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cluster algebraゼミのメモ

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某所において週23回くらいのペースで Nakanishi:Cluster Algebras and Scattering Diagrams Part I (cluster代数の基本的な教科書)のゼミを行っているので, ゼミノートを作るついでにmathlogに記事を載せておきます. {自分のゼミ内容}{pdfに書かれていること}のみを書くので, 上の教科書と合わせて読んでください(self-containedでは全くないです) 気が向いたら適宜updateしていきます.

この記事はarXiv:2201.11371のバージョン3を基としているので, (多分ないと思いますが)更新が行われた際は参照ページ/命題番号のずれに注意してください.
また, 同じ著者による「団代数の基礎」も前半部分は上のpdfとほぼ同じなので, 対応するページ/章/定理番号があれば括弧で書きます.

質問/指摘などあればコメント欄へお願いします.

section 1

1.2(本:1.3) :余談

聴講者から, 「半体Pが加法の単位元があるのってどういう時かってわかりますか」みたいな質問がきました. その場では答えられなかったが,
落ち着くと,そういうのは自明半体しかないことがわかります:

半体Pが加法の単位元0を持てば, Pは自明な半体.

このとき, 任意のa,bPに対し,
a+b=(a01)(0+0a1b)=(a01)(0a1b)=b. この式のa,bを入れ替えることで, a+b=aがわかり, 任意のa,bPに対してa=b. よってPは自明な半体.

ちなみに, 半体は(普遍代数の意味で)ちゃんと代数になっているので, 準同型の定義とか, 普遍半体の存在とそのuniversalityとかはそういう一般論からでたりします. まあ普遍半体の形とかは一般論からは(少なくとも容易には)でないんですけどね~

section2

2.4:修正

ここでやってることは, 要するに「一般の係数半体Pでミューテーションを文字式として計算するのは, 自由係数で計算しているのと本質的に同じだよね~」という話なんですが, 体が代数でないので見た目上煩雑な議論をする必要がでてきます.

この節では, t0Tを固定し, xi;t0を単にxiと書きます(xiも同様).
また, pPに対応するZPの元を(Pの元と区別したときは,)[p]と書きます.
proposition 2.5(b)(本:命題2.22(b),p46)は文字通りに読むと嘘で, 例えばP=1とかのときに, x1X(σ)(QQsf(y))(x)x1=([y1][1])x1[y1][1]とかけるので, これを言われたとおりにϕで送ろうとすると, 00が出てきてill-defになってしまいます.
本の場合だと, 「非負表示をえらび~」と書いているので, 嘘ではないがやっぱり「表示によらないのはなんで?」とかが気になる.
なので, 多分このような命題を代わりに考えるといいと思います:

2.25(b)修正版

t0Tにおいて自由係数なクラスターパターンΣと, 係数がPであるようなクラスターパターンΣがあり, ΣΣが同じBパターンを共有していると仮定する.

このとき, 次の2条件を満たす環準同型ϕ:A(Σ)(QP)(x)が存在する:

  1. pQsf(y)ならばϕ([p])=[π(p)] (πは2.25(a)で定義されたもの)
  2. 任意のtTに対して ϕ(xi;t)=xi;t

証明のために少し定義と補題を準備します. 以下の記法は(恐らく)一般的なものではないので注意してください.

Pを半体とする. このとき, NPZPを, NP={i=1nai[pi]|ai,nN,piP}で定める.

また, AZP代数であり, a1,a2,,anAであるとき, NP[a1,a2,,an]:={f(x1,xn)|0fNP係数多項式}とする.

上の状況で, さらにAが体であり, 0NP[a1,a2,,an]のとき, NP(a1,a2,,an)A{st|s,tNP[a1,a2,,an]}で定める.

AZP代数とし, a1,,anAとする. このとき,NP[a1,a2,,an]は和と積で閉じる.
さらに, NP(a1,a2,,an)が定義されるならば, この集合は和と積と商で閉じる.

前半は定義より自明. 後半は前半からすぐでる. (ab+cd=ad+bcbdなどからわかる)

命題2

Σのrankをnとする.
(元の論文にもあるように, 群の射は群環の射に伸びるので,)自然にπ1:ZQsf(y)ZPが定義できる. 多項式環の普遍性より, これはさらにπ2:ZQsf(y)[x1,x2,xn]ZP[x1,x2,xn];xixiに伸びる. R=ZQsf(y)[x1,x2,xn], S=(NQsf)[x1,x2,,xn]Rと置く. このとき, x1,xnの代数的独立性より, 0S. また, π2(S)=NP[π2(x1),π2(x2),,π2(xn)]=NP[x1,x2,,xn]なので, 上と同様に0π(S).

