1.初めに
2.Bell 数とは
3.Bell 数の指数型母関数
4.級数$\sum_{n=0}^{\infty} \frac{n^m}{n!}$の Bell 数による表示
突然ですが、以下の無限級数
\begin{align} \sum_{n=0}^{\infty} \frac{n^m}{n!} \ (m=0,1,2,\cdots) \end{align}
はいくつに収束するでしょうか?(なお、収束することはタランベールの収束判定法から容易に示せます)
今回は Bell 数とその指数型母関数を用いてある表示を求めます。
任意の非負整数$n$に対して、 $n$個の区別可能なモノをいくつかの区別できないグループへと分けるような方法の総数を$B_n$と書き、Bell 数と呼ぶ。ただし、$B_0$は$1$と定める。
また、Bell 数に対して以下のような漸化式が成り立ちます。
\begin{aligned} B_{n+1} = \sum_{k=0}^{n} \binom{n}{k} B_k \end{aligned}
適当にモノに対して$1,2,\cdots,n,n+1$と名付け、$n+1$が属するグループに着目する。
今、そのグループに属するモノが$k+1$個であるようなグループの作り方は、$n+1$を固定しているので$\binom{n}{k}$通りであって、また残った$n-k$個をグループ分けする方法は定義から$B_{n-k}$通りある。
したがって$k$を$0 \leq k \leq n$の範囲で動かして$\binom{n}{k} \times B_{n-k}$の和を取ればよい。これと$\binom{n}{k}=\binom{n}{n-k}$から
\begin{align}
B_{n+1} = \sum_{k=0}^{n} \binom{n}{k} B_k
\end{align}
が導けた。
実は Bell 数の指数型母関数 $B(x) = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{B_n}{n!}x^n$ に対して、以下の等式が成り立ちます。
\begin{align} B'(x) = e^xB(x) \end{align}
定理1を用いることによって$B'(x)$は
\begin{align}
B'(x) = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{B_{n+1}}{n!}x^k = \sum_{n=0}^{\infty} \left(\sum_{m=0}^{n} \binom{n}{m} B_m\right) \frac{x^n}{n!} = \sum_{n=0}^{\infty} \left(\sum_{m=0}^{n} \frac{B_m}{m!(n-m)!}\right) x^n
\end{align}
と書ける。これが$e^xB(x)$に等しいことを示す。
今、
\begin{align}
e^xB(x) = \left(\sum_{n=0}^{\infty} \frac{x^n}{n!}\right)\left(\sum_{n=0}^{\infty} \frac{B_n}{n!}x^n\right)
\end{align}
であって、$e^x$と$B(x)$の積によって$n$次の項を作るには、任意の$0\leq m \leq n$を満たす整数$m$を取り$B(x)$の$n-m$次の項と$e^x$の$m$次の項をかけ合わせればよいので、$e^xB(x)$の$n$次の項の係数は
\begin{align}
\sum_{m=0}^{n} \frac{1}{(n-m)!} \times\frac{B_m}{m!}
\end{align}
であることがわかる。したがって
\begin{align}
e^xB(x) = \sum_{n=0}^{\infty} \left(\sum_{m=0}^{n} \frac{B_m}{m!(n-m)!}\right)x^n
\end{align}
が成り立ち、これは先ほどの$B'(x)$の式と一致する。
定理2は微分方程式の形をしており、実際に解くことで以下の式が得られます。(最右辺は$e^{e^x-1}$を定義通りに展開しただけです)
\begin{align} B(x) = e^{e^x-1} = \frac{1}{e} \sum_{n=0}^{\infty}\sum_{m=0}^{\infty} \frac{(nx)^m}{n!m!} \end{align}
定義から明らかに$B(x) \neq 0$であって$B(x)$は逆元を持つ。定理2の式を
\begin{align}
\frac{B'(x)}{B(x)} = e^x
\end{align}
と変形し、両辺を積分すると
\begin{align}
\log{B(x)} + C = e^x \Longrightarrow B(x) = e^{e^x-C}
\end{align}
がわかる。(ただし$C$は任意定数)ここで$B(x)$および$e^{e^x-C}$の一次の係数に着目すると、どちらも$1$である必要があるから、
\begin{align}
1 = e^{-C} \sum_{n=0}^{\infty} \frac{n^1}{n!1!} = e^{-C+1}
\end{align}
が従い、これより$C=1$。
以上から
\begin{align}
B(x) = e^{e^x-1}
\end{align}
を得る。
定理3から、以下の表示が得られます。
任意の非負整数$m$に対して
\begin{align}
\sum_{n=0}^{\infty}\frac{n^m}{n!} = B_me
\end{align}
が成り立つ。
定理3によって得られた
\begin{align}
B(x) = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{B_n}{n!}x^n= \frac{1}{e}\sum_{n=0}^{\infty}\sum_{m=0}^{\infty} \frac{(nx)^m}{n!m!}
\end{align}
の$m$次の項の係数を比較すると
\begin{align}
\frac{B_m}{m!}= \frac{1}{e}\sum_{n=0}^{\infty} \frac{n^m}{n!m!} \Longrightarrow \sum_{n=0}^{\infty}\frac{n^m}{n!} = B_me
\end{align}
より、表式を得る。
実際に計算してみましょう。
\begin{align} \sum_{n=0}^{\infty}\frac{n^4}{n!} = B_4e = 15e \end{align}
Dobiński's formula を介さない方法で級数の値を求めて一致することを確認してみます。
\begin{align}
\sum_{n=0}^{\infty} \frac{n^4}{n!} &= \sum_{n=0}^{\infty} \frac{(n+1)^3}{n!} = \sum_{n=0}^{\infty} \frac{n^3+3n^2+3n+1}{n!} =4e+\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(n+1)^2+3(n+1)} {n!} \\
&= 4e+\sum_{n=0}^{\infty}\frac{(n+1)^2+3(n+1)}{n!} = 4e+\sum_{n=0}^{\infty}\frac{n^2+5n+4}{n!} = 13e+\sum_{n=0}^{\infty}\frac{n^2}{n!}\ \\
&= 13e + \sum_{n=0}^{\infty}\frac{n+1}{n!} = 15e
\end{align}
となるので、一致が確認できました。
また、ここから母関数を介さずとも Dobiński's formula を示せるように見えます。
実際、
\begin{align}
a_n =\sum_{k=0}^{\infty} \frac{k^n}{k!}
\end{align}
と定めると、
\begin{align}
a_{n+1} = \sum_{k=0}^{\infty} \frac{k^{n+1}}{k!} = \sum_{k=0}^{\infty} \frac{(k+1)^n}{k!} = \sum_{k=0}^{\infty} \frac{\sum_{l=0}^{n}\binom{n}{l}k^l}{k!} = \sum_{k=0}^{n} \binom{n}{k}a_k
\end{align}
と変形できるため、$a_n$は$B_n$と同じ漸化式を満たしていることがわかります。
これと $a_0,B_0$ の比較から Dobiński's formula が示せます。
こちらの方が簡潔ですが Bell 数との関係性を示すという点ではかなり天下り的ではありますね。