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区分求積法の親戚さん

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(※この記事では、都合のため、虚数単位1=ιとおきます。ご了承ください。)

区分求積法というものがあります。高校の数学Ⅲで習うような非常にシンプルな等式です。
limN1Nk=1N1f(kN)=01f(x)dx=F(1)F(0)
この式の示すところは、積分を級数の形に表している、ということです。無限和が収束するための必要条件は、各項が0に収束することですから、
その条件を、上の区分求積法では、各項をf(kN)Nとすることで満たしているわけです。
では、Nで割るのではなく、隣り合う項の差をとっても、Nで0に収束しそうです。

つまり、
limNk=1N1f(kN)(1)k
この級数は、閉じた形を持つのか?ということです。

今回見つけたのは、そんな区分求積法もどきの交代和の閉じた形です。

実は、より一般に、ある関数f(x)x=0周りでべき級数展開可能(収束半径をrとする)で、更にf(0)が有限値として定義されているとき、
r<x<rの範囲で、
limNk=12Nf(kx2N)(1)k=f(x)f(0)2
が成り立つと思われます(厳密な証明は出来ていません)。
更に、三角関数を混ぜ込んだ形については、2以上の自然数mについて、
limNk=1mNf(kxmN)cos(2kπm)=f(x)f(0)2
limNk=1mNf(kxmN)sin(2kπm)=f(x)f(0)2tan(π2πm)
あるいは、もっと簡略化して書くなら、
limNk=1mNf(kxmN)e2kπmι=f(x)f(0)2(1ιcot(πm))
という等式が成り立つようです。交代和の式は、m=2を代入した特殊な場合です。
今回はそんな区分求積法もどきの級数表示を見つけたので、すべてのもととなるある一つの等式も含めて、紹介していきます。

恒等式

まず、以下では、2以上の自然数m、および0以上の整数kについて、
ξmk=e2kπmι=cos(2kπm)+ιsin(2kπm)
のように表していきます。1の原始m乗根ξm=cos(2πm)+ιsin(2πm)のべき乗というわけですね。
証明をするにあたって、次の3つの事実を用います。

k=0m1ξmk=1+ξm+ξm2++ξmm1=0

方程式xm1=0の解のひとつに、ξm=cos(2πm)+ιsin(2πm)が存在する。
また、xm1=(x1)(xm1+xm2++1)と因数分解できて、ξm1より、
1+ξm+ξm2++ξmm1=0 

abmodmξma=ξmb

abmodmならば、ある整数kを用いて、a=mk+bとかける。
ξma=ξmmk+b=(ξmm)kξmbであり、
ξmは方程式xm1=0の解であるから、ξmm=1
よって、ξma=1kξb=ξmb

2以上の自然数jに対して、limNk=0N1kj2Nj=0

0<k=0N1kj2Nj<k=0N1(N1)j2Nj=(N1)j2NNj<1N0(N) 

この三つの補題を用いて、次の等式を証明します。

2以上の自然数m、1以上の自然数jに対して、
limNk=1mN(kmN)jξmk=i=1miξmim

が成り立つ。

(iは総和記号のパラメタで、虚数単位ではありません。)

