)(6)=Area(P)
を得る。

道具が揃ったのでピックの定理の証明をします。といっても一瞬で終わりますね。

ピックの定理の証明

Pを格子多角形すると
Area(P)=W(P)(4)=|I(P)|+12|B(P)|1(2)

参考文献

[1]
枡田幹也・福川由貴子, 格子から見える数学
[2]
河野 俊丈, 結晶群
投稿日:123
更新日:123
OptHub AI Competition

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fancy
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6588
自分の勉強用に投稿するのでn番煎じのものが多いよ

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