π2と自然な埋め込みの合成π2:RQP(x1,x2,xn)と置くと, これは今示したことと, 局所化の普遍性より, π3:S1RQP(x1,x2,xn)に伸びる.

xi(NQsf)(x1,x2,,xn)であり, 上の命題より(NQsf)(x1,x2,,xn)は和積商で閉じる. mutationは和積商と[P]の元のみを用いてかけるので, (NQsf)(x1,x2,,xn)Σのクラスター変数を全て含む. よってS1RA(Σ)を含む. 以下, ϕ=(π3|A(Σ))が条件を満たすことを示す.

1.は作り方から明らか(結局ϕ([p])=π1([p])になるので). また,ϕ(xi)=xiも作り方からわかる.

以下tTとし, ϕ(xi;t)=xi;t(i=1,,n)の成立を仮定し, ϕ(xi;μk(t))=xi;μk(t)を示す.
(これが示せれば, 帰納法により2の成立が言える. )
これはmutationの定義, xi;μk(t)=xi;t1j=1n(xj;t)[bjk;t]+1+y^k;t1yk;tϕで送ればよい. (xi;tA(Σ)S1Sによって, ϕ(xi;t1)=ϕ(xi;t)1が保障されていることに注意)

section3

3.1:行間/修正

この節には, prop1.11(本:命題1.10)で使った論法を使わないと埋まらない行間がそこそこあります.

a1,a2,,anZPとする. このとき, P
(乗法に対する)部分群HZmがあり, a1,anZ[H]Z[xi±1](i=1,,m).

aiの係数として現れるPの元が生成する(乗法)群をHとすればよい.

p35中ほど(本:p48中ほど) :行間

ZP×={±1}P

ab=1,a,bZPとする. このとき, 上の命題をa,bに対してつかい, あるHPがありa,bZ[H]Z[xi±1]. 整域Aにおいて,A[x,x1]×=A×xZなので, これを繰り返し用い, a{±1}H{±1}Pがわかる.

p36の上部(本:p51の下部) :修正

d(t3,t)=dとあるが, t0tの位置関係によっては, d(t3,t)=d2の可能性もある(どちらにせよ帰納法は回るが)

p36の下部(本:p51の中ほど) :行間

式3.8とlemma 3.5(b)(本:式3.17と補題3.3(2))からf~xk;t1aで割り切ることを導いてるが, 一般の半体Pに対してはZPは一般にはUFDとは限らないので, すこし気を付ける必要がある:

修正案1:f~,g~,xk;t1,xk;t3,xl;t3について命題4を用いて, 多項式環の場合に帰着(命題5と似た感じ)
修正案2:Qsfが(乗法によって群とみなした時に), ZIと同型なことを示し, そこからZQsfがUFDであることをいう.

p38の上部 (本:p50の下部):修正

ylについて定数/2項式」などという表現があるが, y変数側の次数はアプリオリには与えられてないので, 少し頑張らないといけない:
Qsfi={fg|f,gN[x1,x2,,xn],f,gxiと互いに素}とすると, 群としてQsfQsfi×Zとなり, ZQsf[x±1]=ZQsfi[yi,x±1]となるので, 次数を定義することができる.

3.3 補足

p45下部(本:p63上部)

多項式fZ[u]が非負表示をもつとは, fN(u)Z[u]の意味であってfN[u]の意味ではないことに注意.

3.4 補足

p48あたり(本:p66)

forzenな種子の間には矢を書かないことにしてるが, mutationとflipの対応をわかりやすくするには書いた方が見やすい気もする(やや図が煩雑になるが)

p51あたり(本:p70)

先にAで議論をしてるが, C[P]/IRで議論をしたうえでϕで送った方が議論がきれいだと思う. あと環の次元論で殴るのもありかも.
一応C[P]/IRにおいて, 適当に単項式をかけることで, 非初期団代数を消せることを確かめておく:
p14p35=p13p45+p15p34
p13p24=p14p23+p12p34
p14p13p25=p14(p12p35+p15p23)=p12(p13p45+p15p34)+p14p15p23

投稿日:58
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  1. section 1
  2. 1.2(本:1.3) :余談
  3. section2
  4. 2.4:修正
  5. section3
  6. 3.1:行間/修正
  7. 3.3 補足
  8. 3.4 補足