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Hahn-Banachの定理の応用(Riesz-Markov-角谷の定理)

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Riesz-Markov-角谷の定理

この定理は色々バリエーションがありますが今回示すのは次の主張です:

Riesz-Markov-角谷の定理

第二可算コンパクト(Hausdorff)空間X上のR値連続関数環C(X)について、正値線形汎関数ϕ:C(X)RX上の有限測度μは次の関係で一対一に対応する:
ϕ(f)=Xfdμ

ここで線形汎関数ϕが正値とは次の同値な条件のうち片方(従って両方)を満たすこととします。特に正値性は有界性(連続性)を導きます。

正値性

ϕ(1)=ϕfC(X)+ ϕ(f)0
ここでfC(X)+defxX f(x)0

証明
() fC(X)に対しfffだからfϕ(1)ϕ(f)fϕ(1)
故にϕϕ(1)だが、上がf=1でサチってるのでちゃんと等号。
() f0に対し十分小さいε>0を用いて1εf1とできる。
ϕεϕ(f)=ϕ(1εf)ϕ1εfより従う。

測度が積分から復元されること(fC(X) fdμ=fdνμ=ν)は例えばπλ定理とか単調族定理から出ます(今回は省略)。

定理1の証明(測度を構成する方)

実はCantor空間K:={0,1}NからXへの連続全射pが存在するので一つ取る。引き戻し(pとの合成)p:C(X)C(K)が等長なので、これを閉部分空間だと思い、Hahn-Banachの定理を使ってϕ:C(K)Rϕ|C(X)=ϕかつϕ=ϕと取る。ϕ(1)=ϕ(1)よりϕの正値性はϕのそれを導くが、実はϕがあるK上の測度μで表現されることは以下により分かり、その像測度μ:=μp1が所望のX上の測度を与える:
C:={AK開かつ閉}は有限加法族でありΦ(A):=ϕ(χA)は有限加法的だが、実はC上可算加法的だからHopfの拡張定理から従う。なぜなら、A=nAnかつA,AnCとなるdisjointなAnAのコンパクト性とAnの開性から自明なものだけであるから。

定理のバリエーションについて

普通はXは一般の(第二可算)局所コンパクトHausdorff空間で取ります。関数空間をCc(X)にして無限測度を許すバージョンと正値性を有界性にして複素測度を許すバージョンと大きく分けて二つバリエーションがあります。今回はXにコンパクト性を課しましたが、局所コンパクト空間はコンパクト集合の増大列(ネット)で書けることからどちらも基本的にコンパクトな場合に帰着されます。複素測度の方も、実部と虚部に分けて更に正と負に分ける(こっちは少し大変だが、実は別のバリエーションのHahn-Banachでショートカットできる)ことで同じく今回の場合に帰着されます。
Wikipediaとかは第二可算性を課してないんですが、そうすると測度に正則性を課すかBaire集合族を使うかをする必要があります。しかしそれは特に使うことはないので気にしないで良いです。

おまけ1(局所コンパクトな場合)

Riesz-Markov-角谷の定理

第二可算局所コンパクト(Hausdorff)空間X上のR値コンパクト台連続関数環Cc(X)について、正値線形汎関数ϕ:Cc(X)RX上の非負測度(無限を許す)μは次の関係で一対一に対応する:
ϕ(f)=Xfdμ

というか余談

1Cc(X)という理由で正値性はsupノルムでの有界性すら導きません(上の補題の証明が回らない)。Cc(X)の適切な位相はsupノルムではなく、{Kで消えるK上連続関数}というBanach空間のKXを渡るincreasing unionと書いた時の終位相(各Kについて制限が開になってる部分集合全てを開集合系として取ってくる)であり、この位相についての連続性なら正値性から導かれます。
ちなみに、この位相は(普通の関数解析じゃ見慣れないかもしれませんが)局所凸位相線形空間を与え、位相線形空間として完備(各seminormでCauchyとなるネットが収束する)です。こう言うと驚かれるかもしれませんが、seminormを連続体濃度分真に使うのでこういうことが起きます。非有界を許すi:XRに対しpi(f):=maxX|if|fがコンパクト台なので定まりますが、全てのiについてこれを考えたら良いです。
更にちなみに、これと似たようなことをすることでCc(M)についても局所凸位相が定まり、それはテスト関数の空間と呼ばれます。核型空間(Schwartzの核定理が一般化されるような位相線形空間のクラス)の最も重要な例です。

gCc(X)に対しKXgの台より大きいコンパクト集合とすれば、fC(K)に対しgfCc(X)が定まります。正値なϕ:Cc(X)Rに対して
C(K)fϕ(gf)C
に対してコンパクトな場合の主定理を使えばX上の有限測度μgϕ(gf)=Kfdμg=Xfdμgと表現できます。K上の測度をX上の測度と思い直しています。この式はfKで消えるK上連続関数で特に成立しています。
今単調広義一様収束gn1をコンパクト台に取る(Xのコンパクト増大被覆を取ればいい)と、上式が成立するfはどんどん増えていき、limnϕ(gnf)=limnXfdμgnです。左辺は極限する前からϕ(f)であり、右辺はμ(A):=limnμgn(A)としてXfdμです。右辺についてはこのμが完全加法的な測度になることのみが非自明ですが、次の微積から分かります。手を動かすと見たことのある議論だと思います。