IN=k=1mN(kmN)jξmkとする。I=limNIN=i=1miξmimを示す。
IN=k=1mN(kmN)jξmk=k=0N1i=1m(mk+imN)jξmmk+i
ここで、補題2より、ξmmk+i=ξmiである。
更に、有限和は交換可能であるから、
=k=0N1i=1m(mk+imN)jξmi=i=1mk=0N1(mk+imN)jξmi=i=1mξmik=0N1(mk+imN)j
二項定理より、
=i=1m[ξmik=0N1(1mN)j{l=0j(jl)(mk)jlil}]=i=1m[ξmik=0N11(mN)j{(mk)j+j(mk)j1i+{l=2j(jl)(mk)jlil}}]
=i=1mξmik=0N1(mkmN)j+i=1mξmik=0N1j(mk)j1i(mN)j+i=1mξmik=0N11(mN)jl=2j(j,l)(mk)jlil
ここで、各項をI1,I2,I3とする。(I1+I2+I3)=INである
まず、I1について、
I1=i=1mξmik=0N1(mkmN)j=i=1mξmik=0N1(kN)j=k=0N1(kN)ji=1mξmi
ここで、補題1より、i=0m1ξmi=0であり、また補題2よりξmm=ξm0であるから、
i=1mξmi=i=0m1ξmi=0であり、
I1=k=0N1(kN)ji=1mξmi=k=0N1(kN)j0=0
すなわち、I1Nの値に依らず恒等的に0になるため、
limNI1=0
次に、I2について、
I2=i=1mξmik=0N1j(mk)j1i(mN)j=i=1mξmiijmNk=0N1(kN)j1=(jNk=0N1(kN)j1)(i=1miξmim)
ここで、区分求積法より、
limNjNk=0N1(kN)j1=j01xj1dx=[xj]01=1
よって、
limNI2=limN(jNk=0N1(kN)j1)(i=1miξmim)=i=1miξmim
最後に、I3について、
I3=i=1mξmik=0N11(mN)jl=2j(jl)(mk)jlil
ここで、(jl)j!, (mk)jl(mk)j2, ilijであるから、
0l=2j(jl)(mk)jlill=2jj!(mk)j2ij=(j1)j!(mk)j2ij
よって、
0k=0N11(mN)jl=2j(jl)(mk)jlilk=0N1(j1)j!(mk)j2ij(mN)j=(j1)j!ijm2k=0N1kj2Nj
補題3より、
limNk=0N1kj2Nj=0
であるから、
limN(j1)j!ijm2k=0N1kj2Nj=(j1)j!ijm20=0
挟み撃ちの原理より、
limNk=0N11(mN)jl=2j(jl)(mk)jlil=0
そして、|ξmk|=1であるから、
0|I3|=|i=1mξmik=0N11(mN)jl=2j(jl)(mk)jlil|i=1m|ξmik=0N11(mN)jl=2j(jl)(mk)jlil|=i=1m|ξmi||k=0N11(mN)jl=2j(jl)(mk)jlil|=i=1m|k=0N11(mN)jl=2j(jl)(mk)jlil|
④より、
limNk=0N11(mN)jl=2j(jl)(mk)jlil=0
よって、⑤の最右辺について、
limNi=1m|k=0N11(mN)jl=2j(jl)(mk)jlil|=i=1m0=0
挟み撃ちの原理より、
limN|I3|=0
②③⑥より、Nのとき、
{I10I2i=1miξmimI30
である。
①から、I1+I2+I3=INなので、
0|INi=1miξmim|=|I1+I2+I3i=1miξmim||I1|+|I2i=1miξmim|+|I3|0+0+0=0(N)
よって、
limNIN=i=1miξmim

jの値に依らず一定値に収束するというのが興味深いですね。その特性が冒頭の式の導出に関わってくるのですが、
ひとまずはi=1miξmimを閉じた形で表してしまいます。

2以上の自然数mについて、i=1miξmim=12(1ιcot(πm))=12(1ιcos(πm)sin(πm))である。

Sm(z)=i=1mziとする。
Sm(z)=zzm+11zであり、Sm(z)=1(m+1)zm+mzm+1(1z)2
さらに、項別に微分をして、
Sm(z)=i=1mizi1
よって、
i=1mizi1=1(m+1)zm+mzm+1(1z)2
両辺にzを掛けmで割り、
i=1mizim=z(m+1)zm+1+mzm+2m(1z)2
この等式はzCで成り立つので、両辺にz=ξmを代入して、
i=1miξmim=ξm(m+1)ξmm+1+mξmm+2m(1ξm)2

補題2より、
=ξm(m+1)ξm+mξm2m(1ξm)2=mξm+mξm2m(1ξm)2=ξm(1ξm)
ξm=cos(2πm)+ιsin(2πm)であるから、
θ=2πmとおいて、

