0

cluster algebraゼミのメモ

126
0
$$\newcommand{A}[0]{\mathcal{A}} \newcommand{Aut}[0]{\mathrm{Aut}} \newcommand{bs}[1]{\boldsymbol{#1}} \newcommand{C}[0]{\mathbb{C}} \newcommand{char}[0]{{\bf char}} \newcommand{comp}[0]{\circ} \newcommand{core}[0]{\rm{core}} \newcommand{diag}[0]{\mathrm{diag}} \newcommand{F}[0]{\mathbb{F}} \newcommand{field}[1]{\mathbb{F}_{#1}} \newcommand{gen}[1]{\langle #1 \rangle} \newcommand{GL}[0]{\mathrm{GL}} \newcommand{imply}[0]{\Rightarrow} \newcommand{inpr}[2]{\langle {#1},{#2} \rangle} \newcommand{iso}[0]{\simeq} \newcommand{lnormal}[0]{\triangleleft } \newcommand{N}[0]{\mathbb{N}} \newcommand{P}[0]{\mathbb{P}} \newcommand{PGL}[0]{\mathrm{PGL}} \newcommand{PgL}[0]{\mathrm{P\Gamma L}} \newcommand{PSL}[0]{\mathrm{PSL}} \newcommand{Q}[0]{\mathbb{Q}} \newcommand{Qsf}[0]{\Q_{\mathrm{sf}}} \newcommand{rnormal}[0]{\triangleright} \newcommand{semiprod}[3]{{#1}\ltimes_{#2}#3} \newcommand{SL}[0]{\mathrm{SL}} \newcommand{T}[0]{\mathbb{T}} \newcommand{Z}[0]{\mathbb{Z}} $$

某所において週$\frac{2}{3}$回くらいのペースで Nakanishi:Cluster Algebras and Scattering Diagrams Part I (cluster代数の基本的な教科書)のゼミを行っているので, ゼミノートを作るついでにmathlogに記事を載せておきます. {自分のゼミ内容}$\setminus${pdfに書かれていること}のみを書くので, 上の教科書と合わせて読んでください(self-containedでは全くないです) 気が向いたら適宜updateしていきます.

この記事はarXiv:2201.11371のバージョン3を基としているので, (多分ないと思いますが)更新が行われた際は参照ページ/命題番号のずれに注意してください.
また, 同じ著者による「団代数の基礎」も前半部分は上のpdfとほぼ同じなので, 対応するページ/章/定理番号があれば括弧で書きます.

質問/指摘などあればコメント欄へお願いします.

section 1

1.2(本:1.3) :余談

聴講者から, 「半体$\P$が加法の単位元があるのってどういう時かってわかりますか」みたいな質問がきました. その場では答えられなかったが,
落ち着くと,そういうのは自明半体しかないことがわかります:

半体$\P$が加法の単位元$0$を持てば, $\P$は自明な半体.

このとき, 任意の$a,b\in \P$に対し,
$a+b=(a0^{-1})(0+0a^{-1}b)=(a0^{-1})(0a^{-1}b)=b$. この式の$a,b$を入れ替えることで, $a+b=a$がわかり, 任意の$a,b\in \P$に対して$a=b$. よって$\P$は自明な半体.

ちなみに, 半体は(普遍代数の意味で)ちゃんと代数になっているので, 準同型の定義とか, 普遍半体の存在とそのuniversalityとかはそういう一般論からでたりします. まあ普遍半体の形とかは一般論からは(少なくとも容易には)でないんですけどね~

section2

2.4:修正

ここでやってることは, 要するに「一般の係数半体$\P$でミューテーションを文字式として計算するのは, 自由係数で計算しているのと本質的に同じだよね~」という話なんですが, 体が代数でないので見た目上煩雑な議論をする必要がでてきます.

この節では, $t_0\in \T$を固定し, $x_{i;t_0}$を単に$x_i$と書きます($x'_i$も同様).
また, $p\in\P$に対応する$\Z\P$の元を($\P$の元と区別したときは,)$[p]$と書きます.
proposition 2.5(b)(本:命題2.22(b),p46)は文字通りに読むと嘘で, 例えば$\P=\mathbb{1}$とかのときに, $x_1\in \mathcal{X}(\sigma)\subset (\Q\Qsf(\boldsymbol{y}))(\boldsymbol{x})$$x_1=\frac{([y_1]-[1])x_1}{[y_1]-[1]}$とかけるので, これを言われたとおりに$\phi$で送ろうとすると, $\frac{0}{0}$が出てきてill-defになってしまいます.
本の場合だと, 「非負表示をえらび~」と書いているので, 嘘ではないがやっぱり「表示によらないのはなんで?」とかが気になる.
なので, 多分このような命題を代わりに考えるといいと思います:

2.25(b)修正版

$t_0\in \T$において自由係数なクラスターパターン$\Sigma$と, 係数が$\P$であるようなクラスターパターン$\Sigma'$があり, $\Sigma$$\Sigma'$が同じ$B$パターンを共有していると仮定する.