微積

無限和は[0,]内の単調収束について連続。つまり、xnixn[0,]についてnxninxn[0,]

おまけ2

Riesz-Markov-角谷の定理

第二可算局所コンパクト(Hausdorff)空間X上のC値無限遠で消える連続関数環C0(X)について、有界線形汎関数ϕ:C0(X)CX上の複素測度μは次の関係で一対一に対応する:
ϕ(f)=Xfdμ

上の場合と違い、C0(X)supノルムについてBanach空間をなします。
複素測度とは可測集合族からCへの写像であって完全加法性が絶対収束の意味で成り立つものです。絶対収束性のおかげで結局有限測度の複素数係数線形結合(有限個)で書けることが知られています、実部と虚部に分かれるのはすぐ分かりますが符号付き測度を正負に分けるのは少し骨が折れるかもしれません(がHahn-Banachでshort cutできます)。これで計4つの線形結合で書けます。
別の見方として、極分解というものがあり、有限非負測度|μ|w:XCという絶対値1の関数が存在してdμ=wd|μ|と書けます。このとき上のϕ=μ:=|μ|(X)です。これを全変動と呼びます。

ϕ=1と仮定していい。もしϕが正値だったら一個前のバージョンから対応する非負測度μが取れ、μ(X)=ϕとなる。特にμが有限測度になる。
S:={正値でϕ1ϕ(C0(X))全体}とおく、つまりμ(X)1なる非負測度全体のなすコンパクト凸集合である。弱-位相についての単位球のコンパクト性(Banach-Alaogluの定理)と|ϕ(f)|fがclosed conditionであることから従う。
Hahn-Banachの定理は複素数倍S:=|z|=1zS(C0(X))の弱
-位相についての閉凸包がその単位球になることに使う。実際これはfC0(X)に対してsupϕ単位球Re(ϕ(f))=supϕSRe(ϕ(f))を確認すればいいが、左辺はfであり右辺はϕとして点でのevaluation(点測度での積分)の複素数倍を取ればいい。
つまり単位球から取ってきたϕzSの元の凸結合の極限と書ける。zの部分を実部と虚部、更に正と負に分けることで、Sの凸性に気を付ければ、ikS (k=1,,4)の元の和の極限となる。ϕ=limλkikϕλkϕλkSが取れるが、このネットΛを普遍ネット(またはultralimit)に取り替えてSのコンパクト性からϕ=kikϕkなるϕkSが取れる。Sの元は有限測度だから、その線形結合であるϕが複素測度として実現された。

この証明で副産物的に複素測度は有限測度の複素数係数線形結合で書けることが得られた。ただし、複素測度μの全変動
sup{n|μ(An)|:(An)Xの可算分割}
が有限であることは素手で示さないといけない、C0(X)上汎関数としての有界性のため。

Jordan分解

上の証明中、凸結合を実部虚部に分けたところで評価が少し落ちているが、正負で分けるところでは落ちない。つまり元から符号付き測度(実数値測度)になっている場合はtλϕλ++(1tλ)(ϕλ)の極限と書ける(t[0,1],ϕ±S)ので、そのまま普遍ネットで落としϕ=tϕ++(1t)(ϕ)と書ける。評価が落ちていないとはϕ=tϕ++(1t)ϕとなっているということである。これは符号付き測度のJordan分解を与えている。

Jordan分解の一意性

符号付き測度μの非負な分解μ=μ+μであってμ=μ++μなるものは一意。更に、勝手な非負な分解μ=ν+νν±(E)μ±(E) EXとなる。

まず、符号付き(複素)測度のノルムとは全変動とC0(X)上のノルムとB(X),有界可測関数の空間上のノルムがあるが、これらは全て一致します。後者二つの一致を言えば全て挟めるが、これは単調族定理か「その指示関数を連続関数でL1近似できる集合族」と言って測度論をやると良いです。

評価が落ちていないことからμ|E=μ+|E+μ|Eが出る、これはE上の測度としてのノルム。ν+|E+ν|Eμ|Eは三角不等式であり、μ+(E)+μ(E)ν+(E)+ν(E)となる。μ+μ=ν+ν=μに気を付けるとどちらの不等号も降ってきます。と言うかν+μ+=νμです。

おわり

ここまでくると複素測度の極分解まで流れに沿って示したいが、まあRadon-Nicodymの定理に投げちゃう方が楽だよなあ。一応やるとしたら、zSの元での凸結合をS1×X上の(有限個のmassからなる)確率測度と思って、その意味で弱収束極限を取り、その確率測度のレベルで上の「評価が落ちてない」の議論をすればS1×XXがとしてmeasure algebraとして同型だから射影S1×XS1XS1に持ってくることができる。

投稿日:2024822
更新日:2024112
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SOFT ANALYSIS

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