ピックの定理の紹介
多角形と書いたら, その境界(周)及び内部からなる図形とします。
格子多角形・格子角形
平面上の多角形の中で, すべての頂点が格子点である多角形を格子多角形と言います。といっても後で色々な図形を呼びやすいように角形なら, 格子角形と呼ぶことする。
がわからない人は平面だと思ってください。そして格子点とはその平面上の点のなかで座標と座標がともに整数である点です。たとえば, とかとか。はが整数ではないので格子点ではありません。
格子多角形には, 面白い定理があります。
ピックの定理
を格子多角形, を格子多角形の内部の格子点全体, を格子多角形の境界(周)上の格子点全体とする。多角形に対し, その面積をと書き, 集合の要素の個数をと書けば
が成り立つ。
以下の図の格子多角形では成り立つのか確認してみます。
格子多角形の1つ
まず右のようにを赤い三角形と黄色の六角形に分割しましょう。そして真ん中の図のように変形し, 右側のように一部を境界が紫の正方形で囲みます。
上手に計算しよう
格子点を数え上げよう
そして, なので
この場合はピックの定理が成り立ちます。
ピックの定理の証明
発想は簡単。格子多角形を三角形分割し, その三角形を調べていきます。ここで格子多角形の頂点はすべて格子点なので, 三角形分割で現れる三角形は格子三角形です。
を格子多角形とする。そしてをの格子点全体, つまりとします。各に対し, を
その他というのは, の境界上の点で頂点でない点ですね。そして, を
で定めます。
図を見てもらうとすぐにわかる。
定義2の例
最初に例として挙げたを見てみましょう。そして, の中で頂点であるものの全体をとします。すなわちはの頂点全体の集合。これに対し, だが, であるもの全体をとする。
であり
である。
角形の内角の大きさの和はである。
これは凹多角形の場合は中学校で示したことはありませんが認めます。この定理から
を得ます。
以上から
である。
今, 具体例を計算してみたが実は一般論として
であること, そして
を導出している。よって
を得ます。
の加法性
を格子多角形とし, を2つの格子多角形に分割したとき
多角形分割の例2つ
これは下図を見てもらえれば明らかに成り立つ定理なので省略します。といっても以下の事実には注意です。
命題3の例
角形は本の対角線で個の三角形に分割可能。
角形は本の対角線で個の三角形に分割可能です。それゆえ, それを少し弱めた主張で多角形が2つの多角形で分割できることも可能です。これも非自明ですが認めることにしましょう。
これは示すのが少々面倒。補題をいくつか示します。
命題3を格子長方形と格子直角三角形に限定した主張
は正の整数とする。頂点が4つの格子点である格子長方形に対し
が成り立ち, そして3つの格子点である格子直角三角形に対し
が成り立つ。
格子長方形と格子三角形
一辺がの格子正方形に対し
が成り立つのはすぐにわかる。一行目右辺は, の頂点に対し, で頂点が4つあることと内部とには頂点以外には境界上に格子点がないことから得られる。このことから, 頂点が4つの格子点である格子長方形に対し
が成り立つことがわかる。そして3つの格子点である格子直角三角形に対し
が成り立つ。これは, 命題2を用いて得られるからわかる。
を格子三角形としその頂点をとする。ここでとしても一般性を失わない。
- の場合
- の場合
- の場合
- の場合
の4つの場合が考えられる。3.の場合で得られるは合同変換を施すと, 1.の場合のに帰着できる。4.はそもそもは三角形を成さない。ゆえに1.と2.を調べればよい。
1.の場合。1.と同様にの大小関係で場合分けします。ただし, としても一般性を失わないことを考慮してうまく場合分けします。
1.の場合で考える必要がある図
2.の場合。1.と同様にの大小関係で場合分けします。ただし, またはまたはの場合は考えなくてもよいです。なぜならこれは2つ以上の頂点が軸と平行なので, 1.または4.に合同変換を用いて帰着できるからです。ゆえにの3つの大小関係を考えるにしても等号が成り立つ場合は考えなくてよいです。さらに, を調べるだけでよいです。なぜならの場合のに合同変換を施しての場合に帰着できるからです。
2.の場合で考える必要がある図
さて上図のように格子多角形は赤色の線で囲んだ格子長方形で覆われていると見ましょう。その格子長方形からを除いて得られる図形をいくつかの格子直角三角形や格子長方形に分解し, 命題3と補題5を用いて計算すると
を得る。
合同変換
本当は定理だけど, 合同変換とは
- 平行移動
- 回転移動
- 鏡映(ある直線lに対して座標平面上の任意の点をそれぞれその対称な点に移す変換)
の3つの変換を有限回(使わない変換があってもよい)だけうまく組み合わせて得られる変換のことである。
の意味
を集合とします。このとき, を
で定めます。これを差集合と言います。
高校生には形式張った表現だがはの部分集合です。そして冒頭で断ったようには辺だけではなく内部も含めるとしているので, は格子長方形から格子三角形を除いた白い部分の図形を指します。
さて命題4を証明してみよう。
命題4の証明
を任意の格子角形とします。格子角形は本の対角線をうまく引いて個の格子三角形で三角形分割できます。それらをと置いてみると
を得る。
道具が揃ったのでピックの定理の証明をします。といっても一瞬で終わりますね。