ξm(1ξm)=cosθ+ιsinθ(cosθ+ιsinθ)1=cosθ+ιsinθ2sin2(θ2)+2ιsinθ2cosθ2=12sinθ2cosθ+ιsinθsinθ2ιcosθ2
ここで、
cosθ+ιsinθ=eιθ
sinθ2ιcosθ2=cos(θ2π2)+ιsin(θ2π2)=e(θ2π2)ι
であるので、
=12sinθ2eιθe(π2θ2)ι=e(θ(θ2π2))ι2sinθ2=e(θ2+π2)ι2sinθ2=sinθ2+cosθ22sinθ2=12(1cot(θ2))
θ=2πmであったから、θ2=πmである。
よって、⑦より、
i=1miξmim=12(1ιcot(πm))

以下では、12(1ιcot(πm))=Cとします。

べき級数に代入

上の方で、
limNk=1mN(kmN)jξmk=C
を示しました。これは1以上のjであれば、jに依らず成立するので、両辺にxjを掛けて、
limNk=1mN(kxmN)jξmk=Cxj
とすることができます。
ここで、ある関数f(x)が、べき級数展開f(x)=f(0)+j=1ajxjを持っているとします。
その収束半径をrとすると、r<x<rにおいては、上の式を代入して、
f(x)=f(0)+j=1aj(1ClimNk=1mN(kxmN)jξmk)
すなわち
j=1ajlimNk=1mN(kxmN)jξmk=C(f(x)f(0))
が成り立ちます。
ここで、もし無限和と極限の交換が可能ならば
j=1ajlimNk=1mN(kxmN)jξmk=limNk=1mNj=1aj(kxmN)jξmk
がなりたち、0kmN1から、r<x<rr<kxmN<rが成立し、
j=1aj(kxmN)jξmk=(f(kxmN)f(0))ξmk
ですので、
limNk=1mNj=1aj(kxmN)jξmk=limNk=1mN(f(kxmN)f(0))ξmk
となります。
更に、
k=1mNf(0)ξmk=0であることは簡単に分かるので、結局、
limNk=1mNf(kxmN)ξmk=C(f(x)f(0))
です。

赤字の部分について、”普通の”ふるまいをする関数、例えば初等関数などでは成り立つでしょうが、厳密な証明は今の自分の力では
得られそうにありませんでした。
べき級数として表せること、極限を取る過程での残差を上手く評価できれば示せそうです。
この肝心の部分が証明できていないため、「成り立つと思われる」と微妙な書き方をしなければならなかったのが悔やまれます。
この記事を見てくださった方で、何か良い方法がありましたら、ぜひコメントしていただければ、と思います。

何はともあれ、
limNk=1mNf(kxmN)ξmk=C(f(x)f(0))
C=12(1ιcot(πm))を代入すれば、表題の式
limNk=1mNf(kxmN)ξmk=(f(x)f(0))2(1ιcot(πm))
が得られ、実数部分と虚数部分を比較することで、
limNk=1mNf(kxmN)cos(2kπm)=f(x)f(0)2
limNk=1mNf(kxmN)sin(2kπm)=f(x)f(0)2tan(π2πm)
という関係性が得られます。冒頭に述べたとおり、m=2とすれば、
cos(2kπm)=cos(kπ)=(1)kですので、
limNk=12Nf(kx2N)(1)k=f(x)f(0)2
となります。

まとめ

いかがだったでしょうか。最後の一番重要ともいえる部分が未証明なのが致命的ですが、なかなか面白い等式を得られました。
そして、今回の等式について、x=1とすれば、
limNk=12Nf(k2N)(1)k=f(1)f(0)2=1201f(x)dx
となり、区分求積法では元の関数を積分していたのが、今回は導関数を微分していることになります。

区分求積法ではある点でのf(x)の値に微小量を掛けて足し合わせる、という積分そのものであったのに対し、
今回はf(k2N)f(k+12N)の差を取る、即ち微分のような操作をしていることになります。

感覚的には納得できるのではないかと思います。
ちなみに、区分求積法と違い2Nが分母に来ているのは、最後の項の符号によって値が変わってしまうからです。
元々この一連の式を思いついたときは、
k=1N(kN)j(1)Nkのように、最後の項が正となるように1の次数をそろえていました。
しかし、見た目と、その後の複素数までの拡張に際し、Nのほうを変えたほうが楽だったために、あのようなmの倍数としました。
夏のいい思い出となりました。
以上です。

投稿日:202485
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投稿者

n=1 帰納法の失敗

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