このとき, 次の2条件を満たす環準同型$\phi:\A(\Sigma)\to (\Q\P)(\bs{x}')$が存在する:

  1. $p\in \Qsf(\boldsymbol{y})$ならば$\phi([p])=[\pi(p)]$ ($\pi$は2.25(a)で定義されたもの)
  2. 任意の$t\in \T$に対して $\phi(x_{i;t})=x'_{i;t}$

証明のために少し定義と補題を準備します. 以下の記法は(恐らく)一般的なものではないので注意してください.

$\P$を半体とする. このとき, $\N\P\subset \Z\P$を, $\N\P=\{\sum_{i=1}^n a_i[p_i]|a_i,n\in \N, p_i \in\P\}$で定める.

また, $A$$\Z\P$代数であり, $a_1,a_2,\cdots, a_n\in A$であるとき, $\N\P[a_1,a_2,\cdots ,a_n]:=\{f(x_1,\cdots x_n)|0\neq f\text{は}\N\P\text{係数多項式}\}$とする.

上の状況で, さらに$A$が体であり, $0\not\in \N\P[a_1,a_2,\cdots ,a_n] $のとき, $\N\P(a_1,a_2,\cdots ,a_n)\subset A$$\{\frac{s}{t}|s,t\in\N\P[a_1,a_2,\cdots ,a_n] \}$で定める.

$A$$\Z\P$代数とし, $a_1,\cdots ,a_n\in A$とする. このとき,$\N\P[a_1,a_2,\cdots ,a_n]$は和と積で閉じる.
さらに, $\N\P(a_1,a_2,\cdots ,a_n)$が定義されるならば, この集合は和と積と商で閉じる.

前半は定義より自明. 後半は前半からすぐでる. ($\frac{a}{b}+\frac{c}{d}=\frac{ad+bc}{bd}$などからわかる)

命題2

$\Sigma$のrankを$n$とする.
(元の論文にもあるように, 群の射は群環の射に伸びるので,)自然に$\pi_1:\Z\Qsf(\bs{y})\to \Z\P$が定義できる. 多項式環の普遍性より, これはさらに$\pi_2:\Z\Qsf(\bs{y})[x_1,x_2\cdots ,x_n]\to \Z\P[x_1,x_2\cdots ,x_n];x_i\mapsto x_i$に伸びる. $R=\Z\Qsf(\bs{y})[x_1,x_2\cdots ,x_n]$, $S=(\N\Qsf)[x_1,x_2,\cdots ,x_n]\subset R$と置く. このとき, $x_1,\cdots x_n$の代数的独立性より, $0\not\in S$. また, $\pi_2(S)=\N\P[\pi_2(x_1),\pi_2(x_2),\cdots,\pi_2(x_n)]=\N\P[x'_1,x'_2,\cdots,x'_n]$なので, 上と同様に$0\not \in \pi(S)$.

$\pi_2$と自然な埋め込みの合成$\pi_2':R\to \Q\P(x_1,x_2\cdots ,x_n)$と置くと, これは今示したことと, 局所化の普遍性より, $\pi_3:S^{-1}R\to \Q\P(x_1,x_2\cdots ,x_n)$に伸びる.

$x_i \in (\N\Qsf)(x_1,x_2,\cdots ,x_n)$であり, 上の命題より$(\N\Qsf)(x_1,x_2,\cdots ,x_n)$は和積商で閉じる. mutationは和積商と$[\P]$の元のみを用いてかけるので, $(\N\Qsf)(x_1,x_2,\cdots ,x_n)$$\Sigma$のクラスター変数を全て含む. よって$S^{-1}R$$\A(\Sigma)$を含む. 以下, $\phi=(\pi_3|_{\A(\Sigma)})$が条件を満たすことを示す.

