まず初めに次の問題を考える。
$e^{π}$と$π^{e}$はどちらが大きいか
有名な入試問題として定期的に話題になるのがこの問題である。
これは通常$\frac{logx}{x}$を評価することで求めるのが一般的である。
しかしより簡単な方法での証明を思いついたので以下に記す。
$e^{π}$と$π^{e}$について対数をとっても大小は変わらないので
$\pi≷elogπ$
更にもう一度対数をとると
$logπ≷1+loglogπ$
これはそれぞれ$y=x$と$y=1+logx$の$x=logπ$上の点であることが分かる。
ここで不等式$x-1>logx (1≠x>0)$を使って、$x=logπ$を代入すれば
$logπ>1+loglogπ$
これを$e$の肩に乗せれば
$π= e^{logπ} $>$e^{1+loglogπ}=elogπ$
更に$e$の肩に乗せて
$e^{π}> e^{elogπ}=π^{e}$
よって$e^{π}>π^{e}$
数学的によりきれいな論証をしたいのであれば天下り的に逆から示せばよいだろう。
つまりいきなり不等式$x>1+logx$に$x=logπ$を代入していけばよい。
このやり方を使えば次の問題も解くことができる。
$e^{x}$と$x^{e}$はどちらが大きいか ($e≠x>0$)
これは結論として次のようになる
$e^{x}>x^{e}$ ($e≠x>0$)
先ほどの証明手順を踏まえればこれも簡単に証明できる。
$e^{x}≷x^{e}$ 両辺の対数をとって
$x≷elogx$
ここで以下の場合分けが発生する。
$0<x<1$の場合
$logx<0$なので$x>0>elogx$
よって
$e^{x}>x^{e}$ ($0<x<1$)
$x>1$の場合
$logx>0$ なので対数をとることができ
$logx≷1+loglogx$
$logx=t$とすれば$t≷1+logt$だが不等式$t-1>logt (1≠t>0)$より
$t>1+logt$
よって$x= e^{t} > e^{1+logt}=elogx $
さらに$e^{x}> e^{elogx} =x^{e}$
ⅰとⅱをまとめると
$e^{x}>x^{e}$ ($e≠x>0$)
$0<x<1$のときはより簡単に示すことができ
$$
e^x>e^0=1>x^e
$$
長くなってしまったが本題に入ろう。
先程の証明方法を用いて一般的な場合を考える。
$a^{b}$と$b^{a} (b>a>0 ,b≠a≠1)$はどちらが大きいか
これは多くの場合分けが発生する。
i.$b>1>a$の場合
$b^{a}>b^{0}>1>a^{b}$ より $b^{a}>a^{b}$
ⅱ.$1>b>a$の場合
このとき$t=\log_{b}a=\frac{loga}{logb}$とおくと$t>1$になる。
∵$1>b>a$のとき $0>logb>loga$なので$logb(<0)$で割って$1<\frac{loga}{logb}=t$
また$0>logb=\frac{-1}{β} (β>0)$とおく。
$f(x)=x-(1+\log_{b}x)=x+βlogx-1$を考えると
$x-1>logx$より$f(x)>(β+1)logx$となる。
$f(x)$における$x=t=\log_{b}a$を考えると今$t>1$で$logt>0$なので$f(t)>0$
よって$t-(1+\log_{b}t)=\log_{b}a-(1+\log_{b}\log_{b}a)>0$
$\log_{b}a>1+\log_{b}\log_{b}a$
両辺を$b<1$の肩に乗せるとき不等号は入れ替わり
$a< b^{1+\log_{b}\log_{b}a}=b×\log_{b}a$
更に$b$の肩に乗せてまた入れ替わり
$b^{a}>b^{b\log_{b}a}=a^{b}$
よって$1>b>a$のとき$b^{a}>a^{b}$である。
ⅲ.$b>a>1$の場合
このとき$t=\log_{b}a=\frac{loga}{logb}$とおくと$0< t<1$になる。
∵$b>a>1$のとき $logb>loga>0$なので$1>\frac{loga}{logb}=t>0$
また$0< logb=\frac{1}{γ} ,γ>0$と置く。
$f(x)=x-(1+\log_{b}x)$を考えると
$f(x)>logx-γlogx=logx(1-γ)$
よって$γ$の値によってさらに場合分けが考えられる。
ⅲ-1 $1-γ<0$の時 (つまり$b< e$)
$x=t$において$logt(1-γ)>0$であるので$f(t)>0$でⅱの議論と同様にして$b^{a}>a^{b}$ ($e>b>a>1$)
ⅲ-2 $1-γ>0$の時 (つまり$b>e$)
ここで更に場合分けを考える。
ⅲ-2-1 $b>a>e$の場合
このとき$t$は$0<γ< t<1$である。
このとき$f(t)$は
$f(t)=t-(1+\log_{b}t)=t-1+γlog\frac{1}{t} < t-1+γ(\frac{1}{t}-1)= \frac{(1-t)}{t}(γ-t)<0$
より$f(t)<0$である。
よってⅱの時とは大小関係が変わり$b^{a}< a^{b}$
ⅲ-2-2 $b>e>a>1$の場合
このとき$0< t<γ<1$である。
この場合、$f(x)$は$0< x<γ$に解を持つため更に場合分けが発生する。
この解はランベルト$W$関数を用いて$x_{0}=-γW_{0}(\frac{-1}{γ}e^{\frac{-1}{γ}})$と表される。
これより
$0< t< x_{0}(<γ)$において$f(x)>0$であるため$b^{a}>a^{b}$ $(b>e>e^{-W(s)}>a>1)$
$0< x_{0}< t(<γ)$において$f(x)<0$であるため$b^{a}< a^{b}$ $(b>e>a>e^{-W(s)}>1)$
一番最後の場合分けについて、細かい議論は省略した。
ここの議論についてはここでは書ききれなかったためまた別の記事でいずれ追記しようと思う。
結果が複雑になってしまったため以下の表にまとめる。
$b>1>a$ | $b^{a}>a^{b}$ |
$1>b>a$ | $b^{a}>a^{b}$ |
$e>b>a>1$ | $b^{a}>a^{b}$ |
$b>a>e$ | $b^{a}< a^{b}$ |
$b>e>e^{-W(s)}>a>1$ | $b^{a}>a^{b}$ |
$b>e>a>e^{-W(s)}>1$ | $b^{a}< a^{b}$ |
最後ランベルトのW関数を使って便宜的に大小関係を評価したが、これは元の不等式を評価するためにより複雑な不等式の評価が必要となってしまい数学的な有用性が低くなってしまう。もう少し自明な条件などで言い換えられないかはまだわからないため今後また考察していこうと思う。
この考察につながりそうな何かを知っている方がいれば是非教えていただきたい。