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階層ごとの平均値の罠

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$$\newcommand{convex}[2]{\lambda {#1} + (1- \lambda ){#2}} $$

平均値の不思議

本記事で考える平均は相加平均です。学校のテストでのクラスごとの平均や科目ごとの平均で利用されたり、各月ごとや年間売り上げの平均、気温の平均など様々なところで活用されています。

階層ごとの平均と全体の平均

いきなりですが、具体的な値を用いて平均値を見てみましょう。

階層階層合計階層平均
1000~A160028001400
1000~B1200--
500~1000C9002340780
500~1000D800--
500~1000E640--
~500F300800200
~500G200--
~500H200--
~500I100--
全体--5940660

上のそれぞれの値を下のように変化させてみます。

階層階層合計階層平均
1000~A150015001500
500~1000B9502520840
500~1000C800--
500~1000D770--
~500E4801200240
~500F280--
~500G190--
~500H170--
~500I80--
全体--5220580

上の表のとおり、それぞれの値はすべて下がっていて、もちろん全体での平均値は下がっています。しかし各階層ごとの平均値を見てみると、不思議なことにどの階層の平均値も上がっています。下の表はまとめた結果です。

階層平均(前)平均(後)変化
1000~14001500上昇
500~1000780840上昇
~500200240上昇
全体660580下降

様々なところで数値の変化による分析などが行われていると思います。上記の例のように平均値の結果に嘘は一切ありません。ですが一部のみを切り取ってみると、全く逆の結果が導き出されることも事実です。仮に上の例が収入額だとして高収入~低収入のような階層としてみると、どの収入階層も上昇しているので、よくなっているように見えるのです。しかし全体を見てみれば収入が上がっていることはなく、よくはなっていないのです。ただ数値は正しいのでどこにも嘘はないということになります。もちろん収入や所得などの算出はもっと複雑な過程を経ると思いますが、表に発表される結果の全体を見てみると、より詳しいことが分かることがあるかもしれませんね。

数字は嘘をつきませんが、使い方次第でどのようにでもできてしまうことが分かることの一例でした。

投稿日:2023913
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くっく
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趣味数学家。 大学院時代には凸解析学を専攻。 多くの人が数学を好きになるためのサポート。 アイコンはdesmosを使用した関数アート。

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