1.は作り方から明らか(結局$\phi([p])=\pi_1([p])$になるので). また,$\phi(x_i)=x'_i$も作り方からわかる.

以下$t\in \T$とし, $\phi(x_{i;t})=x'_{i;t}(i=1,\cdots,n)$の成立を仮定し, $\phi(x_{i;\mu_k(t)})=x'_{i;\mu_k(t)}$を示す.
(これが示せれば, 帰納法により2の成立が言える. )
これはmutationの定義, $x_{i;\mu_k(t)}=x_{i;t}^{-1}\displaystyle\prod_{j=1}^n (x_{j;t})^{[-b_{jk;t}]_{+}} \frac{1+\hat{y}_{k;t}}{1\oplus y_{k;t}}$$\phi$で送ればよい. ($x_{i;t}\in \A(\Sigma)\subset S^{-1}S$によって, $\phi(x_{i;t}^{-1})=\phi(x_{i;t})^{-1}$が保障されていることに注意)

section3

3.1:行間/修正

この節には, prop1.11(本:命題1.10)で使った論法を使わないと埋まらない行間がそこそこあります.

$a_1,a_2,\cdots ,a_n\in\Z\P$とする. このとき, $\P$
(乗法に対する)部分群$H\iso \Z^m$があり, $a_1,\cdots a_n\in \Z[H]\iso \Z[x_i^{\pm 1}](i=1,\cdots ,m)$.

$a_i$の係数として現れる$\P$の元が生成する(乗法)群を$H$とすればよい.

p35中ほど(本:p48中ほど) :行間

$\Z\P^{\times}=\{\pm 1\}\P$

$ab=1$,$a,b\in \Z\P$とする. このとき, 上の命題を$a,b$に対してつかい, ある$H\subset \P$があり$a,b\in\Z[H]\iso \Z[x_i^{\pm 1}]$. 整域$A$において,$A[x,x^{-1}]^{\times}=A^{\times }x^{\Z}$なので, これを繰り返し用い, $a\in \{\pm 1\}H\subset \{\pm 1\}\P$がわかる.

p36の上部(本:p51の下部) :修正

$d(t_3,t)=d$とあるが, $t_0$$t$の位置関係によっては, $d(t_3,t)=d-2$の可能性もある(どちらにせよ帰納法は回るが)

p36の下部(本:p51の中ほど) :行間

式3.8とlemma 3.5(b)(本:式3.17と補題3.3(2))から$\tilde{f}$$x^a_{k;t_1}$で割り切ることを導いてるが, 一般の半体$\P$に対しては$\Z\P$は一般にはUFDとは限らないので, すこし気を付ける必要がある:

修正案1:$\tilde{f},\tilde{g},x_{k;t_1},x_{k;t_3},x_{l;t_3}$について命題4を用いて, 多項式環の場合に帰着(命題5と似た感じ)
修正案2:$\Qsf$が(乗法によって群とみなした時に), $\Z^I$と同型なことを示し, そこから$\Z\Qsf$がUFDであることをいう.

p38の上部 (本:p50の下部):修正

$y_l$について定数/2項式」などという表現があるが, $y$変数側の次数はアプリオリには与えられてないので, 少し頑張らないといけない:
$\Qsf^i=\{\frac{f}{g}|f,g\in \N[x_1,x_2,\cdots,x_n],f,g\text{は}x_i\text{と互いに素}\}$とすると, 群として$\Qsf\iso \Qsf^i\times \Z$となり, $\Z\Qsf[\bs{x}^{\pm 1}]=\Z\Qsf^i[y_i,\bs{x^{\pm 1}}]$となるので, 次数を定義することができる.

3.3 補足

p45下部(本:p63上部)

多項式$f\in \Z[\bs{u}]$が非負表示をもつとは, $f\in \N(\bs{u})\cap \Z[\bs{u}]$の意味であって$f\in \N[\bs{u}]$の意味ではないことに注意.

