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BalkanMOshortlist2021A5を解く

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ちょっと面白かったので,考えの整理と記事を書く練習を兼ねて紹介します.

BalkanMOshortlist2021A5

$f:\mathbb{R}^{+}→\mathbb{R}^{+}$ $f(xf(x+y))=yf(x)+1$

解答

$P(x,y)$で与えられた式への代入を表す.
任意の$s>t$なる実数$s,t$に対し,$P(t,s-t)$より$f(tf(s))=(s-t)f(t)+1$.この式への代入を$Q(s,t)$と表す.
任意の$f(a)=f(b)$かつ$a>b>0$であるような実数$a,b$に対し,$b>c>0$となるような実数$c$をとると
$Q(a,c):f(cf(a))=(a-c)f(c)+1$
$Q(b,c):f(cf(b))=(b-c)f(c)+1$
この式を比較して$a=b$となるので$f$は単射.
ここで,$t$を任意の正の実数として$P(x,tf(y))$より$f(xf(x+tf(y)))=tf(x)f(y)+1$
この式の$x,y$を入れ替えて比較することで$f(xf(x+tf(y)))=f(yf(y+tf(x)))$
単射性より$xf(x+tf(y))=yf(y+tf(x))$$x \neq y$ と仮定すると$f(x+tf(y))\neq f(y+tf(x))$
特に任意の正の実数$t$に対して$x+tf(y)\neq y+tf(x)$が成り立つ.よって$\dfrac{x-y}{f(x)-f(y)}<0$となるので$f$は狭義単調減少.
また,与式において$x$を固定して$y$を動かすと右辺は$1$より大きい任意の実数値を取りうる.したがって,$f(k)=2$となるような実数$k$をとれる.$P \left( \dfrac{k}{2},\dfrac{k}{2} \right)$ より$\dfrac{k}{2}f\left(\dfrac{k}{2}\right)=1$を得る.
ここで,$k<2$であることを示す.$k\geq2$と仮定すると,$Q(k,1)$より$f(2)=(k-1)f(1)+1\geq f(1)+1$である.一方狭義単調減少性より$f(1)>f(2)$であるから,$f(1)>f(1)+1$となるがこれは矛盾.したがって$k<2$である.特に,$lf(l)=1$ かつ$0< l<1$となるような実数$l$が存在する.
次に,$f(1)=1$であることを示す.$f(1)\neq 1$であると仮定すると,任意の$0< z<1$なる実数$z$に対して$Q(1,z)$および単射性から$f(z)\neq f(f(1)z)=(1-z)f(z)+1$. したがって$zf(z)\neq 1$となるが,これは上で示したことに矛盾する.よって$f(1)=1$である.
これより$f(z)=\dfrac{1}{z}$ となる.$z>1$ なる実数$z$については,$Q(z,1)$より$f(f(z))=z$であり,狭義単調減少性より$f(z)< f(1)=1$であるから,$f(f(z))=\dfrac{1}{f(z)}$ である.したがって$f(z)=\dfrac{1}{z}$
以上より任意の正の実数$x$に対して$f(x)=\dfrac{1}{x}$であり,これは十分性をみたすので,これが解である.

投稿日:20231125
更新日:20231125

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