3.4 補足

p48あたり(本:p66)

forzenな種子の間には矢を書かないことにしてるが, mutationとflipの対応をわかりやすくするには書いた方が見やすい気もする(やや図が煩雑になるが)

p51あたり(本:p70)

先に$\A$で議論をしてるが, $\C[\bs{P}]/I_R$で議論をしたうえで$\phi$で送った方が議論がきれいだと思う. あと環の次元論で殴るのもありかも.
一応$\C[\bs{P}]/I_R$において, 適当に単項式をかけることで, 非初期団代数を消せることを確かめておく:
$p_{14}p_{35}=p_{13}p_{45}+p_{15}p_{34}$
$p_{13}p_{24}=p_{14}p_{23}+p_{12}p_{34}$
$p_{14}p_{13}p_{25}=p_{14}(p_{12}p_{35}+p_{15}p_{23})=p_{12}(p_{13}p_{45}+p_{15}p_{34})+p_{14}p_{15}p_{23}$

section4

4.2:コメント

prop4.5とかprop4.11の$\varepsilon$表示は,普通に$y$変数/$x$変数の$\varepsilon$表示からも出る.

section5

5.1:補足

補題5.4の証明において, 「$y_{k;t}$の次数」という表現があるが, section 3.1の説明でも書いたように$\Qsf\iso \Qsf^i\times \Z$を使って$\Z\Qsf^i[y_i,\bs{x^{\pm 1}}]$と解釈する必要がある

5.2:修正

p69の上部

$\displaystyle{\sum_{m,k,l} c_{mkl} x_1^mx_2^kx_2^{-l}(p_2^{+}+p_2^{-}x_1^b)^l }$ $(m\in \Z, k,l\geq 0,c_{mkl}\in \Z\P)$ がもし
$\Z\P[x_1,x_2^{\pm 1}]$に入っていたら,
$c_{mkl}=0(m<0)$が従う, みたいに書いてあるが, これは全然従わない.
例えば, $x_1^{-b}(-p_2^{+}+x_2x_2')$みたいな式を考えると, これは$p_2^{-}$と等しいので, $\Z\P[x_1,x_2^{\pm 1}]$に入るが, $c_{-b,0,0}\neq 0$となる. というわけで, 例えば次のような修正が必要となる:

$\Z\P[x_1,x_2^{\pm 1}]\cap \Z\P[x_1^{\pm 1},x_2,x_2']\subset \Z\P[x_1,x_2,x_2']$

$f\in \Z\P[x_1,x_2^{\pm 1}]\cap \Z\P[x_2,x_2',x_1^{\pm 1}]$を任意にとり, $f\in \Z\P[x_1,x_2,x_2']$を示す.
$f\in \Z\P[x_1^{\pm 1},x_2,x_2']$なので, $f=F(x_1,x_2,x_2')$となる$F\in \Z\P[T_1^{\pm 1},T_2,T_3]$がとれる. このような$F$のなかで, $m:=-\mathrm{ord}_{T_1} (F)$が最小になるように$F$をとる. $m\leq 0$をいえば証明が終わる. 以下, $m> 0$と仮定し, 矛盾を導く.

$F_i\in \Z\P[T_2,T_3]$を, $F=\displaystyle\sum_{i=-m}^{\infty} T_1^iF_i$が成立するように定める. 両辺に$T_1^{m}$をかけて, $(T_1,T_2,T_3)$$(x_1,x_2,x_2')$を代入することで, 次の式を得る:

$fx_1^{m}=\displaystyle\sum_{i=-m}^{\infty} {x_1}^{i+m}F_i(x_2,x_2')$. この式の両辺はともに, $\Z\P[x_1,x_2^{\pm 1}]$上の式とみなせるので, $x_1$$0$を代入することで, 次の式を得る($m>0$に注意):

$\displaystyle{0=F_{-m}\left(x_2,\frac{p_2^{+}}{x_2}\right)}$. よって, $F_{-m}(T_2,T_3)=g(T_2,T_3)(T_2T_3-{p_2}^{+})$となる$g\in \Z\P[T_2,T_3]$がとれる.

よって, $F_{-m}(x_2,x_2')=g(x_2,x_2')p_2^{-}x_1^b$となるが, これは$m$の最小性に矛盾する.
($F'=F-F_{-m}(T_2,T_3)T_1^{-m}+p_2^{-}g(T_2,T_3)T_1^{b-m}$とすると, $F'(x_1,x_2,x_2')=F(x_1,x_2,x_2')=f$かつ, $-\mathrm{ord}_{T_1} F'< m$となり, 矛盾する. )

5.3:補足

p71の下部

"alternative proof of theorem 3.1."において, $n=(0,)1$は別個撃破する必要がある.

投稿日:58
更新日:731
OptHub AI Competition

この記事を高評価した人

高評価したユーザはいません

この記事に送られたバッジ

バッジはありません。

投稿者

bd
81
20309

コメント

他の人のコメント

コメントはありません。
読み込み中...
読み込み中